2011/03/07(月) - 08:29
2011年3月6日、フランスでパリ〜ニース(UCIワールドツアー)が開幕した。平坦コースで行なわれた初日の第1ステージは、ラスト39km地点で飛び出した3名が逃げ切りを成功させ、メイン集団を振り切ったトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が勝利。24歳のベルジャンがシーズン初勝利とリーダージャージを手にした。
「太陽へのレース」と呼ばれるパリ〜ニースが首都パリの南西に位置するウーダンで開幕した。初日は序盤に3級山岳が一つだけ設定された平坦ステージ。定番プロローグで開幕しないのは1996年以来16年ぶりだ。
快晴・気温8度という気象条件の中、176名の選手たちはゆったりと154.5kmのコースにこぎ出す。最初の1時間の平均スピードが31.5km/hというスローペースでプロトンは進行した。
15km地点で飛び出したのはダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー)とゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)。長身のゴダンはトラック競技に精通したスピードマンで、昨年ジャパンカップに出場した24歳。イサギーレは昨年ツール・ド・ルクセンブルク最終ステージで勝利した23歳だ。
メイン集団がすぐにこの動きを容認したため、タイム差は33km地点で最大8分15秒まで広がる。ゴダンはこの日唯一の3級山岳コート・ド・セプテイユを先頭通過し、山岳賞ジャージを手にした。
やがてHTC・ハイロードが集団コントロールを開始。中盤にかけてチームスカイやガーミン・サーヴェロも集団前方に。最大8分15秒あった逃げとのタイム差はグングン縮まり、抵抗を見せないゴダンとイサギーレはゴールまで41kmを残して吸収される。早めの逃げ吸収はカウンターアタックを誘発させた。
逃げ吸収からしばらくしてメイン集団から飛び出したのは、2009年大会でステージ優勝を飾っているジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)。これにイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)とトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が合流し、新たに3名の逃げが形成される。
最初からフルスロットルで逃げるロワ、フォイクト、デヘントの3名は、ゴールまで30kmを残して55秒のリードを築き上げる。一方のメイン集団はクイックステップやアスタナ、モビスターがコントロール。横風区間で中切れが発生し、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)らが後方に取り残された。
先頭3名は35秒リードしたままラスト10kmに突入。モビスターとクイックステップ、HTC・ハイロードの3チームがメイン集団を牽引するが、思うようにペースが上がらず、タイム差は縮まらない。先頭3名は13秒リードしたままフラムルージュ(ラスト1km)を駆け抜けた。
HTC・ハイロードがハイスピードで大集団を牽引。しかしロワ、フォイクト、デヘントの3名が先頭のまま最終ストレートへ。ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)やペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が後方でスプリントする中、ラスト200mで仕掛けたデヘントが先行し、そのまま先頭でゴールラインを駆け抜けた。
デヘントは2006年にプロデビューした24歳。今年トップスポート・フラーンデレンからヴァカンソレイユ・DCMに移籍した。2009年のツアー・オブ・ブリテンでは何度も逃げを試み、山岳賞と中間スプリント賞を獲得。昨年のヴォルタ・アン・アルガルヴェでも中間スプリント賞を獲得している。
逃げのスペシャリストとして改めてその存在感を見せたのが、今年1月に開催されたツアー・ダウンアンダーだ。平坦な第4ステージで逃げに乗り、最終的に総合優勝するキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)とのスプリントに敗れてステージ2位に。
ダウンアンダーでの悔しさを晴らすかのような、ワールドツアー第2戦パリ〜ニースでの逃げ切り勝利。再び「集団スプリントの可能性が高い平坦ステージ」で逃げ切った。デヘントは「ずっとタイム差が広がらなかったので、最後の数キロで捕まえられると思った。でも3名が協力して全力で走り続けたので、捕まることはなかった」とレースを振り返る。
一緒に逃げたフォイクトは熱い走りが目立つ逃げのスペシャリスト。ロワも2009年大会で逃げ切り勝利を飾っている選手。そんな脚の揃った3名が終盤に飛び出したこと、そしてスプリンターチームの勢いが弱かったことが逃げ切りを生んだ。
「イェンス・フォイクトのような選手がいてくれて良かったよ。彼が逃げに入って力強く前を牽いてくれたおかげで、こんなチャンスが生まれた。極めて小さなチャンスを掴めたことは素晴らしい。今でも信じられないよ」。今年プロチーム入りしたヴァカンソレイユ・DCMに今シーズン4勝目をもたらしたデヘントは、リーダージャージ、ポイント賞ジャージ、新人賞ジャージを同時に手にしている。
選手コメントはレース公式サイトより。
パリ〜ニース2011第1ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 4h05'06"
2位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)
3位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
5位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
6位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)
7位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパード・トレック)
8位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
9位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、クイックステップ)
個人総合成績
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 4h04'53"
2位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ) +06"
3位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +09"
4位 ダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー) +10"
5位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック) +11"
6位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM) +12"
7位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +13"
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
9位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパード・トレック)
10位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
ポイント賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
山岳賞
ダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー)
新人賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
「太陽へのレース」と呼ばれるパリ〜ニースが首都パリの南西に位置するウーダンで開幕した。初日は序盤に3級山岳が一つだけ設定された平坦ステージ。定番プロローグで開幕しないのは1996年以来16年ぶりだ。
快晴・気温8度という気象条件の中、176名の選手たちはゆったりと154.5kmのコースにこぎ出す。最初の1時間の平均スピードが31.5km/hというスローペースでプロトンは進行した。
15km地点で飛び出したのはダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー)とゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)。長身のゴダンはトラック競技に精通したスピードマンで、昨年ジャパンカップに出場した24歳。イサギーレは昨年ツール・ド・ルクセンブルク最終ステージで勝利した23歳だ。
メイン集団がすぐにこの動きを容認したため、タイム差は33km地点で最大8分15秒まで広がる。ゴダンはこの日唯一の3級山岳コート・ド・セプテイユを先頭通過し、山岳賞ジャージを手にした。
やがてHTC・ハイロードが集団コントロールを開始。中盤にかけてチームスカイやガーミン・サーヴェロも集団前方に。最大8分15秒あった逃げとのタイム差はグングン縮まり、抵抗を見せないゴダンとイサギーレはゴールまで41kmを残して吸収される。早めの逃げ吸収はカウンターアタックを誘発させた。
逃げ吸収からしばらくしてメイン集団から飛び出したのは、2009年大会でステージ優勝を飾っているジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)。これにイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)とトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が合流し、新たに3名の逃げが形成される。
最初からフルスロットルで逃げるロワ、フォイクト、デヘントの3名は、ゴールまで30kmを残して55秒のリードを築き上げる。一方のメイン集団はクイックステップやアスタナ、モビスターがコントロール。横風区間で中切れが発生し、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)らが後方に取り残された。
先頭3名は35秒リードしたままラスト10kmに突入。モビスターとクイックステップ、HTC・ハイロードの3チームがメイン集団を牽引するが、思うようにペースが上がらず、タイム差は縮まらない。先頭3名は13秒リードしたままフラムルージュ(ラスト1km)を駆け抜けた。
HTC・ハイロードがハイスピードで大集団を牽引。しかしロワ、フォイクト、デヘントの3名が先頭のまま最終ストレートへ。ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)やペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)が後方でスプリントする中、ラスト200mで仕掛けたデヘントが先行し、そのまま先頭でゴールラインを駆け抜けた。
デヘントは2006年にプロデビューした24歳。今年トップスポート・フラーンデレンからヴァカンソレイユ・DCMに移籍した。2009年のツアー・オブ・ブリテンでは何度も逃げを試み、山岳賞と中間スプリント賞を獲得。昨年のヴォルタ・アン・アルガルヴェでも中間スプリント賞を獲得している。
逃げのスペシャリストとして改めてその存在感を見せたのが、今年1月に開催されたツアー・ダウンアンダーだ。平坦な第4ステージで逃げに乗り、最終的に総合優勝するキャメロン・マイヤー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)とのスプリントに敗れてステージ2位に。
ダウンアンダーでの悔しさを晴らすかのような、ワールドツアー第2戦パリ〜ニースでの逃げ切り勝利。再び「集団スプリントの可能性が高い平坦ステージ」で逃げ切った。デヘントは「ずっとタイム差が広がらなかったので、最後の数キロで捕まえられると思った。でも3名が協力して全力で走り続けたので、捕まることはなかった」とレースを振り返る。
一緒に逃げたフォイクトは熱い走りが目立つ逃げのスペシャリスト。ロワも2009年大会で逃げ切り勝利を飾っている選手。そんな脚の揃った3名が終盤に飛び出したこと、そしてスプリンターチームの勢いが弱かったことが逃げ切りを生んだ。
「イェンス・フォイクトのような選手がいてくれて良かったよ。彼が逃げに入って力強く前を牽いてくれたおかげで、こんなチャンスが生まれた。極めて小さなチャンスを掴めたことは素晴らしい。今でも信じられないよ」。今年プロチーム入りしたヴァカンソレイユ・DCMに今シーズン4勝目をもたらしたデヘントは、リーダージャージ、ポイント賞ジャージ、新人賞ジャージを同時に手にしている。
選手コメントはレース公式サイトより。
パリ〜ニース2011第1ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 4h05'06"
2位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)
3位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
5位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
6位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)
7位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパード・トレック)
8位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
9位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、クイックステップ)
個人総合成績
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 4h04'53"
2位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ) +06"
3位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) +09"
4位 ダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー) +10"
5位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック) +11"
6位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM) +12"
7位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +13"
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、チームスカイ)
9位 ワウテル・ウェイラント(ベルギー、レオパード・トレック)
10位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)
ポイント賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
山岳賞
ダミアン・ゴダン(フランス、ユーロップカー)
新人賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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