春のクラシックシーズンを締めくくるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が他を寄せ付けない35kmの独走。2年連続3度目の優勝を飾り、また自身9度目のモニュメント(5大クラシック)制覇を達成した。

連覇狙うタデイ・ポガチャル photo:A.S.O. 
2年振りの出場となったレムコ・エヴェネプール photo:A.S.O.

セブン-イレブンの特別ジャージを纏ったマグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.
「モニュメント(5大クラシック)」の一つに数えられるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。ベルギー南部のワロン地域を舞台とし、アムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌを含む「アルデンヌ3連戦」のフィナーレ、また長かった春のクラシックシーズンを締めくくるワンデーレースでもある。
第111回大会のコースはリエージュから南のバストーニュを目指し、11箇所に及ぶアルデンヌの丘陵を越えながらリエージュに帰ってくるお馴染みの252km。気温17度と例年に比べ暖かいレース日和のなか、ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)を含む12名が逃げグループを形成する。サカリアスコレー・ローランド(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がセブン-イレブンの復刻ジャージをアピールする逃げ集団は、5分43秒のリードでバストーニュを折り返した。

ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)ら12名の逃げグループ photo:CorVos

スーダル・クイックステップがメイン集団を先導する photo:CorVos
メイン集団はレムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップがコントロールを担い、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は集団中ほどで脚を回す。そしてこの日2つ目の丘であるコル・ドゥ・オシエールを越えたプロトンから、2019年覇者ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。同チームのトビアス・フォス(ノルウェー)と共に逃げ合流を目指したものの、集団のペースアップにより84km地点で吸収された。
エディ・メルクスの記念碑が建てられた最大勾配17%の名物坂コート・ド・ストック(距離1km/平均12.5%)に入り、1分までリードが縮まった逃げグループは5名に絞られる。その差は長らく膠着状態となるも、プロトンはティボー・ネイス(ベルギー)やジュリオ・チッコーネ(イタリア)を擁するリドル・トレックの先導に代わる。そしてワレン・バルギル(フランス、ピクニック・ポストNL)の落車リタイアもありながら、残り60km地点で逃げ集団は捉えられた。

今年もレース中盤に設定されたコート・ド・サンロシュ photo:CorVos

不発に終わったユンゲルスとフォスによるアタック photo:CorVos 
落車リタイアしたワレン・バルギル(フランス、ピクニック・ポストNL) photo:CorVos
4つの丘を残しレースが振り出しに戻ると、スーダル・クイックステップに対抗するようにUAEチームエミレーツXRGが集団前方でペースを作り始める。そのハイペースにプロトンの人数はみるみる絞られ、2022年から3年連続で決定的な動きが生まれたコート・ド・ラ・ルドゥット(距離2km/平均8.9%)に突入。パヴェル・シヴァコフ(フランス、UAEチームエミレーツXRG)が先頭に立ち、その背後にはブランドン・マクナルティ(アメリカ)も控える万全の体制のなか、頂上まで残り800m地点でポガチャルが動いた。

今年もコート・ド・ラ・ルドゥットで飛び出したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
シッティングのまま静かに加速したアルカンシエルは一気に後続を引き離し、あっという間に単独先頭に立つ。集団の中ほどに位置していたエヴェネプールは反応することができず、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)とジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)が懸命に追走する。その差は一時縮まるものの追いつくことはなく、大観衆の声援を浴びながらポガチャルがラ・ルドゥットの頂上を単独通過した。
下りを巧みにクリアし、独走態勢に入った世界王者に対し、アラフィリップとチッコーネにベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)とトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)が合流。優勝候補に挙がる強力な4名が協調してローテーションを回したものの、この春を勝利で締めくくりたいポガチャルとの差は開く一方だった。

ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)とジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)が追走する photo:CorVos
残り14.6km地点から始まる最後の難関、ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(1.3km地点/平均11%)に入った時点でポガチャルと追走集団との差は1分18秒。「練習不足の影響もあり、調子が良くなかった」と悔しがるエヴェネプールに追走する力は残っておらず、第1追走集団は登りでチッコーネとヒーリーに絞られる。2名は猛スピードで追いかけたものの、ポガチャルとの差は最後までゼロになることはなかった。
カメラに対し何度も勝利を確信する笑顔を送り、最終ストレートでは観客とハイタッチする余裕すら見せたポガチャルが、悠々とフィニッシュに到着。天に人差し指を突き上げ、3度目のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝と共に、9つ目のモニュメント制覇を達成した。

パートナーであるジガートの亡き母に勝利を捧げたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

フィニッシュ後笑顔を見せたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
「シーズン前半をこのような形で締めくくることができ、最高の気分だよ。ここまで完璧なシーズンとなっている。ラ・ルドゥットで仕掛けたのは作戦ではない。厳しい展開からライバルたちがアシストを失っていたので、自分の脚の調子を確かめるためにアタックしたんだ。またエヴェネプールの姿が見えなかったのも、仕掛ける動機になった」と、ポガチャルは圧巻の35km独走決めたレースを振り返った。
ミラノ〜サンレモこそ今年も初優勝を逃したポガチャル。しかしストラーデビアンケ優勝を皮切りに、ロンド・ファン・フラーンデレンとラ・フレーシュ・ワロンヌを制し、そしてこのリエージュと今春もその圧倒的な力を見せつけた。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2025表彰台:2位チッコーネ、1位ポガチャル、3位ヒーリー photo:CorVos
マッチスプリントに持ち込まれた2位争いはチッコーネが先着。ヒーリーは3位で表彰台に上がるなか、途中で脚を止めながらも完走したエヴェネプールは59位という結果に終わった。



「モニュメント(5大クラシック)」の一つに数えられるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。ベルギー南部のワロン地域を舞台とし、アムステルゴールドレースとラ・フレーシュ・ワロンヌを含む「アルデンヌ3連戦」のフィナーレ、また長かった春のクラシックシーズンを締めくくるワンデーレースでもある。
第111回大会のコースはリエージュから南のバストーニュを目指し、11箇所に及ぶアルデンヌの丘陵を越えながらリエージュに帰ってくるお馴染みの252km。気温17度と例年に比べ暖かいレース日和のなか、ジャック・ヘイグ(オーストラリア、バーレーン・ヴィクトリアス)を含む12名が逃げグループを形成する。サカリアスコレー・ローランド(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がセブン-イレブンの復刻ジャージをアピールする逃げ集団は、5分43秒のリードでバストーニュを折り返した。


メイン集団はレムコ・エヴェネプール(ベルギー)を擁するスーダル・クイックステップがコントロールを担い、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は集団中ほどで脚を回す。そしてこの日2つ目の丘であるコル・ドゥ・オシエールを越えたプロトンから、2019年覇者ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、イネオス・グレナディアーズ)がアタック。同チームのトビアス・フォス(ノルウェー)と共に逃げ合流を目指したものの、集団のペースアップにより84km地点で吸収された。
エディ・メルクスの記念碑が建てられた最大勾配17%の名物坂コート・ド・ストック(距離1km/平均12.5%)に入り、1分までリードが縮まった逃げグループは5名に絞られる。その差は長らく膠着状態となるも、プロトンはティボー・ネイス(ベルギー)やジュリオ・チッコーネ(イタリア)を擁するリドル・トレックの先導に代わる。そしてワレン・バルギル(フランス、ピクニック・ポストNL)の落車リタイアもありながら、残り60km地点で逃げ集団は捉えられた。



4つの丘を残しレースが振り出しに戻ると、スーダル・クイックステップに対抗するようにUAEチームエミレーツXRGが集団前方でペースを作り始める。そのハイペースにプロトンの人数はみるみる絞られ、2022年から3年連続で決定的な動きが生まれたコート・ド・ラ・ルドゥット(距離2km/平均8.9%)に突入。パヴェル・シヴァコフ(フランス、UAEチームエミレーツXRG)が先頭に立ち、その背後にはブランドン・マクナルティ(アメリカ)も控える万全の体制のなか、頂上まで残り800m地点でポガチャルが動いた。

シッティングのまま静かに加速したアルカンシエルは一気に後続を引き離し、あっという間に単独先頭に立つ。集団の中ほどに位置していたエヴェネプールは反応することができず、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)とジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)が懸命に追走する。その差は一時縮まるものの追いつくことはなく、大観衆の声援を浴びながらポガチャルがラ・ルドゥットの頂上を単独通過した。
下りを巧みにクリアし、独走態勢に入った世界王者に対し、アラフィリップとチッコーネにベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)とトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)が合流。優勝候補に挙がる強力な4名が協調してローテーションを回したものの、この春を勝利で締めくくりたいポガチャルとの差は開く一方だった。

残り14.6km地点から始まる最後の難関、ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(1.3km地点/平均11%)に入った時点でポガチャルと追走集団との差は1分18秒。「練習不足の影響もあり、調子が良くなかった」と悔しがるエヴェネプールに追走する力は残っておらず、第1追走集団は登りでチッコーネとヒーリーに絞られる。2名は猛スピードで追いかけたものの、ポガチャルとの差は最後までゼロになることはなかった。
カメラに対し何度も勝利を確信する笑顔を送り、最終ストレートでは観客とハイタッチする余裕すら見せたポガチャルが、悠々とフィニッシュに到着。天に人差し指を突き上げ、3度目のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝と共に、9つ目のモニュメント制覇を達成した。


「シーズン前半をこのような形で締めくくることができ、最高の気分だよ。ここまで完璧なシーズンとなっている。ラ・ルドゥットで仕掛けたのは作戦ではない。厳しい展開からライバルたちがアシストを失っていたので、自分の脚の調子を確かめるためにアタックしたんだ。またエヴェネプールの姿が見えなかったのも、仕掛ける動機になった」と、ポガチャルは圧巻の35km独走決めたレースを振り返った。
ミラノ〜サンレモこそ今年も初優勝を逃したポガチャル。しかしストラーデビアンケ優勝を皮切りに、ロンド・ファン・フラーンデレンとラ・フレーシュ・ワロンヌを制し、そしてこのリエージュと今春もその圧倒的な力を見せつけた。

マッチスプリントに持ち込まれた2位争いはチッコーネが先着。ヒーリーは3位で表彰台に上がるなか、途中で脚を止めながらも完走したエヴェネプールは59位という結果に終わった。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2025結果
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 6:00:09 |
2位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +1:03 |
3位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
4位 | シモーネ・ヴェラスコ(イタリア、XDSアスタナ) | +1:10 |
5位 | ティボー・ネイス(ベルギー、リドル・トレック) | |
6位 | アンドレア・バジオーリ(イタリア、リドル・トレック) | |
7位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
8位 | アクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) | |
10位 | ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
59位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +3:11 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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