緩やかな登りが続くトーベル・テーガシェンのゴールで接戦が繰り広げられた。先行するマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)を追いつめるオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)。そのフレイレをゴール直前でかわしたボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)が久々の大きな勝利を掴んだ。

スタートラインに並んだダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)らスタートラインに並んだダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)ら photo:Cor Vosツール・ド・スイス第5ステージは、スイス北部のドイツ語圏フットヴィルからトーベル・テーガシェンまでの204.2km。前日に引き続いてスプリンター向きの平坦基調のステージだ。3級と4級のカテゴリー山岳が合計4つ散りばめられているが、スプリンターにとって問題にならないレベル。

この日もゴール前には周回コースが設定され、ラスト39km地点で一旦ゴールラインを通過する。最後は登り基調のストレートを駆け上がってゴール。大集団によるスプリントバトルが濃厚と見られた。

徹底的に痛めつけられる悪魔おじさん徹底的に痛めつけられる悪魔おじさん photo:Cor Vosそんな平坦コースで果敢に逃げたのは、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・サンガード)、ダニエル・セスマ(スペイン、エウスカルテル)、アレッサンドロ・バッツァーナ(イタリア、チームタイプ1)、ヤン・バルタ(チェコ、チームネットアップ)の4名。

逃げグループの中で総合順位が最も良いのはセスマで、総合で22分遅れ。危険度の低さから、メイン集団はタイム差が10分まで広まるまで放置した。

馬車がコースを練り歩く馬車がコースを練り歩く photo:Cor Vosしかしスプリントに興味を見せるチームスカイ、ガーミン・サーヴェロ、HTC・ハイロード、オメガファーマ・ロット、そしてリクイガス・キャノンデールがメイン集団を牽引し、逃げを追いつめていく。トーベル・テーガシェンの周回コースに入る頃にはタイム差2分に。

やがてゴール35km手前のバッツァーナのアタックによって逃げグループの協調体制は崩壊する。初夏の暖かな太陽の下、諦めずに単独でエスケープを続行したバルタ。しかしゴール14km手前で逃げは全て封じ込められた。

頬にスイス国旗をペイント頬にスイス国旗をペイント photo:Cor VosHTC・ハイロード、オメガファーマ・ロット、チームスカイ、エウスカルテル、クイックステップ…。ゴールに向かって、渦を巻くように入り乱れるスプリンターチーム。ゴールに向かう登りが始まるラスト1kmで、トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)が不意をつく超ロングスプリントで飛び出した。

捨て身のアタックで後続を引き離したボーネンは徐々に失速し、ラスト500mでマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)に先頭を譲る。ボーネンを抜き去ったマルカートはそのままの勢いでゴールに向かって猛進。しかしその後方から大集団が迫る。

フレイレとの接戦を制したボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)フレイレとの接戦を制したボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vos歯を食いしばるマルカートの後ろでは、ラスト150mでオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)、ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)、そしてボジッチがスプリントを開始。好位置でスプリントに持ち込んだフレイレはマルカートをパスしたが、ゴールまで伸びやかなスプリントを見せたボジッチが先着した。

展開のあやが生んだ鮮やかな連携で、先行したマルカート吸収後のボジッチ勝利。「調子が良いと言っていたマルカート飛び出したとき、フレイレの付き位置をキープした。続いてフレイレがスプリントしたので、必死に食らいついた。そうして最後は全員を抜くことができたんだ」。ボジッチは自分の勝利を実感できていないような素振りを見せながら流暢なイタリア語で受け答えする。

イエロージャージを守ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)イエロージャージを守ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Cor Vos「本当に久々の大きな勝利だ。この2年間はツキに見放されていた。2009年ブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝に次ぐ価値ある勝利だよ」。30歳のスロベニアンスプリンターは今シーズン初勝利を喜んだ。

総合成績に変動はなく、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)がイエロージャージをキープ。総合争いは翌日から始まる山岳2連戦で大きく動くだろう。第6ステージは隣国リヒテンシュタインの超級山岳トリーゼンベルクにゴール。そして第7ステージは今大会最難関の「クイーンステージ」で、最後はオーストリアの1級山岳セルファウスにゴールする。総合争いは最終日の個人タイムトライアルまでもつれ込むはずだ。

選手コメントはレース公式サイトより。


ツール・ド・スイス2011第5ステージ結果
1位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)    4h44'48"
2位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) 
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
6位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 アントニー・ラヴァール(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、レオパード・トレック)
9位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
10位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)

個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)         17h14'11"
2位 マウリシオ・ソレール(コロンビア、モビスター)           +54"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              +1'16"
4位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)           +1'19"
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード)   +1'21"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)    +1'25"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)     +1'32"
8位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)          +1'53"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)       +2'00"
10位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)    +2'10"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞
ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)

中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)

チーム総合成績
ラボバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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