2011/02/01(火) - 14:26
オルベアのラインナップのなかでは、フラッグシップであるオルカに次ぐグレードに位置するオニキス。高い格付けと性能とは裏腹に、ユーザーフレンドリーな価格設定で人気があるモデルだ。現在のフレーム形状にモデルチェンジした直後の価格は30万円を軽くオーバーしていたが、昨今の円高も手伝ってか2011モデルは一気に3万円ほどのプライスダウンとなった。もちろん内容はそのまま。これで人気が出ないはずはない。
2006年に登場した2代目オルカから導入が始まったSSNテクノロジーを採用。これはサイズ・スペシフィック・ナーブの略であり、同じモデルならサイズが異なっても乗り味や性能は共通するという、当たり前なようでなかなか出来なかったことを実現した技術。積層やグレードで特徴を変えやすいカーボンがSSNの成立に役立ったのは間違いないだろう。
今では各社導入しつつある技術だが、オルベアは先駆けメーカーのひとつといっていい。サイズごとに8つものフレームを作りテストした結果であり、理論上ではなく実際の走りで導き出されたというのだから、その労力は尋常ではない。
オルベアではゴールド、シルバー、ブロンズという3つのカーボンが用意されており、オニキスにはブロンズが使用される。このカーボンは耐久性と柔軟性に優れたインターミディエイトクラスだ。超軽量フレームにはどうしても破損や耐久性という気がかりがあるが、インターミディエイトカーボンはこのような不測の事態に強い特性を持ち合わせる。
実際ウルトラハイモジュラスカーボンは高性能と軽さを引き替えに、扱いには細心の注意が必要となる。なんでも高級、高価なものが良いというわけではなく、実際のライダーの使用に適うものこそ良いバイクなのである。オニキスはそんな基本的なことを再認識させてくれる。
製法はワンピースタイプのモノコック式。オルベアはこの工法に自信を持っており、これがフレーム生涯保証を裏打ちしている。パーツごとではなく全体で強度が計算されているので、各部の補強も最小限で済み、その結果軽量化にもつながるのだ。
BBは通常のねじ切りタイプだが周囲をカーボンで大きく覆っているため、不用意な揺れを起こさない。踏む力を損なうことなく推進力に変換してくれるだろう。フロントフォークを横から見ると華奢に見えるが、正面から見るとそれが誤解であることがわかる。ブレード部分の縦と横両方にボリュームを持たせている最新デザインなのだ。
ヘッドチューブもテーパータイプではないがたっぷりとした容積を確保されており、ハンドリングの安定性やブレーキングパワーを受け止めるためのもの。このあたりは各方面で高く評価された先代オルカの良質な遺伝子を受け継いでいると思われる。
各チューブはパワーをロスしない十分な太さがある。しかし、太すぎると威圧感というかやり過ぎ感を与えてしまい、好まない人がいるのも事実。オニキスはグラフィックによってバイク全体をすっきりと優しく見せている。また基本的にはストレートチューブであるため、伝統的なロードバイクのシルエットを求める人の琴線に触れるのではないだろうか。
完成車では残念ながら3つしかフレームサイズが用意されていないものの、フレームセットとなると48~60cmまで、5サイズから選ぶことが出来る。完成車と比較すると割高となってしまうが、単純にフレームとして見た場合、ヨーロピアンブランドで20万円を下回るカーボンフレームセットは貴重なので、魅力は色あせることはない。2台目を探している中級者がワンランク上のバイクを欲するなら、オニキスは候補の筆頭となるだろう。
ロードバイクとしての魅力が詰まったオルベア オニキスを、2人はどう評価したのだろうか?それではさっそくインプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「サンデーレーサーに最適な軽快感あふれるレーシング性能」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
このオニキスはある程度の上級者が乗ったほうが、フレーム性能の良さを体験できると思います。剛性の芯があって、軽い踏み出しでスッと進む。剛性が高い分だけ、ロードバイクに乗り慣れたユーザーに向いているでしょう。
振動吸収性は思いっきり良いわけではありませんが、ペダリングで踏み負けるような硬さとも違います。中~低速での振動吸収性は良いレベルにありますが、フレームに対して大きな入力があるとちょっと跳ねますね。とはいえ、レースで使用するには十分な乗り心地と言えるでしょう。
冒頭にも述べましたが、踏み出しはかなり軽いレベルにあって、ペダルを踏んだだけ進むという感じですね。スピードにも乗せやすく、そのまま巡航しやすい。クルマで例えるとギヤの繋がりが良いモデルといった感じでしょうか。
バイクによってはダッシュした時、かかりが悪くてギヤを選択し直さなければいけないものもあります。オニキスはそうした面が見られず、スピードの乗りがとても良いですね。脚にクランクというかペダルがひっついてくるようなダイレクト感があります。
さらに直進安定性もとても高いので、加速がしやすく、ギヤを一段ずつ上げていくと、上げた分だけ進むという感覚が強かったです。巡航速度を維持しやすく、本当に気持ちいいバイクです。
そして、ペダルを踏み込むと一瞬、脚に引っかかりがあって、そこからぐいっと力強く速度が伸びていく感覚をすごく感じました。ホイールをもう少しグレードアップすれば加速性能を高めることができ、レースでも高性能を期待できます。フレーム重量は特に軽量な部類ではありませんが、不快となる重厚感はないですし、ダンシングの振りも軽くて、初速からスパスパと軽快なペダリングで、速度がスムーズに上がっていきます。そして、そこからの速度の伸びもいいですね。
ちょっと気になる点を上げるならば、ハイスピードコーナーで若干フォークが外に流れる感覚があるところでしょうか。原因はフォーク周りの横剛性にあるように思います。アルミコラムのバランスがフレームと取れていないのかもしれません。釣り竿みたいに先がよれるのではなく、1本の棒の根本がぐらついている感じを受けます。バイクのノーズを向ければ曲がりやすいのですが、体を倒して自然に曲がろうとすると、フォークとフレームにズレが生じ、一瞬ですが膨らむような挙動を見せます。とはいえ、ハイスピードで突っ込んでいっても視線は安定しますし、怖い感じは全然ないのですが。
レース向きの性能なので、アルミ製のバイクを1台目にしっかりと乗って、脚力やスキルが備わってきて次にカーボンバイクを手に入れるようなユーザーが最適ですね。価格的にもアルテグラのコンポで30万円未満というのは、ちょうどストライクゾーンといえるでしょう。マイペースのロングライドよりも、ヒルクライムやJCRCのロードレースなど、ちょっとレースライド的に走りたいユーザーには特にお勧めできるバイクですね。ロングライドモデルよりも戦闘的で、サンデーライダーのレース向けとして優秀なバイクだと思います。
「軽い加速感が魅力的な良質なレーシングモデル」
吉本 司(バイクジャーナリスト)
フラッグシップであるオルカの存在感が強いだけに、オニキスの存在はちょっと希薄かもしれないと思うのは私だけだろうか。とはいえ、走らせてみるとしっかりとしたレーシング性能が表現されており、かなり魅力的な1台だ。
それもそのはず、現行モデルのデビューイヤーには、アメリカのコンチネンタル登録のプロチームがクリテリウムでガンガン使っていたのだから、生粋のレーシングバイクと位置づけていいだろう。
レーシングバイクに求められる性能のひとつといえば、高めの剛性感と踏み出しの軽さだ。その点においてオニキスは分かりやすい。
ダウンチューブからチェーンステーまでのラインがしっかりとできている印象があり、BBシェルはオーソドックスな形状ながら剛性が不足する印象はなかった。
高剛性だがペダリングフィールは重厚というより、大口径の肉薄チュービングのフレームに見られる乾いた印象が強く、軽快さが際立っている。それに出足の軽さは価格以上の性能を体験させてくれる。
加速や上りのダンシングなどで、高い位置から素早くペダルを踏み下ろせる感覚があり、加速の鋭さに繋げることができる。車重はさして軽くはないが、それを感じさせない身のこなしの軽さがある。ダンシングでもバイクの裁きは軽く、上りでも軽快さは失われない。
大きなトルクをかけ続けるような平坦路や緩斜面の巡航でも、剛性が高すぎるという“踏み負ける”といった感覚はなく、ペダルを踏んだ分だけ力強く進んでくれる。ホイール周りの重量が少し重いので、例えばジップ・303とかシマノ・WH-7900 C35のような軽量エアロホイールを組み合わせると、アップダウンが強いロードレースやヒルクライムなどで、より楽しく走ることができると感じだ。このクラスのホイールを装備すれば、ホビークラスのレーサーなら、まず加速側の性能に不満を抱くことはないだろう。
パリッとした剛性感がある分、乗り心地は安楽という感覚はない。しかし、必要なロードインフォメーションはちゃんと伝えてくれて、長距離を乗ったときに蓄積疲労に結びつくような小、中レベルの振動は十分にいなしてくれる。若干、大きな入力に対しては、やや突き上げを感じるものの、レースユースで考えれば不満はない。こうした部分からも、このオニキスはあくまでレーシングモデルという解釈ができる。
ハンドリングはレーサーらしい反応性の良さと、直進性のバランスはちょうどいいレベルにある。戸津井さんも指摘していたが、フォークはフレームと比べると横剛性があったほうがよりベストなコーナリングフィールが得られるだろう。やはり、上下異径ヘッドチューブのバイクに乗っていると少々だが物足りなさはある。オニキスは上下同径ヘッドながら、ストレートタイプのフォークブレードの剛性が高めなのでつっぱり感があり、それがコラム部分のねじれ感を強めているのかしれない。とはいえ、ホビーレベルのライダーが走りでデメリットを被るようなレベルの話ではない。
アルテグラを装備して30万円を下回るモデルとしては、十二分ともいえるレーシング性能を備えている。購入後にホイールやハンドル、サドル周りを軽量なものに交換して重量を軽くすれば、ロードレースからヒルクライムまで勝負できる運動性能を発揮してくれるはずだ。レースライクな走り方を望むホビーレーサーにとって、非常に良質なバイクと言えるだろう。
オルベア オニキス
フレーム:オニキス
フォーク:カーボンAC
サイズ:48、51、54(完成車)
カラー:カーボンホワイト
ヘッドセット:インテグレイテッド1-1/8
コンポーネント:シマノ・アルテグラ
シートポスト:オルベアカーボン
フレームセット重量:NA
価格:29万4000円(アルテグラ完成車)、18万9000円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート
吉本 司(バイクジャーナリスト)
71年生まれ。スポーツサイクル歴は25年。自転車専門誌の編集者を経てフリーランスの自転車ライターとなる。主にロードバイク関連の執筆が多いが、MTBから電動アシスト自転車まで幅広いジャンルのバイクに造詣が深い。これまで30台を上回るロードバイクを所有してきた。身長187センチ、体重71㎏。
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.AYANO
text:Tsukasa.YOSHIMOTO
2006年に登場した2代目オルカから導入が始まったSSNテクノロジーを採用。これはサイズ・スペシフィック・ナーブの略であり、同じモデルならサイズが異なっても乗り味や性能は共通するという、当たり前なようでなかなか出来なかったことを実現した技術。積層やグレードで特徴を変えやすいカーボンがSSNの成立に役立ったのは間違いないだろう。
今では各社導入しつつある技術だが、オルベアは先駆けメーカーのひとつといっていい。サイズごとに8つものフレームを作りテストした結果であり、理論上ではなく実際の走りで導き出されたというのだから、その労力は尋常ではない。
オルベアではゴールド、シルバー、ブロンズという3つのカーボンが用意されており、オニキスにはブロンズが使用される。このカーボンは耐久性と柔軟性に優れたインターミディエイトクラスだ。超軽量フレームにはどうしても破損や耐久性という気がかりがあるが、インターミディエイトカーボンはこのような不測の事態に強い特性を持ち合わせる。
実際ウルトラハイモジュラスカーボンは高性能と軽さを引き替えに、扱いには細心の注意が必要となる。なんでも高級、高価なものが良いというわけではなく、実際のライダーの使用に適うものこそ良いバイクなのである。オニキスはそんな基本的なことを再認識させてくれる。
製法はワンピースタイプのモノコック式。オルベアはこの工法に自信を持っており、これがフレーム生涯保証を裏打ちしている。パーツごとではなく全体で強度が計算されているので、各部の補強も最小限で済み、その結果軽量化にもつながるのだ。
BBは通常のねじ切りタイプだが周囲をカーボンで大きく覆っているため、不用意な揺れを起こさない。踏む力を損なうことなく推進力に変換してくれるだろう。フロントフォークを横から見ると華奢に見えるが、正面から見るとそれが誤解であることがわかる。ブレード部分の縦と横両方にボリュームを持たせている最新デザインなのだ。
ヘッドチューブもテーパータイプではないがたっぷりとした容積を確保されており、ハンドリングの安定性やブレーキングパワーを受け止めるためのもの。このあたりは各方面で高く評価された先代オルカの良質な遺伝子を受け継いでいると思われる。
各チューブはパワーをロスしない十分な太さがある。しかし、太すぎると威圧感というかやり過ぎ感を与えてしまい、好まない人がいるのも事実。オニキスはグラフィックによってバイク全体をすっきりと優しく見せている。また基本的にはストレートチューブであるため、伝統的なロードバイクのシルエットを求める人の琴線に触れるのではないだろうか。
完成車では残念ながら3つしかフレームサイズが用意されていないものの、フレームセットとなると48~60cmまで、5サイズから選ぶことが出来る。完成車と比較すると割高となってしまうが、単純にフレームとして見た場合、ヨーロピアンブランドで20万円を下回るカーボンフレームセットは貴重なので、魅力は色あせることはない。2台目を探している中級者がワンランク上のバイクを欲するなら、オニキスは候補の筆頭となるだろう。
ロードバイクとしての魅力が詰まったオルベア オニキスを、2人はどう評価したのだろうか?それではさっそくインプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「サンデーレーサーに最適な軽快感あふれるレーシング性能」
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
このオニキスはある程度の上級者が乗ったほうが、フレーム性能の良さを体験できると思います。剛性の芯があって、軽い踏み出しでスッと進む。剛性が高い分だけ、ロードバイクに乗り慣れたユーザーに向いているでしょう。
振動吸収性は思いっきり良いわけではありませんが、ペダリングで踏み負けるような硬さとも違います。中~低速での振動吸収性は良いレベルにありますが、フレームに対して大きな入力があるとちょっと跳ねますね。とはいえ、レースで使用するには十分な乗り心地と言えるでしょう。
冒頭にも述べましたが、踏み出しはかなり軽いレベルにあって、ペダルを踏んだだけ進むという感じですね。スピードにも乗せやすく、そのまま巡航しやすい。クルマで例えるとギヤの繋がりが良いモデルといった感じでしょうか。
バイクによってはダッシュした時、かかりが悪くてギヤを選択し直さなければいけないものもあります。オニキスはそうした面が見られず、スピードの乗りがとても良いですね。脚にクランクというかペダルがひっついてくるようなダイレクト感があります。
さらに直進安定性もとても高いので、加速がしやすく、ギヤを一段ずつ上げていくと、上げた分だけ進むという感覚が強かったです。巡航速度を維持しやすく、本当に気持ちいいバイクです。
そして、ペダルを踏み込むと一瞬、脚に引っかかりがあって、そこからぐいっと力強く速度が伸びていく感覚をすごく感じました。ホイールをもう少しグレードアップすれば加速性能を高めることができ、レースでも高性能を期待できます。フレーム重量は特に軽量な部類ではありませんが、不快となる重厚感はないですし、ダンシングの振りも軽くて、初速からスパスパと軽快なペダリングで、速度がスムーズに上がっていきます。そして、そこからの速度の伸びもいいですね。
ちょっと気になる点を上げるならば、ハイスピードコーナーで若干フォークが外に流れる感覚があるところでしょうか。原因はフォーク周りの横剛性にあるように思います。アルミコラムのバランスがフレームと取れていないのかもしれません。釣り竿みたいに先がよれるのではなく、1本の棒の根本がぐらついている感じを受けます。バイクのノーズを向ければ曲がりやすいのですが、体を倒して自然に曲がろうとすると、フォークとフレームにズレが生じ、一瞬ですが膨らむような挙動を見せます。とはいえ、ハイスピードで突っ込んでいっても視線は安定しますし、怖い感じは全然ないのですが。
レース向きの性能なので、アルミ製のバイクを1台目にしっかりと乗って、脚力やスキルが備わってきて次にカーボンバイクを手に入れるようなユーザーが最適ですね。価格的にもアルテグラのコンポで30万円未満というのは、ちょうどストライクゾーンといえるでしょう。マイペースのロングライドよりも、ヒルクライムやJCRCのロードレースなど、ちょっとレースライド的に走りたいユーザーには特にお勧めできるバイクですね。ロングライドモデルよりも戦闘的で、サンデーライダーのレース向けとして優秀なバイクだと思います。
「軽い加速感が魅力的な良質なレーシングモデル」
吉本 司(バイクジャーナリスト)
フラッグシップであるオルカの存在感が強いだけに、オニキスの存在はちょっと希薄かもしれないと思うのは私だけだろうか。とはいえ、走らせてみるとしっかりとしたレーシング性能が表現されており、かなり魅力的な1台だ。
それもそのはず、現行モデルのデビューイヤーには、アメリカのコンチネンタル登録のプロチームがクリテリウムでガンガン使っていたのだから、生粋のレーシングバイクと位置づけていいだろう。
レーシングバイクに求められる性能のひとつといえば、高めの剛性感と踏み出しの軽さだ。その点においてオニキスは分かりやすい。
ダウンチューブからチェーンステーまでのラインがしっかりとできている印象があり、BBシェルはオーソドックスな形状ながら剛性が不足する印象はなかった。
高剛性だがペダリングフィールは重厚というより、大口径の肉薄チュービングのフレームに見られる乾いた印象が強く、軽快さが際立っている。それに出足の軽さは価格以上の性能を体験させてくれる。
加速や上りのダンシングなどで、高い位置から素早くペダルを踏み下ろせる感覚があり、加速の鋭さに繋げることができる。車重はさして軽くはないが、それを感じさせない身のこなしの軽さがある。ダンシングでもバイクの裁きは軽く、上りでも軽快さは失われない。
大きなトルクをかけ続けるような平坦路や緩斜面の巡航でも、剛性が高すぎるという“踏み負ける”といった感覚はなく、ペダルを踏んだ分だけ力強く進んでくれる。ホイール周りの重量が少し重いので、例えばジップ・303とかシマノ・WH-7900 C35のような軽量エアロホイールを組み合わせると、アップダウンが強いロードレースやヒルクライムなどで、より楽しく走ることができると感じだ。このクラスのホイールを装備すれば、ホビークラスのレーサーなら、まず加速側の性能に不満を抱くことはないだろう。
パリッとした剛性感がある分、乗り心地は安楽という感覚はない。しかし、必要なロードインフォメーションはちゃんと伝えてくれて、長距離を乗ったときに蓄積疲労に結びつくような小、中レベルの振動は十分にいなしてくれる。若干、大きな入力に対しては、やや突き上げを感じるものの、レースユースで考えれば不満はない。こうした部分からも、このオニキスはあくまでレーシングモデルという解釈ができる。
ハンドリングはレーサーらしい反応性の良さと、直進性のバランスはちょうどいいレベルにある。戸津井さんも指摘していたが、フォークはフレームと比べると横剛性があったほうがよりベストなコーナリングフィールが得られるだろう。やはり、上下異径ヘッドチューブのバイクに乗っていると少々だが物足りなさはある。オニキスは上下同径ヘッドながら、ストレートタイプのフォークブレードの剛性が高めなのでつっぱり感があり、それがコラム部分のねじれ感を強めているのかしれない。とはいえ、ホビーレベルのライダーが走りでデメリットを被るようなレベルの話ではない。
アルテグラを装備して30万円を下回るモデルとしては、十二分ともいえるレーシング性能を備えている。購入後にホイールやハンドル、サドル周りを軽量なものに交換して重量を軽くすれば、ロードレースからヒルクライムまで勝負できる運動性能を発揮してくれるはずだ。レースライクな走り方を望むホビーレーサーにとって、非常に良質なバイクと言えるだろう。
オルベア オニキス
フレーム:オニキス
フォーク:カーボンAC
サイズ:48、51、54(完成車)
カラー:カーボンホワイト
ヘッドセット:インテグレイテッド1-1/8
コンポーネント:シマノ・アルテグラ
シートポスト:オルベアカーボン
フレームセット重量:NA
価格:29万4000円(アルテグラ完成車)、18万9000円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)
1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。
最近埼玉県所沢市北秋津に2店舗目となるOVER DO所沢店を開店した(日常勤務も所沢店)。
OVER-DOバイカーズサポート
吉本 司(バイクジャーナリスト)
71年生まれ。スポーツサイクル歴は25年。自転車専門誌の編集者を経てフリーランスの自転車ライターとなる。主にロードバイク関連の執筆が多いが、MTBから電動アシスト自転車まで幅広いジャンルのバイクに造詣が深い。これまで30台を上回るロードバイクを所有してきた。身長187センチ、体重71㎏。
ウェア協力:B・EMME(フォーチュン)
photo:Makoto.AYANO
text:Tsukasa.YOSHIMOTO
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