2011/06/17(金) - 13:01
ツール・ド・フランス開幕までまもなく約2週間。マイヨジョーヌ候補の一角であるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)は不調に喘いでいる。その原因は5月に落車し、トレーニング時間を失ったことにある。バッソはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネを総合26位で静かに終えた。
ジロ・デ・イタリアで2度総合優勝し、ツール・ド・フランスでも過去に2度表彰台に登っているバッソ。しかしツール前哨戦と呼ばれる今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、調子の悪さだけが目立った。
バッソは初日のプロローグで18秒遅れると、山岳ステージでライバルたちから3分09秒も遅れた。その後もタイムを挽回することなく、ステージに絡むことなくゴールする毎日。ツール本戦に向けての準備レースとは言え、総合26位という成績は歓迎されるものではない。
しかしリクイガス・キャノンデールのロベルト・アマディオ監督は楽観視している。インタビューの中でアマディオ監督は「確かにあの落車がなければコンディションは良かったはずだ。だがバッソに対する信頼感は揺るがない。警告アラームが鳴り響いているわけじゃない」と語る。
“あの落車”とは、シチリア島・エトナ火山でのトレーニング中に起きた落車だ。バッソはチームメイトとともに5月中旬にかけてトレーニングキャンプに参加。そのキャンプ2日目の5月17日に、バッソは派手に落車した。
排水溝にフロントホイールを突っ込んだバッソは、バイクから身を投げ出されて宙を舞った。右半身を地面に打ち付けたバッソは、全身に擦過傷を負い、眉の上部を15針縫った。
バッソは13日間に渡ってシチリア島に滞在したが、そのうちトレーニングできたのは2〜3日だけ。ツール・ド・ロマンディ以降の出場となったドーフィネで、トレーニング不足が浮き彫りとなった。
アマディオ監督はそんなバッソを擁護する。「バッソは徐々にリズムを掴み始めている。その証拠として、ドーフィネでは後半にかけて順位を上げた。それにドーフィネ閉幕からツール開幕まで3週間ある。この3週間で各選手のコンディションは大きく変わる。今の時点で速く走れているからと言って、ツールで速く走れるわけではない。むしろ調子を早く上げ過ぎた影響で、ツールで苦しむ選手も多い」。
「何もないところからサプライズは生まれない。ロードレースで大切なのは日々の努力によるコンディションの底上げ。それを実現するためには忍耐強さが必要なんだ。一歩一歩進んでいきたい」。バッソはガゼッタ紙のインタビューの中でそう語っている。
バッソはランス・アームストロング(アメリカ)の2009年シーズンからインスピレーションを得ているという。その年、アームストロングは3月のブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンで落車して鎖骨を骨折。しかし5月のジロ・デ・イタリアに出場し、ツール・ド・フランスで総合3位という成績を残した。
「強い精神力で挑み続ければ、それが最後に報われると信じている。苦痛を伴うのは当然だ。今はひたすら苦しまなければならない」。バッソはそう付け加えた。
イタリア北部のカステランツァにあるマペイスポーツセンターにて、トレーニング成果をチェックする日々。ドーピングによる出場停止処分が開けた2008年から、バッソは同センターに入り浸っている。脳腫瘍が原因で昨年この世を去った元センター局長のアルド・サッシ氏に代わって、現在はアンドレア・モレッリ氏がバッソの担当トレーナーと務める。モレッリ氏はカデル・エヴァンス(オーストラリア)やマイケル・ロジャース(オーストラリア)を同時に担当する名トレーナーである。
モレッリ氏はインタビューに対し「落車はバッソのトレーニングプランに影響を及ぼした。だがツールに向けての準備は着実に進んでいる」と語る。「一旦調子を落とすと、元の状態に戻るまで2〜3週間かかる。バッソは落車で失った10日間のトレーニング時間をドーフィネで補った。ツール開幕の時点では、本来の調子が戻っていないかも知れない。だが重要なのは3週間に渡って調子の良さを持続させることだ」。
バッソは昨年ジロに専念し、2度目の総合優勝を果たした。今年はツールを第一目標に掲げ、連覇が懸かったジロをパスした。
ドーフィネ終了後、バッソはピレネー山脈の重要なステージを下見し、その後イタリアのドロミテ山塊での高地トレーニングに入る。バッソの次戦はツール本戦。バッソは栄光に向かって苦しい日々を過ごしている。
text:Gregor Brown
translation&photo:Kei Tsuji
ジロ・デ・イタリアで2度総合優勝し、ツール・ド・フランスでも過去に2度表彰台に登っているバッソ。しかしツール前哨戦と呼ばれる今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、調子の悪さだけが目立った。
バッソは初日のプロローグで18秒遅れると、山岳ステージでライバルたちから3分09秒も遅れた。その後もタイムを挽回することなく、ステージに絡むことなくゴールする毎日。ツール本戦に向けての準備レースとは言え、総合26位という成績は歓迎されるものではない。
しかしリクイガス・キャノンデールのロベルト・アマディオ監督は楽観視している。インタビューの中でアマディオ監督は「確かにあの落車がなければコンディションは良かったはずだ。だがバッソに対する信頼感は揺るがない。警告アラームが鳴り響いているわけじゃない」と語る。
“あの落車”とは、シチリア島・エトナ火山でのトレーニング中に起きた落車だ。バッソはチームメイトとともに5月中旬にかけてトレーニングキャンプに参加。そのキャンプ2日目の5月17日に、バッソは派手に落車した。
排水溝にフロントホイールを突っ込んだバッソは、バイクから身を投げ出されて宙を舞った。右半身を地面に打ち付けたバッソは、全身に擦過傷を負い、眉の上部を15針縫った。
バッソは13日間に渡ってシチリア島に滞在したが、そのうちトレーニングできたのは2〜3日だけ。ツール・ド・ロマンディ以降の出場となったドーフィネで、トレーニング不足が浮き彫りとなった。
アマディオ監督はそんなバッソを擁護する。「バッソは徐々にリズムを掴み始めている。その証拠として、ドーフィネでは後半にかけて順位を上げた。それにドーフィネ閉幕からツール開幕まで3週間ある。この3週間で各選手のコンディションは大きく変わる。今の時点で速く走れているからと言って、ツールで速く走れるわけではない。むしろ調子を早く上げ過ぎた影響で、ツールで苦しむ選手も多い」。
「何もないところからサプライズは生まれない。ロードレースで大切なのは日々の努力によるコンディションの底上げ。それを実現するためには忍耐強さが必要なんだ。一歩一歩進んでいきたい」。バッソはガゼッタ紙のインタビューの中でそう語っている。
バッソはランス・アームストロング(アメリカ)の2009年シーズンからインスピレーションを得ているという。その年、アームストロングは3月のブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンで落車して鎖骨を骨折。しかし5月のジロ・デ・イタリアに出場し、ツール・ド・フランスで総合3位という成績を残した。
「強い精神力で挑み続ければ、それが最後に報われると信じている。苦痛を伴うのは当然だ。今はひたすら苦しまなければならない」。バッソはそう付け加えた。
イタリア北部のカステランツァにあるマペイスポーツセンターにて、トレーニング成果をチェックする日々。ドーピングによる出場停止処分が開けた2008年から、バッソは同センターに入り浸っている。脳腫瘍が原因で昨年この世を去った元センター局長のアルド・サッシ氏に代わって、現在はアンドレア・モレッリ氏がバッソの担当トレーナーと務める。モレッリ氏はカデル・エヴァンス(オーストラリア)やマイケル・ロジャース(オーストラリア)を同時に担当する名トレーナーである。
モレッリ氏はインタビューに対し「落車はバッソのトレーニングプランに影響を及ぼした。だがツールに向けての準備は着実に進んでいる」と語る。「一旦調子を落とすと、元の状態に戻るまで2〜3週間かかる。バッソは落車で失った10日間のトレーニング時間をドーフィネで補った。ツール開幕の時点では、本来の調子が戻っていないかも知れない。だが重要なのは3週間に渡って調子の良さを持続させることだ」。
バッソは昨年ジロに専念し、2度目の総合優勝を果たした。今年はツールを第一目標に掲げ、連覇が懸かったジロをパスした。
ドーフィネ終了後、バッソはピレネー山脈の重要なステージを下見し、その後イタリアのドロミテ山塊での高地トレーニングに入る。バッソの次戦はツール本戦。バッソは栄光に向かって苦しい日々を過ごしている。
text:Gregor Brown
translation&photo:Kei Tsuji
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