フィニッシュの先で報道陣にかこまれるグアルディーニに、次々とゴールしたチームメイトやスタッフが集まってくる。そして満面の笑みをたたえた赤いジャージが近づいてくる。宮澤崇史だ。「やったね!」というように高く手を上げてグアルディーニと握手し、チームスタッフと抱き合う。

優勝したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼ・ヴィーニ)は21歳。プロ初戦で初勝利だ優勝したアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼ・ヴィーニ)は21歳。プロ初戦で初勝利だ photo:Yuko Satoチームスタッフと喜びをわかちあう宮澤崇史チームスタッフと喜びをわかちあう宮澤崇史 photo:Yuko Sato

ファルネーゼ・ヴィーニにとって、新チームでの勝利をチームメイトみんなで喜び合う、最高のレースの幕開けとなった。

この日のレースコースは、前日にチームプレゼンテーションの行われた広場の前のゲートをスタートし、島の南側から反時計まわりにランカウイ島を1周する94.3km。比較的平坦とはいうものの、それぞれ3つのスプリントポイントと山岳ポイントがある、変化のあるコースだ。

カラーが少し変わったスキル・シマノのジャージを着る土井雪広カラーが少し変わったスキル・シマノのジャージを着る土井雪広 photo:Yuko Satoスタート地点の宮澤崇史(日本、ファルネーゼ・ヴィーニ)スタート地点の宮澤崇史(日本、ファルネーゼ・ヴィーニ) photo:Yuko Sato

チームユーロップカーチームユーロップカー photo:Yuko Satoファルネーゼ・ヴィーニファルネーゼ・ヴィーニ photo:Yuko Sato


ステージ勝利を狙う西谷泰治(愛三工業)ステージ勝利を狙う西谷泰治(愛三工業) photo:Yuko Sato朝一番に出走のサインにやってきたのは愛三工業レーシングチームだ。まずは前年のツールドランカウイでステージ優勝をかざった西谷泰治にこのレースの意気込みを訊いた。

西谷「去年1勝したといっても、まだ総合に絡めていないので、まだ未熟だと思っています。今日からの10日間、1回でも優勝に絡んで走れればと思います。今年は去年よりも濃い顔ぶれで、強いチームが来ているので厳しいなと感じますが、チャレンジ精神をもっていければいいと思います。
 今年のツール・ド・ランカウイ全体での目標ですが、ステージ優勝は必須だと思っています。去年はふがいなくも山で遅れてしまった。トップクライマーが多く来ているので勝負に絡むのは難しいかもしれませんが、自分の仕事をしつつ、ステージ優勝を狙い、みんなのサポートもできればと思います。」

土井雪広(日本、スキル・シマノ)が愛三工業の面々と話す土井雪広(日本、スキル・シマノ)が愛三工業の面々と話す photo:Yuko Satoチームカーが並び各チームの選手が往来するなか、愛三カーの脇に土井雪広が姿を見せる。直前に怪我をしたという足の調子をきくと「わかりません…今は走っていないから痛くないですけど」と緊張した面持ち。

スタートは朝10時。スタートゲートのむこうに見える大きなワシの像を背景にスタートした選手たちを何枚か撮ってプレスバイクに乗り、集団の後方をついていく。上空には、前日も上空を舞っていた大会シンボルカラーの黄色の大会ロゴ入りのヘリと、さらにもう1機が低めに上空を旋回していて、大きなプロペラの音が響く。
「うわー、大イベントだなあ」と思わずドキドキさせられる。広い道幅の舗装路の町中を走っていくと、沿道の両側のあちこちで声援を送る小学生たち。白いシャツの男の子たちも、マレーシアらしいスカーフ姿の女の子たちも、元気に隊列に手をふっている。学校ぐるみで応援に出ているのか、傍らには引率の先生らしき人がニコニコ立っている。

ランカウイ島の風景の中を走り抜けるメイン集団ランカウイ島の風景の中を走り抜けるメイン集団 photo:Yuko Sato

沿道の応援沿道の応援 photo:Yuko Sato今回のレースではバイクは選手たちと基本的には並走ができず、ときどき前に出るため追い抜いて撮影するほか、集団の後方にいることが多かった。無線がうまく入らず、正直なところ、バイク上からはレースの状況がなかなかつかめなかったが、バイクのメーターを見る限りでは40kmから60km、ときにそれ以上で追う順調なペース。

ときどき選手を追抜くときに見たところでは、集団はほとんどひとつのまま町を抜け、強い日差しに木陰が強い陰を落とす山のエリアへ。山岳というほどではないが、それなりのカーブやアップダウンのある、きれいな山道だ。

景色もだんだん郊外らしくなっていき、ヤシの並木道の両側には、風通しがよくて涼しそうな家が並び、おじいちゃんおばあちゃんが小さな子どもを抱いて観戦していたり、木陰の茶店から声援を送ったり。暖かな応援が続き、「市民に愛されているレースなんだなあ」という印象を受ける。農村らしい風景なのだが、意外なところに「internet」という大きな看板があったりして、「もしやここでインターネットできちゃうのか?」と驚かされたり。

ボトルを運ぶアッバス・サーディ(イラン、アザドユニーバーシティ)ボトルを運ぶアッバス・サーディ(イラン、アザドユニーバーシティ) photo:Yuko Satoこの日は朝からいいお天気で、湿度が高く、バイクに乗っていてものどがかわく。後方にいると、サポートカーまでさがってミネラルウォーターのボトルを背中に詰め込んでいく選手たちの姿がよく見える。外で見ていても「よく働くなあ…」と、いとおしいような気持ちが沸いてくる。チームの中で、労をいとわずいろいろな仕事ができることは、チームの選手たちお互いにとって、とても大事なことなのだろうなあと改めて思う。

レース中間を超えて空港付近で集団は大きく直線状に。フィニッシュ20分ほど前、残り10数kmの地点で選手を追抜いたところ、20人ほどの先行集団ができていて、集団の後方に宮澤、前方に鈴木謙一(愛三工業レーシング)の姿も見えた。

山岳ポイントを越える西谷泰治(愛三工業)と盛一大(愛三工業)山岳ポイントを越える西谷泰治(愛三工業)と盛一大(愛三工業) photo:Yuko Sato集団の中の品川真寛(愛三工業)と福田晋平(愛三工業)集団の中の品川真寛(愛三工業)と福田晋平(愛三工業) photo:Yuko Sato

土井雪広(日本、スキル・シマノ)土井雪広(日本、スキル・シマノ) photo:Yuko Sato逃げを試みる宮澤崇史(日本、ファルネーゼ・ヴィーニ)逃げを試みる宮澤崇史(日本、ファルネーゼ・ヴィーニ) photo:Yuko Sato


ゴール後は即、本島に向けて移動開始

日本人最高位は新城幸也(日本、ユーロップカー)の18位(右端)日本人最高位は新城幸也(日本、ユーロップカー)の18位(右端) photo:Yuko Sato両手を上げてフィニッシュに飛び込んできたのは白と黄のジャージ。集団でのゴールスプリントを制したのはアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリ)だ。パク・ソンベク(韓国ナショナルチーム)そして悔しそうに顔をゆがめるアヌアル・マナン(マレーシア、トレンガヌ・プロアジア)が続く。

集団のゴールプリントは怒涛の勢い。ファインダー越しには誰が獲ったか一瞬わからなかったが、グアルディーニが大きく両手を上げたそのあとを、次々と悔しそうな表情の選手たちが通りすぎていく。日本人最高位は18位の新城幸也(チームユーロップカー)だ。

フィニッシュ後に気持ちいい放水のミストを浴び、選手たちはいろいろな想いを胸にそれぞれポディウムへ、迎えるチームの仲間のもとへと消えていった。

次のレースへと向かう福島晋一(日本、トレンガヌ・プロアジア)次のレースへと向かう福島晋一(日本、トレンガヌ・プロアジア) photo:Yuko Sato選手たちの登場に沸く子どもたち選手たちの登場に沸く子どもたち photo:Yuko Sato


第2ステージはランカウイ島を離れてマレー半島のKangarでスタート。Kangarから残り9日をかけて半島を南下し、フィニッシュのクアラルンプールへと向かう。選手もプレス陣も、レースを終えるやいなや島から移動だ。明日第2ステージからはもう少しニュースを早くお伝えできるだろう。



photo&text:Yuko.SATO

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