北フランスを舞台に、第109回パリ〜ルーベが開催される。舞台のなるのは、27のパヴェ(石畳)区間が詰め込まれた259km。今年は難易度5つ星のオルノワ・レ・ヴァロンシエンヌが追加され、レースの難易度が増した。レース当日の天気予報は晴れ。今年も砂塵レースが予想される。

合計27セクター・総延長51.5kmのパヴェ区間

パリ〜ルーベ2011コースマップパリ〜ルーベ2011コースマップ image:A.S.O.近代オリンピックと同じ1896年に第1回大会が開催され、今年で開催109回目を迎えるパリ〜ルーベ。「クラシックの女王」と呼ばれ、格式の高いクラシックレースとして独特の地位を誇っている。

「女王」またの名を「北の地獄」。他のレースでは決して見ることが出来ない荒れたパヴェ(石畳)が連続して登場する異質のレースだ。選手たちはバイクを抑え込みながら荒れたパヴェを突き進む。

その他のワンディクラシックとは異なり、258kmのコースは真っ平ら。登りは皆無に等しい。今年もパリ北部のコンピエーニュをスタートし、パヴェ区間を縫うようにして蛇行しながらベルギー国境近くのルーベにゴールする。

レース前半の約100kmは快適なアスファルト舗装路が続く。しかし、そこからゴールまで、休むまもなくパヴェ区間(セクター)が登場する。ゴール地点ルーベに至るまで、合計で27のパヴェ区間が登場。その総延長は51.5kmに及び、レース後半部の3分の1がパヴェに覆われている計算になる。

乾燥したパヴェから砂埃が舞い上がる乾燥したパヴェから砂埃が舞い上がる photo:Cor Vosパヴェ区間のほとんどが握りこぶし大の石が敷き詰められた「悪路」で、石と石の間の土は風雨によって浸食。鋭く角の立った石や段差が、パンクや落車を引き起こす。毎年少しずつ修復が加えられているが、中には規則性を失って波打ったものや、陥没した穴もある。

これほどマシントラブルや落車の多いレースは他に類を見ない。荒れた路面が選手たちを苦しめ、ときに致命的なダメージを与える。

雨の心配の無い好天に恵まれた2010年のパリ〜ルーベ雨の心配の無い好天に恵まれた2010年のパリ〜ルーベ photo:Cor Vos選手たちは振動吸収性や耐久性に重きを置いた「パリ〜ルーベ特製バイク」を使用し、並走バイクによるニュートラルサポートも通常より手厚い。さらに沿道の観客もホイールを片手に声援を送り、トラブルが発生すれば率先して飛び出す。それでもトラブルは避けられない。

パヴェでは、ハンドルから伝わる強烈な振動をうまく抑え込み、安全なラインを読む独特の高度な走行テクニックが要求される。いかにトラブル無くパヴェをこなしていくかが勝負の分かれ道。一つのミスで勝機を失う可能性は高い。

そして選手を苦しめるもう一つの要因、それが天候だ。晴れて乾燥すれば、凄まじい砂埃が舞い上がり、視界が遮られるとともに呼吸もままならない「砂埃地獄」に。

また、雨が降って路面が濡れれば「泥地獄」になる。泥が容赦なく選手とバイクを襲い、落車やメカトラを誘発。泥だらけの選手たちが泥だらけのパヴェに倒れ込む集団落車はまさに地獄絵図。過去には選手の顔の判別がままならないほど泥だらけのレースが繰り広げられたこともあった。

近年のパリ〜ルーベは雨と無縁だ。2005年にはレース途中に軽い雨が降ったが「泥地獄」にはほど遠いコンディション。本格的な雨には2002年以降ずっと降られていない。今年もレース開催日の現地は晴れの予報。つまり今年も砂塵のクラシックが繰り広げられる。

パリ〜ルーベ2011コースプロフィールパリ〜ルーベ2011コースプロフィール image:A.S.O.


難所アランベールやカルフール・ダルブルは健在 5つ星パヴェが追加

荒れた石畳が一直線に続くアランベール荒れた石畳が一直線に続くアランベール photo:Cor Vos登場する27のパヴェ区間は、それぞれ長さが200mから3700mまで様々。その長さや路面の荒れ具合に応じて、難易度が1〜5までランク付けされている。

最高級5つ星の栄誉を与えられているのは、142.4km地点のオルノワ・レ・ヴァロンシエンヌ、172km地点のアランベール(アーレンベルグ)、209km地点のモンサン・ぺヴェル、そして241km地点のカルフール・ド・ラルブル。

多くの観客が詰めかけるカルフール・ダルブル多くの観客が詰めかけるカルフール・ダルブル photo:Cor Vos例年ほぼ同じパヴェが登場するが、今年はオルノワ・レ・ヴァロンシエンヌが復活。この5つ星のパヴェ区間は長さ2600m。いつもレースが動き出すアランベールを前に、このパヴェが最初の鉄槌を振り下ろす。オルノワ・レ・ヴァロンシエンヌの追加により、例年にも増して荒れた展開になる可能性も。

ゴール95km手前に登場するアランベールは「アランベールの森」を貫く一本道は。長さが2400mに達し、その路面は荒れ放題。ここで数々の名選手が落車やトラブルにより勝機を失い、そして同時に、多くの決定的な動きが生まれた。

荒れた本線よりも沿道の路面は比較的スムースだが、無情にもバリケードが選手たちの沿道侵入を許さない。集団は縦一列になること必至。集団後方に埋もれてしまうと、渋滞で後方に取り残され、二度と集団に復帰出来ないこともある。パヴェでの走りだけでなく、パヴェ区間突入前の熾烈なポジション争いにも注目したい。

そして、終盤にかけて大きな盛り上がりを見せるのが、難易度4の3区間(シソワン・ブルゲル、ブルゲル・ワヌエン、カンファナン・ぺヴェル)を越えた後に登場するカルフール・ド・ラルブルだ。長さ2100mのこの難所を越えると、ゴールまで残り15km。その後の3区間の難易度は低く、カルフール・ド・ラルブルで勝負が決まる可能性が高い。

ゴール地点は今年もルーベのヴェロドローム(トラック競技場)。荒れたパヴェレースの最後を締めくくるのは、皮肉にも、スムースな路面の競技場。先頭でゴールラインを駆け抜けた選手には、パヴェの石塊で作られたトロフィーが贈られる。

登場するパヴェ27区間(セクターNo.・地点km・名称・長さ・難易度)
27 98km Troisvilles 2200m ☆☆☆
26 104.5km Viesly 1800m ☆☆☆
25 107km Quievy 3700m ☆☆☆☆
24 115.5km Saint-Python 1500m ☆☆
23 119.5km Vertain à Saint-Martin-sur-Écaillon 2300m ☆☆☆
22 126.5km Capelle-sur-Écaillon à Ruesnes 1700m ☆☆☆
21 142.5km Aulnoy-lez-Valenciennes(オルノワ・レ・ヴァロンシエンヌ)2600m ☆☆☆☆☆
20 146km Famars à Quérénaing 1200m ☆☆
19 149km Querenaing - Maing 2500m ☆☆☆
18 152km Monchaux-sur-Ecaillon 1600m ☆☆☆
17 164km Haveluy 2500m ☆☆☆☆
16 172km Trouée d’Arenberg(アランベール) 2400m ☆☆☆☆☆
15 178.5km Millonfosse à Bousignies 1400m ☆☆☆
14a 183.5km Brillon à Tilloy-lez-Marchiennes 1100m ☆☆
14b 186km Tilloy - Sars-et-Rosières 2400m ☆☆☆
13 192.5km Beuvry-la-Forêt à Orchies 1400m ☆☆☆
12 197.5km Orchies 1700m ☆☆☆
11 203.5km Auchy-lez-Orchies - Bersée 2600m ☆☆☆
10 209km Mons-en-Pévèle(モンサン・ぺヴェル)3000m ☆☆☆☆☆
9 215km Mérignies à Avelin 700m ☆☆☆
8 218.5km Pont-Thibaut 1400m ☆☆☆
7a 224km Templeuve l’Epinette 200m ☆
7b 224.5km Le Moulin de Vertain 500m ☆☆
6a 231km Cysoing - Bourghelles 1300m ☆☆☆☆
6b 233.5km Bourghelles - Wannehain 1100m ☆☆☆☆
5  238km Camphin-en-Pévèle 1800m ☆☆☆☆
4  241km Le Carrefour de l’Arbre(カルフール・ド・ラルブル)2100m ☆☆☆☆☆
3  243km Gruson 1100m ☆☆
2  250km Hem 1400m ☆
1  258km Roubaix 300m ☆

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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