ゴールまで残り7kmの登りで仕掛けたトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)に、総合優勝を狙うミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)が追走。2人で後続を25秒引き離し、ゴールスプリントを制したトマがステージ優勝、スカルポーニがリーダージャージを獲得した。日本人選手は、トップ選手の圧倒的な登坂力に苦戦を強いられる結果となった。

スタート前に笑顔を見せる新城幸也(ユーロップカー)スタート前に笑顔を見せる新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko.TANAKA最後の登りで一気に動いた第2ステージ

爽やかな日差しが降り注ぐ初夏のような気候のなか開催された第35回ジロ・デル・トレンティーノ第2ステージ。スタート後60km地点に2級山岳、山岳ポイントは設定されていないが、残り18kmからゴールにかけて高低差約620mの登りとなる、ドロからレドロ・ベッゼッカまで、184km道のりだ。

レースが始まってすぐに4人/ユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル)、ジュセッペ・デマリア(イタリア、デローザ・チェラミカフラミニア)、ウラディミール・ザゴロニー(ウクライナ、ミケ)、ダヴィデ・トロサントゥッチ(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)の逃げが決まる。

スタートラインに並ぶ各賞ジャージ着用選手スタートラインに並ぶ各賞ジャージ着用選手 photo:Sonoko.TANAKA集団とのタイム差は最大で5分近く開き、残り20km地点でも2分をキープしたが、残り10km地点、最後の登りで集団に吸収された。

ゴールまで7km地点でアタックをかけたのがフランスチャンピオンであり、UCIヨーロッパツアーのリーダージャージを着るトマ・ヴォクレールだった。
ヴォクレールは「勝つための脚は残っていると確信して、集団を飛び出した」と振り返る。それにすかさず反応したのが、ミケーレ・スカルポーニ。ステージ優勝を狙うヴォクレールと、登坂に強く総合優勝を目論むスカリポーニの思惑は一致。トマがゴールスプリントのために脚を貯める形で、2人は集団を25秒ほど引き離す。

集団内で一つ目の山岳ポイントに向かう佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)集団内で一つ目の山岳ポイントに向かう佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Sonoko.TANAKAそして、やはりゴールラインの手前でトマが先行し、フランスチャンピオンが今季6勝目となるステージ優勝を獲得した。また同タイムでスカルポーニも続き、6秒のボーナスタイムが加算され、昨日のタイムトライアルでの27秒差を挽回。2位のティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)を12秒ほど引き離して総合首位にランクアップした。

ゴール後の会見で、スカルポーニは「残り30kmで、トマに“今日はステージ優勝するんだろ”と話したんだ。それが本当になったね。勝つ人を知っていたから、最後の登りで彼を追ったんだ」と笑顔をみせた。

優勝候補であるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)は、第1集団でゴールしたものの、スヨーロッパツアーリーダージャージを着てステージを制したトマ・ボクレール(フランス、ユーロップカー)ヨーロッパツアーリーダージャージを着てステージを制したトマ・ボクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Riccardo Scanferlaカルポーニに14秒ほどタイム差をつけられる結果となった。


ヴォクレールのステージ優勝をアシストした新城幸也

最後の登りで一気に勝負がついた今日のレース。新城幸也(ユーロップカー)は「最初に逃げが決まって、ゆっくりとレースが進み、最後の勝負どころで一気に動くという、イタリアらしいレースでした」と振り返る。しかし日本人選手たちは最後の登りで大きくタイム差をつけられてしまった。

新城は残り9km地点付近で先頭集団からドロップ。6分27秒差の91位でゴールした。

総合4位のルーカ・アスカーニ(左/イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)とマペイでの監督経験もあるフェブライ・ファビリツオ監督(中央)総合4位のルーカ・アスカーニ(左/イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)とマペイでの監督経験もあるフェブライ・ファビリツオ監督(中央) 「今日のチームの作戦はトマのステージ優勝でした。なので、最後の登り始めで彼をいい位置に送り込むことが仕事。それがうまくできて、彼も勝てたのでよかったと思います。
今日は今シーズン初めての登りのレースでした。久しぶりに汗をいっぱいかいて苦しんだので、明日からはさらにコンディションが良くなってくると思っています。明日からのステージで、逃げられたら逃げに乗りたいですが、あとは厳しい山岳でただひたすら頑張るだけですね。5月6月に向けて、コンディションを上げていきたいです。」


上を狙う佐野淳哉には悔しさが残る

一方、登坂力に定評のある佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)は、トップから5分47秒差の83位でゴールした。
チームバスの中でスタート準備をするダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPOチームバスの中でスタート準備をするダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO photo:Sonoko.TANAKA「一気に集団のスピードが上がり、ついていくことができませんでした……」と表情を曇らす。これまで好調で、もう少し上の順位を狙っていたため悔しさが残る結果となった。またチームメイトの内間康平は9分18秒差の108位でフィニッシュしている。

しかし今大会で、彼らのチーム「ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO」は、コンチネンタルチームながら、プロチームや強豪プロコンチネンタルチームを相手にいいレースを展開している印象を受ける。
第2ステージでは、ダヴィデ・トロサントゥッチが4人の逃げに乗り、最後の登りではほかの3人が集団に吸収されても、1人で先頭を走り続けるという見せ場を作った。

ステージ優勝し、記者会見に応じるトマ・ボクレー(フランス、ユーロップカー)ステージ優勝し、記者会見に応じるトマ・ボクレー(フランス、ユーロップカー) photo:Sonoko.TANAKAさらにチームキャプテンであるフォルトゥナート・バリアーニ(イタリア)と、チームのエース、ルーカ・アスカーニ(イタリア)がニーバリと同じ第1集団でゴールし、バリアーニがステージ5位、アスカーニが7位で、総合順位も現在アスカーニがトップと15秒差の4位につけている。

明日、明後日はさらに過酷な山岳コースとなる

明日第3ステージはレドロ・モリーナからファイ・デッラ・パガネッラの170kmで開催され、1級山岳を2回登るさらに厳しいステージが選手たちを待っている。「ジロ・デル・トレンティーノのメインディッシュはこれから!」そんな言葉で第2ステージは締めくくられた。


ジロ・デル・トレンティーノ2011第2ステージ結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)4h47'51"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
3位 プゼミワフ・二エミエク(ポーランド、ランプレ・ISD)+25"
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)+25"
5位 フォルトゥナート・バリアーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+25"
リーダージャージを獲得したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)リーダージャージを獲得したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Sonoko.TANAKA6位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)+25"
7位 ルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+25"
8位 ホセロドルフォ・セルパパレス(コロンビア、アンドローニ・ジョカトーリ)+25"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+25"
10位 ファビオ・タボーレ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+25"
83位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+5'47"
91位 新城幸也(ユーロップカー)+6'27"
111位 内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+8'23"


総合成績
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)5h03'36"
2位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック)+12"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+14"
4位 ルーカ・アスカーニ(イタリア、ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+15"
5位 トマ・ボクレー(フランス、ユーロップカー)+19"
6位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)+30"
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)+31
8位 ロベルト・キセルトヴスキ(クロアチア、アスタナ)+38"
9位 ウラディミール・ミホロヴィッチ(クロアチア・アックア・エ・サポーネ)+40"
10位 シャールズ・ヴェゲリュース(イギリス・ユナイテッドヘルスケア)+40"
83位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+6'06"
93位 新城幸也(ユーロップカー)+7'18"
108位 内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)+9'16"

新人賞
アレクサンドル・プリウスチン(モルドバ、チームカチューシャ)

山岳賞
ユリー・クリフトソフ(ウクライナ、アージェードゥーゼル・ラ・モンディアル)

ポイント賞
ジュセッペ・デマリア(イタリア、デローザ・チェラミカフラミニア)

photo&text Sonoko.TANAKA
photo:Riccardo Scanferla

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