2025/01/31(金) - 18:34
北フランスのリエヴァンでシクロクロス世界選手権が開催される。21年ぶりのフランス開催で、大本命マチュー・ファンデルプールはエリック・デ・フラミンクに並ぶ歴代最多勝利を挙げるのか。日本勢7名が参戦する大一番をプレビューする。
21年ぶりとなるフランス開催のシクロクロス世界選手権 泥とキャンバーのパワーコース

北フランス、ルーベから40kmほどのリエヴァンに用意された世界選手権コース photo:UCI 
コース試走初日はたっぷりと水分を含んだ泥。試走が進むにつれて泥も深くなった photo:UCI
UCIシクロクロス世界選手権が、本日1月31日(金)に第76回の歴史中初の開催地となる北フランスはリエヴァンで開幕する。2004年のポン=シャトー以来21年ぶりとなるフランス開催で、初日のチームリレーを含めた3日間で合計6人+1ヶ国の世界チャンピオンが決定する。
過激なアップダウンや深い砂地こそ無いものの、キャンバー区間を多用した「ヴァル・スシェ・サーキット」はパワーライダー向け。フランス代表コーチも「勾配区間とハイスピードの直線区間が多く、非常にフィジカルが求められるコース」と評価している上、公式練習初日の路面は水分をたっぷりと含んだ泥に覆われた。この先3日間は寒いながらも晴れ/曇り予報であり、コース上の乾き具合に応じてスピードが上がっていきそうだ。
このコースが最後にUCIワールドカップに登場した2012年大会ではマリアンヌ・フォスが女子エリートで優勝し、ラース・ファンデルハールが男子U23で、マチュー・ファンデルプールが男子ジュニアで優勝を挙げている。参加選手は各カテゴリー合計で25ヶ国から約270名。ここに竹之内悠代表監督率いる7名の日本人選手が挑むこととなる。
ファンデルプールが最多勝利タイの7勝目を目指す

今季勝率100%で記録の掛かった大一番に臨むマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos
男子エリートレースの優勝候補はなんと言ってもファンデルプール。例年よりも少し遅くシーズンインした今季はW杯5レースを含む7戦7勝と勝率100%であり、パワーでも、泥や砂、轍をさばくスキルでもライバル勢を大きく突き放している。
12月27日のロエンハウトではレース中のクラッシュで肋骨を痛め、2日後のW杯ブザンソン大会を勝利した後にレース参戦を見合わせたファンデルプールは、その後ロードチームの合宿を経由して1月25日のW杯マースメヘレンで復帰。翌日のW杯最終戦ホーヘルハイデと合わせて2日2連勝と、その圧倒的な力を見せつけるに至っている。
20歳にしエリートタイトルを獲ったファンデルプールはその後2019年、2020年、2021年、2023年、そして2024年と合計6度戴冠しており、今年優勝するとエリック・デ・フラミンク(ベルギー)が持つ最多優勝記録タイに並ぶこととなる。通算7度目、3年連続のアルカンシエルを目指す視界にはただ一点の曇りもない。

電撃参戦を表明したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)。今季は2勝を挙げている photo:CorVos

欧州選手権とベルギー選手権を制覇したティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ) photo:CorVos 
キャリア初のW杯総合優勝を決めたマイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・シーベルクレメンティンス) photo:UCI
ライバル国ベルギーは何としてもファンデルプールの連覇に待ったをかけたいところ。W杯総合ランキングを制したマイケル・ファントーレンハウトや欧州王者ティボー・ネイス、復活のトーン・アールツ、エリ・イゼルビットを擁し、さらにワウト・ファンアールトが電撃参戦表明したことで戦力が拡大。ただしヴィスマのコーチを務めるマチュー・ハイブール氏も「ワウトとマチューが勝つ可能性はそれぞれ10%と90%くらいだろう。ただし結果最優先というわけではなく、怪我で今季は何レースも参戦を取りやめる必要があったので、まず大きな舞台を楽しんでほしいと思う」とコメント。ファンアールトも「ロードでの目標達成に良い刺激になるはず」とのコメントを残している。
女子エリート:屈強なオランダ勢に新興勢力が割って入れるか

女子エリートレースの中心となるであろうブラント、ファンエンぺル、ピーテルセ photo:UCI
女子エリートレースの中心となるのはダッチオレンジのジャージを纏うオランダ勢だ。中でも2年連続の世界女王であるフェム・ファンエンペルは優勝候補の筆頭。1週間前のW杯2連戦では泥に沈んで表彰台を逃すなど、濡れたキャンバーが登場するテクニカルレースでは成績を落とす傾向にあるものの、本調子となればフィジカルレベルは頭ひとつ抜けている。同じユンボ・ヴィスマの大先輩で、マースメヘレンでの落車によって世界選手権を欠場するマリアンヌ・フォスの持つ8度優勝の記録にひとつ近づけるかどうかに注目したい。
パワー勝負となればアルカンシエル経験を持つルシンダ・ブラントの出番だ。テクニカルコースでも崩れず、「ディーゼルエンジン」と例えられる粘りの走りを武器にW杯シリーズランキングを制覇したブラントは、苦手なスタートダッシュを決めれば有利な展開を作り出せるはず。同じく過去優勝者セイリン・アルバラードも強力だが、シーズン序盤は表彰台に上がれず調子を落としている感が否めない。テクニックに秀でるMTB世界王者プック・ピーテルセもレースを湧かせる存在となるだろう。

毎年屈強な戦力でレースを支配するオランダ勢 photo:CorVos

W杯総合優勝を挙げたルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・グローウィ・ライオンズ)。パワーと安定感はピカイチだ photo:CorVos 
ダークホースのカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー、SDワークス・プロタイム)。直近の超テクニカルな泥のW杯で勝利した photoUCI
そんなオランダ勢に穴を空けたいのがマースメヘレンで勝利したカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)とW杯第4戦勝者のマリー・シュライバー(ルクセンブルク)の2人。MTBとロード、シクロクロスの3種競技、特にハンガリー代表ジャージを着る選手権大会で強いヴァシュの直近の走りを見るに表彰台に上がる可能性は十分にある。なお今季オランダ勢と対等に渡り合ったゾーイ・バックステッド(イギリス)はU23カテゴリーに出場する予定だ。
大一番に挑む7名の日本人選手たち

全日本選手権連覇を達成した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)。2年ぶりの世界選手権だ photo:So Isobe

U23の全日本王者である柚木伸元 (日本大学 ) photo:Makoto AYANO 
エリートで全日本2位に入った副島達海(大阪産業大学)もU23に参戦する photo:Makoto AYANO
日本から出場するのは、セレクションレースと全日本選手権の結果を踏まえて選定された7名だ。今季2度の欧州遠征を経た全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が2年ぶりに世界選手権に出場し、男子U23には副島達海(大阪産業大学)と柚木伸元(日本大学)が、女子U23には日吉愛華(中京大学/Teamまるいち)と渡部春雅(明治大学)が参戦。さらに山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)と石川七海(チャンピオンシステムジャパンTT&轍屋)が男女のジュニアカテゴリーに挑む。

男子ジュニアに出場する山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO 
U23に出場する渡部春雅(明治大学)。マースメヘレンのW杯は完走を果たした photo:Makoto AYANO

日吉愛華(Teamまるいち/中京大学)も女子U23に出場 photo:Makoto AYANO 
女子ジュニア王者の石川七海(右、チャンピオンシステムジャパンTT&轍屋) photo:Makoto AYANO
日本代表チームを引っ張るのは、現役選手の中で最も豊富な欧州経験を持つ竹之内悠。長らく日本選手団をサポートする現地スタッフチームのサポートのもと、それぞれの目標を携えて過酷な大一番に挑む。
各レースはUCIの公式Youtubeチャンネルで配信され、男子エリートレースは2月2日23:00よりJ SPORTSで生中継される。各カテゴリーの出場選手に向けて声援を送りたい。
21年ぶりとなるフランス開催のシクロクロス世界選手権 泥とキャンバーのパワーコース


UCIシクロクロス世界選手権が、本日1月31日(金)に第76回の歴史中初の開催地となる北フランスはリエヴァンで開幕する。2004年のポン=シャトー以来21年ぶりとなるフランス開催で、初日のチームリレーを含めた3日間で合計6人+1ヶ国の世界チャンピオンが決定する。
過激なアップダウンや深い砂地こそ無いものの、キャンバー区間を多用した「ヴァル・スシェ・サーキット」はパワーライダー向け。フランス代表コーチも「勾配区間とハイスピードの直線区間が多く、非常にフィジカルが求められるコース」と評価している上、公式練習初日の路面は水分をたっぷりと含んだ泥に覆われた。この先3日間は寒いながらも晴れ/曇り予報であり、コース上の乾き具合に応じてスピードが上がっていきそうだ。
このコースが最後にUCIワールドカップに登場した2012年大会ではマリアンヌ・フォスが女子エリートで優勝し、ラース・ファンデルハールが男子U23で、マチュー・ファンデルプールが男子ジュニアで優勝を挙げている。参加選手は各カテゴリー合計で25ヶ国から約270名。ここに竹之内悠代表監督率いる7名の日本人選手が挑むこととなる。
ファンデルプールが最多勝利タイの7勝目を目指す

男子エリートレースの優勝候補はなんと言ってもファンデルプール。例年よりも少し遅くシーズンインした今季はW杯5レースを含む7戦7勝と勝率100%であり、パワーでも、泥や砂、轍をさばくスキルでもライバル勢を大きく突き放している。
12月27日のロエンハウトではレース中のクラッシュで肋骨を痛め、2日後のW杯ブザンソン大会を勝利した後にレース参戦を見合わせたファンデルプールは、その後ロードチームの合宿を経由して1月25日のW杯マースメヘレンで復帰。翌日のW杯最終戦ホーヘルハイデと合わせて2日2連勝と、その圧倒的な力を見せつけるに至っている。
20歳にしエリートタイトルを獲ったファンデルプールはその後2019年、2020年、2021年、2023年、そして2024年と合計6度戴冠しており、今年優勝するとエリック・デ・フラミンク(ベルギー)が持つ最多優勝記録タイに並ぶこととなる。通算7度目、3年連続のアルカンシエルを目指す視界にはただ一点の曇りもない。



ライバル国ベルギーは何としてもファンデルプールの連覇に待ったをかけたいところ。W杯総合ランキングを制したマイケル・ファントーレンハウトや欧州王者ティボー・ネイス、復活のトーン・アールツ、エリ・イゼルビットを擁し、さらにワウト・ファンアールトが電撃参戦表明したことで戦力が拡大。ただしヴィスマのコーチを務めるマチュー・ハイブール氏も「ワウトとマチューが勝つ可能性はそれぞれ10%と90%くらいだろう。ただし結果最優先というわけではなく、怪我で今季は何レースも参戦を取りやめる必要があったので、まず大きな舞台を楽しんでほしいと思う」とコメント。ファンアールトも「ロードでの目標達成に良い刺激になるはず」とのコメントを残している。
女子エリート:屈強なオランダ勢に新興勢力が割って入れるか

女子エリートレースの中心となるのはダッチオレンジのジャージを纏うオランダ勢だ。中でも2年連続の世界女王であるフェム・ファンエンペルは優勝候補の筆頭。1週間前のW杯2連戦では泥に沈んで表彰台を逃すなど、濡れたキャンバーが登場するテクニカルレースでは成績を落とす傾向にあるものの、本調子となればフィジカルレベルは頭ひとつ抜けている。同じユンボ・ヴィスマの大先輩で、マースメヘレンでの落車によって世界選手権を欠場するマリアンヌ・フォスの持つ8度優勝の記録にひとつ近づけるかどうかに注目したい。
パワー勝負となればアルカンシエル経験を持つルシンダ・ブラントの出番だ。テクニカルコースでも崩れず、「ディーゼルエンジン」と例えられる粘りの走りを武器にW杯シリーズランキングを制覇したブラントは、苦手なスタートダッシュを決めれば有利な展開を作り出せるはず。同じく過去優勝者セイリン・アルバラードも強力だが、シーズン序盤は表彰台に上がれず調子を落としている感が否めない。テクニックに秀でるMTB世界王者プック・ピーテルセもレースを湧かせる存在となるだろう。



そんなオランダ勢に穴を空けたいのがマースメヘレンで勝利したカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)とW杯第4戦勝者のマリー・シュライバー(ルクセンブルク)の2人。MTBとロード、シクロクロスの3種競技、特にハンガリー代表ジャージを着る選手権大会で強いヴァシュの直近の走りを見るに表彰台に上がる可能性は十分にある。なお今季オランダ勢と対等に渡り合ったゾーイ・バックステッド(イギリス)はU23カテゴリーに出場する予定だ。
大一番に挑む7名の日本人選手たち



日本から出場するのは、セレクションレースと全日本選手権の結果を踏まえて選定された7名だ。今季2度の欧州遠征を経た全日本王者の織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が2年ぶりに世界選手権に出場し、男子U23には副島達海(大阪産業大学)と柚木伸元(日本大学)が、女子U23には日吉愛華(中京大学/Teamまるいち)と渡部春雅(明治大学)が参戦。さらに山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)と石川七海(チャンピオンシステムジャパンTT&轍屋)が男女のジュニアカテゴリーに挑む。




日本代表チームを引っ張るのは、現役選手の中で最も豊富な欧州経験を持つ竹之内悠。長らく日本選手団をサポートする現地スタッフチームのサポートのもと、それぞれの目標を携えて過酷な大一番に挑む。
各レースはUCIの公式Youtubeチャンネルで配信され、男子エリートレースは2月2日23:00よりJ SPORTSで生中継される。各カテゴリーの出場選手に向けて声援を送りたい。
日本ナショナルチームメンバー
男子エリート | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) |
男子U23 | 副島達海(大阪産業大学) |
柚木伸元(日本大学) | |
男子ジュニア | 山田駿太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム) |
女子U23 | 日吉愛華(中京大学/Teamまるいち) |
渡部春雅(明治大学) | |
女子ジュニア | 石川七海(チャンピオンシステムジャパンTT&轍屋) |
UCIシクロクロス世界選手権2025 大会スケジュール
1月31日(金) | チームリレー | 現地12:35〜(日本時間20:35) |
2月1日(土) | 女子ジュニア(石川出場) | 現地11:05〜(日本時間19:05) |
男子U23(副島、柚木出場) | 現地13:05〜(日本時間21:05) | |
女子エリート | 現地15:05〜(日本時間23:05) | |
2月2日(日) | 男子ジュニア(山田出場) | 現地11:05〜(日本時間19:05) |
女子U23(日吉、渡部出場) | 現地13:05〜(日本時間21:05) | |
男子エリート(織田出場) | 現地15:05〜(日本時間23:05) |
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