古墳時代から近世に至るまで、茨城の中心であった石岡の歴史を感じたサイクリング&バスツアー。日本一狭い(!?)サイクリングロードや、筑波山の絶景、酒造、そして火打石体験と後半も盛りだくさん。(前編はこちら



筑波山のふもとを走る。石岡はまだまだ広い。

国分寺、常陸総社宮、風土記の丘を巡り、茨城の中心として栄えてきた石岡の歴史に触れた前半。美味しいお蕎麦を頂いた後は、より本格的なライドを楽しむ後半へ。

風土記の丘を出発したサイクルバスの次なる目的地は「恋瀬川サイクリングロード」。霞ヶ浦に流れ込む恋瀬川は、八代亜紀が「あなたとわたしのさだめの川」と歌ったロケーション。

恋瀬川サイクリングコースヘ
アプローチも少し激しめ。恋の始まりも激しい、ということなのかもしれない



すれ違いが難しいほどの道幅の恋瀬川サイクリングコース、転じて恋がすれ違わないパワースポットになっているのだとか笑

そんな恋瀬川の傍に設えられたサイクリングロードはその狭さに定評があるのだとか。場所によってはすれ違いも難しく、「恋のすれ違いを防ぐ恋愛成就サイクリングロード」として知る人ぞ知るパワースポットとなりつつあるのだという。

いやいや、それは言いすぎでしょうと半信半疑で走ってみると確かにかなり細い。そして突然激坂が現れたり、テクニカルなクランクが登場したり、かなり刺激的なルートである。すれ違うことも無いかもしれないが、平坦な恋愛でも無いのかもしれない(笑)。

霞ヶ浦へと注ぐ恋瀬川の横を走っていく。

果たしてこのサイクリングロードを共に走ったカップルはどんな恋になるのだろうか。そんな思いを巡らし走る車列を遠くから筑波の山々が見守っていた。

次に向かったのは創業100年を越える老舗、東屋糀味噌店。添加物不使用の手作り天然醸造のこだわりが詰まった味噌を手掛ける東屋さんでは、様々な種類の味噌が並んでいる。それぞれ味見をすることも可能で、気に入ったものを買えるのだ。

創業100年を越える老舗、東屋糀味噌店
早速味噌を取ってくれた



色んな種類の味噌が並ぶ。全部試食可能で、さらに合わせ味噌にも出来るのだとか

ブレンドした合わせ味噌にすることも可能で、お気に入りの味を見つけるのもまた楽しい。普段のライドであればお土産に味噌を買って帰るというのは難しいけれど、今回のサイクルバスツアーなら荷物については心配ご無用というの嬉しいところ。

各々気に入った味噌を手に入れ、次に足を運んだのが茅葺き民家の「大場邸」。茅葺き民家の中でも、実はこの地域は筑波流と呼ばれており、豪華な装飾が施されていることが特徴なのだという。

筑波流の古民家、大場邸

棟の小口部分に化粧した「キリトビ」

茅葺の材料を替えることで軒下にストライプ柄をつくる「トオシモノ」や、棟の小口部分に化粧した「キリトビ」など、独自の装飾文化が栄えてきたのだという。確かに初めて見る造りで、感心することしきり。しかし今はその技術を継ぐ職人も数少なくなってきているとも。

受け継がれてきて伝統に感心する一行が次に向かったのはこの日最大のヤマ場となる峠道へ。この日のライド中ずっと見えていた筑波山系へとアプローチ。峠とはいえ電動自転車を使っているので脚力に自信が無くても大丈夫。それでも不安な方はスキップしても問題ないのが、バス帯同ツアーの良い所。

これからヒルクライムへとチャレンジ

パラグライダーの離陸場が。一面の大パノラマを楽しんだ

一本杉峠を越えて登り切った先の尾根には、石岡を見下ろす絶景ポイントが。こちらパラグライダーの離陸場で、関東でも屈指のスカイスポーツが盛んなエリアなのだとか。空中散歩にも憧れるが、自転車のダウンヒルも爽快感では負けていない。気持ちよく下りをこなした私たちが向かったのは、「木内酒造」の八郷蒸留所

筑波山の麓に位置する風光明媚なロケーションにある八郷蒸留所では、こだわりの「日の丸ウイスキー」が造られている。蒸留に使われる蒸留器や、ウイスキーの原料となる大麦などが展示されているほか、木内酒造の手掛けるお酒もお土産として購入可能。

「木内酒造」の八郷蒸留所
併設されるハム工房



ウィスキーの蒸留設備が展示されている

併設されたレストランでは、ウイスキーのテイスティングセットや、併設されたハム工房で造られた様々なハムの盛り合わせなどを頂くことも。

普通のサイクリングであれば、飲酒はご法度だし、重い酒瓶を担いで帰るというのも難しい。しかし、どちらも可能としてくれるのが、今回のスポーツサポートバスツアー。そろそろ夕暮れも迫ってきたタイミングで、ライドは終了ということとし、琥珀色のウイスキーと絶品のランチプレートを堪能。もちろんお土産もしこたま買い込み、バスへ向かうのだった。

自家製ハムの盛り合わせ。1日走った体に塩分が染みる
自慢のウィスキーを飲み比べ。ちなみにこの後はバスに乗っているのでご心配なく(笑)



ライドも一区切りし、美味しいウィスキーとハムに舌鼓

さて、このまま石岡駅へと向かうのかと思いきや、最後にもう一つ立ち寄りスポットが用意されていた。最後の目的地となったいばらきフラワーパークは、季節の花々を楽しめるだけでなく、グランピングやブッシュクラフトといったアクティビティも体験できるのだ。

今回一行が体験したのは、火打石による火起こし。石岡の歴史と文化に触れた今日一日、その最後に昔ながらの火の熾し方を体験するというのはなんともニクい演出だ。

火打ち石体験で用意された火打金(手前)と火打石(奥)
火花が散っているの、わかりますか?



成功するとこんな大きな火になります

フラワーパークのスタッフさんの指導の下、火起こしに挑戦する一行。自分もファイアスターターで火をつけたことくらいまではあるが、伝統的な火打石は初体験。ちなみに、火打石を鋼製の火打ち金に打ち付けることで削り取られた鉄粉が摩擦熱によって発火するのが火打石の原理。なので、用いられる火打石は鋼よりも硬く、また鋼を削りやすい角の立った石であれば良いのだという。

カチッカチッと火打金に火打石を打ち付ける参加者の皆さん。現代ではなかなかできない体験だけに、ついつい夢中になってしまう。火花を飛ばせるようになったら、着火しやすいチャークロスへと火花を飛ばし、火種に。更に麻をほぐしたほくちへ火種をくるみ、息を吹きかければあっという間に大きく燃え始める。

最後は焚火を囲んでほっと一息。

甘酒を頂きつつ、今日1日を振り返る。

無事に火が起こせたら、焚火を囲んで団欒タイム。東屋糀味噌店で買われていた甘酒を温めていただき、ほっと一息つけば自然に口も滑らかに。今日のライドのあそこが良かった、あれが美味しかった、なんて話をしている時が、一番楽しいものだ。

そして、再びバスに乗り石岡駅へ。買い込んだお土産を持って、電車へ。マイバイクを持ってくる必要が無ければ、クルマで渋滞に引っかかる心配も、面倒な輪行の手間も無い。少し微睡めば、あっという間に東京だ。


あまり知ることの無かった石岡という町の魅力を、1日にギュッと凝縮したスポーツサポートバス×自転車ツアー。今回はレンタルのE-BIKEだったが、もちろん自身の自転車でも参加できる。ツアーについては「バス×自転車でめぐる古都石岡」、もしくはバスを運行するタビットバスのサイトにて確認してみてほしい。