「何かの間違いじゃないか」と素直に気持ちを語ったマティアス・スケルモース。敗れたポガチャルやエヴェネプールなど、選手たちのコメントで波乱のアムステルゴールドレースを振り返ります。



優勝 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック)

スケルモースに合流したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

レムコ(エヴェネプール)に「限界だ」と伝え続けていた。その後(ポガチャルに追いついてから)集団の先頭を引いたのは、最低でも表彰台は確保したかったから。表彰台は僕にとって大きな結果だからね。後続に追いつかせることなく、スプリントで良い結果を得たかった。だが、どうせ最後は(2名に)引き離されるか、スプリントで脚が攣るのだろうと思っていた。

風が左から吹いていたので右側から迫りたかったのだが、レムコが右側を取る完璧なスプリントを披露した。タデイ(ポガチャル)もその右を取ったので、僕は左側でもがくしかなかった。最後はどうなったか覚えていないよ。ポガチャルを追い抜き、何が起こったのか理解できなかった。何かの間違いじゃないかとさえ思った。

3名によるスプリントを制したマティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

この勝利が意味するものは大きい。なぜなら今シーズンは不運が続き、精神的に辛い日々を過ごしていたから。1ヶ月ほど前に祖父を亡くし、どうしても彼に捧げる勝利が欲しかった。

タデイがアタックした時、この後は2位を争う戦いになると悟った。だから僕のアタックは2位を狙いに行ったものだった。最後のカウベルグで脚に力は残っておらず、ただ食らいつくことを考えていた。その時、既にこの先頭集団に入れたことに満足しており、3位が最高成績なのだと思っていた。

アムステルゴールドレース2025表彰台:2位ポガチャル、1位スケルモース、3位エヴェネプール photo:CorVos

(3月の)パリ〜ニースでの落車後、コンディション調整に苦しみ、次のイツリア・バスクカントリーに出場できるかさえ分からなかった。だが結果的に95%の状態でバスクに臨み、6つの厳しいステージをこなす中で、残りの5%(のコンディション)を上積みすることができた。アタックした瞬間、僕の脚は限界を迎えており、(ポガチャルに追いつけたのは)80%レムコのおかげ。僕1人だったらタデイに追いつけていなかっただろう。

2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)

残り42.5km地点でアラフィリップを引き離し、単独先頭に立ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

僕らチームにとっては、とても良い展開だった。だが最後はフィニッシュラインがあと5m長ければと思ったよ。

アラフィリップと2人で先頭に立ち、共に長く走りたかった。だが最初のアタックで少し力を使いすぎたようで、(アラフィリップが遅れてからは)単独でフィニッシュを目指すことになった。残り50kmからは向かい風が強かったためリードを拡げることができず、結果的にレムコとスケルモースの合流を待った。スプリントで勝つ作戦だったのだが、ギャンブルになってしまった。

(追走の2名が)登りで差を縮めるられることはわかっていたので、登りの頂上付近と、その後の下りで加速しようとした。しかし残り15kmからの短い下りで、とても強い向かい風に見舞われた。そこで僕は力を使いすぎてしまい、2人に差を縮められた。

レムコがその強さを発揮することはわかっており、実際皆にトップコンディションであることを証明した。だが最後はスケルモースのスプリント力が勝った。

3位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

スタート前に昨年引退したデヘントと言葉を交わすエヴェネプール photo:CorVos

総合的には良い日となったが、全てが完璧に進んだわけではないので複雑な思いがある。怪我の影響で、勝負どころで必要な力が足りなかった。一時は先頭から2分の差をつけられていたのだからね。不運がなければこの結果も変わっていたのだろう。スタート地点で調子の良さを感じていたからこそ悔しいよ。

だが一方で、再びここまで戦えたことに喜びを感じている。来週に向けてモチベーションになったよ。

最終ストレートでは向かい風が吹いており、もう少しスプリントの開始を待つべきだった。だがこれも良い学びになった。初出場のアムステルゴールドレースでの表彰台が良い結果だ。

4位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)

4位と表彰台を逃したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

チームとしての強さは見せられたものの、チャンスを逃してしまった。エヴェネプールのアタックに反応するべきだったが、(あの時点で)ポガチャルに追いつけるとは信じていなかった(ので見送ってしまった)。でも今日得た感触には満足している。ここ最近のレースと同様に、常にレースの先頭付近で展開することはできた。だがまだ勝利には届いていない。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos