激しい雨が劇的な逃げ切り争いを演出したジロ・デ・イタリア第5ステージ。落車とコースミスを乗り越え、イゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)が勝利し、敗れたアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス)がマリアローザを着用した。



5月13日(水)第5ステージ
プライア・ア・マーレ〜ポテンツァ 203km(丘陵)


ピンク色の紙吹雪で迎えられた、マリアローザのジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア第5ステージ image:RCS Sport
第109回ジロ・デ・イタリアは5月13日に5日目を迎えた。203kmの長丁場となるコース分類は丘陵だが、選手たちにはコース後半に急勾配の2級山岳が待ち受ける。ティレニア海に面するプライア・ア・マーレから内陸に進む序盤は3級山岳を越え、しばしの平坦路を進んだ後、残り55.6kmから2級山岳モンターニャ・グランデ・ディ・ヴィッジャーノ(距離6.6km/平均9.1%)を登る。しかも頂上手前約2kmは最大勾配15%と急勾配だ。

この日の逃げはマリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を着るヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツXRG)が参戦したことで複雑化し、最初の3級山岳でギリェルモ・シルバ(ウルグアイ、XDSアスタナ)ら3名が逃げを打つ。激しい雨が降り始めるなか、下りで先頭はヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)らが加わり5名となる。その後、前日勝者ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG)らも合流し、12名の逃げグループが形成された。

ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)ら12名が逃げ集団を組んだ photo:CorVos

終始雨が降り続いたため、マリアローザを披露できたのは序盤のみだったジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos

一方のメイン集団は、マリアローザをレインウェアで隠したジュリオ・チッコーネ(イタリア)擁するリドル・トレックが牽引。逃げに総合で10秒遅れのエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)が入ったことに加え、雨で身体が冷えることを嫌ったプロトンは、3分程度のリードしか許さないタイトなコントロールを見せる。しばし小康状態が続いた後、2級山岳モンターニャ・グランデ・ディ・ヴィッジャーノに入る手前、残り62km地点で、23歳で2度目のジロに臨むイゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)が逃げ集団から飛び出した。

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの牽引するプロトンに1分45秒の差をつけ、アリエタは2級山岳に突入。40秒後方の逃げ集団はバラバラとなり、アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス)が飛び出す。そしてエウラリオは頂上まで2.3kmを残してでアリエタに合流。再び降り出した雨のなか、頂上をアリエタが先頭で通過し、フィニッシュへと続く平坦路に入った。

雨のなか進むプロトン photo:RCS Sport

プロトンからは、同じポテンツァにフィニッシュした2022年大会でステージ優勝したクーン・ボウマン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)ら3名がアタック。逃げ切り容認も辞さないようなスローペースでレッドブルが集団牽引したため、マリアローザを保持したいリドル・トレックがペースを作る。しかしアシストが遅れていったため、チッコーネが自ら先頭に出るシーンもあった。

先頭をひた走るアリエタとエウラリオが、残り28.8km地点のレッドブルKMを通過した時点で、後続の逃げ集団との差は2分44秒、メイン集団とは5分の差まで広がっていた。そのまま2名による一騎打ちに持ち込まれると思われた残り13.6km地点、下りの左コーナーでアリエタが濡れた路面にタイヤを滑らせ落車。これで勝負あったと思われたが、残り6.5kmでエウラリオも下りコーナーで落車する。

共に落車し、一騎打ちを演じたイゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)とアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

そのため共に落車からレース復帰した2名は再び合流し、フィニッシュの待つポテンツァに到着。残り2km地点の右コーナーを前を行くエウラリオがクリアした一方、落車を警戒し、ハンドルを切りきれなかったアリエタが、テープの貼られた誤ったコースに突っ込んでしまう。アリエタは素早くコースに復帰し、全力でエウラリオを追いかけた。

プロ2年目で初勝利を目指すエウラリオはラスト1kmのバナーを通過し、背後からはアリエタが猛スピードで迫る。そして残り150mで追いつき、並びかけたアリエタがエウラリオを抜き去り、信じられないとばかりに頭を抱えながらフィニッシュした。

劇的勝利を飾ったイゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

アリエタの勝利を称えるアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:RCS Sport

逃げ集団を飛び出し、落車とコースアウトの不運を乗り越えて掴んだ劇的勝利。「なんて言えばいいのかわからない。ただこの勝利が本当に、本当に嬉しい。落車してからも勝利が不可能になったとは思わなかった。最後まで挑み続けなければと。これほど厳しいステージは何が起こるかわからないからね。最後の数kmは空っぽだったが、エウラリオも苦しんでいた。残り2km地点のコースミスは『ありえない』と思ったが、それでも踏み続けた。そして彼の背後に戻ってからようやく『勝てるかも知れない』と思い始めた」とアリエタは喜びと共に勝利を振り返った。

落車により最初の3日間で総合エースであるアダム・イェーツ(イギリス)ら3名を失ったUAEにとって、目標を切り替えて掴んだ2日連続のステージ優勝。それを果たしたアリエタはスペイン出身の23歳で、エキポ・ケルンファルマから2024年に移籍。昨年はスペインのワンデーレースでプロ初勝利を飾り、ジロの大舞台でワールドツアー初勝利を掴んだ。

チッコーネを含むメイン集団が7分13秒遅れでフィニッシュしたため、マリアローザに袖を通したのは勝利を逃したエウラリオ。ポルトガル出身の24歳は「もちろんステージ優勝がほしかったが、マリアローザを着ることができて本当に嬉しい。昨年ワールドツアーに上がったばかりの僕が、いまジロでマリアローザを着ているなんて信じられないよ」と、悔しさと喜びを語った。

チームに2日連続勝利をもたらしたイゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

敗れながらも、マリアローザを着用したアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
ジロ・デ・イタリア2026第5ステージ結果
1位 イゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 5:07:51
2位 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:02
3位 ギリェルモ・シルバ(ウルグアイ、XDSアスタナ) +0:51
4位 ロレンツォ・ミレージ(イタリア、モビスター) +1:29
5位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) +1:30
6位 ジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア、スーダル・クイックステップ)
7位 クーン・ボウマン(オランダ、ジェイコ・アルウラー) +3:11
8位 ヨハネス・クルセット(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +3:13
9位 アンドレア・ラッカーニ(イタリア、スーダル・クイックステップ) +3:29
10位 ルドヴィコ・クレショーリ(イタリア、ポルティ・ヴィジットマルタ) +4:42
マリアローザ(個人総合成績)
1位 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) 21:27:43
2位 イゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +2:51
3位 クリスティアン・スカローニ(イタリア、XDSアスタナ) +3:34
4位 アンドレア・ラッカーニ(イタリア、スーダル・クイックステップ) +3:39
5位 ヨハネス・クルセット(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +5:17
6位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) +6:12
7位 ヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツXRG) +6:16
8位 フロリアン・ストーク(ドイツ、チューダープロサイクリング)
9位 エガン・ベルナル(コロンビア、ネットカンパニー・イネオス)
10位 テイメン・アレンスマン(オランダ、ネットカンパニー・イネオス) +6:18
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 ポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ) 105pts
2位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 64pts
3位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG) 50pts
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 ディエゴ・セビーリャ(スペイン、ポルティ・ヴィジットマルタ) 42pts
2位 イゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 18pts
3位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター) 18pts
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) 21:27:43
2位 イゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +2:51
3位 アンドレア・ラッカーニ(イタリア、スーダル・クイックステップ) +3:39
チーム総合成績
1位 XDSアスタナ 64:36:00
2位 モビスター +0:31
3位 チューダープロサイクリング +6:15
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport

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