今シーズン加入した清水と狩野が強力な切り札となったブリヂストン・アンカー。そして厳しい山岳ステージで、結果はもちろんそれ以降の各チームの走り方も決めた第2ステージ。最終日のクリテリウムはそれを確認するステージになった。

晴れ渡ったモエレ沼公園晴れ渡ったモエレ沼公園 photo:Hideaki.TAKAGI5日間のツール・ド・北海道の締めくくりは札幌市モエレ沼公園のクリテリウム。昨年までとコースが少し変わり、モエレ山の丘越えがなくなり、全くの平坦で少し大きくコースを取る。
焦点は逃げとホットスポットなどのボーナスタイムだ。昨年の鈴木真理のように、逃げてかつボーナスタイムも取れば大逆転の動きも不可能ではない。

清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)先頭でスタート清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)先頭でスタート photo:Hideaki.TAKAGIレースは9時に63名がスタート。規定により途中で追いつかれても降ろされるが完走扱いになる。
1周目は鈴木真理と畑中勇介(シマノレーシング)が逃げるが吸収される。

3周目、6人の逃げができる。福島晋一(クムサン・ジンセン・アジア)、辻善光(宇都宮ブリッツェン)、畑中勇介(シマノレーシング)、吉田隼人(鹿屋体育大学)、フェン・チュンカイ(アクションサイクリングチーム)、ユム・ジュンファン(大韓民国チーム)だ。スピードマンが多いが、このままゴールまで逃げ切れば、辻がやや有利なメンバーだ。

6人の逃げができる6人の逃げができる photo:Hideaki.TAKAGIメイン集団はこれを追わず6人の逃げとメイン集団の構図に。差は30秒にまで開く。メイン集団はリーダーチームのBSアンカーと、宮澤崇史でステージと総合ポイント賞を狙うニッポが牽引する。
メイン集団の先頭はBSアンカーが4名、ニッポが3名で引く。その後には宮澤、清水、総合2位の佐野淳哉(TEAM NIPPO)が続き、さらにスプリンターのパク・スンベク(大韓民国チーム)がぴったりマーク。見事にこの並びのまま中盤から終盤まで走り続ける。

終盤に向けてメイン集団がいよいよ加速、逃げの6名を追う。そして最終周回に入る手前でついに吸収。大集団でのゴールスプリントへ向かう。

メイン集団はBSアンカーとNIPPOが引くメイン集団はBSアンカーとNIPPOが引く photo:Hideaki.TAKAGIシマノ、愛三も加わり位置取りが繰り広げられるが、ホームストレートに先頭で現れたのはパク。やや長い距離だが圧倒的なロングスプリントで悠々の1位。2位以下には鈴木真理、宮澤らが入る。中央大学の笠原恭輔が5位に入り健闘。清水自身も10位に入り個人総合優勝を達成。

チームブリヂストン・アンカーは第2ステージで、上位に清水と狩野の2名を送り込んだのが最大の勝因だ。この2人は今シーズンから同チームへ加入したメンバーだ。ヒルクライマーからオールラウンダーに成長した清水、「日本の山岳王」でスピードも持ち合わせる狩野の2人の加入は、チームに戦い方の幅を広げさせた。

ラスト2周、吉田隼人(鹿屋体育大学)、辻善光(宇都宮ブリッツェン)らの逃げにメイン集団が迫るラスト2周、吉田隼人(鹿屋体育大学)、辻善光(宇都宮ブリッツェン)らの逃げにメイン集団が迫る photo:Hideaki.TAKAGITEAM NIPPOにとっても第2ステージがすべてだった。佐野が清水についで2位。これでチームとしては個人総合優勝をあきらめざるを得なかった。宮澤自身は個人総合3連覇がかかっていたが、厳しい山岳の第2ステージでこれも手放した。あとはステージ優勝と個人総合ポイント賞だが、これもかつてのチームメイトのパクにすべて持っていかれた。

今年は大学生が活躍した大会でもあった。特に第3ステージの山本元喜(鹿屋体育大学)の優勝は想像を越えるもので快挙だ。同チームが掲げる「世界を見据えたチーム作り」を体現したもの。もはやコンチネンタルチーム以上の動きと強さを見せた。

ゴール、パク・スンベク(大韓民国チーム)が伸びるゴール、パク・スンベク(大韓民国チーム)が伸びる photo:Hideaki.TAKAGI出場5人がすべて完走の日本大学の粘りも特筆すべきだろう。同大を代表するロード選手たちである窪木、越海、高橋、榎本を抜いたメンバーでも十分に走れることを5人は証明した。

外国選手の中では、大韓民国チームの活躍が光った。ステージ2勝のパクは圧倒的なパワーで自在な走り方で大きな差を見せ付けた。第1ステージは宮澤の番手から僅差で勝利、第4ステージはロングスプリントで圧勝。第3ステージのメイン集団ゴールは、ゴール数十メートル手前から一気に数人を抜いて頭を取った。
山岳賞のジャンは積極的に逃げ続け、その粘り強さは驚異的だった。

第4ステージ表彰第4ステージ表彰 photo:Hideaki.TAKAGI今年は例年と比べて1ステージ少なかった。しかし選手たちが口にするように、今年の第2ステージはそれを補っても余りあるコースだった。
ここ数年はスピードマンが有利だった本大会。ゴールやホットスポットのボーナスタイム争いで優勝争いをするのが通例だった。それが今年は第2ステージだけでスピードマンたちは6分もの差をつけられ、総合をあきらめざるを得なくなった。公道ステージは3つだけだったが、平坦の大集団ゴール、厳しい山岳のサバイバルレース、そして少人数の逃げが決まった山岳コースと、バランスの取れたレイアウト。
第2ステージは国内では久しぶりの、山岳に強い選手が活躍できたステージだった。

団体総合時間賞表彰団体総合時間賞表彰 photo:Hideaki.TAKAGI国内選手の多くは休む間もなく23日(木)の全日本実業団ロードの舞台、修善寺へ向かう。


結果
第4ステージ 63km 札幌市モエレ沼 クリテリウム
1位 パク・スンベク(大韓民国チーム)1時間23分42秒
2位 鈴木真理(シマノレーシング)
3位 宮澤崇史(TEAM NIPPO)
4位 シャオ・シーシン(アクションサイクリングチーム)
5位 笠原恭輔(中央大学)
個人総合時間賞表彰個人総合時間賞表彰 photo:Hideaki.TAKAGI6位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
7位 リー・ウェイチェン(アクションサイクリングチーム)
8位 チョイ・ジョンギュン(大韓民国チーム)
9位 小室雅成(湘南ベルマーレ)
10位 清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)

個人総合時間賞
1位 清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)16時間05分51秒
2位 佐野淳哉(TEAM NIPPO)+05秒
3位 チョイ・ジョンギュン(大韓民国チーム)+12秒
4位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+22秒
5位 村上純平(シマノレーシング)+23秒
6位 ベル・ステファン(ARBO-KTM-ゲブリューデルヴァイス)+43秒
7位 内間康平(鹿屋体育大学)+52秒
8位 狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)+1分6秒
9位 フェン・チュンカイ(アクションサイクリングチーム)+5分15秒
10位 ユム・ジュンファン(大韓民国チーム)+5分16秒

個人総合ポイント賞
1位 パク・スンベク(大韓民国チーム)70点
2位 宮澤崇史(TEAM NIPPO)58点
3位 清水都貴(チームブリヂストン・アンカー)43点

個人総合山岳賞
1位 ジャン・キュング(大韓民国チーム)28点
2位 ブライアン・バークハウス(北海道地域選抜)18点
3位 フェン・チュンカイ(アクションサイクリングチーム)14点

個人総合時間賞U23
1位 内間康平(鹿屋体育大学)16時間06分43秒
2位 吉田隼人(鹿屋体育大学)+5分53秒
3位 中田匠(日本大学)+6分14秒

団体総合時間賞
1位 チームブリヂストン・アンカー 48時間25分31秒
2位 TEAM NIPPO +3分51秒
3位 シマノレーシング +3分55秒

photo&text:高木秀彰

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