「糖尿病への理解を深める」という使命を胸に立ち上がったアメリカのチーム・タイプ1は、大型補強を施し、プロコンチネンタル登録を果たした。メッセージ性の強いこのアメリカンチームは、ジロ・デ・イタリア出場と2012年度のプロチーム入りを目指している。

アメリカのプロコンチネンタルチーム、チーム・タイプ1アメリカのプロコンチネンタルチーム、チーム・タイプ1 photo:www.teamtype1.org今年チーム・タイプ1は、ヨーロッパレースでの経験が豊かなルーベンス・ベルトリアーティ(スイス)やラスロ・ボドロギ(フランス)、アレクサンドル・エフィムキン(ロシア)、ユーレ・コチャン(スロベニア)らを相次いで獲得。8カ国の選手が集まる多国籍なプロコンチネンタルチームへと変貌を遂げた。

「我々のゴールはプロチーム(ワールドツアー)ライセンスを獲得すること。そしてツール・ド・フランスに出場することだ。チームスポンサーのサノフィ・アベンティス社は、パリに本部を置く国際的な製薬会社。彼らのサポートが我々を後押ししてくれている。」

チーム・タイプ1にはアレクサンドル・エフィムキン(ロシア)らが加入チーム・タイプ1にはアレクサンドル・エフィムキン(ロシア)らが加入 photo:www.teamtype1.orgチームの創設者フィル・サザーランド氏とジョー・エルドリッジ氏は、3年前にサノフィ・アベンティス社とスポンサー契約を締結した。チーム名は糖尿病のタイプ「1型」に由来する。「1型」とは、ウイルス感染や免疫の異常によるインスリン不足が原因で発症する病気。カロリー過多や運動不足などによって発症する「2型」とは異なる。

現在チーム・タイプ1には、インスリン依存性の1型糖尿病を患っている選手が6名在籍しており、彼らの活躍を通じて、糖尿病の実状を世界に訴えかけている。2型糖尿病の患者を集めたチーム・タイプ2も活動しており、女子チームや育成チーム、ランニング、トライアスロンのサポートも行なっている。

マイケル・カーター監督は「糖尿病を患っていても、レースに出場できるということを証明したい。適切な処置を施せば、糖尿病のコントロールは容易だ。世界中の糖尿病患者にそのメッセージを伝えるために、我々は勝利を目指して活動する」と話す。

「現在我々はジロ・デ・イタリアからの招待を待っている。チーム・タイプ1は、セカンドディビジョン(プロコンチネンタル登録)のイタリアチームと同等の競技レベルを有していて、ジロの候補チームの中に入っているはず。糖尿病患者は世界各国にいる。もちろんイタリアにもいるんだ。」

ジロ・デ・イタリアには18のプロチームが自動的に出場予定。4つのプロコンチネンタルチームがワイルドカード枠で出場可能だ。先立ってファルネーゼヴィーニ・ネーリが出場を決めているため、あと三枠が残されている。

チーム・タイプ1は5月のツアー・オブ・カリフォルニアへの出場が決まっており、ジロ出場に期待を込めつつも、カーター監督は比較的リラックスした表情で状況を見守る。2012年シーズンはファーストディビジョン(プロチーム登録)を目指しており、いずれはグランツール全戦に出場したい考えだ。

ジロ・デ・イタリアのレースディレクターを務めるアンジェロ・ゾメニャン氏は「アメリカのスリップストリーム(現ガーミン・サーヴェロ)をグランツールに出場させたのはジロが初。Tモバイルのスキャンダル後、ボブ・ステイプルトンのチーム(現HTC・ハイロード)を迎え入れたのもジロが初めてだった。新しいアメリカンチームを迎え入れる下地はある」と語っている。ジロの招待チームは3月下旬に発表される見通しだ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji