北イタリア、ドロミテで開催されたジロ・デル・トレンティーノ。ジロ・デ・イタリアの前哨戦とされる4日間の厳しい山岳レースを走りきった鹿屋体育大学出身の22歳、内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)にスポットをあてる。

内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKA鹿屋体育大学時代は学生個人ロード優勝、インカレロード優勝、ツール・ド・北海道2009・2010 U23総合優勝などタイトルを総ナメにし、同世代の中でも飛び抜けた才能を発揮させていた内間康平。ヨーロッパのレースに憧れていたため、全日本チャンピオンの宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)に相談するなどし、ヨーロッパを拠点に走るダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOチームへ加入した。

トレンティーノを完走で終えたレース後の内間に話を訊かせてもらった。

-- レースを終えた感想は?

山岳をこなす内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)山岳をこなす内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKA「この前の“コッピバルタリ”というレースはUCI-1クラスでも完走できませんでした。今回はワンランク上のHCクラスになるので、走りきれるか心配でしたが、最低限の目標であった“完走”ができたので、よかったと思っています。チームのエースである、ルーカ・アスカーニが総合3位に入れたことも嬉しいですね」

-- レース前に、「レースでたくさんのことを感じて、今後に繋げたい」と話していましたが、実際にどのようなことを感じましたか?

「アスカーニがエースで、彼はチームメンバーに"いつも近くにいるように"と指示していました。だから、ずっと近くで彼の動き方を見ていましたが、その位置取りのうまさに驚きました。

個人TTを前に緊張の面持ちの内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)個人TTを前に緊張の面持ちの内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKAこれまで自分は、集団の前にいることが多かったのですが、彼は脚を使うときと温存するときの位置取りがすごくうまい。そもそもの“脚”の違いも感じますが、体力のうまい温存法を見ることができたと思います。

またレースのスピードも、今までのレースとは全然違うものでした。リーダーチームのランプレが常にコントロールしていましたが、こんなにも速い速度で巡行できることに驚きましたし、登りではグルペットに入らないと完走できない。そこでは脚の筋肉を使って走るだけではもたなかったので、周りの選手を見て、上半身を使う登り方をいろいろ試しました。そのせいで、今日(レース翌日)は、これまでに味わったことがない、上半身の痛みを感じています…笑」

「トッププロとのレースでは完走できないだろう」という心配をよそに、完走に漕ぎ着けた「トッププロとのレースでは完走できないだろう」という心配をよそに、完走に漕ぎ着けた photo:Sonoko.TANAKA-- トップ選手との“差”は、どう感じた?

「登りでは先頭選手の走りを見ることはできませんでしたが、長い登りでもペースが緩むことなく、スピードの上がりきったときがハンパなく速い。そんな印象です。完走できたといっても、山岳ポイントがいくつか続くと、最後の勝負がかかる山岳の手前で遅れるのが現状で、脚の差は強く感じます」

-- 今後の課題や目標は?

「もっと上のチームをめざしていきますが、まずは自分の実力を上げないといけません。とくに登りを登れるようになりたいと思います。去年より登れるようになっているけど、まだまだです。3月にヨーロッパに来て、食生活も変わって身体が絞れてきていて、成績も良くなっているので、今の調子でやっていきたいと思っています」

-- 具体的に食生活はどう変わった? 

「日本にいるときは、ご飯を2合くらい当たり前に食べていたのですが、こっちに来て、ほかの選手の食事を見ていると食べている量が少ないんです。だから彼らに習って量を減らしました。最初は物足りないと思いましたが、ゆっくりとよく噛んで食べるようにしていると、次第に慣れてきました。体重だと2kgくらいしか減っていませんが、いろんな人から“痩せたね”って声を掛けられます」


欧州トッププロと並んでスタートを待つ内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)欧州トッププロと並んでスタートを待つ内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKA22歳、今後の成長に期待がかかる

ヨーロッパ生活2ヶ月目、かつオフシーズンは卒論でほとんど乗り込めていなかったこともあり、「HCクラスを走れる状態ではないのではないだろうか?」と、レース前は完走を危惧されていたが、フタを開けてみれば、プロチームのビック選手と肩と並べて、難易度の高いレースを無事に走りきった。

これまで多くの若手選手を見てきた大門宏監督は「今季は焦らずに走れればいいと思っていたけど、この年代でここまで走れる選手はこれまでにほとんどいなかった。将来が楽しみな選手ですね」と語る。

ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOチームは、5月のツール・ド・熊野で国内初戦を迎える予定だが、内間康平は日本に戻らず、ヨーロッパのレースを転戦するスケジュールとなっている。本場のレースで多くの経験を積んで、さらに素晴らしい選手へと成長してくれるだろう。


photo&text:Sonoko.TANAKA