2011/05/28(土) - 02:17
リーダージャージのリケーゼ擁するNIPPOが終始コントロールした114キロ。磐石の態勢であと50mというところでリケーゼにマシントラブル。反対側からスプリントした福田真平(愛三レーシングチーム)が畑中勇介と西谷泰治を抑え優勝。総合も手中に。
5月27日(金)、ツール・ド・熊野第1ステージが行われた。新宮駅前をパレードスタートして熊野川沿いに北上、赤木川沿いの道を往復する1周16.3kmを7周する114.1kmのコース。およそ平坦だが、折り返し部分が狭く少しのアップダウンがある。そしてスタート・フィニッシュラインまでに狭い区間&急坂でKOMを含む区間がアクセントになっている。当日は朝から雨。強くは無く小雨程度で降り続ける。
このコースは平坦に近いが狭い区間があってその都度ふるいにかけられる、実はサバイバルなもの。リーダージャージのマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)擁するNIPPOがどう戦うか、そして国内チームがどう立ち向かうかが見どころ。
JR新宮駅前をパレードスタート。新宮市内をパレード走行後国道168号を経由して周回コースへ。正式スタートが切られるとアタックが頻発する。始めの数キロこそアタック合戦だったが、しだいにまとまる。NIPPOが先頭を固めて速めのペースで引き続けたためだ。
他チームが散発的なアタックを繰り返すものの、NIPPOのハイペースに吸収されて成功しない。アタックされても動じないNIPPOに王者の貫禄が漂う。リーダーのリケーゼはもちろん、チームメイトに守られて集団先頭付近を走る。部分的に狭くアップダウンのあるこのコースでは、前方に位置するほうが安全でかつ、むしろ楽なのだ。
1回目の山岳賞は2周目で、これはこの区間で逃げていた青柳憲輝(シマノレーシング)が1位通過。青柳も吸収されてハイペースのままNIPPOが先頭を引き続ける。
残り4周回でスプリントポイントがあり、手前で抜け出した畑中勇介(シマノレーシング)が辻善光(宇都宮ブリッツェン)を押さえ1位通過、ボーナスタイム3秒を獲得。秒差の争いではこのタイムが貴重だ。
ラスト2周になって集団は活発に。西谷泰治(愛三レーシングチーム)のアタックをきっかけにペースが上がる。それでもなお、NIPPOはそれらを淡々と吸収して最終周回へ。ここでも盛一大(愛三レーシングチーム)らがアタックしてもNIPPOが吸収していく。先頭はNIPPOが固め、特に佐野淳哉が折り返し点を過ぎて5kmくらいを先頭固定のハイペースで引き続ける。このため他チームはアタックをかけられない状況に。
NIPPOの後方には愛三、アンカー、シマノらがまとまって走り、ゴールスプリントに備える。ゴールまで200mの最終コーナーを畑中先頭でスプリント。リケーゼが満を持して踏み込んだときにチェーンが切れるアクシデント。リケーゼの後ろにいた西谷は失速するが切り替えて畑中を追う。一方反対側では福田が畑中を抜いて先頭でゴールへ。福田は先頭でゴールラインを通過してからガッツポーズ。
あと50mだった。爆発的な加速でゴールを狙ったリケーゼは、その目前で大失速、その場で自転車を降りた。福田は実は愛三トレインの牽引役だった。
「盛さん、品川さん、自分、そして後ろに西谷さんがいるはずでした」と語る福田。「福田の後ろにいたらリケーゼに前に入られた。そしたらいきなりリケーゼのチェーンが飛んできた」と語る西谷。最後の10秒間で急展開のレースは、3年ぶり優勝の福田のガッツポーズで収束した。
スピードマンをそろえた愛三。NIPPOの鉄壁の守りを崩すべく終盤に動いたのは盛と西谷だった。日本が誇るスピードマンの攻撃にはさすがのNIPPOも反応、NIPPOトレイン崩壊のきっかけにもなった。シマノも強力な攻撃を仕掛けたチーム。畑中が2位に食い込み、その努力は報われた。
スタートからレースを完全に掌握したNIPPO。ゴール50m前までは完璧な展開だった。しかしアクシデントのため、変わって先頭争いを繰り広げたのは愛三とシマノ。
総合リーダーはゴールのボーナスタイム10秒を獲得した福田。総合2位には3秒差で畑中がつける。畑中は「途中のスプリントポイントを取ったのが効いた。でもここでの数秒差など、明日の第2ステージを考えるとたいした差ではない」と語るが、その畑中は山岳もスプリントも高い次元で持ち合わせる選手。山岳に強いメンバーが活躍するであろうNIPPOに対抗できる数少ない選手の一人だ。
第1ステージを終え、個人総合は15秒差以内に39人がひしめき合う状況。第2ステージはもちろん大きく動くが、全員にとって立ちはだかるのは大雨だ。今のところ接近する台風の影響で、風はあまり無いものの、時間10ミリ以上の強い雨が降る予報だ。国内最高難易度を誇る下り区間を含むコース。昨年は佐野淳哉が3人の上りゴール勝負を制した。今年も少人数の争いになるだろう。
結果 第1ステージ 赤木川清流コース 114.1km
1位 福田真平(愛三レーシングチーム)2時間36分46秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)
3位 西谷泰治(愛三レーシングチーム)
4位 ミゲール・ルビアーノ・チャベス(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
5位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)
6位 鈴木真理(シマノレーシング)
7位 鈴木譲(シマノレーシング)
8位 ジェイ・クロフォード(ジャイアント・ケンダ・サイクリングチーム)
9位 チェン・キン・ワイ(香港チーム)
10位 山本雅道(チームブリヂストン・アンカー)
個人総合時間賞 第1ステージ終了時点
1位 福田真平(愛三レーシングチーム)2時間37分28秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)+03秒
3位 西谷泰治(愛三レーシングチーム)+05秒
4位 辻善光(宇都宮ブリッツェン)+09秒
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
6位 野中竜馬(鹿屋体育大学)+11秒
7位 奈良基(トレンガヌ・サイクリングチーム)
8位 小室雅成(湘南ベルマーレ)
9位 品川真寛(愛三レーシングチーム)
10位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)
個人総合ポイント賞
1位 福田真平(愛三レーシングチーム) 32点
2位 畑中勇介(シマノレーシング)25点
3位 西谷泰治(愛三レーシングチーム)14点
個人総合山岳賞
1位 畑中勇介(シマノレーシング)2点
2位 青柳憲輝(シマノレーシング)2点
3位 ユン・イン・ホン(香港チーム)1点
個人総合U23賞
野中竜馬(鹿屋体育大学)
団体総合時間賞
1位 愛三レーシングチーム 7時間52分55秒
2位 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO +03秒
3位 シマノレーシング +04秒
photo&text:高木秀彰
5月27日(金)、ツール・ド・熊野第1ステージが行われた。新宮駅前をパレードスタートして熊野川沿いに北上、赤木川沿いの道を往復する1周16.3kmを7周する114.1kmのコース。およそ平坦だが、折り返し部分が狭く少しのアップダウンがある。そしてスタート・フィニッシュラインまでに狭い区間&急坂でKOMを含む区間がアクセントになっている。当日は朝から雨。強くは無く小雨程度で降り続ける。
このコースは平坦に近いが狭い区間があってその都度ふるいにかけられる、実はサバイバルなもの。リーダージャージのマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)擁するNIPPOがどう戦うか、そして国内チームがどう立ち向かうかが見どころ。
JR新宮駅前をパレードスタート。新宮市内をパレード走行後国道168号を経由して周回コースへ。正式スタートが切られるとアタックが頻発する。始めの数キロこそアタック合戦だったが、しだいにまとまる。NIPPOが先頭を固めて速めのペースで引き続けたためだ。
他チームが散発的なアタックを繰り返すものの、NIPPOのハイペースに吸収されて成功しない。アタックされても動じないNIPPOに王者の貫禄が漂う。リーダーのリケーゼはもちろん、チームメイトに守られて集団先頭付近を走る。部分的に狭くアップダウンのあるこのコースでは、前方に位置するほうが安全でかつ、むしろ楽なのだ。
1回目の山岳賞は2周目で、これはこの区間で逃げていた青柳憲輝(シマノレーシング)が1位通過。青柳も吸収されてハイペースのままNIPPOが先頭を引き続ける。
残り4周回でスプリントポイントがあり、手前で抜け出した畑中勇介(シマノレーシング)が辻善光(宇都宮ブリッツェン)を押さえ1位通過、ボーナスタイム3秒を獲得。秒差の争いではこのタイムが貴重だ。
ラスト2周になって集団は活発に。西谷泰治(愛三レーシングチーム)のアタックをきっかけにペースが上がる。それでもなお、NIPPOはそれらを淡々と吸収して最終周回へ。ここでも盛一大(愛三レーシングチーム)らがアタックしてもNIPPOが吸収していく。先頭はNIPPOが固め、特に佐野淳哉が折り返し点を過ぎて5kmくらいを先頭固定のハイペースで引き続ける。このため他チームはアタックをかけられない状況に。
NIPPOの後方には愛三、アンカー、シマノらがまとまって走り、ゴールスプリントに備える。ゴールまで200mの最終コーナーを畑中先頭でスプリント。リケーゼが満を持して踏み込んだときにチェーンが切れるアクシデント。リケーゼの後ろにいた西谷は失速するが切り替えて畑中を追う。一方反対側では福田が畑中を抜いて先頭でゴールへ。福田は先頭でゴールラインを通過してからガッツポーズ。
あと50mだった。爆発的な加速でゴールを狙ったリケーゼは、その目前で大失速、その場で自転車を降りた。福田は実は愛三トレインの牽引役だった。
「盛さん、品川さん、自分、そして後ろに西谷さんがいるはずでした」と語る福田。「福田の後ろにいたらリケーゼに前に入られた。そしたらいきなりリケーゼのチェーンが飛んできた」と語る西谷。最後の10秒間で急展開のレースは、3年ぶり優勝の福田のガッツポーズで収束した。
スピードマンをそろえた愛三。NIPPOの鉄壁の守りを崩すべく終盤に動いたのは盛と西谷だった。日本が誇るスピードマンの攻撃にはさすがのNIPPOも反応、NIPPOトレイン崩壊のきっかけにもなった。シマノも強力な攻撃を仕掛けたチーム。畑中が2位に食い込み、その努力は報われた。
スタートからレースを完全に掌握したNIPPO。ゴール50m前までは完璧な展開だった。しかしアクシデントのため、変わって先頭争いを繰り広げたのは愛三とシマノ。
総合リーダーはゴールのボーナスタイム10秒を獲得した福田。総合2位には3秒差で畑中がつける。畑中は「途中のスプリントポイントを取ったのが効いた。でもここでの数秒差など、明日の第2ステージを考えるとたいした差ではない」と語るが、その畑中は山岳もスプリントも高い次元で持ち合わせる選手。山岳に強いメンバーが活躍するであろうNIPPOに対抗できる数少ない選手の一人だ。
第1ステージを終え、個人総合は15秒差以内に39人がひしめき合う状況。第2ステージはもちろん大きく動くが、全員にとって立ちはだかるのは大雨だ。今のところ接近する台風の影響で、風はあまり無いものの、時間10ミリ以上の強い雨が降る予報だ。国内最高難易度を誇る下り区間を含むコース。昨年は佐野淳哉が3人の上りゴール勝負を制した。今年も少人数の争いになるだろう。
結果 第1ステージ 赤木川清流コース 114.1km
1位 福田真平(愛三レーシングチーム)2時間36分46秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)
3位 西谷泰治(愛三レーシングチーム)
4位 ミゲール・ルビアーノ・チャベス(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
5位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)
6位 鈴木真理(シマノレーシング)
7位 鈴木譲(シマノレーシング)
8位 ジェイ・クロフォード(ジャイアント・ケンダ・サイクリングチーム)
9位 チェン・キン・ワイ(香港チーム)
10位 山本雅道(チームブリヂストン・アンカー)
個人総合時間賞 第1ステージ終了時点
1位 福田真平(愛三レーシングチーム)2時間37分28秒
2位 畑中勇介(シマノレーシング)+03秒
3位 西谷泰治(愛三レーシングチーム)+05秒
4位 辻善光(宇都宮ブリッツェン)+09秒
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
6位 野中竜馬(鹿屋体育大学)+11秒
7位 奈良基(トレンガヌ・サイクリングチーム)
8位 小室雅成(湘南ベルマーレ)
9位 品川真寛(愛三レーシングチーム)
10位 黒枝士揮(鹿屋体育大学)
個人総合ポイント賞
1位 福田真平(愛三レーシングチーム) 32点
2位 畑中勇介(シマノレーシング)25点
3位 西谷泰治(愛三レーシングチーム)14点
個人総合山岳賞
1位 畑中勇介(シマノレーシング)2点
2位 青柳憲輝(シマノレーシング)2点
3位 ユン・イン・ホン(香港チーム)1点
個人総合U23賞
野中竜馬(鹿屋体育大学)
団体総合時間賞
1位 愛三レーシングチーム 7時間52分55秒
2位 ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO +03秒
3位 シマノレーシング +04秒
photo&text:高木秀彰
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