2011/03/13(日) - 14:32
東日本大震災の犠牲者に黙祷を捧げた選手たちは、大会最長240kmのアップダウンコースに繰り出した。キエーティにゴールするティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)第4ステージ。ゴール前の激坂で飛び出したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)が2年連続キエーティステージ制覇を果たした。
イタリア半島の背骨にあたるアペニン山脈を越え、標高329mの丘上都市キエーティにゴールする今大会最長240kmの第4ステージ。標高のある山岳は登場しないが、ラスト50kmから標高差200mほどのアップダウンを繰り返す。最後は最大勾配19%の激坂を経てキエーティの街中にゴールする。
先にお伝えした通り、レース前には別府史之がスタートラインの先頭に立ち、東北地方を襲った東日本大震災の犠牲者に1分間の黙祷を捧げた。
フミは自身のTwitterに「今日はレース前に選手や主催者が日本に向けて黙祷を捧げた。カンチェラーラ、フレチャ、オグレディ、ボーネン、ボーン他、沢山の選手から声をかけてもらった。本当に大変なのはこれからだ。みんなが早く笑顔になれるように願うばかりです」とレース後に書き込んでいる。フミは序盤のアタック合戦に加わったが、逃げに乗ることはできなかった。
24km地点でエスケープに成功したのは、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)、セバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、ゴラツド・スタンゲリ(スロベニア、アスタナ)の3名。240kmというロングコースのため、タイム差は65km地点で15分25秒まで広がった。
2009年4月の大地震で大きな被害を受けたラクイラの町をメイン集団は通過する。レース中盤に差し掛かると、ステージ優勝を狙うランプレ・ISDとリクイガス・キャノンデール、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリがメイン集団を束ねた。
やがてレース終盤のアップダウン区間でタイム差の縮小は加速する。チームメイトにサポートされたイタリアチャンピオンのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)が登りでアタックするとメイン集団は活性化。先頭で最後まで持ち堪えていたシュレルは、スピードの上がったメイン集団にラスト10kmで吸収されてしまう。
50名ほどに絞られたメイン集団の中から緩斜面でファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がアタックを仕掛けると、これにデミトリ・ムラフエフ(カザフスタン、レディオシャック)とヴィスコンティが合流する。
カンチェラーラが力強い走りで牽く先頭グループ。世界チャンピオンのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)も集団を飛び出す好調ぶりを見せつけたが、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が率いるメイン集団を引き離すことはできない。
ラスト2kmを切り、キエーティに至る急勾配の登りが始まると先頭グループは吸収。平均勾配12.1%・最大勾配19%・登坂距離1kmの登りで、スカルポーニが軽快なダンシングで飛び出した。
シッティングを織り交ぜて激坂を進むスカルポーニ。その後方にフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が迫ったが、ペースを崩さないスカルポーニが再び距離を広げる。ジルベールが失速すると、今度はダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)が迫る。
しかしいずれもクネゴがしっかりとマークし、スカルポーニが先頭を守ったままキエーティ市街地のゴールへ。
緩斜面でカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が追い上げたが届かず、スカルポーニが両手を挙げ、ゴール前でエヴァンスの前に出たクネゴが片手を挙げてフィニッシュ。ランプレ・ISDが見事な連携でワンツー勝利を飾った。
スカルポーニは昨年大会のキエーティゴールでも優勝している。「キエーティとは相性が良いんだ。でも今年のコースは厳しくて、しかもトップ選手が多く出場している。一番勾配がキツい区間で仕掛けたけど、ゴールまでまだ距離があったのでリスキーだった。ダミアーノ(クネゴ)との連携はバッチリだったよ。」昨年ジロ・デ・イタリアで総合4位に入った31歳のオールラウンダーが、新天地ランプレで粘り強さを発揮した。
昨年スカルポーニはリーダージャージを着て最終ステージに挑みながらも、ボーナスタイムを獲得したステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)に同タイムで並ばれ、目の前の総合優勝を奪われた苦い思い出がある。
スカルポーニは「地元のファンが僕のアタックを期待しているのは心得ている。もちろんリーダージャージを獲得したい。でも最も重要なのは、最終日に総合首位に立っていることだ。去年のように、最後の最後で総合首位を奪われるのはゴメンだ。」
そのスカルポーニが追い求めるリーダージャージは、この日ステージ6位のロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が獲得。初日のチームタイムトライアルでラボバンクが稼ぎ出したリードが、ヘーシンクのジャージ獲得に繋がった。
ヘーシンクはエヴァンスから10秒、バッソから12秒、スカルポーニから15秒のリードを得ている。しかし、チームタイムトライアルで得たリードを削ってしまったとも言える。「最後の激坂が始まったとき、自分の脚に自信がもてず、仕掛けどころを待ち過ぎるというミスを犯してしまった。結果的にゴール前で脚が余してしまったんだ。もっと自信をもって挑むべきだった。もう同じ過ちは冒さないよ。」ヘーシンクは自分の走りに納得がいかない様子だ。
翌第5ステージは今大会の最難関山岳ステージ。距離はこの日と同じ240kmで、標高1455mのサッソ・テットを含むカテゴリー山岳が3つ設定されている。獲得標高差が3200mに及ぶこの山岳ステージで、再び山岳バトルが繰り広げられる。
選手コメントはレース公式サイトより。
ティレーノ〜アドリアティコ2011第4ステージ結果
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) 6h10'59"
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +02"
5位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ) +06"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +12"
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
9位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ) +16"
10位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
63位 別府史之(日本、レディオシャック) +6'36"
個人総合成績
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) 16h05'10"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +10"
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +12"
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +15"
5位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +19"
6位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+22"
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +34"
9位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ) +37"
10位 ピーター・ベリトス(スロバキア、HTC・ハイロード)
63位 別府史之(日本、レディオシャック) +7'06"
ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
山岳賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)
新人賞
ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
チーム総合成績
リクイガス・キャノンデール
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
イタリア半島の背骨にあたるアペニン山脈を越え、標高329mの丘上都市キエーティにゴールする今大会最長240kmの第4ステージ。標高のある山岳は登場しないが、ラスト50kmから標高差200mほどのアップダウンを繰り返す。最後は最大勾配19%の激坂を経てキエーティの街中にゴールする。
先にお伝えした通り、レース前には別府史之がスタートラインの先頭に立ち、東北地方を襲った東日本大震災の犠牲者に1分間の黙祷を捧げた。
フミは自身のTwitterに「今日はレース前に選手や主催者が日本に向けて黙祷を捧げた。カンチェラーラ、フレチャ、オグレディ、ボーネン、ボーン他、沢山の選手から声をかけてもらった。本当に大変なのはこれからだ。みんなが早く笑顔になれるように願うばかりです」とレース後に書き込んでいる。フミは序盤のアタック合戦に加わったが、逃げに乗ることはできなかった。
24km地点でエスケープに成功したのは、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)、セバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、ゴラツド・スタンゲリ(スロベニア、アスタナ)の3名。240kmというロングコースのため、タイム差は65km地点で15分25秒まで広がった。
2009年4月の大地震で大きな被害を受けたラクイラの町をメイン集団は通過する。レース中盤に差し掛かると、ステージ優勝を狙うランプレ・ISDとリクイガス・キャノンデール、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリがメイン集団を束ねた。
やがてレース終盤のアップダウン区間でタイム差の縮小は加速する。チームメイトにサポートされたイタリアチャンピオンのジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)が登りでアタックするとメイン集団は活性化。先頭で最後まで持ち堪えていたシュレルは、スピードの上がったメイン集団にラスト10kmで吸収されてしまう。
50名ほどに絞られたメイン集団の中から緩斜面でファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)がアタックを仕掛けると、これにデミトリ・ムラフエフ(カザフスタン、レディオシャック)とヴィスコンティが合流する。
カンチェラーラが力強い走りで牽く先頭グループ。世界チャンピオンのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)も集団を飛び出す好調ぶりを見せつけたが、フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が率いるメイン集団を引き離すことはできない。
ラスト2kmを切り、キエーティに至る急勾配の登りが始まると先頭グループは吸収。平均勾配12.1%・最大勾配19%・登坂距離1kmの登りで、スカルポーニが軽快なダンシングで飛び出した。
シッティングを織り交ぜて激坂を進むスカルポーニ。その後方にフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が迫ったが、ペースを崩さないスカルポーニが再び距離を広げる。ジルベールが失速すると、今度はダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)が迫る。
しかしいずれもクネゴがしっかりとマークし、スカルポーニが先頭を守ったままキエーティ市街地のゴールへ。
緩斜面でカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)とイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が追い上げたが届かず、スカルポーニが両手を挙げ、ゴール前でエヴァンスの前に出たクネゴが片手を挙げてフィニッシュ。ランプレ・ISDが見事な連携でワンツー勝利を飾った。
スカルポーニは昨年大会のキエーティゴールでも優勝している。「キエーティとは相性が良いんだ。でも今年のコースは厳しくて、しかもトップ選手が多く出場している。一番勾配がキツい区間で仕掛けたけど、ゴールまでまだ距離があったのでリスキーだった。ダミアーノ(クネゴ)との連携はバッチリだったよ。」昨年ジロ・デ・イタリアで総合4位に入った31歳のオールラウンダーが、新天地ランプレで粘り強さを発揮した。
昨年スカルポーニはリーダージャージを着て最終ステージに挑みながらも、ボーナスタイムを獲得したステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)に同タイムで並ばれ、目の前の総合優勝を奪われた苦い思い出がある。
スカルポーニは「地元のファンが僕のアタックを期待しているのは心得ている。もちろんリーダージャージを獲得したい。でも最も重要なのは、最終日に総合首位に立っていることだ。去年のように、最後の最後で総合首位を奪われるのはゴメンだ。」
そのスカルポーニが追い求めるリーダージャージは、この日ステージ6位のロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が獲得。初日のチームタイムトライアルでラボバンクが稼ぎ出したリードが、ヘーシンクのジャージ獲得に繋がった。
ヘーシンクはエヴァンスから10秒、バッソから12秒、スカルポーニから15秒のリードを得ている。しかし、チームタイムトライアルで得たリードを削ってしまったとも言える。「最後の激坂が始まったとき、自分の脚に自信がもてず、仕掛けどころを待ち過ぎるというミスを犯してしまった。結果的にゴール前で脚が余してしまったんだ。もっと自信をもって挑むべきだった。もう同じ過ちは冒さないよ。」ヘーシンクは自分の走りに納得がいかない様子だ。
翌第5ステージは今大会の最難関山岳ステージ。距離はこの日と同じ240kmで、標高1455mのサッソ・テットを含むカテゴリー山岳が3つ設定されている。獲得標高差が3200mに及ぶこの山岳ステージで、再び山岳バトルが繰り広げられる。
選手コメントはレース公式サイトより。
ティレーノ〜アドリアティコ2011第4ステージ結果
1位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) 6h10'59"
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +02"
5位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ) +06"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +12"
7位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)
8位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
9位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ) +16"
10位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
63位 別府史之(日本、レディオシャック) +6'36"
個人総合成績
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) 16h05'10"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +10"
3位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +12"
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +15"
5位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +19"
6位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+22"
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +34"
9位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ) +37"
10位 ピーター・ベリトス(スロバキア、HTC・ハイロード)
63位 別府史之(日本、レディオシャック) +7'06"
ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
山岳賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)
新人賞
ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
チーム総合成績
リクイガス・キャノンデール
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
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