ウィンスペースが小田原で発表会を開催した。中国より蔡社長も参加。元チャプター2代表のマイク・プライド氏がテクニカルディレクターとして合流すること、マイキーことマイケル・ライス氏がコミュニティ担当となることなど、これからの体制と展開を説明する発表会となった。

マイキー&グレンさん、マイク・プライド、ウィンスペース社長の蔡正昌さんがタッグを組む photo:Makoto.AYANO
中国・厦門(アモイ)に本社を置くスポーツバイクブランドのウィンスペース(WINSPACE)が、神奈川県小田原市のサイクリングジプシーカフェ(Cycling GYPSY Cafe)において同ブランドのこれからの開発体制とブランドの方向性を説明する発表会を開催した。中国からは社長の蔡正昌氏も来日。同社の要人が一堂に会した。

発表されたばかりのウィンスペースM6がディスプレイされた photo:Makoto.AYANO
最大のトピックは、元チャプター2代表のマイク・プライド氏がテクニカルディレクター(技術監督)としてウィンスペースに合流することだ。そして同時にマイキーおよびパートナーのグレンさんが同ブランドの国際コミュニティ担当となり活動をスタート。日本では小田原の「サイクリングジプシーカフェ」がその拠点となること、さらに試乗ができる「WINSPACEテストライドセンター」になることも説明された。

マイク・プライド氏と蔡正昌氏の合流をアピールするウェルカムバナー photo:Makoto.AYANO
ニュージーランドのバイクブランドとしてユニークなバイクの数々をプロデュースしてきたチャプター2(chapter2)。その顔であったマイク・プライド氏のウィンスペースへの加入はすでにSNSで発表済みだが、今回の発表会は日本のチャプター2ファンに向けてその移籍の理由を説明すること、同社におけるこれからのプライド氏の役割などをアピールすることを目的としたようだ。

ファンが集ったウィンスペース発表会 in 小田原 サイクリングジプシーカフェ photo:Makoto.AYANO
プライド氏の移籍は2月。すでにチャプター2ブランドは氏の手元を離れ、同ブランドの製造元だった工場がブランドの権利を買い取ったという。
ウィンスペースはチャプター2の株主として関係を持っていた。しかしチャプター2と製造工場の契約には同ブランド製品の製造を独占的に行うという条件があったため、ウィンスペースがチャプター2ブランドを買い取ることはできなかったという。

ウィンスペースにテクニカルディレクターとして加入したマイク・プライド氏 photo:Makoto.AYANO
プライド氏はすでにチャプター2ブランドを手放したため、今後の展開には関与しないという(しかしチャプター2が今後プライド氏に開発を依頼することはできる)。プライド氏はすでに今春よりウィンスペースのバイク開発に携わっている。

チャプター2 KAHA 機敏かつエアロ性能にも優れたグラベルレーシングバイク。グラフィックもユニーク(CW綾野の愛車) photo:Makoto AYANO
チャプター2とマイク・プライド氏のバイクづくりに関して、シクロワイアードではどのメディアより詳細に伝えてきた。筆者・綾野(シクロワイアード編集長)もニールプライド時代からのチャプター2ファンであり、3モデルのバイクを愛用してきたばかりでなく、アンバサダーのマイキーとともにあらゆる企画をともに展開してきた。(過去記事一覧)
その関係があるだけにチャプター2ブランドの終焉は残念だった。しかし同時に、このスポーツバイク界の不況下では仕方ないこととも感じる。日本での売上自体は同ブランドの世界におけるトップセールスであったにもかかわらず、同社の売上不振を知っていたからだ。
製品自体が良くても、現在のバイクビジネスにおいてはマーケティングとプロモーションによる訴求と完成車の大量販売が成功のカギであることは間違いなく、その両方に欠けるハイエンドカーボンフレーム専業ブランドがコロナ禍からの不況を乗り切ることはできなかった。マニアックな良い製品だからといって成功は約束されないのだ。
しかし筆者が思うにマイク・プライド氏の開発力やデザイン力は素晴らしいものがある。
世界の大手トップブランドは優れた開発チームをもち、かつ外部にも天才的な人物が運営する開発会社が存在する。スコットやキャノンデール、スペシャライズドなど大手ブランドを渡り歩いてフラッグシップモデルを開発してきたピーター・デンク氏などはその例だが、知名度は劣るもののプライド氏の製品開発力は決して引けをとらない、というのが私の評価だ。

中国・厦門のウィンスペース本社工場 ©Winspace
プライド氏は自他ともに認めるスポーツバイク狂で、バイクデザイナーでありつつ建築家でもあり、かつ元MTBダウンヒルの選手だったバックグラウンドもあり、その時々の流行に乗ったスポーツバイクをリリースし続けてきた。
近年においても、タイヤのワイド化がもたらすライドフィーリング向上の恩恵をいち早く取り入れた設計のオールロード系バイクを他社に抜きん出て早く製品化してきた。しかもほとんどのモデルをプライド氏ひとりで開発できるほどの完結力を持ち合わせていること、大手ブランドに劣らないスピーディーな開発と展開をしてきたことを、高く評価している。プライド氏は間違いなくバイク開発界の数少ない天才のひとりだ。

ウィンスペースの新モデル M6 は誰もが乗りこなしやすいエアロロードだ photo:Makoto.AYANO
そんなプライド氏の加入はウィンスペースにとって願ってもないことだろう。躍進著しい中国ブランドの多くが今だに独自性や魅力ある製品を生み出す開発力に欠けると言えるなか、プライド氏の獲得は同ブランドにとって大きな武器になることは間違いない。
近年、日本国内で人気急上昇中のウィンスペース。本社工場の高い生産力や品質管理についてはインフルエンサーによって伝えられている。国内プロチームのスパークル大分へのサポートも5年目に入り、チームからのフィードバックが製品に生かされている。スパークルには小柄な選手が多いことで、アジア人体型や小柄なユーザーへ向けた同社の製品づくりのノウハウは大きく進んだという。

2022年よりウィンスペースに乗って活躍するスパークルおおいた(JCL宇都宮清原クリテリウム2022より) photo:Nobumichi Komori
そうした面での信頼性の向上は他の中国ブランドより抜きん出た印象だ。さらに今回来日した社長の蔡正昌(さい・まさあき=Staphen Cai)氏は日本の自転車界で修行した経験をもち、ブランドの様々な面を流暢な日本語で淀み無く説明してくれた。

マイキー&グレンさん、マイク・プライド、ウィンスペース社長の蔡正昌さんがタッグを組む photo:Makoto.AYANO
ウィンスペースの要人・関係者が一堂に会した小田原の発表会。チャプター2ファンのなかではプライド氏の移籍は衝撃となっており「ファンへの裏切り」といった声も出ていたが、結局は当日集まった一般参加者のほとんどはチャプター2とマイク・プライドのファンであり、かつサイクリングジプシーカフェを拠点に以前から集うコミュニティの常連たちだった。
午前中は皆で小田原周辺の散策ライドを楽しみつつ交流を深め、カフェに戻ってグレンさん手づくりの美味しいランチを楽しんだ後、説明の機会が設けられた。その模様は今後同ブランドのソーシャルメディア等で配信される予定だが、ここではキーとなる質問と応答をダイジェストしてお伝えしよう。
マイク・プライドの合流、国際コミュニティ立ち上げ、ウィンスペースのこれから

左からマイク・プライド、蔡正昌(さいまさあき)、マイケル・ライス photo:Makoto.AYANO
マイク(・プライド)さんが加入することでウィンスペースにもたらされる変化は何だと考えていますか?
プライド: 15年の間、自身のブランドを展開し、プロダクツをデザインしてきた経験があります。その私の経験がウィンスペースに加わることで、よりマーケットの要求に沿ったプロダクツが生み出せるようになると考えています。私のレシピがウィンスペースのものとなる。私にとっては自分のブランドでできなかったことができるようになります。

マイク・プライド「ニールプライドとチャプター2の15年の経験をレシピとしてもたらすのが役目」 photo:Makoto.AYANO
蔡:サイクリングのマーケットは非常に国際的なものです。中国に居る私が見ている視点と違い、マイクの視点は非常にグローバルなものの見方で、サイクリング界の変化やカスタマーのニーズの変化を見ていると感じます。その視点はウィンスペースにとってとても有益なものになるはずです。
マイキー:マイク・プライドと僕の15年以上のおつきあいの経験から言わせてください。マイクのセンスは、その時々のバイクインダストリー(自転車産業)がどの方向に向かうのかを常に敏感にキャッチして、サイクリストの要求にあったプロダクツを生み出してきたことを知っています。ニュージーランドに居てもアジアに居ても、マイクの生み出すデザインは国際的センスに溢れていて、今後のバイクマーケットの進む方向、サイクリストの興味やニーズの向かう先を敏感に感じ取って、デザインやプロダクツに落とし込むことができるんです。

ウィンスペースの蔡正昌社長 photo:Makoto.AYANO
蔡:私とマイクとは10年以上前からの知り合いです。生産現場でお互い知り合った競合、つまりライバルでしたが、エンジニアとして、尊敬できる人として仲良くしてきました。そして近年はチャプター2の株主になって投資をしてきました。ですから彼が困難に陥った時、「一緒にやらないか」と声をかけるのは自然なことでした。お互いのレベルを上げるために歩んできましたから。

マイク・プライドがデザインしたブエルタ・フェメニーナ出場記念デザインのバイクとWinspaceロゴ ©Winspace
そして2月にウィンスペースにマイクが加入してくれました。バイクフレームのデザインや設計には最低でも1年〜1年半以上がかかるから製品はまだ世には出ていないけど、グラフィックはマイクがデザインしたものがすでに製品化されています。マイクは建築家でもあり、あらゆるデザインセンスが素晴らしく、ブランディング、マーケティング、グラフィックデザインにも携わってもらっています。

フラッグシップモデルのウィンスペース SLC5 photo:Makoto.AYANO
マイクさんの設計したバイクはいつごろ発表されますか?
プライド:まだ明かせないのですがプロジェクトは現在進行中です。早ければ年内、あるいは来年の早くに発表できるでしょう。世界でもっとも速いバイクのひとつになるであろう「スーパーバイク」とだけ言っておきます。
蔡:まだ秘密ながら付け加えると、特別なスーパーバイクでありながら、アフォーダブル(手頃)な価格のバイクです。今、世界じゅうでスポーツバイクの価格は「天井知らず」に上昇していて、それは好ましいことではありません。誰もが手にできるバイクは私たちのDNAです。そして世界一速いバイクのひとつが完成したら、この場所で発表できたらいいですね!。
ウィンスペースの強みや、マイクさんに期待することは何でしょう?

ウィンスペースはカーボンフレーム製造18年のスペシャリスト ©Winspace プライド:ウィンスペースの強みは自社内でカーボンフレームを生産していることです。今までチャプター2では他の多くのブランドと同じように、デザインしたバイクを他のOEM工場で製造してもらっていました。しかしこれからは私がデザインしたものを自社の施設内で解析し、改良を重ねて完成度を上げていき、最終的に製品として生み出すことができます。それはチャプター2ではできなかったことであり、素晴らしいことです。
蔡:我々はカーボンのエキスパートであり、レイアップ等の技術や製造方法に自信があります。そこにマイクが加わることで、プロ選手やアベレージライダー(一般サイクリスト)が求める製品、マーケットが求めているものをデザインとして落とし込み、製品として生み出す。そのすべての生産工程を、自らが管理している工場のなかで行うことができるんです。
サイクリングジプシーとの協業について聞かせてください

サイクリングジプシーカフェを運営するマイケル・ライスさんとグレン・ジプシーさん photo:Makoto.AYANO
蔡:今後の自転車界について語る時、プロダクツとライダーに加えて「コミュニティ」が欠かせないものだと考えています。ブランドの将来は、ただプロダクツが負うだけでなく、人のつながりが大事になってくると考えています。プロダクツの良さで勝負することと同じように、コミュニティでも差が出ると考えています。だからマイキーをウィンスペースの国際的なコミュニティ・マネジャーに任命したのです。

あらゆるライドイベントを開催してコミュニティを盛り上げてきたマイケル・ライス氏 photo:Makoto.AYANO
マイキー:ボクは英語がちょっとできるから国際的なコミュニティづくりで活躍したいと思います(笑)。日本だけでなく、世界各国でウィンスペースのコミュニティづくりの活動を行うのはとてもエキサイティングです。そしてここ小田原のサイクリングジプシーカフェが「WINSPACEテストライドセンター」になります。バイクの試乗ができるほか、いろんなライドイベントを開催します。

サイクリングジプシーカフェは今後ウィンスペースバイクのテストセンターになる 
サイクリングジプシーカフェでウィンスペースのバイクの試乗ができるようになる
蔡:ブランドはモノと人なんです。結局は人との関係に行き着いていく。今日のように一緒に自転車に乗って皆で共感し合うような体験が、将来あるビジネスとしてすごく大事なことなんです。マイキーさんの今までの経験を活かしてもらいながら、楽しくやっていければと思います。

サイクリングジプシーカフェのイベント日は必ずライド後にBBQを楽しむスタイル photo:Makoto.AYANO
プライド:ここまでの15年間、ニールプライドとチャプター2、私の2つのブランドにおいて日本は世界で一番良いコミュニティを確立してきました。それはマイキーとグレンちゃんの活躍無しでは成り立たなかったと考えています。

BBQを切り盛りするグレンさん 
グレンさんのつくる料理とBBQは最高に美味しいと好評だ
マイキー:僕がマイクと一緒に働いてきたのは、彼のつくるバイクが素晴らしいと感じてきたからです。今はウィンスペースも同じことを感じています。実はそれまで尊敬はありませんでした。ウィンスペースのバイクに乗るまでは。しかし一度乗るとその考えは一気に変わった。ここにある新しいM6は乗ってみると素晴らしいバイクでした。
僕にとってサイクリングはパッション(情熱)、コミュニティをつくることもパッション。乗るバイクにパッションが感じられない場合は僕のエネルギーも出ない。しかし情熱ある人がつくるバイクと信頼関係があれば、より情熱を持って頑張れる。それが自分です。ステファン社長にはそのパッションを感じます。自転車のことを話しているときは子どものようにはしゃいで生き生きとする。それはマイクも同じです。

信頼しあった3人がタッグを組んだ photo:Makoto.AYANO
そのような自転車が好きな人たちと一緒に仕事がしたいと常に願っています。計算器でビジネスをする人に魅力は感じません。自転車を愛する人たち、マイクやステファンと仕事をすることが楽しみです。パートナーとして尊敬し合い、強い絆で結ばれた3人が協力しあって盛り上げていきます。
ウィンスペースの世界における現在のシェアはどこが高いんですか?
蔡:今ヨーロッパがもっとも大きなシェアを占めていますが、「ドアを開けにくい国々」でした。なぜならヨーロッパにはたくさんの国があり、それぞれ言語も文化も違う。それを切り拓いてきたことで、近年のウィンスペースは急成長を遂げています。でも人気が出てきたのはつい5年ほどのことです。

ツール・ド・フランス・ファム出場を叶えたマイエンヌ・モンバナ・マイパイ プロサイクリングチーム ©Winspace
女性のプロチームがツール・ド・フランスに出場したことはひとつの目標達成ですか?

ウィンスペースがスポンサードするフランス・マイエンヌの男子プロチーム ©Winspace 蔡:プロチームをサポートするのは大きな予算がかかり、大きな決断です。話し合いをもとに慎重に進めてきました。現在のツール・ド・フランスに出場できた「マイエンヌ・モンバナ・マイパイ プロサイクリングチーム」へのスポンサードは、弊社にとって経済的にまだ無理がある時に来た話でしたが、チャンスだと思い即決しました。
プライド:ウィンスペースは数カ国の異なる地域でスポンサー活動を展開しています。フランス、タイ、日本(スパークル大分)でもプロチームをサポートしている。私もかつて自分のブランドでの経験がありますが、それは本当に素晴らしいことです。また、それがウィンスペースがこのスポーツにかける情熱によって動いている証拠です。その情熱こそがこのビジネスには必要なんです。

フラッグシップモデルのウィンスペース SLC5 photo:Makoto.AYANO
ウィンスペースはMTBをつくる予定がありますか?
プライド:MTBに限らず、現在はTTバイク、トライアスロンバイク、eBikeなどなど、視野を広くもち、様々なバイクの可能性をリサーチしている段階です。ウィンスペースの方向性は、あらゆる車種や多くの製品をラインアップする総合ブランドになることでなく、ユーザーの要求にあった最適なスポーツバイク製品を提供することです。新しいチャレンジに対しては注意深く進んでいければと思っています。
蔡:グローバルブランドになるためにビジネスで成功することは大事ですが、異なった文化の中で受け入れられることも大事にしていきたいのです。そのためにも人と人の関係です。今日も窪木一茂さんが訪ねてきてくれました。彼とは10年以上前からの関係があり、それで訪ねてきてくれたのです。本当に嬉しい。

この日、蔡正昌氏を古くから知る窪木一茂(チームUKYO)が訪問した photo:Makoto.AYANO
ブランドの創業はどのようなきっかけだったんですか?
蔡:姉から借金したお金でユーロバイクを視察訪問し、そこで「自転車ってこんなにも面白いのか」と感銘を受けたこと、中国のブランドが見当たらなかったことで、フレームづくりを決意したんです。
蔡さんは日本語がペラペラですね(日本語の名前で「さいまさあきです」と自己紹介する)。日本とのつながりを教えてください。
蔡:日本の札幌と河内長野に住んでいました。自転車のことは日本で働きながら学びました。大阪の河内長野では三浦恭資さんのもとでホイール組みをしたりフレームビルダーとして学びました。萩原麻由子さんが2012年のロンドン五輪ロードに出場した際に乗ったMUUR(ミュール) のロードバイクはウィンスペース製でした。
埼玉の鶴岡レーシングと協業したときは、解析ソフトを用いたフレームのジオメトリーや剛性の研究に傾倒しました。その時代に学んだこだわりは、今もウィンスペースのフレームづくりに生かされています。
Winspaceのブランド名の由来を教えてください。
蔡:私は「宇宙」、そして「青」が好きです。開発とは宇宙のような果てしないもの。宇宙のような青、ブルーをコーポレートカラーとしました。Winはもちろん優勝する、成功するという意味です。困難な人生においてこのブランドがあなたの助けになって挑戦に勝利すること、すべてのユーザーが人生で勝利できるよう励ましたい、という意味を込めました。
ウィンスペースの目標は「ツール・ド・フランス出場チームにバイクをスポンサードすること」と掲げていますね。女子チームはすでにその夢を叶えましたが、男子チームのほうはいかがでしょう?
蔡:男子のツール・ド・フランス出場チームにバイクをサポートするという大きな目標は、2030年までに叶えたいのです。そのためにまず「スーパーバイク」プロジェクトがあります。
プライド:トップブランドへの道は長く遠いものです。トップチームへのスポンサードには大きな資金が必要ですが、同時にもっとも優秀なバイクをつくっていれば、それはチームからも要望になって歩み寄れるはずです。ですから素晴らしいバイクをつくることは夢へ近づく一歩だと考えています。
蔡:しかし私たちは「プレミアムブランド」になるつもりはありません。今、多くの国でサイクルスポーツはインフレと物価高により「近寄りがたい趣味」になりつつあります。
企業としては高価格・高マージンの製品にしたほうが儲かります。しかしウィンスペースは常に受け入れやすい価格で製品を提供することでこのスポーツを支えます。といっても安いだけではダメ。最高の製品をリーズナブルな価格で。サイクルスポーツが特別なお金持ちだけの趣味にならないように努力します。
ウィンスペースにとって成功とは何ですか?
蔡:私の成功というのは考えてなく、周りの人が信頼してくれて、幸せになることを考えます。ビジネスはときに冷酷な面もありますが、厳しいときも諦めずに進んでいく。大事なパートナーと一緒に歩んでいくと決めています。これからのウィンスペースをよろしくお願いいたします。
サイクリングジプシーカフェ(Cycling Gypsy Café)
:WINSPACEテストライドセンター
〒250-0045 神奈川県小田原市城山1丁目31−33
電話番号: 080-3409-0710
試乗会の開催状況や予約はサイクリングジプシーカフェ Facebookページにて確認して予約する(試乗にはかならず予約が必要です)。
text&photo:Makoto AYANO

中国・厦門(アモイ)に本社を置くスポーツバイクブランドのウィンスペース(WINSPACE)が、神奈川県小田原市のサイクリングジプシーカフェ(Cycling GYPSY Cafe)において同ブランドのこれからの開発体制とブランドの方向性を説明する発表会を開催した。中国からは社長の蔡正昌氏も来日。同社の要人が一堂に会した。

最大のトピックは、元チャプター2代表のマイク・プライド氏がテクニカルディレクター(技術監督)としてウィンスペースに合流することだ。そして同時にマイキーおよびパートナーのグレンさんが同ブランドの国際コミュニティ担当となり活動をスタート。日本では小田原の「サイクリングジプシーカフェ」がその拠点となること、さらに試乗ができる「WINSPACEテストライドセンター」になることも説明された。

ニュージーランドのバイクブランドとしてユニークなバイクの数々をプロデュースしてきたチャプター2(chapter2)。その顔であったマイク・プライド氏のウィンスペースへの加入はすでにSNSで発表済みだが、今回の発表会は日本のチャプター2ファンに向けてその移籍の理由を説明すること、同社におけるこれからのプライド氏の役割などをアピールすることを目的としたようだ。

プライド氏の移籍は2月。すでにチャプター2ブランドは氏の手元を離れ、同ブランドの製造元だった工場がブランドの権利を買い取ったという。
ウィンスペースはチャプター2の株主として関係を持っていた。しかしチャプター2と製造工場の契約には同ブランド製品の製造を独占的に行うという条件があったため、ウィンスペースがチャプター2ブランドを買い取ることはできなかったという。

プライド氏はすでにチャプター2ブランドを手放したため、今後の展開には関与しないという(しかしチャプター2が今後プライド氏に開発を依頼することはできる)。プライド氏はすでに今春よりウィンスペースのバイク開発に携わっている。

チャプター2とマイク・プライド氏のバイクづくりに関して、シクロワイアードではどのメディアより詳細に伝えてきた。筆者・綾野(シクロワイアード編集長)もニールプライド時代からのチャプター2ファンであり、3モデルのバイクを愛用してきたばかりでなく、アンバサダーのマイキーとともにあらゆる企画をともに展開してきた。(過去記事一覧)
その関係があるだけにチャプター2ブランドの終焉は残念だった。しかし同時に、このスポーツバイク界の不況下では仕方ないこととも感じる。日本での売上自体は同ブランドの世界におけるトップセールスであったにもかかわらず、同社の売上不振を知っていたからだ。
製品自体が良くても、現在のバイクビジネスにおいてはマーケティングとプロモーションによる訴求と完成車の大量販売が成功のカギであることは間違いなく、その両方に欠けるハイエンドカーボンフレーム専業ブランドがコロナ禍からの不況を乗り切ることはできなかった。マニアックな良い製品だからといって成功は約束されないのだ。
しかし筆者が思うにマイク・プライド氏の開発力やデザイン力は素晴らしいものがある。
世界の大手トップブランドは優れた開発チームをもち、かつ外部にも天才的な人物が運営する開発会社が存在する。スコットやキャノンデール、スペシャライズドなど大手ブランドを渡り歩いてフラッグシップモデルを開発してきたピーター・デンク氏などはその例だが、知名度は劣るもののプライド氏の製品開発力は決して引けをとらない、というのが私の評価だ。

プライド氏は自他ともに認めるスポーツバイク狂で、バイクデザイナーでありつつ建築家でもあり、かつ元MTBダウンヒルの選手だったバックグラウンドもあり、その時々の流行に乗ったスポーツバイクをリリースし続けてきた。
近年においても、タイヤのワイド化がもたらすライドフィーリング向上の恩恵をいち早く取り入れた設計のオールロード系バイクを他社に抜きん出て早く製品化してきた。しかもほとんどのモデルをプライド氏ひとりで開発できるほどの完結力を持ち合わせていること、大手ブランドに劣らないスピーディーな開発と展開をしてきたことを、高く評価している。プライド氏は間違いなくバイク開発界の数少ない天才のひとりだ。

そんなプライド氏の加入はウィンスペースにとって願ってもないことだろう。躍進著しい中国ブランドの多くが今だに独自性や魅力ある製品を生み出す開発力に欠けると言えるなか、プライド氏の獲得は同ブランドにとって大きな武器になることは間違いない。
近年、日本国内で人気急上昇中のウィンスペース。本社工場の高い生産力や品質管理についてはインフルエンサーによって伝えられている。国内プロチームのスパークル大分へのサポートも5年目に入り、チームからのフィードバックが製品に生かされている。スパークルには小柄な選手が多いことで、アジア人体型や小柄なユーザーへ向けた同社の製品づくりのノウハウは大きく進んだという。

そうした面での信頼性の向上は他の中国ブランドより抜きん出た印象だ。さらに今回来日した社長の蔡正昌(さい・まさあき=Staphen Cai)氏は日本の自転車界で修行した経験をもち、ブランドの様々な面を流暢な日本語で淀み無く説明してくれた。

ウィンスペースの要人・関係者が一堂に会した小田原の発表会。チャプター2ファンのなかではプライド氏の移籍は衝撃となっており「ファンへの裏切り」といった声も出ていたが、結局は当日集まった一般参加者のほとんどはチャプター2とマイク・プライドのファンであり、かつサイクリングジプシーカフェを拠点に以前から集うコミュニティの常連たちだった。
午前中は皆で小田原周辺の散策ライドを楽しみつつ交流を深め、カフェに戻ってグレンさん手づくりの美味しいランチを楽しんだ後、説明の機会が設けられた。その模様は今後同ブランドのソーシャルメディア等で配信される予定だが、ここではキーとなる質問と応答をダイジェストしてお伝えしよう。
マイク・プライドの合流、国際コミュニティ立ち上げ、ウィンスペースのこれから

マイク(・プライド)さんが加入することでウィンスペースにもたらされる変化は何だと考えていますか?
プライド: 15年の間、自身のブランドを展開し、プロダクツをデザインしてきた経験があります。その私の経験がウィンスペースに加わることで、よりマーケットの要求に沿ったプロダクツが生み出せるようになると考えています。私のレシピがウィンスペースのものとなる。私にとっては自分のブランドでできなかったことができるようになります。

蔡:サイクリングのマーケットは非常に国際的なものです。中国に居る私が見ている視点と違い、マイクの視点は非常にグローバルなものの見方で、サイクリング界の変化やカスタマーのニーズの変化を見ていると感じます。その視点はウィンスペースにとってとても有益なものになるはずです。
マイキー:マイク・プライドと僕の15年以上のおつきあいの経験から言わせてください。マイクのセンスは、その時々のバイクインダストリー(自転車産業)がどの方向に向かうのかを常に敏感にキャッチして、サイクリストの要求にあったプロダクツを生み出してきたことを知っています。ニュージーランドに居てもアジアに居ても、マイクの生み出すデザインは国際的センスに溢れていて、今後のバイクマーケットの進む方向、サイクリストの興味やニーズの向かう先を敏感に感じ取って、デザインやプロダクツに落とし込むことができるんです。

蔡:私とマイクとは10年以上前からの知り合いです。生産現場でお互い知り合った競合、つまりライバルでしたが、エンジニアとして、尊敬できる人として仲良くしてきました。そして近年はチャプター2の株主になって投資をしてきました。ですから彼が困難に陥った時、「一緒にやらないか」と声をかけるのは自然なことでした。お互いのレベルを上げるために歩んできましたから。

そして2月にウィンスペースにマイクが加入してくれました。バイクフレームのデザインや設計には最低でも1年〜1年半以上がかかるから製品はまだ世には出ていないけど、グラフィックはマイクがデザインしたものがすでに製品化されています。マイクは建築家でもあり、あらゆるデザインセンスが素晴らしく、ブランディング、マーケティング、グラフィックデザインにも携わってもらっています。

マイクさんの設計したバイクはいつごろ発表されますか?
プライド:まだ明かせないのですがプロジェクトは現在進行中です。早ければ年内、あるいは来年の早くに発表できるでしょう。世界でもっとも速いバイクのひとつになるであろう「スーパーバイク」とだけ言っておきます。
蔡:まだ秘密ながら付け加えると、特別なスーパーバイクでありながら、アフォーダブル(手頃)な価格のバイクです。今、世界じゅうでスポーツバイクの価格は「天井知らず」に上昇していて、それは好ましいことではありません。誰もが手にできるバイクは私たちのDNAです。そして世界一速いバイクのひとつが完成したら、この場所で発表できたらいいですね!。
ウィンスペースの強みや、マイクさんに期待することは何でしょう?

蔡:我々はカーボンのエキスパートであり、レイアップ等の技術や製造方法に自信があります。そこにマイクが加わることで、プロ選手やアベレージライダー(一般サイクリスト)が求める製品、マーケットが求めているものをデザインとして落とし込み、製品として生み出す。そのすべての生産工程を、自らが管理している工場のなかで行うことができるんです。
サイクリングジプシーとの協業について聞かせてください

蔡:今後の自転車界について語る時、プロダクツとライダーに加えて「コミュニティ」が欠かせないものだと考えています。ブランドの将来は、ただプロダクツが負うだけでなく、人のつながりが大事になってくると考えています。プロダクツの良さで勝負することと同じように、コミュニティでも差が出ると考えています。だからマイキーをウィンスペースの国際的なコミュニティ・マネジャーに任命したのです。

マイキー:ボクは英語がちょっとできるから国際的なコミュニティづくりで活躍したいと思います(笑)。日本だけでなく、世界各国でウィンスペースのコミュニティづくりの活動を行うのはとてもエキサイティングです。そしてここ小田原のサイクリングジプシーカフェが「WINSPACEテストライドセンター」になります。バイクの試乗ができるほか、いろんなライドイベントを開催します。


蔡:ブランドはモノと人なんです。結局は人との関係に行き着いていく。今日のように一緒に自転車に乗って皆で共感し合うような体験が、将来あるビジネスとしてすごく大事なことなんです。マイキーさんの今までの経験を活かしてもらいながら、楽しくやっていければと思います。

プライド:ここまでの15年間、ニールプライドとチャプター2、私の2つのブランドにおいて日本は世界で一番良いコミュニティを確立してきました。それはマイキーとグレンちゃんの活躍無しでは成り立たなかったと考えています。


マイキー:僕がマイクと一緒に働いてきたのは、彼のつくるバイクが素晴らしいと感じてきたからです。今はウィンスペースも同じことを感じています。実はそれまで尊敬はありませんでした。ウィンスペースのバイクに乗るまでは。しかし一度乗るとその考えは一気に変わった。ここにある新しいM6は乗ってみると素晴らしいバイクでした。
僕にとってサイクリングはパッション(情熱)、コミュニティをつくることもパッション。乗るバイクにパッションが感じられない場合は僕のエネルギーも出ない。しかし情熱ある人がつくるバイクと信頼関係があれば、より情熱を持って頑張れる。それが自分です。ステファン社長にはそのパッションを感じます。自転車のことを話しているときは子どものようにはしゃいで生き生きとする。それはマイクも同じです。

そのような自転車が好きな人たちと一緒に仕事がしたいと常に願っています。計算器でビジネスをする人に魅力は感じません。自転車を愛する人たち、マイクやステファンと仕事をすることが楽しみです。パートナーとして尊敬し合い、強い絆で結ばれた3人が協力しあって盛り上げていきます。
ウィンスペースの世界における現在のシェアはどこが高いんですか?
蔡:今ヨーロッパがもっとも大きなシェアを占めていますが、「ドアを開けにくい国々」でした。なぜならヨーロッパにはたくさんの国があり、それぞれ言語も文化も違う。それを切り拓いてきたことで、近年のウィンスペースは急成長を遂げています。でも人気が出てきたのはつい5年ほどのことです。

女性のプロチームがツール・ド・フランスに出場したことはひとつの目標達成ですか?

プライド:ウィンスペースは数カ国の異なる地域でスポンサー活動を展開しています。フランス、タイ、日本(スパークル大分)でもプロチームをサポートしている。私もかつて自分のブランドでの経験がありますが、それは本当に素晴らしいことです。また、それがウィンスペースがこのスポーツにかける情熱によって動いている証拠です。その情熱こそがこのビジネスには必要なんです。

ウィンスペースはMTBをつくる予定がありますか?
プライド:MTBに限らず、現在はTTバイク、トライアスロンバイク、eBikeなどなど、視野を広くもち、様々なバイクの可能性をリサーチしている段階です。ウィンスペースの方向性は、あらゆる車種や多くの製品をラインアップする総合ブランドになることでなく、ユーザーの要求にあった最適なスポーツバイク製品を提供することです。新しいチャレンジに対しては注意深く進んでいければと思っています。
蔡:グローバルブランドになるためにビジネスで成功することは大事ですが、異なった文化の中で受け入れられることも大事にしていきたいのです。そのためにも人と人の関係です。今日も窪木一茂さんが訪ねてきてくれました。彼とは10年以上前からの関係があり、それで訪ねてきてくれたのです。本当に嬉しい。

ブランドの創業はどのようなきっかけだったんですか?
蔡:姉から借金したお金でユーロバイクを視察訪問し、そこで「自転車ってこんなにも面白いのか」と感銘を受けたこと、中国のブランドが見当たらなかったことで、フレームづくりを決意したんです。
蔡さんは日本語がペラペラですね(日本語の名前で「さいまさあきです」と自己紹介する)。日本とのつながりを教えてください。
蔡:日本の札幌と河内長野に住んでいました。自転車のことは日本で働きながら学びました。大阪の河内長野では三浦恭資さんのもとでホイール組みをしたりフレームビルダーとして学びました。萩原麻由子さんが2012年のロンドン五輪ロードに出場した際に乗ったMUUR(ミュール) のロードバイクはウィンスペース製でした。
埼玉の鶴岡レーシングと協業したときは、解析ソフトを用いたフレームのジオメトリーや剛性の研究に傾倒しました。その時代に学んだこだわりは、今もウィンスペースのフレームづくりに生かされています。
Winspaceのブランド名の由来を教えてください。
蔡:私は「宇宙」、そして「青」が好きです。開発とは宇宙のような果てしないもの。宇宙のような青、ブルーをコーポレートカラーとしました。Winはもちろん優勝する、成功するという意味です。困難な人生においてこのブランドがあなたの助けになって挑戦に勝利すること、すべてのユーザーが人生で勝利できるよう励ましたい、という意味を込めました。
ウィンスペースの目標は「ツール・ド・フランス出場チームにバイクをスポンサードすること」と掲げていますね。女子チームはすでにその夢を叶えましたが、男子チームのほうはいかがでしょう?
蔡:男子のツール・ド・フランス出場チームにバイクをサポートするという大きな目標は、2030年までに叶えたいのです。そのためにまず「スーパーバイク」プロジェクトがあります。
プライド:トップブランドへの道は長く遠いものです。トップチームへのスポンサードには大きな資金が必要ですが、同時にもっとも優秀なバイクをつくっていれば、それはチームからも要望になって歩み寄れるはずです。ですから素晴らしいバイクをつくることは夢へ近づく一歩だと考えています。
蔡:しかし私たちは「プレミアムブランド」になるつもりはありません。今、多くの国でサイクルスポーツはインフレと物価高により「近寄りがたい趣味」になりつつあります。
企業としては高価格・高マージンの製品にしたほうが儲かります。しかしウィンスペースは常に受け入れやすい価格で製品を提供することでこのスポーツを支えます。といっても安いだけではダメ。最高の製品をリーズナブルな価格で。サイクルスポーツが特別なお金持ちだけの趣味にならないように努力します。
ウィンスペースにとって成功とは何ですか?
蔡:私の成功というのは考えてなく、周りの人が信頼してくれて、幸せになることを考えます。ビジネスはときに冷酷な面もありますが、厳しいときも諦めずに進んでいく。大事なパートナーと一緒に歩んでいくと決めています。これからのウィンスペースをよろしくお願いいたします。
サイクリングジプシーカフェ(Cycling Gypsy Café)
:WINSPACEテストライドセンター
〒250-0045 神奈川県小田原市城山1丁目31−33
電話番号: 080-3409-0710
試乗会の開催状況や予約はサイクリングジプシーカフェ Facebookページにて確認して予約する(試乗にはかならず予約が必要です)。
text&photo:Makoto AYANO
リンク
Amazon.co.jp