2011/06/11(土) - 15:27
79kmで開催された第5ステージ。勝負どころとなる残り10km地点の上りでリーダージャージを着るアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)がチームメイト2人とともに先行。そのまま逃げ切り、チームはステージ3勝目を挙げた。日本勢最高位は綾部勇成の4位。トップから9秒差、イラン勢に次ぐ力走を見せた。
西スマトラの小さな町を集団が駆け抜ける
イラン勢が表彰台を独占!
第4ステージ、チーム成績首位の表彰を受けた愛三工業レーシングチーム 走行距離79kmで開催されたツール・ド・シンカラ第5ステージ。スタート後15kmまで上り、48km地点のスプリントポイントにかけて下り、さらにゴール前に急傾斜のアップダウンが用意されたコースレイアウトになっている。
レース序盤から集団をコントロールしたのはリーダーチームであるアザド大学。最初の上り区間でチーム全員で先頭を牽いて集団をペースアップさせた。その結果、山頂で集団はいくつものグループに分かれたが、下りで徐々に集団は1つとなってレースは振り出しにもどる。
レースをコントロールしたアザド大学チーム スプリントポイントは、ポイント賞ジャージが欲しいチャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)が先頭通過。そして「勝負するのはココだ」と多くの選手が睨んだ残り約10km地点から始まる登坂区間で先行したのは、またしてもイランのアザド大学だった。
登坂を得意とするリーダーのアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)とラヒン・エマミ(同)、ゴラコール・ポウルセイディ(同)、第3ステージで1、2、3フィニッシュを飾った彼らが、今回もグングンと前に出る。そしてそれを追ったのは、やはり第3ステージと同じくチョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)と綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)だった。
集団内で走る木守望(愛三工業レーシングチーム) 山頂通過時点で、イランの3人と綾部ら2人とのタイム差は40秒ほど。愛三工業レーシングチームの狙いはステージ優勝だったが、総合順位上位にランクアップしたい綾部は下りで果敢に攻める。「カーブでインではないほうの脚が地面に当たったんだよね…」と話すくらい強烈なダウンヒルを披露したようだ。
ステージ1位から3位、表彰台を独占したアザド大学チーム そして、ゴール手前500mにして、トラブルが発生する。車両用の迂回ルートにマーシャルの誘導で誤ってイラン3選手が入ってしまったというのだ。間違いに気づいた彼らだったが、そこからさらに迂回路を使いゴールまでショートカットするようにしてコースに戻り、またもステージ1、2、3位を独占する。そして下りでチョイ・キー・ホーを振り切った綾部が、ゴール前で行き場を失っていたコミッセールカーに今にも当たりそうになりながら、トップから9秒差のステージ4位でフィニッシュした。
イラン勢が一部コースを走らなかったことについて議論が起こったが、彼らもミスコースにより後続とのタイム差を失っていることもあり、リザルトに特別な措置は加えられなかった。しかし、選手がゴール直前にしてルートを間違えるというのは考えがたいこと。今後ASOとの共催で1クラスもしくはHCにしたいと目論んでいるツール・ド・シンカラのオーガナイザーたちだが、まだやるべき課題は多く残されているようだ。
高地トレーニングが強さの秘訣
第3ステージに引き続き、表彰台を独占するという圧倒的な強さを誇るイランのアザド大学。彼らにとってシーズン最大の目標は7月に開催されるツール・ド・チンハイレイク(2.HC)であり、今回はあくまでもその調整レースだと話すが、力の違いを日々見せつけられている。
アザド大学チームは絶好調、このステージ1位から3位の表彰台を独占
強さの秘訣を聞くと、トレーニングとして標高2000mほどの山岳地帯を走っていることだと言う。トレーニングを休むのはオフシーズンの2週間だけ。日常的な高地トレーニングが抜群の登坂力のベースになっている。そして何よりも驚いたのが、リーダーのザルガリと第4ステージで2位に入ったタンハは午前中トレーニングをし、午後は自転車フレームやパーツの輸入代理店で働いているそうだ。仕事を持ちながらも、彼らはアジアトップのパフォーマンスを発揮している。
イラン勢に次ぐステージ4位でフィニッシュした綾部勇成
そして、この日ステージ4位に入った綾部勇成。「ケロック44では機材トラブルで遅れてしまったので、今日はチームのみんなに車輪が壊れなければ、本当は強かったんだということを証明したかったんです!」とのこと。すかさず若手選手からは「上りが始まってすぐに、綾部さん速いって思っていましたけどね」と声が上がる…。
ステージ4位、レース後の綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
イランには届かなかったものの、春先の不調を払拭する安定した登坂力を見せている綾部。本人の感覚としても、イランのレース時よりもコンディションが良く、集中できていると言う。イラン勢とのタイム差は開いてしまったものの、その中間にいるUCIポイント圏内の選手とのタイム差は縮ることができ、総合10位にランクアップした。
ハードな1日2ステージが続く
ツール・ド・シンカラは残すところあと2日、両日とも午前午後の2レースが用意されている。総合順位を決定づけるのが、最終日、山岳ステージの7Aステージとなるが、それ以外の3ステージで、愛三工業はステージ優勝を狙いに行く。翌6Aステージはシンカラ湖を半周する上り基調下りゴールの94.6km、6Bステージも同じく上り基調下りゴールの39kmとなっている。愛三工業にきている“いい流れ”。再度、嬉しいニュースを日本に届けられることを祈りたい。
日本のふりかけやお茶漬けが欠かせない
初インドネシア初ドリアン!木守望(愛三工業レーシングチーム)
スタート前にコースプロフィールをチェックする中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
ステージ成績
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)1h50'35"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+04"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+06"
4位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+09"
5位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+14"
6位 ロビン・マヌラン(インドネシア、プリマウタマ)+32"
7位 バンバン・スルヤディ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)
8位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)
9位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)
10位 ダリ・スルヤディ(インドネシア、プリマムッダ)
20位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+1'09"
44位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'35"
48位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+2'43"
62位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+3'23"
74位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+4'25 "
83位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+6'00"
総合順位
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)10h12'20"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+14"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+2'
4位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+5'49"
5位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)+6'56"
6位 アガング・アリシャバナ(インドネシア、プリマウタマ)+7'35"
7位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)+7'59"
8位 ラン・アリエハーン・ヒルマント(インドネシア、プリマウタマ)+8'38"
9位 シェリー・アリスタヤ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)+9'36"
10位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+9'39"
14位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)10'09"
15位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)10'15"
33位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+18'24"
50位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+26'49"
54位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+26'49"
65位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+31'56"
チーム総合首位
アザド大学
ポイント賞
チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)
山岳賞
アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)
photo&text Sonoko Tanaka
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イラン勢が表彰台を独占!
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レース序盤から集団をコントロールしたのはリーダーチームであるアザド大学。最初の上り区間でチーム全員で先頭を牽いて集団をペースアップさせた。その結果、山頂で集団はいくつものグループに分かれたが、下りで徐々に集団は1つとなってレースは振り出しにもどる。
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登坂を得意とするリーダーのアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)とラヒン・エマミ(同)、ゴラコール・ポウルセイディ(同)、第3ステージで1、2、3フィニッシュを飾った彼らが、今回もグングンと前に出る。そしてそれを追ったのは、やはり第3ステージと同じくチョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)と綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)だった。
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イラン勢が一部コースを走らなかったことについて議論が起こったが、彼らもミスコースにより後続とのタイム差を失っていることもあり、リザルトに特別な措置は加えられなかった。しかし、選手がゴール直前にしてルートを間違えるというのは考えがたいこと。今後ASOとの共催で1クラスもしくはHCにしたいと目論んでいるツール・ド・シンカラのオーガナイザーたちだが、まだやるべき課題は多く残されているようだ。
高地トレーニングが強さの秘訣
第3ステージに引き続き、表彰台を独占するという圧倒的な強さを誇るイランのアザド大学。彼らにとってシーズン最大の目標は7月に開催されるツール・ド・チンハイレイク(2.HC)であり、今回はあくまでもその調整レースだと話すが、力の違いを日々見せつけられている。
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強さの秘訣を聞くと、トレーニングとして標高2000mほどの山岳地帯を走っていることだと言う。トレーニングを休むのはオフシーズンの2週間だけ。日常的な高地トレーニングが抜群の登坂力のベースになっている。そして何よりも驚いたのが、リーダーのザルガリと第4ステージで2位に入ったタンハは午前中トレーニングをし、午後は自転車フレームやパーツの輸入代理店で働いているそうだ。仕事を持ちながらも、彼らはアジアトップのパフォーマンスを発揮している。
イラン勢に次ぐステージ4位でフィニッシュした綾部勇成
そして、この日ステージ4位に入った綾部勇成。「ケロック44では機材トラブルで遅れてしまったので、今日はチームのみんなに車輪が壊れなければ、本当は強かったんだということを証明したかったんです!」とのこと。すかさず若手選手からは「上りが始まってすぐに、綾部さん速いって思っていましたけどね」と声が上がる…。
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イランには届かなかったものの、春先の不調を払拭する安定した登坂力を見せている綾部。本人の感覚としても、イランのレース時よりもコンディションが良く、集中できていると言う。イラン勢とのタイム差は開いてしまったものの、その中間にいるUCIポイント圏内の選手とのタイム差は縮ることができ、総合10位にランクアップした。
ハードな1日2ステージが続く
ツール・ド・シンカラは残すところあと2日、両日とも午前午後の2レースが用意されている。総合順位を決定づけるのが、最終日、山岳ステージの7Aステージとなるが、それ以外の3ステージで、愛三工業はステージ優勝を狙いに行く。翌6Aステージはシンカラ湖を半周する上り基調下りゴールの94.6km、6Bステージも同じく上り基調下りゴールの39kmとなっている。愛三工業にきている“いい流れ”。再度、嬉しいニュースを日本に届けられることを祈りたい。
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ステージ成績
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)1h50'35"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+04"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+06"
4位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+09"
5位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+14"
6位 ロビン・マヌラン(インドネシア、プリマウタマ)+32"
7位 バンバン・スルヤディ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)
8位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)
9位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)
10位 ダリ・スルヤディ(インドネシア、プリマムッダ)
20位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+1'09"
44位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+2'35"
48位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+2'43"
62位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+3'23"
74位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+4'25 "
83位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+6'00"
総合順位
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)10h12'20"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+14"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+2'
4位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+5'49"
5位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)+6'56"
6位 アガング・アリシャバナ(インドネシア、プリマウタマ)+7'35"
7位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)+7'59"
8位 ラン・アリエハーン・ヒルマント(インドネシア、プリマウタマ)+8'38"
9位 シェリー・アリスタヤ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)+9'36"
10位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+9'39"
14位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)10'09"
15位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)10'15"
33位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+18'24"
50位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+26'49"
54位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+26'49"
65位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+31'56"
チーム総合首位
アザド大学
ポイント賞
チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)
山岳賞
アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)
photo&text Sonoko Tanaka
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