2011/02/04(金) - 21:15
マヨルカ島でトレーニングキャンプ中のレオパード・トレックの主要メンバーにインタビュー。第2弾はファビアン・カンチェラーラだ。パリ~ルーベとロンド・ファン・フラーンデレンのパヴェ・ダブルを達成し、世界選手権ではタイムトライアル王者に。スパルタクスは次は何を目指すのか。
-- ファビアン、今年の目標とするレースは?
クラシックと世界選手権だね。基本的には例年と変わらない。ただしその時々のコンディションを見ながら、常に目標は変化させていくけれど。
クラシックも、まだどこに焦点を定めるべきかの最終的な結論は出していないんだ。ただし世界選は変わらず目標にすべきレースだろう。
-- 2009年はオリンピックの個人タイムトライアルに優勝して、世界選手権に行かないと自分で決定しましたね?
世界選手権の場合は、チームからの指示ではないからね。勝てるかどうか判断出来るのは自分だけだし、勝てるチャンスがあるなら参加する。もしそうでないなら行く意味がないし、家でリラックスしていた方がましだよ。
-- これから始まるシーズンは長いですが、今をどう過ごし、どのようにモチベーションをキープしますか?
「いい休み」を取ることだね。2週間ガレージから自転車を出さないこともあるよ。他のことをやったり、自転車から完全に離れるんだ。
冬は必要に応じて2カ月も休むことだってある。クラシックの後も、調子が悪ければ乗らないよ。もっともそれほど大きな休みを取る選手はあまり聞かないけれど。
-- フランドルやルーベなど、春のクラシックのあとは?
しばらくの間をおいてツール・ド・フランスが控えているから、それほど大きくは休まない。でも、短くてもしっかり休むことが大事なんだ。休むことに罪悪感を感じるのは良くないんだ。しっかり休んで、再びヤル気になることが、もっといいトレーニングが出来るきっかけになる。気持ちを維持するのも非常に大切だと感じているよ。
他の選手は4週間ほどのオフをとった後、またトレーニングを開始しているけれど、自分にとって4週間は他の選手の2週間半ぐらいの感覚かな。残り1週間半の休みを取っても自分には全く問題ないよ。自分の場合、家族や友人との時間も大事だし、個人スポンサーの挨拶まわりだってしなくてはいけないんだ。
-- 2011年のカンチェラーラの目標は?
今まで毎年毎年レベルアップしてきた。そして常にそうなることを考えながらトレーニングしている。
今年は特に、新しいチーム、機材、モチベーションでのスタートになる。そして自分の中でゴールは常に持っているけど、それが将来どうなるか語るのは非常に難しいことなんだ。
選手は常に危険と隣り合わせだし、明日クラッシュするかもしれない。病気をするかもしれないね。それにコンディション次第で、計画を変更することだってあるから...。
そういうことがなければ自分自身の調整は得意だから、問題はないと思う。
-- 大事なレースに向けて、具体的にはどう調整していく?
自分にとってはもちろん春のクラシックと世界選手権だよ。その間にツール・ド・フランスも参加するけど、これはむしろチームに貢献する走りをするつもりだ。ツールではアンディとフランクがしっかり結果を残してくれると思うし、彼らの舞台になるよ。
-- 今年の春のクラシックでは、フランドル、パリ~ルーべ、そしてリエージュなどを狙っていきますか?
ノーノー、今年はそんなには走れないよ(笑)。去年もレースをたくさんこなして、かなり忙しかったんだ。それにシーズン後半もチームの移籍で気を休める時間はなかった。チームが決定したと思ったらすぐにプレゼンテーションがあったりと、ここまでかなり忙しくしているんだ。でもこれはプロ選手として当然のことだし、まったくネガティブなことではないけれど。
ただ、いろんな意味で今年はリ・スタートというか、もう少しゆっくりと仕上げていく予定でいるんだ。一年・一年というよりも、もう少し長いスパンで動き方を計画したいんだ。
-- 2011年は再びパリ~ルーベとフランドルの連覇を狙っている?
それはまだ分からないよ。昨年勝てたからと言って勝てる保証なんてどこにも無いしね。それにまだ勝っていないレースでも勝ちたいとも考えている。
勝つためにはそのレースだけにフォーカスしなければいけないし、それでダメならすぐに他の予定も変更しなくてはいけなくなる。そういう意味でしっかり狙えそうなレースに標準を合わせていくよ。
-- トレックのプレゼンテーションによると、あたなはバイクの開発にも大きく貢献しているということでしたが?
そうだね、自分が持っている情報や感想はすべて伝えたよ。すでにトレックの開発者達とルーベ郊外のパヴェでテストを行ったんだ。
トレックでは本社で独自にバイクを開発したり、ランス(アームストロング)含めレディオシャックの選手たちからのフィードバックも開発に生かしているようだけど、自分が情報を提供する大きな理由は、すでにトレックではレベルの高いバイクを作っているけど、さらにライバルに差を付けれられるようなバイクを作ってもらいたいからなんだ。ただそれだけだよ。
-- もし次のマドンに新しい技術を付け加えるとしたら、何が考えられますか?
それはまだ言えないよ(笑)。マドンはすでに軽量だし、しっかりとした剛性も併せ持っている。エンジニアが時間をかけて開発したということが、乗ればすぐに分かるよ。でもコンシューマーは常に新しい、目に見える技術を求めているんだろうね。
-- パヴェのクラシックを走るときにおいて、バイクに求める最も重要な要素は何ですか?
もちろんぺダリングした時の反応の良さは求められる。ジオメトリーであったり、バイクのフィーリング、それにホイール、フォーク、タイヤなども含め、バランスも必要とされる。そういうものが揃ってはじめて、乗り心地の良さにも繋がってくると思う。
そういう意味で独自で開発できるメーカーは強いと思う。メーカーによっては、単純にパリ~ルーベ用にフォークを交換することしか出来ないところもあるんだ。もちろんダウンヒルでのハンドリグ性能も大きく影響する。
-- スペシャライズドのバイクの高い剛性感はパワフルなあなたには合っていたように思いますが、マドンはそれに比べると乗り心地がいいように感じますか?
「剛性」とひと言で言っても、どこの部分を指すかで全く変わってくる。マドンの場合は、BB周りの剛性を上げることでパワー伝達を良くしているし、フロントも硬すぎず、柔らかすぎず、バランスが取れている。これによって乗り心地の良さが稼げているんだ。
やはり6時間走るレースでは、バイクが全体的に硬すぎると、腰から背中に疲労が蓄積して、そこで終わってしまう。あと重要なのはホイールとの組み合わせのバランスだと思う。ボントレガーのホイールは、マドンとの相性もいいし非常に乗り心地がいい。ホイールだってエアロ形状が変わるだけで全然乗り味も変わってくるんだ。同じタイヤのエア圧でもホイールによって乗り味が全然違ってくる。やはり「組み合わせ」が重要になってくるし、トレックの場合、その組み合わせがしっかり出来ていると感じている。
-- シマノの電動メカに関してはどういう意見? シマノのスタッフと話し込んでいたけど。
いろんなフィードバックはするけど、自分の意見や感想が常に正しいとは限らない。あくまで自分がどう感じたのか伝えているだけなんだ。
シマノには変速方法を常に1段づつではなく、2段づつの変速ができたらいいと伝えた。Di2が「チック、チック、チック」と正確にシフトするのは素晴らしいが、ときどき1段づつの変速が面倒だと感じることもあるんだ。シマノはもうすでに考えているかもしれないけれど...。
TTに関して言えば、変速のボタンをエアロバーじゃなくて手の近くに装着することが出来ても面白いかもしれないね。
-- 最後に。パリールーベなどの石畳セクションに入る時は怖くありませんか?
全く。むしろ楽しいよ。待ち遠しく感じるんだ。もちろん集団のなかでいいポジションで侵入できたらの話だけど。
後ろの方にいると、先がどうなっているのか分からないから心配になるね。天気によるけど、雨やウェットの時は必ず集団の前にいないといけないんだ。
カンチェラーラのトレック・マドン6.9SSL
photo&text Makoto.AYANO
Special Thanks to: LEOPARD TREK, TREK USA, TREK Japan
-- ファビアン、今年の目標とするレースは?
クラシックと世界選手権だね。基本的には例年と変わらない。ただしその時々のコンディションを見ながら、常に目標は変化させていくけれど。
クラシックも、まだどこに焦点を定めるべきかの最終的な結論は出していないんだ。ただし世界選は変わらず目標にすべきレースだろう。
-- 2009年はオリンピックの個人タイムトライアルに優勝して、世界選手権に行かないと自分で決定しましたね?
世界選手権の場合は、チームからの指示ではないからね。勝てるかどうか判断出来るのは自分だけだし、勝てるチャンスがあるなら参加する。もしそうでないなら行く意味がないし、家でリラックスしていた方がましだよ。
-- これから始まるシーズンは長いですが、今をどう過ごし、どのようにモチベーションをキープしますか?
「いい休み」を取ることだね。2週間ガレージから自転車を出さないこともあるよ。他のことをやったり、自転車から完全に離れるんだ。
冬は必要に応じて2カ月も休むことだってある。クラシックの後も、調子が悪ければ乗らないよ。もっともそれほど大きな休みを取る選手はあまり聞かないけれど。
-- フランドルやルーベなど、春のクラシックのあとは?
しばらくの間をおいてツール・ド・フランスが控えているから、それほど大きくは休まない。でも、短くてもしっかり休むことが大事なんだ。休むことに罪悪感を感じるのは良くないんだ。しっかり休んで、再びヤル気になることが、もっといいトレーニングが出来るきっかけになる。気持ちを維持するのも非常に大切だと感じているよ。
他の選手は4週間ほどのオフをとった後、またトレーニングを開始しているけれど、自分にとって4週間は他の選手の2週間半ぐらいの感覚かな。残り1週間半の休みを取っても自分には全く問題ないよ。自分の場合、家族や友人との時間も大事だし、個人スポンサーの挨拶まわりだってしなくてはいけないんだ。
-- 2011年のカンチェラーラの目標は?
今まで毎年毎年レベルアップしてきた。そして常にそうなることを考えながらトレーニングしている。
今年は特に、新しいチーム、機材、モチベーションでのスタートになる。そして自分の中でゴールは常に持っているけど、それが将来どうなるか語るのは非常に難しいことなんだ。
選手は常に危険と隣り合わせだし、明日クラッシュするかもしれない。病気をするかもしれないね。それにコンディション次第で、計画を変更することだってあるから...。
そういうことがなければ自分自身の調整は得意だから、問題はないと思う。
-- 大事なレースに向けて、具体的にはどう調整していく?
自分にとってはもちろん春のクラシックと世界選手権だよ。その間にツール・ド・フランスも参加するけど、これはむしろチームに貢献する走りをするつもりだ。ツールではアンディとフランクがしっかり結果を残してくれると思うし、彼らの舞台になるよ。
-- 今年の春のクラシックでは、フランドル、パリ~ルーべ、そしてリエージュなどを狙っていきますか?
ノーノー、今年はそんなには走れないよ(笑)。去年もレースをたくさんこなして、かなり忙しかったんだ。それにシーズン後半もチームの移籍で気を休める時間はなかった。チームが決定したと思ったらすぐにプレゼンテーションがあったりと、ここまでかなり忙しくしているんだ。でもこれはプロ選手として当然のことだし、まったくネガティブなことではないけれど。
ただ、いろんな意味で今年はリ・スタートというか、もう少しゆっくりと仕上げていく予定でいるんだ。一年・一年というよりも、もう少し長いスパンで動き方を計画したいんだ。
-- 2011年は再びパリ~ルーベとフランドルの連覇を狙っている?
それはまだ分からないよ。昨年勝てたからと言って勝てる保証なんてどこにも無いしね。それにまだ勝っていないレースでも勝ちたいとも考えている。
勝つためにはそのレースだけにフォーカスしなければいけないし、それでダメならすぐに他の予定も変更しなくてはいけなくなる。そういう意味でしっかり狙えそうなレースに標準を合わせていくよ。
-- トレックのプレゼンテーションによると、あたなはバイクの開発にも大きく貢献しているということでしたが?
そうだね、自分が持っている情報や感想はすべて伝えたよ。すでにトレックの開発者達とルーベ郊外のパヴェでテストを行ったんだ。
トレックでは本社で独自にバイクを開発したり、ランス(アームストロング)含めレディオシャックの選手たちからのフィードバックも開発に生かしているようだけど、自分が情報を提供する大きな理由は、すでにトレックではレベルの高いバイクを作っているけど、さらにライバルに差を付けれられるようなバイクを作ってもらいたいからなんだ。ただそれだけだよ。
-- もし次のマドンに新しい技術を付け加えるとしたら、何が考えられますか?
それはまだ言えないよ(笑)。マドンはすでに軽量だし、しっかりとした剛性も併せ持っている。エンジニアが時間をかけて開発したということが、乗ればすぐに分かるよ。でもコンシューマーは常に新しい、目に見える技術を求めているんだろうね。
-- パヴェのクラシックを走るときにおいて、バイクに求める最も重要な要素は何ですか?
もちろんぺダリングした時の反応の良さは求められる。ジオメトリーであったり、バイクのフィーリング、それにホイール、フォーク、タイヤなども含め、バランスも必要とされる。そういうものが揃ってはじめて、乗り心地の良さにも繋がってくると思う。
そういう意味で独自で開発できるメーカーは強いと思う。メーカーによっては、単純にパリ~ルーベ用にフォークを交換することしか出来ないところもあるんだ。もちろんダウンヒルでのハンドリグ性能も大きく影響する。
-- スペシャライズドのバイクの高い剛性感はパワフルなあなたには合っていたように思いますが、マドンはそれに比べると乗り心地がいいように感じますか?
「剛性」とひと言で言っても、どこの部分を指すかで全く変わってくる。マドンの場合は、BB周りの剛性を上げることでパワー伝達を良くしているし、フロントも硬すぎず、柔らかすぎず、バランスが取れている。これによって乗り心地の良さが稼げているんだ。
やはり6時間走るレースでは、バイクが全体的に硬すぎると、腰から背中に疲労が蓄積して、そこで終わってしまう。あと重要なのはホイールとの組み合わせのバランスだと思う。ボントレガーのホイールは、マドンとの相性もいいし非常に乗り心地がいい。ホイールだってエアロ形状が変わるだけで全然乗り味も変わってくるんだ。同じタイヤのエア圧でもホイールによって乗り味が全然違ってくる。やはり「組み合わせ」が重要になってくるし、トレックの場合、その組み合わせがしっかり出来ていると感じている。
-- シマノの電動メカに関してはどういう意見? シマノのスタッフと話し込んでいたけど。
いろんなフィードバックはするけど、自分の意見や感想が常に正しいとは限らない。あくまで自分がどう感じたのか伝えているだけなんだ。
シマノには変速方法を常に1段づつではなく、2段づつの変速ができたらいいと伝えた。Di2が「チック、チック、チック」と正確にシフトするのは素晴らしいが、ときどき1段づつの変速が面倒だと感じることもあるんだ。シマノはもうすでに考えているかもしれないけれど...。
TTに関して言えば、変速のボタンをエアロバーじゃなくて手の近くに装着することが出来ても面白いかもしれないね。
-- 最後に。パリールーベなどの石畳セクションに入る時は怖くありませんか?
全く。むしろ楽しいよ。待ち遠しく感じるんだ。もちろん集団のなかでいいポジションで侵入できたらの話だけど。
後ろの方にいると、先がどうなっているのか分からないから心配になるね。天気によるけど、雨やウェットの時は必ず集団の前にいないといけないんだ。
カンチェラーラのトレック・マドン6.9SSL
photo&text Makoto.AYANO
Special Thanks to: LEOPARD TREK, TREK USA, TREK Japan
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