第22回Mt.富士ヒルクライムのチャンピオンに輝いたのは大前翔(六本木エクスプレス)。途中逃げグループに入り、吸収されてから得意のスプリントで勝ちをもぎ取った。選抜女子優勝は大石由美子が優勝し、木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)が女子初となる65分切りを達成。各選手のコメントと共に詳報します。



男子選抜:大前翔(六本木エクスプレス)がスプリントで勝利 オープン参加のヨナス・ラップが全体トップ

朝6時半、主催者選抜男子がスタート photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会

富士ヒルクライムのチャンピオンを選び出す男子選抜クラスには、昨年王者の石井雄悟を筆頭にする国内トップクライマーのほか、オープン参加としてTEAM UKYOのニコロ・ガリッボ(イタリア)やナホム・ゼライ(エリトリア)、今年から中国籍チーム「FNIX-SCOM-Hengxiang Cycling Team」に移籍したベンジャミン・ダイボール(オーストラリア)らがオープン参戦。これまで以上に国際色豊かなメンバーが、朝6時半に曇り空の富士北麓公園を出発した。

胎内交差点を過ぎて計測開始地点を通過すると、ゼライがアタックを仕掛けたものの吸収され、5km地点で同じくオープン参加のヨナス・ラップ(ドイツ、FNIX-SCOM-Hengxiang Cycling Team)もアタックを放つ。真鍋晃(EMU SPEED CLUB)たちも積極的に動く中、大きな集団を維持したままレースは中盤戦へ。すると再びラップとダイボールがアタックで抜け出し、ここに大前翔(六本木エクスプレス)と成田眸(mkw)、そして田中裕士が加わり、強豪ばかりが集う逃げグループが形成された。

メイン集団を引き離した5名。やがて「もともと登りは得意だけど、緩斜面のスバルラインは体重のある僕向き。淡々と一定ペースを守るように心がけた」と言うラップが抜け出し、続いてツアー・オブ・ジャパンの富士山ステージ(あざみライン)を過去2度制したダイボールも続く。こうしてFNIX-SCOM-Hengxiang Cycling Team勢2名が抜け出し、そのままフィニッシュライン目掛けてハイペース登坂を続けた。

先頭でフィニッシュに飛び込むヨナス・ラップ(ドイツ、FNIX-SCOM-Hengxiang Cycling Team) photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会
オープン参加のベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、FNIX-SCOM-Hengxiang Cycling Team)が2位フィニッシュ photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会


オープン参加でワンツーを獲ったヨナス・ラップ(右)とベンジャミン・ダイボール(左)。昨年覇者の石井雄悟(中央)がアテンド役を務めたという photo:So Isobe

選抜クラスでは田中の攻撃で成田が遅れ、「55分切りでの優勝を狙っていた」と言う大前とのランデブー体制となったものの、有力勢がペースを上げるメイン集団も2人の先行を許さず、緩斜面の最終区間で引き戻す。しかし飲み込まれた大前にはまだ「スプリントで勝てる脚ががあるので、精神的には余裕がありました」と勝ち筋が見えていた。

ラップとダイボールがワンツーフィニッシュを決め、そのすぐ後ろに迫っていた選抜グループがなだれ込むようにフィニッシュラインへ。最後は大前が得意のスプリントで抜け出し、食い下がるライバル勢を引き離して先着。第22回Mt.富士ヒルクライムのチャンピオンに輝いた。

選抜男子のゴール勝負を制した大前翔(六本木エクスプレス) photo:So Isobe

選抜男子2位:三浦将吾(グランペール/小坂の懐入り隊) photo:So Isobe
選抜男子3位:保田翔平(三重県魚卵連合) photo:So Isobe



プロロード選手を引退後、本業である医師の傍らホビーレースを主戦場にすると決めるや否や、ツール・ド・おきなわ市民200kmで優勝するなど、ロードレースの印象が強い大前が富士ヒルを制した。「年は冬からずっと優勝を目指してトレーニングをしていて、その過程の数値も良かったので先頭争いはできるだろうと考えていましたが、実際に勝てたことは意外だし、びっくりしています」と言う。

「登りがキーとなる全日本選手権を目指す上で、富士ヒルで良い成績が出せればと思っていました。ここは乗鞍のような大会と違って勾配が緩いので、去年石井選手が勝ったように、僕のようなロード選手にもチャンスがある。独走と登坂力で勝つことをイメージして練習を重ねてきたので、最後集団スプリントに丸め込まれてしまったのはちょっと悔しいし、タイムもイメージよりは遅かった。今は満足感の方が大きいですが、来年チャレンジするならしっかりと理想のパターンで勝ちたいと思います」と言う。3週間後に迫った全日本選手権についても、表彰台では「ホビーレーサー初の全日本優勝を目指します」と力強いコメントが飛び出した。

主催者選抜男子表彰台:1位大前翔(六本木エクスプレス)、2位三浦将吾(グランペール/小坂の懐入り隊)、3位保田翔平(三重県魚卵連合) photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会

スプリントで大前の後塵を拝しながらも、2位の三浦将吾(グランペール/小坂の懐入り隊)と3位の保田翔平(三重県魚卵連合)にとっては、それぞれ自分自身でも驚くキャリアハイの結果となった。

「5人が逃げた時にブリッジしようか迷ったんですが、その時集団人数も多かったし、このままスプリントした方が勝機はあるな、と。でも正直ここまでの結果になるとは思いませんでした(三浦)」、「去年はスプリントでミスったので、その経験を踏まえてレースができました。今勝負に絡めてる!と思った瞬間にどんどん自信が出てきて、最後は一人まくって3位。表彰台は本当に嬉しい。最高です」と喜びを語っている。

選抜女子は大石由美子が優勝、木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)は悲願のゴールド達成

時間差でスタートする主催者選抜女子クラス photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会

昨年覇者の三島雅世(Cycling-gym/ZWIFT)が怪我明けで欠場した選抜女子クラス。2合目付近から独走に持ち込み、そのまま圧倒的なペースで独走優勝したのは大石由美子だった。膝の怪我でトレイルランニングから転向して富士ヒル挑戦は5年目。55歳にして1時間08分08秒というタイムを叩き出し、中国から2年連続参戦したSI LIと、真鍋響子(EMU SPEED CLUB)を置き去りにして栄冠を掴んだ。

「この年で優勝できるとは思っていませんでした。当初の目標は去年のタイムを上回ること。でも走っているうちに、もしかしたら優勝できるかも、という気持ちになり、せっかくのチャンスをモノにしたいと思って頑張りました。とても嬉しいです」と優勝の喜びを語っている。

選抜女子で圧勝した大石由美子 photo:Mt.富士ヒルクライム実行委員会

主催者選抜女子表彰台:1位大石由美子、2位SI LI(中国)、3位真鍋響子(EMU SPEED CLUB) photo:So Isobe

主催者選抜の表彰台獲得選手によるシャンパンファイト photo:So Isobe

また、一般女子クラスに出場した木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴)は、コースレコードとなる1時間04分40秒を叩き出し、女子選手として史上初の65分切りに成功。2023年の初挑戦から4年目で悲願のゴールドリング獲得に成功した。

ヒルクライム出身の注目選手として急浮上し、全日本選手権2位などの記録を引っさげて欧州ロード界に挑戦したものの、自転車を楽しむのではなく、パフォーマンスを上げることに集中する生活環境に気持ちが追いつかなかったという木下。「去年は自転車を見たくないほどのメンタルになって富士ヒルにも出場できませんでした。でも、やっぱりここでゴールドを獲りたいという気持ちを確認できたので、去年とは違って100%自転車を楽しめるアプローチ、元々のスタイルであるロングライドや旅を楽しみながら取り組んできました。そこに気付けたのはヨーロッパで活動したおかげでもあります」と達成感に溢れた表情で言う木下は、3週間後の全日本選手権にも出場。「出るからにはもちろん優勝を狙う」と意気込んでいる。

1時間04分40秒でフィニッシュし、女子初のゴールドを達成した木下友梨菜(鈴なり妖怪 鈴) photo:So Isobe

曇り空の下開催された第22回大会は各カテゴリーで好記録が続出し、プラチナとゴールドのフィニッシャーリングが足りなくなるという事態に。当日受け取りできなかった参加者には後日リングが郵送されるとのことだ。
第22回Mt.富士ヒルクライム主催者選抜男子リザルト
1位 大前翔(六本木エクスプレス) 55:54.51
2位 三浦将吾(グランペール/小坂の懐入り隊) 55:55.43
3位 保田翔平(三重県魚卵連合) 55:59.27
4位 佐々木遼(TeamGOCHI) 56:00.23
5位 才田直人(ヒルクライム日本百名登) 56:01.90
6位 桜井翔太(Nogleis R.T.) 56:02.62
第22回Mt.富士ヒルクライム主催者選抜女子リザルト
1位 大石由美子 1:08:08.46
2位 SI LI(中国) 1:12:17.56
3位 真鍋響子(EMU SPEED CLUB) 1:12:23.38
4位 佐藤恵美 1:13:26.76
5位 竹内清子(Team SHIDO) 1:14:05.06
6位 宮下朋子(TWOCYCLE) 1:14:14.28
text:So Isobe

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