2011/03/11(金) - 06:15
2011年3月10日、ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)第2ステージが平坦基調の202kmで行なわれ、世界チャンピオンに発射されたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)が大集団によるゴールスプリントを制覇。同時にボーナスタイムで総合首位に立った。
ティレーノ〜アドリアティコ2日目の第2ステージは、ティレニア海を見下ろすカラーラをスタートし、斜塔で有名なピサの街をかすめてトスカーナ州を東進。花の都フィレンツェ南部に設置された標高500mクラスのGPM(グランプレミオ・モンターニャ=カテゴリー山岳)を2つ越え、アレッツォ近郊のインディカトーレにゴールする。
今大会の数少ない平坦ステージであり、ミラノ〜サンレモを狙うスプリンターたちにとっては絶好のテストレース。前日のチームTT試走時に落車し、顔面に怪我を負ったアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)を除く159名がスタートを切った。
3km地点でハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)、レオナルド・ジョルダーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)の3名がアタックを成功させると、レースはすぐに落ち着いた。
すると57km地点でメイン集団が遮断機が下りた踏切に行く手を塞がれるというトラブルが発生する。コミッセールはレース終盤の展開に影響しないと判断し、先頭3名を制止せず。思いがけず2分のリードを追加した先頭3名は、70km地点で最大7分30秒のリードを得た。
レース後半に入ると、リーダージャージ擁するラボバンクに代わってカチューシャがメイン集団をコントロール。メイン集団は先頭3名とのタイム差を詰めながら、ゴール54km手前のGPMポッジオ・アッラ・クローチェに突入する。
この登りでトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がメイン集団から相次いで脱落。頂上を40秒遅れで越えたカヴェンディッシュらは続く平坦区間で集団に復帰したが、ミラノ〜サンレモに向けて不安が残る結果となった。
カチューシャのペースアップにより、先頭3名はゴールまで43kmを残して吸収。するとビセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット)がアタック。レイネスは単独で30秒のリードを築くのが精一杯で、ゴールまで19kmの地点で吸収された。
その後もアタックは多発する。地元出身のリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)やマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)がアタックを仕掛けて揺さぶるが、メイン集団を引き離すことは出来ない。
道幅が狭く、曲がりくねったコースを利用したステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)やマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)のアタックも、ラスト3kmを切って吸収された。
HTC・ハイロードやレオパード・トレック、ガーミン・サーヴェロなどのスプリンターチームが主導権を争いながら、ハイスピードでゴールへ。ラスト1kmに差し掛かるとサクソバンク・サンガードが主導権を得たが、ラスト600mでガーミン・サーヴェロが更にその前に出る。ラスト300mでアルカンシェが先頭に立った。
ハイスピードで疾走するフースホフトの後ろから、ラスト150mでファラーが発進。ガーミン・サーヴェロのエーススプリンターは、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)を振り切ってゴールに向かう。一度も先頭を譲らない安定したスプリントでファラーが勝利した。
「今日勝てたのは信じられない。トル・フースホフトは今年からの新しいチームメイトで、まだ慣れない彼とのレースを楽しんだよ。世界チャンピオンにリードアウトされている時、なんて豪華でクレイジーな立場なんだと思った。チームメイト全員に感謝の言葉を贈りたい。」
ファラーはこれまでジロ・デ・イタリア区間2勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝、ヴァッテンフォール・サイクラシックス2勝という成績を残している26歳のアメリカンスプリンター。その躍進の切っ掛けとなったのが、当時絶好調だったカヴェンディッシュを打ち負かした2009年ティレーノ〜アドリアティコ第3ステージでの勝利だ。
「ちょうど今から2年前、このティレーノ〜アドリアティコでキャリア最初のビッグな勝利を飾ったんだ。そんな僕が、今はチーム全体のサポートを受けているなんて信じられない。」
ガーミン・サーヴェロは、初日のチームタイムトライアルでラボバンクに次いで2位。総合7位につけていたファラーは、ボーナスタイム10秒獲得で総合首位に立った。ミラノ〜サンレモに向けて調子を上げるチームを、新総合リーダーは高く評価する。「ガーミン・サーヴェロはミラノ〜サンレモに3人のリーダーを送り込む。フースホフト、ハウッスラー、そして僕だ。その時調子が良い選手がキャプテンとして勝負することになるだろう。」
ミラノ〜サンレモでガーミン・サーヴェロの最大のライバルになると目されるカヴェンディッシュは19位でフィニッシュ。代わりにスプリントに絡んだリードアウト役のマーク・レンショー(オーストラリア)が4位に入った。
この日のスプリントでは中切れが発生したため、90位以下の選手は12秒遅れの扱いに。別府史之(レディオシャック)もこの12秒遅れの集団内、103位でフィニッシュ。レース後、自身のTwitterでフミは「昨日のお粗末なベットのせいで身体を寝違えて、後ろをスムーズに振り返ることが出来ず、今日は一日中身体が痺れてキツかった。しっかり身体をマッサージしてバキバキしてもらって随分身体が良くなった」とコメントしている。他にもダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)がフミと同様に12秒を失っている。
翌第3ステージは再びスプリンター向きの平坦ステージ。ゴールの25km手前に標高差280mのGPMが設定されており、さながらミラノ〜サンレモの予行演習のよう。最後は短い平坦区間を経てペルージャにゴールする。スプリンターにとってこれがステージ優勝の最後のチャンスとなる。
選手コメントはレース公式サイトより。
ティレーノ〜アドリアティコ2011第2ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) 4h56'06"
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
3位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
4位 マーク・レンショー(オーストラリア、HTC・ハイロード)
5位 マルセル・シーベルグ(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
7位 ミルコ・ロレンツェット(イタリア、アスタナ)
8位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
9位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)
103位 別府史之(日本、レディオシャック) +12"
個人総合成績
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) 5h14'13"
2位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク) +01"
3位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)
4位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
7位 ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
8位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
8位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +08"
9位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・サーヴェロ) +10"
10位 ロジャー・ハモンド(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)
61位 別府史之(日本、レディオシャック) +43"
ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
山岳賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)
チーム総合成績
ラボバンク
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
ティレーノ〜アドリアティコ2日目の第2ステージは、ティレニア海を見下ろすカラーラをスタートし、斜塔で有名なピサの街をかすめてトスカーナ州を東進。花の都フィレンツェ南部に設置された標高500mクラスのGPM(グランプレミオ・モンターニャ=カテゴリー山岳)を2つ越え、アレッツォ近郊のインディカトーレにゴールする。
今大会の数少ない平坦ステージであり、ミラノ〜サンレモを狙うスプリンターたちにとっては絶好のテストレース。前日のチームTT試走時に落車し、顔面に怪我を負ったアンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)を除く159名がスタートを切った。
3km地点でハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)、レオナルド・ジョルダーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)の3名がアタックを成功させると、レースはすぐに落ち着いた。
すると57km地点でメイン集団が遮断機が下りた踏切に行く手を塞がれるというトラブルが発生する。コミッセールはレース終盤の展開に影響しないと判断し、先頭3名を制止せず。思いがけず2分のリードを追加した先頭3名は、70km地点で最大7分30秒のリードを得た。
レース後半に入ると、リーダージャージ擁するラボバンクに代わってカチューシャがメイン集団をコントロール。メイン集団は先頭3名とのタイム差を詰めながら、ゴール54km手前のGPMポッジオ・アッラ・クローチェに突入する。
この登りでトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)がメイン集団から相次いで脱落。頂上を40秒遅れで越えたカヴェンディッシュらは続く平坦区間で集団に復帰したが、ミラノ〜サンレモに向けて不安が残る結果となった。
カチューシャのペースアップにより、先頭3名はゴールまで43kmを残して吸収。するとビセンテ・レイネス(スペイン、オメガファーマ・ロット)がアタック。レイネスは単独で30秒のリードを築くのが精一杯で、ゴールまで19kmの地点で吸収された。
その後もアタックは多発する。地元出身のリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)やマークス・ブルグハート(ドイツ、BMCレーシングチーム)、マキシム・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)がアタックを仕掛けて揺さぶるが、メイン集団を引き離すことは出来ない。
道幅が狭く、曲がりくねったコースを利用したステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)やマルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)のアタックも、ラスト3kmを切って吸収された。
HTC・ハイロードやレオパード・トレック、ガーミン・サーヴェロなどのスプリンターチームが主導権を争いながら、ハイスピードでゴールへ。ラスト1kmに差し掛かるとサクソバンク・サンガードが主導権を得たが、ラスト600mでガーミン・サーヴェロが更にその前に出る。ラスト300mでアルカンシェが先頭に立った。
ハイスピードで疾走するフースホフトの後ろから、ラスト150mでファラーが発進。ガーミン・サーヴェロのエーススプリンターは、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)を振り切ってゴールに向かう。一度も先頭を譲らない安定したスプリントでファラーが勝利した。
「今日勝てたのは信じられない。トル・フースホフトは今年からの新しいチームメイトで、まだ慣れない彼とのレースを楽しんだよ。世界チャンピオンにリードアウトされている時、なんて豪華でクレイジーな立場なんだと思った。チームメイト全員に感謝の言葉を贈りたい。」
ファラーはこれまでジロ・デ・イタリア区間2勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ区間2勝、ヴァッテンフォール・サイクラシックス2勝という成績を残している26歳のアメリカンスプリンター。その躍進の切っ掛けとなったのが、当時絶好調だったカヴェンディッシュを打ち負かした2009年ティレーノ〜アドリアティコ第3ステージでの勝利だ。
「ちょうど今から2年前、このティレーノ〜アドリアティコでキャリア最初のビッグな勝利を飾ったんだ。そんな僕が、今はチーム全体のサポートを受けているなんて信じられない。」
ガーミン・サーヴェロは、初日のチームタイムトライアルでラボバンクに次いで2位。総合7位につけていたファラーは、ボーナスタイム10秒獲得で総合首位に立った。ミラノ〜サンレモに向けて調子を上げるチームを、新総合リーダーは高く評価する。「ガーミン・サーヴェロはミラノ〜サンレモに3人のリーダーを送り込む。フースホフト、ハウッスラー、そして僕だ。その時調子が良い選手がキャプテンとして勝負することになるだろう。」
ミラノ〜サンレモでガーミン・サーヴェロの最大のライバルになると目されるカヴェンディッシュは19位でフィニッシュ。代わりにスプリントに絡んだリードアウト役のマーク・レンショー(オーストラリア)が4位に入った。
この日のスプリントでは中切れが発生したため、90位以下の選手は12秒遅れの扱いに。別府史之(レディオシャック)もこの12秒遅れの集団内、103位でフィニッシュ。レース後、自身のTwitterでフミは「昨日のお粗末なベットのせいで身体を寝違えて、後ろをスムーズに振り返ることが出来ず、今日は一日中身体が痺れてキツかった。しっかり身体をマッサージしてバキバキしてもらって随分身体が良くなった」とコメントしている。他にもダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)がフミと同様に12秒を失っている。
翌第3ステージは再びスプリンター向きの平坦ステージ。ゴールの25km手前に標高差280mのGPMが設定されており、さながらミラノ〜サンレモの予行演習のよう。最後は短い平坦区間を経てペルージャにゴールする。スプリンターにとってこれがステージ優勝の最後のチャンスとなる。
選手コメントはレース公式サイトより。
ティレーノ〜アドリアティコ2011第2ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) 4h56'06"
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
3位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
4位 マーク・レンショー(オーストラリア、HTC・ハイロード)
5位 マルセル・シーベルグ(ドイツ、オメガファーマ・ロット)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
7位 ミルコ・ロレンツェット(イタリア、アスタナ)
8位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
9位 ボルト・ボジッチ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 オスカル・ガット(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)
103位 別府史之(日本、レディオシャック) +12"
個人総合成績
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) 5h14'13"
2位 トム・リーザー(オランダ、ラボバンク) +01"
3位 ラース・ボーム(オランダ、ラボバンク)
4位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
7位 ブラム・タンキンク(オランダ、ラボバンク)
8位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
8位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +08"
9位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・サーヴェロ) +10"
10位 ロジャー・ハモンド(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)
61位 別府史之(日本、レディオシャック) +43"
ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
山岳賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、エウスカルテル)
チーム総合成績
ラボバンク
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos
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