2009年4月15日、伝統の第97回シュヘルデプライス・フラーンデレン(UCI1.HC)が開催され、最終ストレートでの大落車を避けたアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)が今シーズン7度目のスプリント勝利を飾った。終盤にかけて集団牽引に加わった別府史之(スキル・シマノ)は20位と健闘した。

ラスト16kmで集団からアタックを仕掛けたセルファイス・クナーフェン(オランダ、ミルラム)とロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ)ラスト16kmで集団からアタックを仕掛けたセルファイス・クナーフェン(オランダ、ミルラム)とロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ) photo:Cor Vosフランドル地方アントウェルペン(英名アントワープ)近郊で開催されるシュヘルデプライス・フラーンデレンは、プロツアーレースではなくUCI(国際自転車競技連盟)オークラスのセミクラシック。初回大会が開催されたのは1907年で、今年で開催97回目を迎える歴史的レースだ。

コースは150kmの大周回を1周後、16.5kmの小周回を3周。大きな上りは無く、ところどころパヴェ(石畳)区間も登場するが、3日前に選手たちを苦しめたような荒いパヴェはない。

メイン集団をコントロールするクイックステップやサクソバンクメイン集団をコントロールするクイックステップやサクソバンク photo:Cor Vos完全なスプリンター向きのセミクラシックとして知られ、過去にはスプリンターの名前がズラリと並ぶ。昨年2連覇を達成したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)は、グランツールに向けてここまでの疲労を取るため出場しなかった。

注目が集まったのは、優勝経験のあるロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)やトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)、そしてペタッキ。パリ〜ルーベを終えた別府史之も出場した。

ラスト30km地点の落車で集団から脱落したハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)ラスト30km地点の落車で集団から脱落したハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ) photo:Cor Vos集団内のチームメイトを温存するため、そして僅かな逃げ切りの可能性を信じて、集団から飛び出したのはロレンツォ・ベルヌッチ(イタリア、LPRブレークス)、パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)、マテウス・プロンク(オランダ、ヴァカンソレイユ)、ジェフリー・ラウダー(アメリカ、BMCレーシング)の4名。

タイム差は最大6分まで広がったが、逃げに選手を送り込んでいないクイックステップとサイレンス・ロットがメイン集団をコントロールし、終盤の小周回(ラスト50km)に入る頃にはタイム差3分に。

ラスト200mで発生した落車に次々と選手が突っ込むラスト200mで発生した落車に次々と選手が突っ込む photo:Cor Vosゴールまで30kmを残して、長さ1700mのパヴェ区間「ブルックストラート」で集団落車が発生し、優勝候補の一角ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)やハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)は集団から脱落。ペタッキの相棒アルベルト・オンガラート(イタリア、LPRブレークス)は鎖骨骨折によりここでリタイアした。

落車の影響で逃げ吸収スケジュールが狂った集団は、本格的な追撃モードでハイスピード走行を開始。別府史之も集団ローテーションに加わり、クイックステップやサイレンス・ロットに混ざって集団ペースアップに力を尽くした。

片手を挙げてゴールするアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)片手を挙げてゴールするアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス) photo:Cor Vosラスト16kmの最終周回突入前にセルファイス・クナーフェン(オランダ、ミルラム)とロジャー・ハモンド(イギリス、サーヴェロ)がアタックを仕掛けたが、やがては集団に引き戻される。別府史之はラスト12kmでフルスロットルの集団牽引を見せ、逃げ吸収に大きく貢献した。

諦めずに逃げ続けていたベルヌッチとブラットも、互いの健闘を讃え合いながらラスト4kmで集団に飲み込まれていく。クイックステップが牽引する集団は猛スピードでゴールに向かったが、ラスト2kmでサイレンス・ロットが先頭に。カチューシャやスキル・シマノが入り乱れる形でラスト1kmを切った。

脳しんとうを起こして立ち上がれないロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)脳しんとうを起こして立ち上がれないロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ) photo:Cor Vos熾烈なポジション争いの結果、ラスト200mでスプリントを仕掛けたフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)を、ペタッキが抜き去っていく。しかし少し斜行したペタッキを避ける形でファンアフェルマートが落車し、リアホイールを取られたマキュアンも地面に叩き付けられた。

このハイスピードクラッシュにボーネンを含む後続の選手が次々と突っ込む中、追い上げたケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、スキル・シマノ)を振り切ったペタッキが、悠々と先頭でゴール。3位にはドミニク・ロラン(カナダ、サーヴェロ)が入った。

表彰台で激しくシャンパンを開けるアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)ら表彰台で激しくシャンパンを開けるアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)ら photo:Cor Vos「優秀なスプリントだった。落車が起こってなくても勝てたと思う」とレース後のインタビューで語ったペタッキ。これまで数えきれないほどの勝利を飾っている35歳のベテランスプリンターだが、驚くことにこれがベルギー国内レース初勝利だ。アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)に並ぶ今シーズン7勝目で、カヴェンディッシュの8勝には1つ届いていない。

落車したファンアフェルマートはベルギーのsporza.beに対し「ペタッキは僕を抜くなり左に寄ってきて、(バリケードとの間に)スペースが無くなった」とコメント。ボーネンも落車に巻き込まれたが、右半身の擦過傷だけで事なきを得た。

カチューシャのチーム公式サイトによると、落車したマキュアンは脳しんとうを起こし、レース後に血を含む咳が出たという。肋骨骨折の疑いもあるマキュアンは病院に搬送されたが、まだ診断結果は発表されていない。カチューシャはこの日サブスプリンターのダニーロ・ナポリターノ(イタリア)がラスト7kmでパンクするなど、ツキに見放された。

ラスト10kmまで集団牽引に加わり、アシストとしての役目を果たした別府史之は落車に巻き込まれることなく20位でゴール。別府史之を始めとするアシスト勢の活躍が、ファンヒュンメル2位の結果に結びついた。

レース展開はライブストリーミング、選手コメントはベルギーsporza.be、カチューシャ公式サイト、ライブストリーミングより。

シュヘルデプライス・フラーンデレン2009結果
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)4h27'20"
2位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、スキル・シマノ)
3位 ドミニク・ロラン(カナダ、サーヴェロ)
4位 アントニオ・クルス(アメリカ、BMCレーシングチーム)
5位 ぺーター・ヴロリヒ(オーストリア、ミルラム)
6位 ハラルド・シュターゼングリューバー(オーストリア、ELKハウス)
7位 ビョルン・シュレーダー(ドイツ、ミルラム)
8位 ホセルイス・カラスコ(スペイン、アンダルシア・カハスール)
9位 ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームコロンビア)
10位 ヤメス・ファンランドスホート(ベルギー、ベランダス・ヴィレムス)
20位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+15"

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