2011/03/11(金) - 09:38
2011年3月10日、パリ〜ニース(UCIワールドツアー)第5ステージが2つの1級山岳を含む本格的な山岳コースで行なわれ、終盤の1級山岳ミュール峠で形成された精鋭グループ内でのスプリントでアンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)が勝利。ボーナスタイムによりクレーデンは首位に立った。
前日に引き続き、フランスの中央山塊を駆け抜ける第5ステージ。サンシンフォリアン・シュル・コワーズからヴァルノー・アン・ヴィヴァレまでの194kmには、カテゴリー1級から3級までのカテゴリー山岳が合計7つ設定されている。
特にラスト9km地点に1級山岳ミュール峠は勝負の分かれ道。平均勾配8.3%・登坂距離7.6kmというこのパリ〜ニース初登場のこの登り通過後、少し下ってから高低差100mを駆け上がってゴールを迎える。総合成績にシャッフルをかける難関山岳ステージだ。
前日までとは異なり、この日はアタックの応酬で幕が開く。38km地点のスプリントポイント通過時も集団は一つのまま。2003年にアンドレイ・キビレフ(カザフスタン)が落車事故で亡くなったサンシャモンに位置するこののスプリントポイントで、同郷のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が3番手通過した。
54km地点に立ちはだかる1級山岳クロワ・ド・シャブレー峠の登りでようやくアタックが決まる。連日果敢な走りを見せるヴァカンソレイユ・DCMからリエーベ・ヴェストラ(オランダ)飛び出すと、そのまま1級山岳を単独登頂した。
遅れて飛び出したユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)やクリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)ら5名が下りでヴェストラに追いつき、先頭は6名に。総合で37秒遅れの選手が3名入ったこの逃げとのタイム差を、メイン集団は2分15秒以内に抑え込んだ。
レースが動き始めたのは、ゴールまで58kmを残した2級山岳モントレイノー峠の登り。平均勾配4.8%・登坂距離7.4kmの登りで先頭はヴェストラ、デュポン、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)の3名に絞られた。
1分後方のメイン集団からはイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)やピエリック・フェドリゴ(フランス、FDJ)が飛び出して追走グループを形成したが、メイン集団を引き離せずに吸収。最後まで抵抗したヴェストラも、最後から2つ目の3級山岳コンブロン峠通過後、ゴールまで33kmを残してFDJが牽引するメイン集団に吸収された。
最後の勝負どころである1級山岳ミュール峠に向かう下りで、ピエリック・フェドリゴ(フランス)擁するFDJが奇襲攻撃に出た。
テクニカルなダウンヒル区間でペースを上げたFDJは、メンバー4名を含む7名の先頭グループを作り上げることに成功する。この中にはトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)も入った。
最大35秒のリードを得て逃げるFDJトレイン。しかし総合狙いのチームが束になってペースを上げるメイン集団には対抗できず、1級山岳ミュール峠突入とともに吸収される。ここから総合を懸けた闘いがスタート。リーダージャージのトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)はすぐさま千切れた。
ヴィノクロフとレミ・ディグレゴリオ(フランス)のアスタナ勢がペースを上げると、そこからロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)がアタック。これにマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)が反応し、2人で15秒のリードを築いて登坂。メイン集団はHTC・ハイロードがコントロールした。
やがて1級山岳ミュール峠の頂上が近づくとメイン集団は崩壊。集団から飛び出したレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)、トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)、そしてクレーデンが先頭2名をキャッチする。
こうして形成された8名の精鋭グループが、メイン集団を20秒引き離してゴールに向かった。
総合ジャンプアップを狙うマルティンが前を牽き、ラスト1kmを切るとスプリント狙いのサンチェスが前方へ。しかしスプリントの主導権を握ったのは、唯一チームメンバー2名を先頭グループに送り込んだレディオシャック。ブライコヴィッチに解き放たれたクレーデンがサンチェスを僅差で抑え込み、ステージ優勝を飾った。
クレーデンの勝利は2009年ジロ・デル・トレンティーノの第1ステージ・個人TT以来2年ぶり。2004年と2006年のツール・ド・フランスで総合2位に入っているクレーデンは、11年前のパリ~ニース2000年大会で総合優勝を飾っている。つまりこれが実に11年ぶりのマイヨジョーヌ獲得だ。クレーデンは春先のステージレースと相性が良く、ティレーノアドリアティコでは2007年大会で総合優勝、2009年大会で総合3位に入っている。
「この勝利はヤネス・ブライコヴィッチのおかげだ。」レース後のインタビューでクレーデンはチームメイトの走りに感謝する。「彼のリードアウトは素晴らしかった。まさかサムエル・サンチェスをスプリントで負かすとは思ってなかったよ。これはチームが高いパフォーマンスを発揮して得た勝利だ。」
メイン集団はルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)を先頭に19秒遅れでゴール。逃げ切った8名が総合上位に名を連ねる結果となった。タイム差19秒とボーナスタイム10秒を獲得したクレーデンが総合首位に浮上。4秒差でサンチェス、6秒差でカラーラが続く展開だ。
翌日の第6ステージは27kmの個人タイムトライアル。クレーデンにとって個人TTを得意分野だが、TTスペシャリストと呼ぶべきマルティンが10秒遅れの総合4位につける。「当然明日からはリーダージャージを守るために走るよ。毎日様子を見て走りたい。後半の4ステージはどれもハードでナーバス。明日は厳しい個人タイムトライアルだ。このまま調子を維持して良い走りをしたい。」2人のドイツ人による闘いに注目だ。
選手コメントはチーム公式サイトより。
パリ〜ニース2011第5ステージ結果
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) 4h59'00"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
3位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
4位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)
5位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
8位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +18"
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) +19"
個人総合成績
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) 24h26'13"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +04"
3位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) +06"
4位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) +10"
5位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
6位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
7位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
8位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +28"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +29"
ポイント賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
山岳賞
レミ・ポリオル(フランス、FDJ)
新人賞
ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
前日に引き続き、フランスの中央山塊を駆け抜ける第5ステージ。サンシンフォリアン・シュル・コワーズからヴァルノー・アン・ヴィヴァレまでの194kmには、カテゴリー1級から3級までのカテゴリー山岳が合計7つ設定されている。
特にラスト9km地点に1級山岳ミュール峠は勝負の分かれ道。平均勾配8.3%・登坂距離7.6kmというこのパリ〜ニース初登場のこの登り通過後、少し下ってから高低差100mを駆け上がってゴールを迎える。総合成績にシャッフルをかける難関山岳ステージだ。
前日までとは異なり、この日はアタックの応酬で幕が開く。38km地点のスプリントポイント通過時も集団は一つのまま。2003年にアンドレイ・キビレフ(カザフスタン)が落車事故で亡くなったサンシャモンに位置するこののスプリントポイントで、同郷のアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が3番手通過した。
54km地点に立ちはだかる1級山岳クロワ・ド・シャブレー峠の登りでようやくアタックが決まる。連日果敢な走りを見せるヴァカンソレイユ・DCMからリエーベ・ヴェストラ(オランダ)飛び出すと、そのまま1級山岳を単独登頂した。
遅れて飛び出したユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)やクリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)ら5名が下りでヴェストラに追いつき、先頭は6名に。総合で37秒遅れの選手が3名入ったこの逃げとのタイム差を、メイン集団は2分15秒以内に抑え込んだ。
レースが動き始めたのは、ゴールまで58kmを残した2級山岳モントレイノー峠の登り。平均勾配4.8%・登坂距離7.4kmの登りで先頭はヴェストラ、デュポン、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)の3名に絞られた。
1分後方のメイン集団からはイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)やピエリック・フェドリゴ(フランス、FDJ)が飛び出して追走グループを形成したが、メイン集団を引き離せずに吸収。最後まで抵抗したヴェストラも、最後から2つ目の3級山岳コンブロン峠通過後、ゴールまで33kmを残してFDJが牽引するメイン集団に吸収された。
最後の勝負どころである1級山岳ミュール峠に向かう下りで、ピエリック・フェドリゴ(フランス)擁するFDJが奇襲攻撃に出た。
テクニカルなダウンヒル区間でペースを上げたFDJは、メンバー4名を含む7名の先頭グループを作り上げることに成功する。この中にはトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)も入った。
最大35秒のリードを得て逃げるFDJトレイン。しかし総合狙いのチームが束になってペースを上げるメイン集団には対抗できず、1級山岳ミュール峠突入とともに吸収される。ここから総合を懸けた闘いがスタート。リーダージャージのトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)はすぐさま千切れた。
ヴィノクロフとレミ・ディグレゴリオ(フランス)のアスタナ勢がペースを上げると、そこからロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)がアタック。これにマッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)が反応し、2人で15秒のリードを築いて登坂。メイン集団はHTC・ハイロードがコントロールした。
やがて1級山岳ミュール峠の頂上が近づくとメイン集団は崩壊。集団から飛び出したレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)、トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)、そしてクレーデンが先頭2名をキャッチする。
こうして形成された8名の精鋭グループが、メイン集団を20秒引き離してゴールに向かった。
総合ジャンプアップを狙うマルティンが前を牽き、ラスト1kmを切るとスプリント狙いのサンチェスが前方へ。しかしスプリントの主導権を握ったのは、唯一チームメンバー2名を先頭グループに送り込んだレディオシャック。ブライコヴィッチに解き放たれたクレーデンがサンチェスを僅差で抑え込み、ステージ優勝を飾った。
クレーデンの勝利は2009年ジロ・デル・トレンティーノの第1ステージ・個人TT以来2年ぶり。2004年と2006年のツール・ド・フランスで総合2位に入っているクレーデンは、11年前のパリ~ニース2000年大会で総合優勝を飾っている。つまりこれが実に11年ぶりのマイヨジョーヌ獲得だ。クレーデンは春先のステージレースと相性が良く、ティレーノアドリアティコでは2007年大会で総合優勝、2009年大会で総合3位に入っている。
「この勝利はヤネス・ブライコヴィッチのおかげだ。」レース後のインタビューでクレーデンはチームメイトの走りに感謝する。「彼のリードアウトは素晴らしかった。まさかサムエル・サンチェスをスプリントで負かすとは思ってなかったよ。これはチームが高いパフォーマンスを発揮して得た勝利だ。」
メイン集団はルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)を先頭に19秒遅れでゴール。逃げ切った8名が総合上位に名を連ねる結果となった。タイム差19秒とボーナスタイム10秒を獲得したクレーデンが総合首位に浮上。4秒差でサンチェス、6秒差でカラーラが続く展開だ。
翌日の第6ステージは27kmの個人タイムトライアル。クレーデンにとって個人TTを得意分野だが、TTスペシャリストと呼ぶべきマルティンが10秒遅れの総合4位につける。「当然明日からはリーダージャージを守るために走るよ。毎日様子を見て走りたい。後半の4ステージはどれもハードでナーバス。明日は厳しい個人タイムトライアルだ。このまま調子を維持して良い走りをしたい。」2人のドイツ人による闘いに注目だ。
選手コメントはチーム公式サイトより。
パリ〜ニース2011第5ステージ結果
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) 4h59'00"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
3位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
4位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)
5位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
8位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +18"
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) +19"
個人総合成績
1位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック) 24h26'13"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +04"
3位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) +06"
4位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) +10"
5位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
6位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)
7位 シャビエル・トンド(スペイン、モビスター)
8位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク) +28"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +29"
ポイント賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
山岳賞
レミ・ポリオル(フランス、FDJ)
新人賞
ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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