「合宿で好感触、しっかり走れる手応えを得た」 2度目のヨーロッパに挑む寺田吉騎に聞く

「すごくコンディションが上がっていて、シーズンインが楽しみです」と、バーレーン・ヴィクトリアスの育成チームに加入した寺田吉騎は自信を覗かせた。1月にスペインで行われたチーム合宿に参加し、ギリシャでの初戦を目前に控えるU23全日本王者に、チームのこと、自身のこと、今季の目標について聞いた。

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寺田吉騎のバーレーン・ヴィクトリアス育成チーム加入は日本の自転車ファンに驚きを持って受け入れられた。寺田本人も「日本の皆さんの反応は、びっくりって感じですよね」と笑う。

ジュニア時代から福島晋一氏が主宰するボンシャンスACAのメンバーとしてフランスで活動し、U23の全日本選手権優勝など、シマノレーシングに所属した2023、2024年にブレイクした寺田。その成績が買われ、今季バーレーン・ヴィクトリアス直属となったU23育成チームから声が掛かった。

「実は、昨年9月くらいに連絡が来たんです。来年、バーレーンの育成チームに入れるチャンスがあるんだけど、って。去年のレース戦績を見て声をかけてくれたようなんですが、チャンスがあるなら是非挑戦させて頂きたいとお伝えして、シマノレーシングの今西さんや野寺監督も背中を押してくださった。話がとんとん拍子に進んで、スルッと加入できたんです」と、寺田は加入のきっかけを話す。

寺田は既に1月中旬に行われたスペインでのチーム合宿に参加し、シーズンインを見据えて乗り込むと同時にチームメイトや監督陣、スタッフたちと顔を合わせた。渡欧前は不安に駆られていたというものの、現地ではすぐ新チームに馴染むことができたという。

「最初は不安しかなくて、大丈夫かな...って思うことの連続でした。でも彼らと一緒に過ごしたらそんな不安は吹き飛んで、楽しく時間を過ごすことができた。合宿が終わる頃には監督やコーチ、チームメイトたちとも打ち解けて仲良くなれましたし、すごくいい形で合宿を終えることができました。これからも彼らと一緒にレース活動していきたいなって思えています」。

チームの公用語は英語だが、イタリア人の選手やスタッフも多く、チーム内では英語とイタリア語が飛び交っている環境。アマチュア時代にはフランス語を習得していたため、同じラテン語圏で文法が似ているイタリア語にも馴染むことができたという。

「1回目のフランス経験はすごく糧になっているなと思いました。まだまだ英語は聞き取れなかったり、会話スピードが速いとついていけなかったりするので勉強中ですが、フランス時にちゃんと言葉を学んでおいたこと、そしてヨーロッパの人たちとのコミュニケーションの仕方など欧州生活に慣れていたから、今回もストレスなく合宿を過ごせました。

フランス語を話す機会はあまり多くないんですが、セラピストがフランス人だったりして、彼らとはフランス語でコミュニケーションをとっています。チームメイトも若い選手が多いので、基本的に大学生ノリというか、高校生ノリというか...陽気で楽しいチームなんです（笑）。」

プロ選手を目指して渡欧すれど、圧倒的なヨーロッパ選手のパワー、レースの厳しさに夢敗れて帰国する選手は少なくない。しかしジムトレーニングを増やして肉体改造を行ない、スプリント力だけでなく登坂力も身につけた寺田にとって、合宿ではフィジカル面でも好感触を得たという。

「意外とチームメイトたちとパワー差はありませんでしたし、調子が良かったのか自己ベストも記録できました。オフシーズンに入ってからもジムトレの内容を変えて良い感触を得ていたし、その筋力をベースにスペインで乗り込んだら、コンディションがどんどん上がっている手応えを得ることができたんです。今回の合宿はスプリンター組に振り分けてもらってトレーニングをこなしましたが、しっかりとレースを走って、チームに貢献できそうな感触がありました。シーズンインのレースが楽しみです」。

「集団スプリントでも活躍したいと思っていますが、自分はもっと、アップダウンがあるレースが得意。例えばブルターニュのように、起伏があって、集団が絞られて、その最後にスプリントで勝つような展開で結果を残したい」と寺田は言う。筋肉質な身体つきではあるものの、修善寺の全日本選手権を制したことからも分かるように、登坂力を身につけることの利点をあらためて見いだしているという。

新チームでの寺田の初戦は、明日3月8日に開催されるギリシャでのレース。3週間近くギリシャに滞在してレースをこなし、その後イタリアに渡って本格的なシーズン開幕を迎える。初のエリートカテゴリーとして迎える全日本選手権は今年も相性の良い修善寺開催だ。

「今からワールドチームのメンバーとしてレース参加が決まっている選手もいるようで、結果次第では僕にもお呼びがかかるかもしれない。でも最初から高望みするのではなく、あくまで出れるレースを一つ一つ頑張っていく。これに尽きると思います。全日本選手権は獲りたい。優勝を狙って気合いを入れていきます」。

text:So Isobe