レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの選手たちが隊列を組み、グライダーを人力だけで牽引して離陸させるという前代未聞のチャレンジを成功させた。各選手がシッティングで90秒平均650ワット、合計6,500ワットを叩き出したという。



レッドブルによる「Peloton Takeoff」チャレンジ。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの選手や首脳陣が参加した (c)Red Bull Content Pool

スペイン・マヨルカ島のソン・ボネット空港で行われた「Peloton Takeoff」。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエの選手9名が隊列を組み、パイロットのアンディ・ヘディガーが操縦するグライダーを人力だけで牽引し、離陸させるという前代未聞の試みだ。必要な速度は時速54km/h。合計出力は6,500ワットに達する必要があった。

これまでの冬合宿で登山やラフティング、キャンプといった、ユニークなチームビルディングを行なってきたレッドブル・ボーラ・ハンスグローエだが、人力牽引で飛行機を飛ばすチャレンジは世界初。隊列の維持はもちろん、スピードや張力などを極限まで揃えない限り成功しないプロジェクトだったという。

特別な牽引装備を搭載したバイクでチャレンジを待つ (c)Red Bull Content Pool
フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) (c)Red Bull Content Pool


9名の選手がグライダーを牽引。合計出力6,500ワットで踏む (c)Red Bull Content Pool

今年のツール・ド・フランスで総合3位に入ったフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ)やヨルディ・メーウス(ベルギー)らが選ばれ、一時アワーレコード記録を樹立したことでも知られるチームのエンジニアリング首脳、ダン・ビガム(イギリス)がプロジェクトを統括。選手の力を均等に伝えるために専用のハーネスを開発するなど(ビデオで見るだけでも危ない)トライ&エラーを繰り返したという。


オーストリアでのテスト飛行を踏まえ、チームがキャンプを行うマヨルカ島で本番を実施。ビガムによれば計算上一人当たり500ワットを出力すれば飛行できる予定だったものの、ワットを上げるたびにグライダーが上昇するためさらにプッシュ。各選手がシッティングで90秒平均650ワットを叩き出し、ビデオでは短時間750ワットを超えるパワーで踏んでいることが記録されている。

パイロットに要求されたのも、飛行機を失速させないぎりぎりの低速で飛び続けなければならないという繊細な技術だったという。ヘディガーは「人力で牽引される飛行は特別だった。航空とサイクリングをひとつにつなげることができて本当にうれしい」と振り返っている。最終的に高度は100mに達し、チャレンジは成功に終わった。

高度100mに到達。チャレンジは成功に終わった (c)Red Bull Content Pool

成功を喜ぶアンディ・ヘディガーとレッドブルの選手たち (c)Red Bull Content Pool

また、チームは記者会見を行い、2026年シーズンの展望を発表。ジロ・デ・イタリアにはジュリオ・ペリツァーリ(イタリア)とジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)を、ツール・ド・フランスにはスーダル・クイックステップから移籍するレムコ・エヴェネプール(ベルギー)とリポヴィッツを、ブエルタ・ア・エスパーニャにはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を主軸にするプランを発表している。

text:So Isobe
photo: Red Bull Content Pool
Amazon.co.jp