ブラジルでUCI MTBワールドカップが開幕。男子レースをスペシャライズド勢が掌握し、ヴィクトル・コレツキー(フランス)を先頭に1-2-3勝利をマークした。



ブラジルのアラシャでMTBワールドシリーズが開幕した photo:UCI

南米ブラジルでMTBレースの最高峰シリーズ「UCIマウンテンバイク・ワールドシリーズ」が開幕した。クロスカントリーワールドカップ(XCO)、ショートトラックワールドカップ(XCC)、マラソンワールドカップ(XCM)、ダウンヒルワールドカップ(DH)、そしてエンデューロワールドカップ(Enduro)というXC系3種目、グラビティ系2種目からなる合計5種目で開催されるシリーズ戦で、今年は合計15戦が予定されている。

定番となったブラジル開幕で、開催地は昨年初開催を迎えたミナスジェライス州のアラシャ。急勾配登坂やダブルジャンプを含む熱帯雨林の赤土コースであり、張り出した木の根やロックセクションなどテクニカル区間を組み合わせる。4月3-6日の第1戦、そして1週間後の4月10-12日に同じ開催地で第2戦が行われ、9月10-14日にはスイス・バレーでクロスカントリーの世界選手権が開催される。

トップ選手たちが一堂に集結 photo:UCI

XCC女子:イヴィ・リチャーズ(トレックファクトリーレーシング・ピレリ)が勝利 photo:UCI
XCC男子:クリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング)が勝利 photo:UCI



2025年ワールドシリーズの幕開けとなったXCC(ショートトラックレース)では、女子レースでアルカンシエルを着るイヴィ・リチャーズ(トレックファクトリーレーシング・ピレリ)が勝利し、続く男子レースではスペシャライズドファクトリーレーシングのチームメイトであるヴィクトル・コレツキー(フランス)とクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)がレースを掌握。最後は2人の一騎打ちをブレヴィンスが制している。



苦労人マクスウェルがW杯初勝利をマーク

迎えたクロスカントリーレース。合計8周回で争われる女子レースを引っ張ったのは、今年キャニオン・CLLCTVに移籍したジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン)だった。1週目から積極的にペースを作ったリオ五輪金メダリストには、キャノンデール・ファクトリーレーシングに移籍したヨランダ・ネフ(スイス)が追従したものの千切れ、後半に入るとサマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードレーシングチーム)がリスヴェッズに合流すると同時にカウンターアタックを仕掛けた。

キャノンデール・ファクトリーレーシングに移籍したヨランダ・ネフ(スイス) photo:UCI
キャニオン・CLLCTVに移籍したジェニー・リスヴェッズ(スウェーデン)がレースを作る photo:UCI



W杯初勝利をマークしたサマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードレーシングチーム) photo:UCI

「ジェニーは本当に強くて自分はいっぱいいっぱいだったけど、ずっと取り組んできたダウンヒルテクニック向上が役に立って先頭に立つことができた」と言う23歳のオセアニア女王が、前日のXCCで2位に入った勢いそのままアタックを継続。ビッグネームを相手に得た20秒リードをそのままフィニッシュラインまで持っていった。

「本当に信じられない。フィニッシュラインを切ってからようやく勝利を確信できた。レース中はずっと"W杯で勝つには苦しみ続けなければいけない"と自分に言い聞かせていた」と、涙ながらにレース後インタビューで語ったマクスウェルが嬉しいW杯初勝利をマークした。摂食障害を改善するために一時競技活動を離れ、そのためにニュージーランド車連からパリ五輪メンバーに選考されず、スポーツ裁定の結果出場権を得て8位に入った苦労人が、女子ニュージーランド選手として初めてワールドカップ優勝を遂げることとなった。



スペシャライズドが男子レースを掌握 コレツキーが独走し1-2-3勝利達成

現役最終シーズンのニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム)が出走した男子レースは、XCCに引き続きコレツキーとブレヴィンスのチームメイトコンビがレースを掌握。2人は1周目終了時で既に10秒リードを得た勢いそのままに熱帯雨林コースを突き進んだ。

ヴィクトル・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング)がXCO開幕戦勝利 photo:UCI

コレツキーとブレヴィンスがヴィダウレの3位を喜ぶ。スペシャライズド勢が1-2-3勝利を達成 photo:UCI

協調体制を組んで逃げる先頭2人は、追走グループの中でチームメイトのマルティン・ヴィダウレ(チリ)がブロック役を務めたことも重なってリードを構築。差が1分まで広がった残り2周回ではコレツキーがアタックし、雨が降り始める中フィニッシュラインまで逃げ切った。2位にブレヴィンス、追走グループの頭はヴィダウレが獲り、スペシャライズドが1-2-3フィニッシュを達成。チームにとって特別な週末となった。

「クリスはレース序盤で本当に強かったよ。彼は超ハイペースで走っていたので彼についていくのは大変だった。レース中盤からは1周ずつペースメイクしたけれど、最後の2周でタイヤがパンクしたから下りが難しかったよ。最後まで厳しい展開だったけど、なんとかこうして終えることができた。僕たちはずっと"チームメイト"だった。最後の瞬間まで一緒にいることが目標だった。チームメイトと一緒にトレーニングのようにハードな一日を過ごしたんだ。チームと共有できて本当によかったよ」とコレツキーは話している。

レースを掌握したコレツキーとブレヴィンス photo:UCI


UCI MTBワールドカップ2025 第1戦 XCO女子エリート結果
1位 サマラ・マクスウェル(ニュージーランド、デカトロン・フォードレーシングチーム) 1:24:03
2位 ニコル・コラー(スイス、ゴーストファクトリーレーシング) +0:04
3位 サヴィリア・ブランク(アメリカ、デカトロン・フォードレーシングチーム)
4位 アレッサンドラ・ケラー(スイス、トムス・マクソン) +0:12
5位 キャンディス・リル(南アフリカ) +0:28
UCI MTBワールドカップ2025 第1戦 XCO男子エリート結果
1位 ヴィクトル・コレツキー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング) 1:30:00
2位 クリストファー・ブレヴィンス(アメリカ、スペシャライズドファクトリーレーシング) +0:02
3位 マルティン・ヴィダウレ(チリ、スペシャライズドファクトリーレーシング) +0:03
4位 ラース・フォースター(スイス、トムス・マクソン) +0:05
5位 ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシングチーム) +0:05
text:So Isobe
photo:UCI