2011/04/05(火) - 11:55
2011年4月4日、スペイン・バスク地方で第51回ブエルタ・アル・パイスバスコ(UCIワールドツアー)が開幕。シュレク兄弟やバッソ、ヴィノクロフといったビッグネームが集まる中、ゴール前の激坂で飛び出した4名によるスプリントでホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が勝利。幸先の良いスタートを切った。
ベルギーやフランスで「北のクラシック」が盛り上がりを見せる中、スペインではブエルタ・アル・パイスバスコ(バスク一周レース)が開幕した。1924年に第1回大会が開催され、1936年に中断。1969年に再開され、今年で開催51回目を迎える。
17あるスペインの自治州の中でも、伝統的に多くのロードレーサー、特にクライマーを輩出するバスク州。今年のパイスバスコも、山がちな地形を利用した山岳コースが多く設定された。
出場選手はアンディとフランクのシュレク兄弟(レオパード・トレック)、バッソ(リクイガス・キャノンデール)、サンチェス(エウスカルテル)、クレーデン(レディオシャック)、ヴィノクロフ(アスタナ)、ヘーシンク(ラボバンク)、クネゴ(ランプレ・ISD)、ディルーカ(カチューシャ)など、グランツール並みの豪華さ。昨年総合優勝を飾った39歳のホーナー(レディオシャック)も出場。
第1ステージはバスク州中部のスマラガを発着する151.2kmの山岳コース。カテゴリー2級と3級の山岳が合計6つ設定されている。どの山岳も距離は短いが、勾配はキツメ。特にラスト3km地点に鎮座する2級山岳ラ・アンティグアは登坂距離2.5kmで平均勾配は9.6%。頂上手前の勾配は20%を超える。
この起伏に富んだコースで逃げを試みたのはイワン・ロフニー(ロシア、レディオシャック)、マチュー・ペルジェ(フランス、アージェードゥーゼル)、ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)。
このエスケープトリオのリードはレース中盤にかけて最大6分まで広がる。一方のメイン集団は、地元バスクチームであるエウスカルテルと、シュレク兄弟擁するレオパード・トレックがコントロール。終盤にかけて連続する山岳でタイム差を詰めていく。
ゴールまで20kmを残してタイム差は1分30秒。イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)の献身的な牽きにより、ゴール12km手前の3級山岳ガビリアで逃げは吸収される。集団牽引はマキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)がバトンタッチし、レオパード・トレックが主導権を握ったまま最後の2級山岳ラ・アンティグアに突入した。
しかしモンフォールに発射されたアンディは伸びず、登り勾配が増すとディフェンディングチャンピオンのホーナーがアタック。あまりの勾配にバイクを降りて押す選手が出るほどの登りで、ホーナーがダンシングで頂上を目指す。
急勾配の登りを得意とするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がホーナーを追尾し、頂上手前で先頭に。ロドリゲス、ホーナーの順で激坂を終え、バスクの声援を受けたサンチェスが遅れずに頂上をクリア。スマラガに至るテクニカルな下りで、後方からクレーデンが合流した。
後続を引き離したラスト1kmを切った先頭4名。人数の面で優位に立ったレディオシャックだったが、連携ミスでリードを奪えない。最終ストレートでロドリゲスがスプリントを仕掛けると、サンチェスだけが反応した。
先行したロドリゲスが勝利を確信して手を挙げるその横で、サンチェスがハンドルを投げ込んでゴール。写真判定の結果、軍配はロドリゲスに。レディオシャックのクレーデンが3位、ホーナーが4位でフィニッシュした。
ロドリゲスはこれが今シーズン初勝利。このパイスバスコでは昨年も激坂ステージで優勝。総合3位に入っている。
「ゴールラインを切ったとき、喜びが溢れ出して泣きそうだった。今シーズンの序盤は体調が優れずに低迷していたんだ。トップ選手たちの闘いに加われず、とてもナーバスになっていた。これでようやく不調を乗り越えることができる」。
この日の2級山岳ラ・アンティグアで見せた軽快なダンシングは「アルデンヌ・クラシック」やジロ・デ・イタリアでの活躍を約束するものだ。昨年、ロドリゲスは最大勾配が26%に達する「ユイの壁」にゴールするフレーシュ・ワロンヌで2位に入っている。今年はカチューシャのエースとしてジロ・デ・イタリアに挑む予定だ。
クネゴやヘーシンクはタイム差を6秒に抑え込んだが、シュレク兄弟、ファンデンブロック、ヴィノクロフ、LLサンチェス、バッソは18秒のタイムロスを被った。パリ〜ニースで総合優勝を飾ったトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)は9分55秒遅れで初日を終えている。
翌日の第2ステージはより難易度が高い163kmの山岳コースで行なわれる。カテゴリー1級から3級までの山岳が合計7つ設定され、ゴール3km手前には1級山岳アスピロス峠(登坂距離3.2km・平均勾配8.5%)が登場。再び有力選手たちによる山岳バトルが繰り広げられる。
レース展開と選手コメントはレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。
ブエルタ・アル・パイスバスコ2011第1ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h02'42"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ) +06"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
9位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)
10位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h02'42"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ) +06"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
9位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)
10位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
ポイント賞
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
スプリント賞
ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
山岳賞
マチュー・ペルジェ(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, vueltapaisvasco.diariovasco.com
ベルギーやフランスで「北のクラシック」が盛り上がりを見せる中、スペインではブエルタ・アル・パイスバスコ(バスク一周レース)が開幕した。1924年に第1回大会が開催され、1936年に中断。1969年に再開され、今年で開催51回目を迎える。
17あるスペインの自治州の中でも、伝統的に多くのロードレーサー、特にクライマーを輩出するバスク州。今年のパイスバスコも、山がちな地形を利用した山岳コースが多く設定された。
出場選手はアンディとフランクのシュレク兄弟(レオパード・トレック)、バッソ(リクイガス・キャノンデール)、サンチェス(エウスカルテル)、クレーデン(レディオシャック)、ヴィノクロフ(アスタナ)、ヘーシンク(ラボバンク)、クネゴ(ランプレ・ISD)、ディルーカ(カチューシャ)など、グランツール並みの豪華さ。昨年総合優勝を飾った39歳のホーナー(レディオシャック)も出場。
第1ステージはバスク州中部のスマラガを発着する151.2kmの山岳コース。カテゴリー2級と3級の山岳が合計6つ設定されている。どの山岳も距離は短いが、勾配はキツメ。特にラスト3km地点に鎮座する2級山岳ラ・アンティグアは登坂距離2.5kmで平均勾配は9.6%。頂上手前の勾配は20%を超える。
この起伏に富んだコースで逃げを試みたのはイワン・ロフニー(ロシア、レディオシャック)、マチュー・ペルジェ(フランス、アージェードゥーゼル)、ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)。
このエスケープトリオのリードはレース中盤にかけて最大6分まで広がる。一方のメイン集団は、地元バスクチームであるエウスカルテルと、シュレク兄弟擁するレオパード・トレックがコントロール。終盤にかけて連続する山岳でタイム差を詰めていく。
ゴールまで20kmを残してタイム差は1分30秒。イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)の献身的な牽きにより、ゴール12km手前の3級山岳ガビリアで逃げは吸収される。集団牽引はマキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)がバトンタッチし、レオパード・トレックが主導権を握ったまま最後の2級山岳ラ・アンティグアに突入した。
しかしモンフォールに発射されたアンディは伸びず、登り勾配が増すとディフェンディングチャンピオンのホーナーがアタック。あまりの勾配にバイクを降りて押す選手が出るほどの登りで、ホーナーがダンシングで頂上を目指す。
急勾配の登りを得意とするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がホーナーを追尾し、頂上手前で先頭に。ロドリゲス、ホーナーの順で激坂を終え、バスクの声援を受けたサンチェスが遅れずに頂上をクリア。スマラガに至るテクニカルな下りで、後方からクレーデンが合流した。
後続を引き離したラスト1kmを切った先頭4名。人数の面で優位に立ったレディオシャックだったが、連携ミスでリードを奪えない。最終ストレートでロドリゲスがスプリントを仕掛けると、サンチェスだけが反応した。
先行したロドリゲスが勝利を確信して手を挙げるその横で、サンチェスがハンドルを投げ込んでゴール。写真判定の結果、軍配はロドリゲスに。レディオシャックのクレーデンが3位、ホーナーが4位でフィニッシュした。
ロドリゲスはこれが今シーズン初勝利。このパイスバスコでは昨年も激坂ステージで優勝。総合3位に入っている。
「ゴールラインを切ったとき、喜びが溢れ出して泣きそうだった。今シーズンの序盤は体調が優れずに低迷していたんだ。トップ選手たちの闘いに加われず、とてもナーバスになっていた。これでようやく不調を乗り越えることができる」。
この日の2級山岳ラ・アンティグアで見せた軽快なダンシングは「アルデンヌ・クラシック」やジロ・デ・イタリアでの活躍を約束するものだ。昨年、ロドリゲスは最大勾配が26%に達する「ユイの壁」にゴールするフレーシュ・ワロンヌで2位に入っている。今年はカチューシャのエースとしてジロ・デ・イタリアに挑む予定だ。
クネゴやヘーシンクはタイム差を6秒に抑え込んだが、シュレク兄弟、ファンデンブロック、ヴィノクロフ、LLサンチェス、バッソは18秒のタイムロスを被った。パリ〜ニースで総合優勝を飾ったトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)は9分55秒遅れで初日を終えている。
翌日の第2ステージはより難易度が高い163kmの山岳コースで行なわれる。カテゴリー1級から3級までの山岳が合計7つ設定され、ゴール3km手前には1級山岳アスピロス峠(登坂距離3.2km・平均勾配8.5%)が登場。再び有力選手たちによる山岳バトルが繰り広げられる。
レース展開と選手コメントはレース公式サイト、ならびにストリーミング映像より。
ブエルタ・アル・パイスバスコ2011第1ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h02'42"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ) +06"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
9位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)
10位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 4h02'42"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
3位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
4位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +01"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ) +06"
6位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
9位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)
10位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
ポイント賞
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
スプリント賞
ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
山岳賞
マチュー・ペルジェ(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
モビスター
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, vueltapaisvasco.diariovasco.com
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