ベルギーがシクロクロスでもっとも盛り上がるクリスマスシーズン。X’masイブからの年末から年始にかけての20日間、日本人シクロクロッサーのサポートをしながら連日参戦する梶鉄輝さん率いるチームOlanda Baseの活動にスタッフとして帯同したレポートをお届けする。



Xmasクロス遠征中のチームOlanda Baseのスタッフ、選手たち photo:Hiro Ayano

綾野尋 Hiro Ayano
レポート 綾野尋(あやのひろ)

5歳からシクロクロスを始め、現在はフランス・リヨンにワーキング・ホリデーで滞在中(選手活動ではない)の21歳。
毎年欧州各国で開催されるMTBオリエンテーリング世界選手権には10代の頃より連続出場中。シクロクロス全日本選手権U23では7位だった。cycleclub3UP.所属



こんなにも達成感を感じたのはいつぶりだろう。もしかしたら長い人生(21年)で一番かもしれないな、と思いながらベルギー・ゾンホーヴェンでのシクロクロスワールドカップ会場を後にする車の運転席に乗り込んだ。1月4日、このレースをもって怒涛のクリスマスシーズンのシクロクロス連戦帯同が終わった。

今期間帯同させていただいたのはオランダに拠点を構え、日本人とオランダ人で構成されたUCIシクロクロスチームOlanda Base/Watersley(オランダベース/ウォータースレイ)、そして日本からのレース参戦をサポートするチームOlanda Base。筆者はこれらのチームの臨時スタッフとしてクリスマスクロス参戦のお手伝いをした。

吹きすさぶ雪の中でアップ中のチームOlanda Base/Watersley photo:Hiro Ayano

ことの顛末を振り返ると、シクロクロスシーズンが始まろうとする9月にOlanda Baseの代表兼選手である梶鉄輝(かじてつき)さんから「ヒロ、フランスに住んでいるなら今年のクリスクロスの期間スタッフとして来ない?」とのメッセージに、即答で「行きます」と答えたのが始まりだった。

シクロクロスにおけるクリスマスシーズンとは、12月下旬から年始にかけてベルギーでUCIレースが連日開催される期間のことを指す。今シーズンでいえば12月20日のアントワープに始まり、1月4日ゾンホーヴェンまでの16日間に12ものレースが開催された。

スーパープレスティージュ戦には凄まじい観客が詰めかける photo:Hiro Ayano

世界中のシクロクロスファンが熱狂するこの期間は、選手とチーム関係者にとっては目が回るような忙しい時期でもある。5歳からシクロクロスを始め、この競技を愛する筆者にとって憧れの本場で働くことができるまたとない機会だった。

12月14日に大阪/二色浜で開催されたシクロクロス全日本選手権大会への参戦のためにフランスから一時帰国していた筆者は、レース3日後の12月17日に、同じく全日本に出場していたOlanda Baseのチームメンバーたちと再びオランダで合流した。

レースを走る岡山優太(チームOlanda Base/Watersley)。全日本選手権はエリート11位だった photo:Hiro Ayano

チームOlanda Baseは、自身のチームとしてのレース参戦とともに、日本から本場のCXレースに参戦したい選手たちのサポートを行っている。オランダを拠点に活動し、現地のスペシャリストやスタッフともコネクションを持ち活動体制を整えていることで、それを頼って欧州でのシクロクロスや自転車レースに参戦・活動する選手たちの支えになっている。

ヒュースデンゾルダーにて山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Hiro Ayano
織田聖にとってはクリスマスクロスがもっとも大事な活動のようだ photo:Hiro Ayano



チームピットでウォームアップする田島綾人(チームW.V.OTA) photo:Hiro Ayano

今回のクリスマスクロスではチームW.V.OTAの田島綾人、弱虫ペダルサイクリングチームの山田駿太郎らの活動をサポートした。また、全日本チャンピオンの織田聖についてもレース会場でのアシストをした。

今回の帯同での自分の役割は主に3つ。レース会場往復でのチーム車両の運転手、レース前後で選手の様々な要望を聞いて実行するソワニエ、そしてレース中のピットクルーだ。

荷物満載のチームバンを運転して会場へ photo:Hiro Ayano
寒い雪のクロスの朝食はホットコーヒーとベルジャンワッフル photo:Hiro Ayano



よほど大きなチームでない限り、シクロクロスチームのスタッフは1人で多方面のタスクをこなす必要がある。それが連日となればかなりの激務になる。自分が体験したそんなスタッフの1日の流れを振り返ってみよう。

8台のバイクに水タンク2つ、ローラ台3台を搭載。ホイールは数え切れない photo:Hiro Ayano

朝6時に起床し、朝食を済ませたら選手たちの荷物を積み込み、会場に向かう。もちろん会場までの距離によって時間は変わるが、Olanda Baseの拠点があるオランダのシッタード(Sittard)からベルギーの各会場までは大体1時間から2時間強の道のりだ。

ヒュースデンゾルダー・サーキットのピットエリアに陣取る photo:Hiro Ayano

朝8時頃会場に着いたらまずは受付。ここでゼッケンに同封されている駐車証を貰わないと会場近くの駐車場にアクセスができない。無事チームエリアに駐車できたら9時半にスタートするジュニア選手のバイクをセットし、試走へと送り出す。

ピットゾーン出入りのスタッフ証はリストバンド photo:Hiro Ayano
5歳の頃からファンのスヴェン・ネイスに会えた photo:Hiro Ayano



マチューの飼ってる柴犬。カワイイ photo:Hiro Ayano

現地でOlanda Baseをサポートしてくれるスタッフと合流し、他の選手のバイクを組み、ローラー台、洗車道具などを車から降ろし、チームの拠点を整理する。そうこうしているうちに試走から戻ってきた選手のバイクを受け取り洗車、空気圧の最終チェックや試走でのバイクの違和感を確認する。そうして選手を送り出した後はサブバイクやスペアホイールを持ってピット業務が始まる。

ウォームアップ中の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)たち photo:Hiro Ayano

ピットにて photo:Yuika Nishioh

ピットでの仕事はバイクの交換と洗車だけではない。先頭からのタイム差や前走者とのギャップ、レースを通して変化するレコードラインを伝えていく。

モルの砂場をこなすワウト photo:Hiro Ayano

ジュニアのレースが終わったら拠点に戻り、使用したバイクを洗車してメンテナンス、と同時にU23、エリートの選手が試走に行くのでスペアバイク、ホイール、空気入れをもってピットで待機する。もちろん試走が終わったら再度バイクを洗車する。そうしてU23、続いてエリートとレース前後でのサポート、ピットワークを繰り返す。

フライオーバーの高さと巨大さには驚かされる photo:Hiro Ayano

落ち着いて昼食を取る時間はなく、朝作ってきたサンドイッチとりんご、ワッフルなどを作業の合間にかじってエネルギーを補給する。少し時間に余裕があったら会場で売っているフリッツやハンバーガーを食べることも。

クロス会場で食べるフリッツは正直微妙な味だった photo:Hiro Ayano

エリートのレースが終わり、洗車も終わったらバイクと荷物を車に積み込み、一緒に働いたスタッフたちに「じゃあまた明日ね」と言って帰路に着く。帰宅しシャワーを浴びて、夕食をとったら明日の出発時間を確認しアラームをセットして就寝。

雪のレース終了後、凄まじい渋滞のなか帰路につく photo:Hiro Ayano

こんな一日を12日間繰り返した。もちろん忙しかったが、憧れの舞台でシクロクロスという競技を愛する仲間たちに囲まれて仕事をする日々は何にも変え難い充実感に満ち溢れていた。改めてこのような機会を恵んでくれたOlanda Baseのスタッフ、選手たちに感謝したい。

そして、そんな忙しい日々を支えてくれたのは人だけではなかった。ここからはベルギーの現場でよく目にしたガジェットを2つ紹介したい。振り返るとこの12日間で何台のバイクを洗車し、何本のタイヤの空気圧調整をしただろうか。本場の多忙なシーズンに重宝されていたアイテムは今後のシクロクロス参戦に役立つかもしれない。

タイヤへのエア充填はBosch社のEasy Pumpで photo:Hiro Ayano

まずはBosch社のEasy Pump。この期間中最も目にしたガジェットといえばこれだった。ピットにいるクルーが1人ひとつ持っているほどの普及率。Bar, Psi, kPaの3単位に対応し、入れたい空気圧をプリセットしてスイッチを入れれば自動で素早く空気を入れてくれる。従来のフロアポンプとエアゲージでの調整をタイヤ3本目にはラップアウトするほどの速さだ。

エアブロワーで洗車後の水分を吹き飛ばす photo:Hiro Ayano

次にエアブロワー。こちらはメーカーは様々だったが全てのチームが活用していた。洗車後のバイクに残った水を素早く弾き飛ばし、乾かすことができる。チェーンやギアカセット、ペダル、ディスクローター、タイヤのノブなど細かい箇所に溜まる水分を一瞬で吹き飛ばし、注油やパッキングにすぐに移れるため多忙な現場では欠かせないアイテムだった。



今回の遠征については小俣雄風太さん主宰のArenbergポッドキャストでも語っていますのでご拝聴ください。(1月20日〜配信)
https://arenberg.press/

なおチームOlanda Baseの活動については以下リンクの記事も参照してほしい。

梶鉄輝率いる「チームオランダベース」始動 欧州挑戦サポートで日本の競技発展を

次回はベルギーでみたシクロクロス事情についてレポートします。

photo&text : Hiro AYANO

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