9日間の長いステージレースがいよいよ始まった。ツアー・オブ・ハイナン第1ステージは、ハイナン島南部のビーチリゾート・三亜を舞台に開催される13.8km×5周のフラットな周回レースだ。少人数でのスプリントを、ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ・ナショナルチーム)が制した。

スタートを待つ土井雪広(スキル・シマノ)スタートを待つ土井雪広(スキル・シマノ) photo:Sonoko Tanakaハイナン島が持つ“東洋のハワイ”という愛称にどことなく胡散臭さを感じていた私だったが、朝を迎えるとオーシャンビューの窓辺から爽やかな朝日が差し込んで、青い海がキラキラと輝いていた。そして海辺を囲むようにして高層のリゾートホテルが建ち並んでいる。その光景は、まさしくワイキキビーチだ!?

そしてホテルをよく見てみると、どのホテルも新しく、建築途中のものも多い。かつては流刑地だったというが、ここは好景気に沸く中国を象徴するような島なのだ。

ツアー・オブ・ハイナン第1ステージスタートツアー・オブ・ハイナン第1ステージスタート photo:Sonoko Tanaka気候は高温多湿。日差しが照りつけると気温は30℃程度まで上昇し、ムシムシとした湿度の高さも気になってくる。この天候、インドネシアなどの熱帯地域から来た選手や、最近まで真夏日が続いた日本人選手にとってはやや有利。

涼しい気候から一気にここへ来てしまった欧州やロシア人選手は汗を流しながら苦悶の表情を浮かべる。「体調を慣らすのには、最低でも3日かかるんだよ。まだダメだ!」と大粒の汗を流しながら話すのはフランス人選手。

13.8kmの周回コースを走る選手たち13.8kmの周回コースを走る選手たち photo:Sonoko Tanaka第1ステージのスタート時間は遅く、太陽が昇りきった15時にレースがスタートする。市街の道路を使った69kmの短いコースだ。レース中盤で何度か小規模な逃げは決まるが、お約束どおり最終周回で吸収される。

その後、大集団でのスプリントが予想されたが、残り1km地点で落車が発生。また有力チームによる激しい位置取りで集団は少人数に絞られ、そのスプリントを制したのは、ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ・ナショナルチーム)だった。

スプリントを制したユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム)スプリントを制したユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム) photo:Sonoko Tanaka
レース後に行われたパレード。獅子舞が先導するレース後に行われたパレード。獅子舞が先導する photo:Sonoko Tanakaスプリントに挑んだ盛一大(愛三工業)は5位でフィニッシュ。「集団の前からスプリントがかかるような形で4選手が飛び出した。それを追ったが追いつけず、ゴールラインでは3車身ほど差が開いていたように思えた」とコメント。

さらに欧州勢による激しい幅寄せや蛇行があったとのことで「危ないレースだった」と多くの選手が振り返る。明日からのラインレースでは、今レースよりも解消されるものと思われるが、落車に巻き込まれず、勝負に絡むというのも課題になってくるだろう。


出場している愛三工業レーシングチーム、および土井雪広(スキル・シマノ)のレースへのコメントを紹介しよう。

ステージ優勝を勝ち取りたい愛三工業チームの田中光輝監督
愛三工業チームの田中光輝監督愛三工業チームの田中光輝監督 photo:Sonoko Tanaka「熊本国際ロードレースとのWエントリーにより、7人の選手枠に対して5人の出走という不利な立場であること、また欧州の有力選手が並ぶ中で、現実的に考えて総合狙いは厳しいと思う。だから、今回はステージ優勝を狙いにきています。

ツアー・オブ・ハイナンは初めて出るレースです。総合を狙うなら、レースを知っていることが大切だけど、ステージ優勝はそうとも限らない。現に西谷泰治がステージ優勝したツール・ド・ランカウイも初めての出場でした。狙えそうなステージを絞って、ステージ優勝を狙いたいですね。少人数のスプリントや独走なら盛がエース、集団スプリントなら西谷がエースになるでしょう。マークがゆるい分、気楽にいけるので、チャンスもあると思いますよ」

この日5位に入った盛一大
スタートラインに並んだ盛一大(愛三工業レーシングチーム)スタートラインに並んだ盛一大(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko Tanaka「UCIポイントを取りに来ました。他の強いチームにうまく流れを合わせて、誰かがいい展開に乗れればいいと思う。強豪チームは、日本からのチームを甘くみていると思うので、隙を突けばステージ優勝のチャンスはあると思う。日本人選手の場合、暑さは夏が終わったばかりでまた夏に戻った、という感じだからまだいい。ヨーロッパの選手はきついかもね」

綾部勇成キャプテン
「レベルの高いレースがアジア最後のレースになります。このあと、同じようにレベルの高いジャパンカップが続くので、ここでの経験がうまく活かされるといいと思っています。北海道のメンバーがそのまま来ているので、チームの雰囲気はいいですよ。熊本で品川真寛が6位に入って、UCIポイントを獲得しているので、それ以上の結果を残して帰りたいですね。人数は少ないですが、その分1人1人の役割が明確になるので、その役割でちゃんと走ればステージ優勝できると思います。盛が中心ですが、チームみんなで狙いにいきたいですね」

世界選手権を終えたばかりの土井雪広(スキル・シマノ)
スタートを待つ土井雪広(スキル・シマノ)スタートを待つ土井雪広(スキル・シマノ) photo:Sonoko Tanaka「世界選手権を終えて、2日間ほど日本に滞在してから、一昨日、ハイナン島に入りました。世界選からほとんど自転車に乗っていないので、かなりフレッシュな状態ですよ

今回のレースは、個人的にはジャパンカップの調整レースとして考えています。今回のメンバーは中国人が多いので、きっと彼らが頑張りますよ。チームとしてはケニー・ファンヒュメルのステージ優勝が目標です」


ツアー・オブ・ハイナン第1ステージ結果
1位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム) 1:31:47
2位 ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)
3位 ミケーレ・メルロ(イタリア、フットオン・セルベット)
5位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
16位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
64位 土井雪広(スキル・シマノ)
75位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
76位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
77位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)

アジア最高位
アレクセイ・リヤルコ(カザフスタン、カザフスタン・ナショナルチーム)

ポイント賞
ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム/ウクライナ)

個人総合
ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム)

text&photo:Sonoko Tanaka
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