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温暖なスペインで開催された新型REACTO発表会

スペイン東部、カステリョン州の地中海を望む街・ベニカシム。冬でも温暖な風が吹き抜けるこの周辺地域は、シーズンインを控えたプロ選手たちがベーストレーニングを積み上げる、マヨルカ島と並ぶ欧州サイクリング界における「冬の聖地」だ。

スペイン、ベニカシムで開催されたメリダの発表会。20名以上のジャーナリストが招聘された photo:MERIDA BIKES
メリダR&Dセンターを統括するベンジャミン・ディーマー氏。彼へのインタビューは別記事にて photo:MERIDA BIKES


世界中から集ったジャーナリストの前で披露された新型REACTO photo:MERIDA BIKES

発表会の前日まで合宿明けのプロレース「セッティマーナ・シクリスタ・バレンシアナ」が開催されていたことを示すように、色鮮やかなチームカーやバスと何台もすれ違い、すぐ裏に広がる山岳地帯に入れば自主トレーニングに励むプロ選手の姿を何人も見ることができた。そんな熱気が色濃く残る海沿いのホテルに、いかにもエアロロード然としたバイクが鎮座していた。それがメリダが放つ第5世代となった最新「REACTO(リアクト)」だった。

2020年の登場した先代から約5年。かつてツール・ド・フランスの山岳ステージを制し、北の地獄パリ〜ルーベの石畳で頂点に立った名作の後継機は、奇をてらった造形に逃げることなく、メリダらしく極めて実直な「正統進化」という姿で我々の前に現れた。

エアロロード界を牽引したREACTOが最新第5世代へ

先代と比較してアグレッシブな立ち姿に変化したREACTO。極端なエアロデザインを用いず、大幅な空力改善を成し遂げた photo:So Isobe

「第4世代のREACTOに関しては、改善を求める声が驚くほど少なかったのです」。ドイツはシュツットガルト近郊、マグシュタットにあるメリダR&Dセンターを統括するベンジャミン・ディーマー氏は誇らしげにそう語る。およそ1年前に来日してインタビューに答えてくれた彼は、もちろん今回の新型REACTOの開発を主導した一人だ。

REACTOの歴史を紐解けば、そのデビューは2011年にまで遡る。現行モデルまで貫かれている直線基調のダイナミックな造形は、まだ「エアロロード」という概念が一般的ではなかった当時「これこそが真のエアロロードだ」と知らしめるに十分な衝撃を世界に与えた。その誕生から現在に至るまで、REACTOは常にメリダの、そして世界のエアロロードの指標であり続けてきた。

昨年のジャパンカップを制したレニー・マルティネス。プロトタイプの新型REACTOで掴んだ独走勝利だった photo: Yuichiro Hosoda

ソンニ・コルブレッリのパリ〜ルーベ制覇を支えたのも先代REACTOだった photo:CorVos
宇都宮ブリッツェンの平坦レース用バイクとしても活躍 photo:Satoru Kato



2020年の登場以来、先代(第4世代)のREACTOは空力性能と剛性を追求した「完成されたエアロロード」としてプロアマ問わず、スピードを愛するサイクリストの良き選択肢となってきた。ソンニ・コルブレッリのパリ〜ルーベ優勝は開発目標の一つだったという快適性を証明するものだったし、ツール・ド・フランスをはじめとする各グランツールでもステージ優勝を挙げてきた。世界ではバーレーン・ヴィクトリアスが、国内やアジアでは宇都宮ブリッツェンをはじめとするメリダのサポートチームがREACTOで勝利を勝ち取ってきた。

だからこそ、第5世代への刷新は慎重に進められた。納期に追われて妥協するのではなく、真に「次代の正統」と呼ぶにふさわしい最高の一台を完成させること。この決断が、2022年から2026年という、ロードバイク開発としては異例の長い成熟期間を生んだという。

今回、メリダ開発陣が課したハードルは、極めて明確かつ野心的だった。第一に、ドイツのTOUR誌が定めるテストルールにおいて「200ワットの壁」を突破すること。第二に、剛性を一切妥協することなくUCI規定の「6.8kg」を実現すること。そして第三に、先代が誇ったクラス最高レベルの快適性を一切損なわないこと。「速さ」を極めつつ、オールラウンダーとしての「万能性」をどこまで高められるか。第5世代のREACTOは究極のオールラウンダーを目指して開発が行われた。

アグレッシブな専用ハンドル、レイノルズとの共同開発で空気抵抗減

シャープなデザインに生まれ変わったフロント周り。軽量化のためにフォークとダウンチューブは切り離したフォルムになった photo:So Isobe

実際に目の当たりにした第5世代のREACTOは、先代が持っていた直線的で力強いシルエットを継承しつつ、より鋭利なデザインを纏って佇んでいた。もう既にスペインでテストライドを済ませてきたが、乗り味にもこのアグレッシブな造形は現れていて、とにかく速く、剛性が高い。打てば響くかのような硬さで車体は真っ直ぐ突き進むのだ。

ライド中も「空気の抜け感」は如実に体感できたことだが、今回の新型REACTOは「200ワットを下回れば超一線級」と称されるTOUR誌の厳格なテスト基準において、先代の209ワットという強固なベンチマークを大幅に塗り替え、196ワットを達成。目標としていた「200ワットの壁」を大きく超えて到達している。

極めて幅狭な290mm幅の「TEAM CW 1P」コックピット(UCI非承認)。国内では別売のオプションとして展開される photo:So Isobe

TEAM CW 1Pは幅狭タイプで上290mm。空力のためにシーガルウイング形状を採用する photo:So Isobe
もちろん他社製ハンドルも組み付け可能。こちらはヴィジョンのMetron 5Dハンドルを装備した「TEAM」完成車 photo:So Isobe



この飛躍的な進化を支えたのは、独自開発のREACTO専用「TEAM CW 1P」コックピットの誕生と、横風を受け流す性能において他社を圧倒するポテンシャルを誇っていたというレイノルズとの徹底した共同開発だ。専用設計という手法が業界のスタンダードとなる中、新型REACTOもハンドルやホイールを「一つのシステム」として捉え、空力を極限まで最適化している。

単体で5ワットの空力改善を叶えた「TEAM CW 1P」コックピットは、バーレーン・ヴィクトリアスの選手の声を反映して作られた、最も幅狭バージョンで「上290mm/下380mm・上325mm/下400mm」という過激なサイズを持つREACTO専用品。残念ながらUCIの新ルールに基づいてUCIレースでの使用は禁じられたものの「UCIレースではなくとも速さを追い求めるユーザーに向けて」と開発を続け、ラインナップに加えることを決めたという(日本では別売りのオプション品としてラインナップされる。テストライドでは290mm版を試した)。

3Dプリンターで生成したプロトタイプをアルミの骨格に取り付けて風洞実験に持ち込んだ photo:So Isobe

風洞実験に足を運んだ回数は4度。最終的には実際のライドフィールを元に仕上げを行ったという photo:So Isobe
現在開発中というエアロボトルとケージ。遅れて一般発売も行われる予定だ photo:So Isobe


Metron 45 RSホイールを装着したSサイズの「TEAM完成車」。ペダルレスで実測6.74kgだった photo:So Isobe

合計4回に及ぶ風洞での検証では、3Dプリンターで生成した無数のプロトタイプをアルミの骨格に装着し、ダウンチューブとフォークレッグの隙間からヘッド周りの気流まで、あらゆる組み合わせを試したという。シミュレーションから風洞実験を経て、最終的に製作された数台のプロトタイプはバーレーン・ヴィクトリアスの選手たちや、メリダ開発陣自身によるテストで最終完成形へ。当初プロトタイプはもう少し軽量だったというが、「80km/hに達するダウンヒルでフロント剛性が僅かに足りない」という声を受けて、フォークやヘッド周りに50gのカーボン積層を追加。重量増を省みずフィードバックを活かすという極めて現実的なアップデートが図られている。

また、軽量化に関してもフレームセットで合計-108.3g(基準はペイント済みのMサイズ)を達成した。フレーム自体は950gで-11g(950g)と僅かで、幅広になったフォークは475gと2g重たくなっているものの、シートポストは-64g、サドルクランプは-19g、フレームクランプは-18.8g...と、主にスモールパーツを徹底的に刷新して重量減を叶えている。なおここには含まれていないものの、メリダらしい「ディスクブレーキクーラー」も大きく軽量化された。

あくまでメリダらしく。汎用性と整備性を担保

空力性能と軽量化を高める一方で、メリダのエンジニアたちが譲らなかった一線がある。それは「ロードバイクとしての汎用性」と「メンテナンス性」だ。

フォークは丸断面コラムを継続採用。メンテナンス性を担保するための選択だ photo:So Isobe
シートチューブは大胆にカットアウト。ワイドタイヤに対応しつつ、空力をあまり損なわずに済むという判断だったという photo:So Isobe



最新のエアロロード界では、空力的なアドバンテージを得るために、ヒンジフォークやDシェイプなど変形断面のステアリングコラムを採用するモデルが増えている。しかし、新型REACTOはあえてそれらを採用せず、丸断面コラムと上下1-1/2インチベアリングを残した。「確かにDシェイプコラムを使えばヘッドチューブを細くして空力的なメリットが得られるかもしれません。ですが、その結果として整備性が損なわれてしまうなら、それは我々が理想とするバイクではないのです」とベンジャミン氏は言う。専用設計のパーツを多用し、複雑な構造を持つバイクは、確かに風洞実験室では速いかもしれない。だが、長年愛用するユーザーやショップのメカニックにとって、それは真の「フレンドリー」とは言えないからだ。

丸断面のコラムを維持し、FSAのACRシステムを使うという扱いやすい構造でありながら、かつてない空力性能と軽さを両立させる。この一見すると相反する難題をクリアするために、彼らは数え切れないほどの試行錯誤を繰り返した。

シマノ デュラエースとヴィジョンのMetron RSホイールとハンドルで武装した「REACTO TEAM」完成車(176万円、国内販売は色が異なる) photo:So Isobe

「ポジションスタンダードが激しく変化する現代のレースシーンにおいて、あえて先代のジオメトリーを大きく変えなかったのも、REACTOが持つ鋭いハンドリングと安定性のバランスが、多くの選手から高く評価されていたからです。コンポーネントメーカーのスタンダードに応えてチェーンステーを2mm延長(408mm→410mm)し、タイヤクリアランスを32mmまで拡充させたこと以外は、変える必要がなかった。それは、先代の設計がいかに本質を突いていたかの証左でもあります」。

こうして完成した新型REACTOはツール・ド・フランスを皮切りに実戦投入され、ツールではレニー・マルティネス(フランス)が途中山岳賞ジャージを着用し、トースタイン・トレーエン(ノルウェー)もブエルタでマイヨロホを着用。マルティネスはシーズン最終戦となったジャパンカップでも独走勝利を挙げ、その印象を強くアピールしたのだ。

新型REACTOラインアップ

CF3フレームに機械式シマノ105を組み合わせたREACTO 4000 photo:So Isobe

新型REACTOはハイエンドの「CF5」と、価格を抑えた「CF3」の2グレードが展開される。CF3グレードはカーボン素材と積層手法が異なるものの、フレームのフォルム自体と剛性、空力などの各種数値は全く一緒というバリューモデルだ。

2グレードで多くの完成車パッケージやフレームセットが用意され、マノ デュラエースとヴィジョンのMetron RSホイールとハンドルで武装した「REACTO TEAM(176万円)」を筆頭に、機械式のシマノ 105で組まれた「REACTO 4000(42.9万円)」まで揃うのは、コストパフォーマンスに定評のあるメリダならではと言えるだろう。

REACTO TEAM


REACTO TEAM (c)メリダジャパン

コンポーネントShimano Dura Ace Di2
ホイールVision Metron 60 RS
タイヤContinental Grand Prix 5000s TR 700x28C
ハンドルバーVision Metron 5D ACR EVO
サドルPrologo Nago R4 PAS Nack
重量7.1㎏(Mサイズ)
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M)
カラーSLATE GREY/BLACK(GREY)
税込価格1,760,000円

REACTO 9000

REACTO 9000 (c)メリダジャパン

コンポーネントShimano Ultegra Di2
ホイールReynolds BL60 Expert DB
タイヤContinental Grand Prix 5000S TR 700x28C
ハンドルバーVision Metron 5D ACR EVO carbon
サドルPrologo Nago R4 PAS Nack
重量7.4㎏(Sサイズ)
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M)
カラーEFFECT SILVER/UD(BRONZE)
税込価格1,199,000円

REACTO 6000

REACTO 6000 (c)メリダジャパン

コンポーネントShimano 105 Di2
ホイールVision SC 60 i23 Disc brake
タイヤContinental Grand Prix TR 700x28C
ハンドルバーMERIDA TEAM SL ONE-PIECE INTEGRATED carbon
サドルPrologo Akero RS PAS T2.0 V-mount adapter incl. MERIDA minitool
重量8.5㎏(Mサイズ)
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M)
カラーSTARFIELD PURPLE(SLATE GREY)
税込価格768,900円

REACTO 5000

REACTO 5000 (c)メリダジャパン

コンポーネントShimano 105 Di2
ホイールVision Team 35 Clincher Disc
タイヤContinental Grand Prix TR 700x28C
ハンドルバーMERIDA EXPERT CW aluminum
サドルPrologo Akero RS PAS
重量9.0㎏(Mサイズ)
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M) / 56cm(L)
カラーHALO GREEN(SLATE GREY)
税込価格559,900円

REACTO 4000

REACTO 4000(MINERAL GOLD(BLACK)、限定カラー) (c)メリダジャパン

REACTO 4000(SILK BLACK/GUNMETAL GREY) (c)メリダジャパン
REACTO 4000PASSION RED(SLATE GRAY) (c)メリダジャパン



コンポーネントShimano 105
ホイールMERIDA EXPERT CW
タイヤContinental Grand Prix 700x28C
ハンドルバーMERIDA EXPERT CW aluminum
サドルPrologo Akero RS PAS
重量9.1 ㎏(M サイズ)
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M) / 56cm(L)
カラーPASSION RED(SLATE GRAY)、SILK BLACK(GUNMETAL GREY)
限定カラーMINERAL GOLD(BLACK)、メリダパートナーショップ&公式オンラインストアにて販売
税込価格429,000円

REACTO 10K-FRM

REACTO 10K-FRM(SLATE GREY/BLACK(SILVER)) (c)メリダジャパン
REACTO 10K-FRM(BLACK/MINERAL GOLD(GREY)) (c)メリダジャパン

フレームREACTO CF5 V 700x32C max BB86.5 BBR
フォークREACTO CF5 V DISC 700x32C max
重量Frame 950g(M) / Fork475g(M)
カラーSLATE GREY/BLACK(SILVER)
限定カラーBLACK/MINERAL GOLD(GREY)、メリダパートナーショップ&公式オンラインストアにて販売
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M) / 56cm(L)
税込価格517,000円

REACTO 8000-FRM

REACTO 8000-FRM(RAINBOW PURPLE/BLACK(PURPLE)) (c)メリダジャパン

フレームREACTO CF3 V 700x32C max BB86.5 BBR
フォークREACTO CF3 V DISC 700x32C max
重量Frame 1,185g(M) / Fork519g(M)
カラーRAINBOW PURPLE/BLACK(PURPLE)
サイズ44cm(3S) / 47cm(XXS) / 50cm(XS) / 52cm(S) / 54cm(M) / 56cm(L)
税込価格328,900円


次章では、スペインでの発表会で試した新型REACTO(CF5グレード)のインプレッションを紹介。満ち溢れる剛性が導き出す鋭くシャープな加速、そして空気が薄くなったかのようなスピード感。その走りは世界中から集ったジャーナリスト一同を満足させる、特徴的なものだった。
提供:メリダ | text&photo:So Isobe