前日のジュニア沢田時の好成績に続きたい、と意気込んで挑んだ日本チーム。2日目は、11時3分からの女子に全日本チャンピオンの豊岡英子(パナソニックレディース)が、14時からのエリートに同じくチャンピオンの辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と全日本選手権3位の丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)が出走した。

豊岡は落車で負傷 3周回目でリタイア

沢田時と一緒にコースを試走する豊岡英子(パナソニックレディース)沢田時と一緒にコースを試走する豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanakaホテルで朝食を済ませ、豊岡英子と、彼女と一緒にコースを試走する沢田時が会場に着いたのは朝8時。昨日同様に空は晴れて澄みきっているが、昨日より冷え込みが厳しく、コースは昨日以上にカチコチに凍りついている。

豊岡は昨日レースを走った沢田と一緒に走り、適宜彼のアドバイスを聞きながら入念な試走をしてスタートラインへと向かった。

スタートに向けて準備する豊岡英子(パナソニックレディース)スタートに向けて準備する豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka1周回、2周回と順調に30番台前後で走っていた豊岡。調子はよさそうに見えた。コースのポイントによっては、少し移動するだけで1周回で数回レースを見ることができる。3周回目も前半と後半で2回、彼女の走りを見ようと、第2ピットの出口付近で彼女が戻ってくるのを待っていた。

しかし、待てども、待てども彼女の姿はなかった。認めたくはなかったけど、何かトラブルがあったことは明確だった。現地スタッフのデビッドやランジットがレースドクターに話を聞くと、落車し肩を痛めて病院に搬送されるとのこと。意識はあるし、骨もおそらく問題はないらしい。女子のトップ選手がゴールする頃、遠くで救急車のサイレンの音がした。

午後からの辻浦や丸山が会場に入りアップをしていると、病院から豊岡が戻ってきた。左肩の靱帯断裂という診断だった。処置は患部の固定だけで済んだ。結果は3周回目でリタイア。10番台を狙いたいと話していたが、思うような結果を残すことはできなかった。

「カーブで転倒してしまった。最初、軽い脳しんとうを起こしたので、あまり前後のことを覚えていないけど、前が見えていて追いつきたくて、オーバースピードだったと思う。それでカーブを曲がり切れなかったのだと思う。やはり今回も焦りから生じた落車だった。こういう結果で終わってしまったことはとても残念」と豊岡。

凍ったコースを走る豊岡英子(パナソニックレディース)凍ったコースを走る豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanakaシケインを越える豊岡英子(パナソニックレディース)シケインを越える豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Riccardo Scanferla左腕を吊った姿でレース会場に戻って来た豊岡英子(パナソニックレディース)左腕を吊った姿でレース会場に戻って来た豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka


相次ぐパンクで戦線に加われなかった辻浦

スタート前にコンテナで準備をする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)スタート前にコンテナで準備をする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka豊岡のバッドラックは、午後のエリートレースにも連鎖してしまった。まずまずのコンディションで挑んだ辻浦だったが、2周回目でパンクし後退。さらに3周回目でもパンクし、そこで事実上レースは終わってしまった。

「砂利で路面も凍っていた。どこでパンクしたのかよくわからない。第2ピットを越えて競技場に入ったところ、カーブの立ち上がりで踏み込もうと思ったときにパンクしていた。そこからピットまで遠かったこともあり、今日のレースで結果を出すのは難しいと思った。それでも必死に前を追ったけど、3周回目にもう一度同じ場所でパンクをしたとき、気持ちを切らしてしまった」

スタートを待つ辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)スタートを待つ辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka「トラブルも含めて、トータルで今の実力だったと思う。パンクしてもトップ選手はそれなりの結果を残す。今日の結果を悔しいとは思うけど、起こってしまったことを悔やんでも仕方ない。前を見ていきたい」

「スタッフの配置や機材のセッティングなど、レース前まではすごく良かった。今までにそういう環境を作ろうと努力してきて、自分たちで築き上げたものですが。あとは自分だけの問題です。誰も何も責められない。これまでやってきたことで、何が悪いとかはない」

1周目で落車に巻き込まれながらも力を出し尽くした丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)1周目で落車に巻き込まれながらも力を出し尽くした丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanaka「“たられば”はないので、これまでやってきたこと、選択してきたことがあるから、今の環境がある。今回のことを活かして、人間性や体力レベルなど、もっと上をめざしたいと思う。自分は必ず結果を残さないといけない立場だと思うので」と、辻浦は静かにレースを振り返る。

優れたテクニックが持ち味で、ほかの選手よりパンクが少ない印象の辻浦。トップ選手も相次いでパンクに見舞われたレースだったが、何かこの日は歯車が噛みあわなかったような印象を受ける。

もう一人のエリート、丸山厚は−5ラップでレースを終え、50位という結果に。1周目、スタート直後に起こった落車に巻き込まれ、さらに途中でパンクもしたが、辻浦が後退したあと、懸命に走る丸山の姿があった。

「1周目でトラブルに巻き込まれてしまったけど、降ろされるまではスムースにいけたと思います。これが実力だったと思う」と話す丸山。周回数11周、平均時速約28kmと超高速で展開された厳しいレースで、持っている力を出し切ることができた。

スタートを待つ丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)スタートを待つ丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanaka相次ぐパンクにより後退する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)相次ぐパンクにより後退する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka1周目で落車に巻き込まれながらも力を出し尽くした丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)1周目で落車に巻き込まれながらも力を出し尽くした丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanaka


悔しさを今後に活かし、前に進む選手たち

レース後の丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)レース後の丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Sonoko Tanaka全日本チャンピオン2人にとって、厳しい結果に終わった世界選手権。トラブルがあったから…言うなら、“運”のせいにもできるが、やはり彼らの言葉にあるように、これが今の日本の実力なのだろう。

世界のトップはもちろんのこと、競技の特徴が異なるため純粋な比較することはできないが、世界の頂点で日本人選手が活躍しているロードレースとの差も大きいように感じる。

近年で最悪とも言える結果に、選手、スタッフともにガックリと肩を落とした日本チーム。選手が自分を責めるのはもちろんのこと、スタッフも選手の結果が出なかったのは自分の責任でもあると語る。選手だけでは走ることができないシクロクロス。さまざまな要因が選手の結果に表れてくるのだ。

世界選手権をもって、トップの日本人選手たちのシーズンは終わる。シーズンの集大成とも言える今回の結果は、選手たちに厳しく突きつけられるだろう。しかし、結果は結果。やり直しはできないので、気持ちを切り替えて前に進むしかない。

日本チームが苦労しながらもめざす先は、世界一の証、アルカンシェルだ。今は大げさに聞こえるかもしれないが、どんなに大きな壁でも、続けないかぎりは乗り越えられないと言う。残念ながら、今すぐに叶うとは思えないが、いつか叶う日がくると信じて、今回の悔しい思いを今後に活かしてほしい。

text&photo:Sonoko Tanaka

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