2011/04/10(日) - 12:10
ロンド・ファン・フラーンデレンで敗れたファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)は「北のクラシック」最終戦パリ〜ルーベでリベンジを誓う。カンチェラーラの連覇を阻止するのはトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)か?いま再び2人がパヴェで激突する。
カンチェラーラの連覇をボーネンは阻止できるか?
昨年2度目のパリ〜ルーベ制覇を果たしたカンチェラーラは、1週間前のロンドで苦い思いを経験した。大会連覇を狙ってゴール45km手前でアタックを仕掛けたが、失速して追走グループに吸収。ラスト2kmで再び攻撃を仕掛けたが、表彰台圏内の3位に入るのがやっとだった。
カンチェラーラはこの「ロンド=ルーベ」をシーズン前半最大の目標に掲げている。ロンドで連覇を逃した今、ルーベ連覇に全てを懸ける。ディフェンディングチャンピオンとして、コンピエーニュのスタート地点に立つ。
カンチェラーラの強みは何と言っても世界最高峰の独走力だ。昨年のロード世界選手権個人タイムトライアルで前人未到の4勝目を飾ったクロノマンは、「勝負どころ」と呼ばれているポイントよりも早いタイミングでスパートを仕掛け、独走に持ち込むのが勝ちパターン。
昨年はゴール50km手前でアタックを仕掛け、前を逃げる選手たちをごぼう抜きにして独走。経った一人で後続を2分引き離す走りで圧勝した。もちろん今年もカンチェラーラは独走に持ち込みたい考えだ。
カンチェラーラのアキレス腱は、ライバルチームと比べて見劣りするレオパード・トレックのチーム力だろう。一緒にサクソバンクから移籍したスチュアート・オグレディ(オーストラリア)は頼れる存在であり、カンチェラーラが激しくマークされた2007年大会で独走勝利を飾っている。しかしルーベで成績を残しているチームメイトは他にいない。予想されるライバルチームの攻撃によってチーム力を消耗し、カンチェラーラ自ら動かざるをえない展開になると、連覇の確率はグッと下がる。
カンチェラーラのルーベ連覇を阻止する最大のライバルと目されているのが、2005年、2008年、2009年大会覇者のボーネンだ。かつて「王者」としてルーベに君臨したボーネンは、ロジェ・デフラミンク(ベルギー)に並ぶ史上最多の4勝目を狙う。
ボーネンの強みはスプリント力。カンチェラーラのアタックを封じ込め、ルーベのヴェロドロームでのスプリント勝負に持ち込むのがボーネンの勝ちパターン。近年カヴェンディッシュらの台頭でボーネンが集団スプリントで勝利する回数は減ったが、純粋なスプリント力ではカンチェラーラよりも一枚上手だ。
ボーネンの相棒となるのが、ロンドで鮮烈なエスケープを見せたシルヴァン・シャヴァネル(フランス)。カンチェラーラとボーネンが激しくマークする状況が続けば、シャヴァネルのような伏兵にも充分チャンスがある。
シャヴァネルは2009年大会で8位という成績を残している。ロンドに続いて再び早めに仕掛け、エースのボーネンに有利な展開に持ち込みたいところだ。
パヴェ決戦のビッグタイトルを狙う猛者たち
タフレースで威力を発揮するのがそれぞれのチーム力。選手たちが消耗する終盤にメンバーを揃えたチームは、最後の勝負どころに向けて有利にレースを展開することができる。そう言った意味でガーミン・サーヴェロとBMCレーシングチームは要チェックだ。
ガーミン・サーヴェロのエースは、2009年3位、2010年2位という安定した成績を残すトル・フースホフト(ノルウェー)だ。着実にステップアップしており、3度目の正直で表彰台の真ん中を目指す。フースホフトは昨年のツール・ド・フランス前半に登場したパヴェステージで優勝を飾っている。
しかし世界チャンピオンのフースホフトには“アルカンシェルの呪い”がつきまとう。アルカンシェルを着てルーベで優勝した選手は20年間出ていない。1981年にベルナール・イノー(フランス)が優勝したのを最後に、アルカンシェル着用者はことごとく敗退している。
フースホフトを支えるのは、2004年3位、2007年7位、2010年4位という成績を残すロジャー・ハモンド(イギリス)やタイラー・ファラー(アメリカ)、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)、ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー)という強力なラインナップ。なお、ガーミン・サーヴェロはスリップストリーム時代を含めても「モニュメント」未勝利だ。
チーム力の面では、今年プロチームに昇格したばかりのBMCレーシングチームも負けていない。2008年3位のアレッサンドロ・バッラン(イタリア)を中心にした布陣で、トップ10の常連ジョージ・ヒンカピー(アメリカ)や、マークス・ブルグハート(ドイツ)、マヌエル・クインツィアート(イタリア)らが終盤の勝負どころまで生き残るだろう。ヒンカピーはアメリカ人として唯一表彰台に上ったことのある選手だ(2005年2位)。
2005年大会で3位に入り、その後も2006年4位、2007年2位、2009年6位、2010年3位というコンスタントな成績を残すフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)は、スペイン人選手初のルーベ制覇を目指す。
フレチャをバックアップするのは、勢いのあるジェレイント・トーマス(イギリス)や経験豊かなマシュー・ヘイマン(オーストラリア)。チームスカイの監督を務めるのは、昨年史上最多16回目のルーベ完走を果たして引退したセルファイス・クナーフェン(オランダ)だ。
今年はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がルーベに初出場する。長年夢見ていた舞台で、カヴェンディッシュはベルンハルト・アイゼル(オーストリア)とマシュー・ゴス(オーストラリア)をアシストする。これまでの成績を見るとアイゼルがエースだが、今年ミラノ〜サンレモを制したゴスも虎視眈々と上位を狙っている。
毎年カンチェラーラやボーネンの後ろで目を光らせ、終盤の勝負どころに絡んでくるフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)も優勝候補の一角。カチューシャにはベテランのレイフ・ホステ(ベルギー)もいる。
ロンドで好走したビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)やラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)も上位に絡んでくるだろう。ダークホースとしてペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)にも注目したい。
そして、別府史之(レディオシャック)が3年連続4度目の出場を果たす。フミは過去にパリ〜ルーベ・エスポワールレース(U23)で好成績を収めているが、エリートレースでは完走経験無し。ロンドで日本人初の完走を果たしたフミが、ルーベ完走を目指す。フミはルーベ開催日の4月10日が28回目の誕生日だ。
text:Kei Tsuji
カンチェラーラの連覇をボーネンは阻止できるか?
昨年2度目のパリ〜ルーベ制覇を果たしたカンチェラーラは、1週間前のロンドで苦い思いを経験した。大会連覇を狙ってゴール45km手前でアタックを仕掛けたが、失速して追走グループに吸収。ラスト2kmで再び攻撃を仕掛けたが、表彰台圏内の3位に入るのがやっとだった。
カンチェラーラはこの「ロンド=ルーベ」をシーズン前半最大の目標に掲げている。ロンドで連覇を逃した今、ルーベ連覇に全てを懸ける。ディフェンディングチャンピオンとして、コンピエーニュのスタート地点に立つ。
カンチェラーラの強みは何と言っても世界最高峰の独走力だ。昨年のロード世界選手権個人タイムトライアルで前人未到の4勝目を飾ったクロノマンは、「勝負どころ」と呼ばれているポイントよりも早いタイミングでスパートを仕掛け、独走に持ち込むのが勝ちパターン。
昨年はゴール50km手前でアタックを仕掛け、前を逃げる選手たちをごぼう抜きにして独走。経った一人で後続を2分引き離す走りで圧勝した。もちろん今年もカンチェラーラは独走に持ち込みたい考えだ。
カンチェラーラのアキレス腱は、ライバルチームと比べて見劣りするレオパード・トレックのチーム力だろう。一緒にサクソバンクから移籍したスチュアート・オグレディ(オーストラリア)は頼れる存在であり、カンチェラーラが激しくマークされた2007年大会で独走勝利を飾っている。しかしルーベで成績を残しているチームメイトは他にいない。予想されるライバルチームの攻撃によってチーム力を消耗し、カンチェラーラ自ら動かざるをえない展開になると、連覇の確率はグッと下がる。
カンチェラーラのルーベ連覇を阻止する最大のライバルと目されているのが、2005年、2008年、2009年大会覇者のボーネンだ。かつて「王者」としてルーベに君臨したボーネンは、ロジェ・デフラミンク(ベルギー)に並ぶ史上最多の4勝目を狙う。
ボーネンの強みはスプリント力。カンチェラーラのアタックを封じ込め、ルーベのヴェロドロームでのスプリント勝負に持ち込むのがボーネンの勝ちパターン。近年カヴェンディッシュらの台頭でボーネンが集団スプリントで勝利する回数は減ったが、純粋なスプリント力ではカンチェラーラよりも一枚上手だ。
ボーネンの相棒となるのが、ロンドで鮮烈なエスケープを見せたシルヴァン・シャヴァネル(フランス)。カンチェラーラとボーネンが激しくマークする状況が続けば、シャヴァネルのような伏兵にも充分チャンスがある。
シャヴァネルは2009年大会で8位という成績を残している。ロンドに続いて再び早めに仕掛け、エースのボーネンに有利な展開に持ち込みたいところだ。
パヴェ決戦のビッグタイトルを狙う猛者たち
タフレースで威力を発揮するのがそれぞれのチーム力。選手たちが消耗する終盤にメンバーを揃えたチームは、最後の勝負どころに向けて有利にレースを展開することができる。そう言った意味でガーミン・サーヴェロとBMCレーシングチームは要チェックだ。
ガーミン・サーヴェロのエースは、2009年3位、2010年2位という安定した成績を残すトル・フースホフト(ノルウェー)だ。着実にステップアップしており、3度目の正直で表彰台の真ん中を目指す。フースホフトは昨年のツール・ド・フランス前半に登場したパヴェステージで優勝を飾っている。
しかし世界チャンピオンのフースホフトには“アルカンシェルの呪い”がつきまとう。アルカンシェルを着てルーベで優勝した選手は20年間出ていない。1981年にベルナール・イノー(フランス)が優勝したのを最後に、アルカンシェル着用者はことごとく敗退している。
フースホフトを支えるのは、2004年3位、2007年7位、2010年4位という成績を残すロジャー・ハモンド(イギリス)やタイラー・ファラー(アメリカ)、ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)、ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー)という強力なラインナップ。なお、ガーミン・サーヴェロはスリップストリーム時代を含めても「モニュメント」未勝利だ。
チーム力の面では、今年プロチームに昇格したばかりのBMCレーシングチームも負けていない。2008年3位のアレッサンドロ・バッラン(イタリア)を中心にした布陣で、トップ10の常連ジョージ・ヒンカピー(アメリカ)や、マークス・ブルグハート(ドイツ)、マヌエル・クインツィアート(イタリア)らが終盤の勝負どころまで生き残るだろう。ヒンカピーはアメリカ人として唯一表彰台に上ったことのある選手だ(2005年2位)。
2005年大会で3位に入り、その後も2006年4位、2007年2位、2009年6位、2010年3位というコンスタントな成績を残すフアンアントニオ・フレチャ(スペイン、チームスカイ)は、スペイン人選手初のルーベ制覇を目指す。
フレチャをバックアップするのは、勢いのあるジェレイント・トーマス(イギリス)や経験豊かなマシュー・ヘイマン(オーストラリア)。チームスカイの監督を務めるのは、昨年史上最多16回目のルーベ完走を果たして引退したセルファイス・クナーフェン(オランダ)だ。
今年はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がルーベに初出場する。長年夢見ていた舞台で、カヴェンディッシュはベルンハルト・アイゼル(オーストリア)とマシュー・ゴス(オーストラリア)をアシストする。これまでの成績を見るとアイゼルがエースだが、今年ミラノ〜サンレモを制したゴスも虎視眈々と上位を狙っている。
毎年カンチェラーラやボーネンの後ろで目を光らせ、終盤の勝負どころに絡んでくるフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)も優勝候補の一角。カチューシャにはベテランのレイフ・ホステ(ベルギー)もいる。
ロンドで好走したビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)やラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)も上位に絡んでくるだろう。ダークホースとしてペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)にも注目したい。
そして、別府史之(レディオシャック)が3年連続4度目の出場を果たす。フミは過去にパリ〜ルーベ・エスポワールレース(U23)で好成績を収めているが、エリートレースでは完走経験無し。ロンドで日本人初の完走を果たしたフミが、ルーベ完走を目指す。フミはルーベ開催日の4月10日が28回目の誕生日だ。
text:Kei Tsuji
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