集団スプリントで決着したティレーノ〜アドリアティコ第7ステージで、ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が2勝目飾る。総合優勝には昨年2位だったフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)が輝いた。



観客に迎えられながら大会最終日に臨むフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport

ティレニアとアドリアという2つの海を結ぶ、第60回ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)。その最終第7ステージの舞台は、中盤の丘を除けばアドリア海沿いを南に進む平坦路。大会を締めくくる白熱の集団スプリントを、思わぬ加勢が盛り上げた。

前日のクイーンステージを制し、総合首位に立ったフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)を先頭にレースはスタート。太陽が選手たちを照らす晴天の中、前世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)を含む5名が逃げを打つ。それを追うメイン集団は、総合3位のフィリッポ・ガンナ(イタリア)を擁するイネオス・グレナディアーズが集団を牽引した。

逃げに乗ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:RCS Sport

イネオスが作るハイペースの牽引は、大会最後の登りであるリパートランソーネで逃げ集団から遅れた選手たちを次々に吸収する。そして3月22日のミラノ〜サンレモに向けて調整を進めるファンデルプールも捉え、大集団はひと塊のまま頂上を通過。そして残り43.6km地点のフィニッシュ地点に設定された、中間スプリントにやってきた。

最大3秒のボーナスタイムが与えられるここで、総合2位のアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)に1秒差で総合3位のフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が狙いに行く。別チームではあるものの、同じイタリア出身のジョナタン・ミラン(リドル・トレック)がガンナをリードアウトするように先頭に出ると、狙い通りガンナが先頭通過。2位通過はミランで、3位通過のティベーリが総合順位の逆転を許した。

ニースの街を進むプロトン photo:RCS Sport

残り14.4km地点で最終周回を告げる鐘が鳴り、集団はスプリントに向けてスピードと緊張感が高まっていく。目まぐるしく集団先頭が入れ替わるなか、今度はガンナがリドル・トレックの先頭を引きながら先頭に上がっていく。中間スプリントのお返しとばかりにガンナが先頭でフラムルージュ(残り1km)を通過し、最終ストレート手前のS字コーナーで役目を終える。

ジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック)がスプリントを開始すると、エドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)のリードアウトからミランも踏み始める。ポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ)がこの日2度目の落車に見舞われるなか、迫るサム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアール)とのハンドル投げをミランが制した。

ハンドル投げを制したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:RCS Sport

表彰式を待つ間、ミランと雑談するガンナ photo:RCS Sport
大会2勝目を飾ったジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:RCS Sport


第2ステージに続く2勝目を飾り、ポイント賞も獲得したミラン。「今大会で2勝できたことがとても嬉しい。完璧なリードアウトをしてくれたチームメイトに感謝する。また、終盤に落車したヤスペル(ストゥイヴェン)たち皆が無事であることを願っている」と、コメントした。

そして総合優勝には、昨年総合2位の無念を晴らしたアユソが輝く。「イツリア・バスクカントリーに並ぶ、キャリア最大の勝利だ。過去最高の走りができた。今日は風もありストレスの多いステージだったが、チームが僕をトラブルから守ってくれた」と喜ぶアユソ。また「ジロ・デ・イタリア(5月9日〜)に向けて自信がついたが、いまは次戦のボルタ・ア・カタルーニャ(3月24日〜)に集中したい」と意気込みを語った。

総合優勝のトロフィーを掲げるフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:RCS Sport

ティレーノ〜アドリアティコ2025第7ステージ結果
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 3:08:07
2位 サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアール)
3位 オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)
4位 ジェイク・スチュワート(イギリス、イスラエル・プレミアテック)
5位 ポール・ペンウェット(フランス、グルパマFDJ)
6位 ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア、ポルティ・ビジットマルタ)
7位 マイケル・ゼイラート(オランダ、チューダー・プロサイクリング)
8位 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、モビスター)
9位 カスペル・ファンウーデン(オランダ、ピクニック・ポストNL)
10位 クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)
個人総合成績
1位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) 28:41:24
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:35
3位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:36
4位 デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +0:42
5位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:53
6位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) +0:56
7位 ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) +1:05
8位 ダビ・デラクルス(スペイン、Q36.5プロサイクリング) +1:32
9位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 マティア・カッタネオ(イタリア、スーダル・クイックステップ) +1:38
その他の特別賞
ポイント賞 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)
山岳賞 マヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)
ヤングライダー賞 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツXRG
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport