横風分断が発生したアルウラー・ツアー第3ステージは、初日に続く集団スプリントで決着。最終コーナーの出口から踏み込んだティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が、ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)を退け大会2勝目をマークした。



緑色のリーダージャージを着用してスタートを待つトーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) photo:A.S.O.

トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング)が圧巻のアタックにより新チームで初勝利を飾ったアルウラー・ツアー(UCI2.1)は、1月30日に第3ステージを迎えた。ユネスコ世界遺産である考古遺跡ヘグラ(マダイン・サーレハ)を出発する180.6kmは、カテゴリー山岳が一つも登場しない平坦ステージ。メルリールとフルーネウェーヘンのスプリント勝負が予想された。

レースはウーゴ・アスナル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)を含む、7名の逃げグループで始まった。JCLチーム右京からは初日にも逃げた山本大喜と小石祐馬が加わり、メイン集団との間に最大1分半のリードを築く。メイン集団はリーダーチームのQ36.5プロサイクリングが牽引し、途中落車もあったものの大きな問題なくレースは進んだ。

考古遺跡ヘグラの前を通過する選手たち photo:A.S.O.

7名逃げにはJCLチーム右京の山本大喜と小石祐馬が入った photo:A.S.O.

レース中盤に進路が東から北に変わり、横風が吹き始めるとスーダル・クイックステップは集団分断を試みる。しかし風の威力は十分ではなかったため失敗。中間スプリントではイェンス・レンデルス(ベルギー、ワグナー・バザンWB)が3つ全てを制し、残り50kmを切る頃には1人遅れた山本がプロトンに吸収された。

残り35km地点で逃げグループが5名まで減ると、プロトンではチューダー・プロサイクリングが動き出し横風分断に成功する。それに総合4位のエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)が遅れ、総合優勝候補であったダンバーは最終的に1分2秒遅れてフィニッシュ。ジェイコは総合争いを総合3位のアラン・ハザリー(南アフリカ)に託すこととなった。

横風分断により集団の人数が絞られた photo:A.S.O.

慌ただしい展開の中、逃げを吸収したプロトンは残り22kmでピクニック・ポストNLがアタックを試みるも、決定的な動きには繋がらない。そして一度落ち着いた先頭集団に後続が迫ったが、追いつくことはなく、レースは集団スプリントへともつれ込んだ。

リーダージャージを着用するピドコックが残り1.5kmでパンクに見舞われたものの、救済措置により先頭集団と同タイムでフィニッシュとなる。そして緊張感が高まる先頭集団では単独落車したゴルカ・ソラライン(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)に接触したニルス・エーコフ(オランダ、ピクニック・ポストNL)が街灯に激突するアクシデントが発生。集団は残り300mの最終コーナーからフィニッシュストレートに突入した。

最終コーナーを抜けた直後にスプリントを開始したのはメルリールだった。2勝目を狙うヨーロッパ王者の背後には、唯一オランダ王者フルーネウェーヘンが追従。しかしトップスピードに乗るメルリールは並ぶことすら許さず、フィニッシュラインを越えて大会2勝目を飾った。

フルーネウェーヘンを退け、2勝目を飾ったティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

表彰式で勝利を喜ぶティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:A.S.O.

メルリールはレース後、「エシュロン(横風分断)の中でも仲間のおかげでストレスなく走ることができた。今日は調子がよく、最後は少しカオスだったが落ち着いて対処できた。最終コーナーを抜けた辺りからフィニッシュまで全力で踏み込んだ。この地でまた勝利できて嬉しいよ」と喜びを語った。

一方、ピクニック・ポストNLによるとエーコフは歯1本を折り、顎の骨折を負う重症。オランダに戻り手術の有無などを検査するものの、現時点では6〜8週間はバイクに戻れない見込みだという。
アルウラー・ツアー2025第3ステージ結果
1位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 4:16:23
2位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー)
3位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツXRG)
4位 マッテオ・モスケッティ(イタリア、Q36.5プロサイクリング)
5位 ピエール・バルビエ(フランス、ワグナー・バザンWB)
6位 マルク・ブルステンガ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
7位 エフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、XDSアスタナ)
8位 フロリアン・ドーファン(フランス、トタルエネルジー)
9位 アルベルト・ブルットメッソ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 セバスチャン・コルツェシャンギシ(デンマーク、チューダー・プロサイクリング)
個人総合成績
1位 トーマス・ピドコック(イギリス、Q36.5プロサイクリング) 10:44:49
2位 ライナー・ケップリンガー(オーストリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:08
3位 アラン・ハザリー(南アフリカ、ジェイコ・アルウラー) +0:13
4位 フレドリク・ドゥヴァーシュネス(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +0:34
5位 ヤニス・ヴォワザール(スイス、チューダー・プロサイクリング) +0:37
6位 オドネ・ホルテル(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +0:44
7位 フランク・ファンデンブルーク(オランダ、ピクニック・ポストNL) +0:48
8位 カルム・ジョンストン(イギリス、カハルラル・セグロスRGA) +0:50
9位 マックス・ファンデルミューレン(オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 ヨハネス・クルセット(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
その他の特別賞
ポイント賞 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
ヤングライダー賞 オドネ・ホルテル(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
チーム総合成績 ウノエックス・モビリティ
text:Sotaro.Arakawa
photo:A.S.O.