距離10kmの登り基調の個人タイムトライアルで争われたツール・ド・スイス第8ステージ。ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)が2年連続で勝利し、逆転で自身初の総合優勝に輝く。ツール・ド・フランスに向けてこれ以上ない結果を残した。



ステージ優勝し、逆転の総合優勝に輝いたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

ツール・ド・スイス第8ステージ image:Tour de Suisse
先に閉幕したクリテリウム・デュ・ドーフィネと並び、ツール・ド・フランスの重要な前哨戦と位置づけられるツール・ド・スイス(UCIワールドツアー)は第8ステージを迎えた。最終日に行われたのは、距離わずか10kmの個人タイムトライアル。それも標高差約800mをほぼ一定の勾配で駆け上がるため、TTバイクではなくノーマルバイクで争われた。

前日第7ステージの終了時点で、総合首位ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)と2位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)との差は33秒。3位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)も41秒遅れと僅差のなか、総合最下位であるオリヴィエ・ルガック(フランス、グルパマFDJ)から順に走り出した。

前半スタート組で好タイムを出したのは、6日目に逃げに乗ったハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト)。29分27秒でフィニッシュし、その後走り出す選手たちの目標タイムとなる。結果的に、このタイムを上回ることができたのは、総合争いをする4名だけだった。

ステージ7位:ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:Tour de Suisse

ステージ2位:フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) photo:Tour de Suisse

総合上位の中では、まず7位のベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が区間でも7位に入る走りを見せ、続いてフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール)が暫定トップタイムとなる27分58秒でフィニッシュ。そのタイムにオスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL)は届かず、アラフィリップは大きくタイムを失い、総合5位で大会を終えた。

そして昨年大会でも最終日の登り基調の個人TTを制し、優勝候補の筆頭に挙げられたアルメイダが、アイウェアをせずにスタートを切る。4.5km地点に設定された中間計測地点で、アルメイダはガルよりも1秒早く通過する。そこから更にスピードを上げると、トップタイムを24秒上回る圧巻の走りを披露した。

ステージ1位:ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

ステージ4位:ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) photo:CorVos

最終出走者として黄色リーダージャージを纏ったケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)が走り出したものの、アルメイダのタイムには1分40秒至らず、総合首位から陥落した。

この結果、今大会3勝目を飾ったアルメイダが総合優勝に輝いた。「大会を通して調子は良く、チームも完璧な走りを見せてくれた。(ここまで過去最高のシーズンとなっている理由は)ハードワークに尽きる。それに物事を適切に行っているからだろう。ツールでの目標はポガチャルをできる限りアシストすることだ」とコメントした。

総合優勝したジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

昨年は区間2勝を挙げながら、チームメイトであるアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツXRG)に敗れ、総合2位だったアルメイダ。しかし今シーズンはここまで、4月のイツリア・バスクカントリーとツール・ド・ロマンディに続き、ワールドツアーで3大会連続の総合優勝とキャリアハイの活躍を見せている。
ツール・ド・スイス2025第8ステージ結果
1位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) 27:33
2位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +0:24
3位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +1:11
4位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +1:40
5位 ハリー・スウェニー(オーストラリア、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:54
6位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:03
7位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +2:06
8位 ウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター) +2:12
9位 フィンレー・ピカリング(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) +2:14
10位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +2:19
個人総合成績
1位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) 29:29:01
2位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +1:07
3位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +1:58
4位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +2:20
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング) +3:57
6位 レナード・ケムナ(ドイツ、リドル・トレック) +4:52
7位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +5:08
8位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +6:16
9位 パブロ・カストリーリョ(スペイン、モビスター) +6:41
10位 クレモン・シャンプッサン(フランス、XDSアスタナ) +8:30
その他の特別賞
ポイント賞 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG)
山岳賞 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
ヤングライダー賞 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)
チーム総合成績 イスラエル・プレミアテック
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, Tour de Suisse