12月21日(土)、エキップアサダイヤーエンドパーティーが銀座シャンクレールにて行われた。新型コロナウイルスの影響を受けて遠ざかっていた当パーティーの開催は、2019年以来実に5年ぶり。再開と再会を喜ぶ声が、会場内に響いた。



乾杯は、エカーズやロード・トゥ・ラヴニールを支え続けている渡邉クリニックの渡邉仁院長が行った。食事と歓談を挟んだ後、RTAプロジェクトリーダーの浅田顕氏より、2024年活動報告と2025年活動案内が続けて行われた。2年目を終えたロード・トゥ・ラヴニール、「世界標準のパスウェイ」に従った有望選手の発掘・育成を掲げた活動は、果たしてどのようなものだったのか。

ウェルカムボードとともにエカーズのジャージ、RTAプロジェクトのボトルが飾られたエントランス photo: Yuichiro Hosoda
今季の振り返りとともに次世代への期待も込められたオープニングムービー photo: Yuichiro Hosoda


日頃から様々な形でエキップアサダを支援している人達が集まった photo: Yuichiro Hosoda
渡邉クリニックの渡邉仁院長が乾杯の挨拶を務めた photo: Yuichiro Hosoda


浅田顕氏が開会の挨拶を行う photo: Yuichiro Hosoda

プロジェクトから2人の日本代表選出、25年は春の欧州遠征も実施

まずプロジェクトの広報活動としては、ツアー・オブ・ジャパンでRTA賞を設け、大会で最も活躍した若手選手を表彰。この賞には上位獲得力、レース展開力等の明確な評価基準が設けられており、それに従ってU23カテゴリーの出場選手に評価が与えられている。今季はシマノレーシングの寺田吉騎にこれが贈られた。

選手発掘・育成の根の部分を担うRTAユースキャンプは、春・秋合わせて5回実施。エキップアサダにも馴染み深い島根県益田市をはじめ、長野県の八ヶ岳周辺や木島平村、宇都宮森林公園でも開催され、各地で将来のプロロード選手を目指す10代の若者達が、各分野の専門家に学んだ。

「ロード・トゥ・ラヴニール」は、世界標準の7つのパスウェイを柱とした選手発掘・育成プロジェクト photo: Yuichiro Hosoda

RTAユースキャンプは、島根県益田市をはじめ、長野県や宇都宮等で年4回実施された photo: Yuichiro Hosoda
ツアー・オブ・ジャパン2024でRTA賞を獲得した寺田吉騎(シマノレーシング) photo: Road to l'Avenir


ゆっくりだが着実に活動と認知の幅を広げているように見えたRTAだが、6月にJCFの方針変更により、プロジェクトが目指す最大の大会「ツール・ド・ラヴニール」への日本代表派遣が見送られることが公表され、スケジュール変更を余儀なくされた。しかし当該大会を除いてなお、夏の欧州遠征にはクラウドファンディングで目標額を上回る支援金が集まり、プロジェクトのスポンサーやサプライヤー等のバックアップも受けながら実施に至った。

「遠征当初は時差ボケや環境の変化に戸惑った選手達も徐々に慣れ、楠本颯太(RTA/オランダクラブチーム)と渡辺一気(京都産業大)がそれぞれフランスのアマチュアカテゴリーで勝利。ジャパンカップには渡辺一気と林原聖真(明治大)が日本代表に選出され、プロジェクトとして一つの成果を得ることが出来た」と、浅田氏は安堵の表情で振り返った。

国内に目を向けると、埼玉ユース自転車競技部の選手として活動する新藤大翔が躍進。加須こいのぼり杯タイムトライアルでは昨年から平均時速を7キロ近く伸ばして優勝するなど、着実にその実力を伸ばしているようだ。日本人選手のタイムトライアル力の強化をパスウェイの一つに掲げるRTAとしても、評価出来る結果と言っていいだろう。

夏の欧州遠征では、フランスアマチュアカテゴリーで2勝 photo: Yuichiro Hosoda

夏の欧州遠征にも参加した渡辺一気と林原聖真がジャパンカップに日本代表として選出された photo: Yuichiro Hosoda
地元埼玉での選手発掘・育成の一翼を担う埼玉ユース自転車競技部 photo: Yuichiro Hosoda


埼玉ユース自転車競技部の新藤大翔 photo: Yuichiro Hosoda

加須こいのぼり杯の昨年と今年の結果。埼玉ユース自転車競技部の新藤大翔は、1年で平均時速を7キロ近く上げ優勝 photo: Yuichiro Hosoda

その他にも1月と12月に集団走行安全講習会を開催し、ロードレースに必要な技術を広範に伝えるよう努めていると言う。これらはJCF登録競技者等、参加資格には一定の制限があるものの、参加費無料で行われている。まだレースに慣れていない選手のみならず、自らの走り方を再確認したい選手にも有用なイベントだ。

RTAは2025年活動も今季と同様の体制を敷く模様だが、追加のレース活動として春の欧州遠征が入る。例年と同じく資金集めにはクラウドファンディングを実施。12月25日(水)より、クラファンサイトの「キャンプファイヤー」で支援金の募集が開始されている。参加選手は、セレクションが終わり次第発表されるそうだ。クラファンページへは、以下のURLよりアクセスしてほしい。

→CAMPFIRE:2025年春に本場フランスの自転車レースに若手有望選手を出場させたい!

集団走行安全講習会と言った、ロードレースに必要な基本スキルを学べる場も提供 photo: Yuichiro Hosoda
スポーツサイクリングを楽しむためのサービスを提供する埼玉県東松山市のシクロパビリオンも今年で15周年を迎えた photo: Yuichiro Hosoda


2025年に掲げるテーマは「チーム×戦略」 photo: Yuichiro Hosoda
エキップアサダが抱える2つのチームとRTAプロジェクトの結びつきをより強くしていく photo: Yuichiro Hosoda


2025年のRTA強化育成活動予定 photo: Yuichiro Hosoda


当日参加したエキップアサダ卒業生の今後

少し間を置いて、この日参加していたエキップアサダ卒業生の蠣崎優仁、渡邉歩、石上優大の挨拶が行われた。と言っても、実は3人ともこのパーティーは私人としての自腹参加。主催者側であるエキップアサダ後援会が参加者名簿に名前を見つけ、急遽舞台が用意された形だ。「エカーズ卒業時はコロナ禍で、リモートでしか皆さんにご挨拶出来なかったので」と、感謝の気持ちで参加してくれたようだ。3人それぞれがエカーズで活動した思い出を語りながら、来年以降の活動を語った。

2025年、蠣崎優仁は「Team LMP La Roche Vendée Cyclisme」(チームLMP ラ・ローシュ・ヴァンデ・シクリズム)に移籍し、引き続きレース活動を行うことが伝えられた。心臓病「ARVC」への罹患により2023年末に引退し、愛三工業レーシングチームでスタッフとして活動していた渡邉歩は、ガールズケイリン選手で妻の吉川美穂とともに和歌山に住み、地域と連携しながら自転車に関するイベント等を担っていくのだと教えてくれた。今季限りで選手を引退する渡邉と同チームの石上優大は、以前からやってみたかったと言うトレーダーとして、またトレーナーとして活動していくそうだ。石上には引退記念の花束が、田之頭宏明エキップアサダ後援会長より手渡された。

エカーズ卒業後もフランスに留まり、レース活動を続けている蠣崎優仁 photo: Yuichiro Hosoda
蠣崎優仁の紹介写真だが、左は俳優の…(笑) photo: Yuichiro Hosoda


2023年末に心臓病により引退を余儀なくされた渡邉歩。2025年は新たな道を行く photo: Yuichiro Hosoda
表示された写真を見ながら、自らの歴史を振り返る渡邉歩 photo: Yuichiro Hosoda


田之頭宏明後援会長から石上優大に引退記念の花束が渡された photo: Yuichiro Hosoda
エカーズで長年ともに過ごした浅田顕氏と石上優大が並んで写真に収まる photo: Yuichiro Hosoda




パーティーの終盤には恒例のお楽しみ抽選会も。ほぼ外れる人はなかったと言っていいほど協賛各社より多数の賞品が用意され、参加者の皆さんを喜ばせていた。中でも目玉はブリヂストンサイクル提供のクロスバイク「アンカーRL1」。自転車の提供は長年の同パーティーでも初めてのことで、会場では大きな歓声が上がった。

終了間際、浅田顕、山﨑健一の両名からはRTAのサポーターズボトルも案内された。赤は選手専用で非売品、黒がサポーター向けの販売品だ。ボトル単体にしては2,000円と一見高額なのだが、これにはRTAプロジェクトへの支援金も含まれているとのこと。イベント時の現地販売だけでなく、間もなくネット販売も開始されるそうだ。

サプライヤーや協力各社のグッズが提供されたお楽しみ抽選会 photo: Yuichiro Hosoda
カベルミュールのバッグを手に笑顔 photo: Yuichiro Hosoda


注目のツール・ド・フランス公式バックパックを手にしたのはこの方! photo: Yuichiro Hosoda
ブリヂストンサイクルからはクロスバイクのアンカーRL1がプレゼント! photo: Yuichiro Hosoda


嬉しそうにアンカーRL1に跨る当選者の方 photo: Yuichiro Hosoda

会場でも販売されたRTAボトル。赤は選手専用で、黒がプロジェクト支援金込み2000円のサポーターズボトル photo: Yuichiro Hosoda

締めは田之頭宏明会長、浅田顕氏の挨拶と続き、会は和やかな雰囲気の中、閉幕となった。

ロード・トゥ・ラヴニールは、まだまだ資金繰りに苦心している状況も垣間見える。一朝一夕でプロ入りする選手が出てくるわけではないため、息の長い活動が求められると同時に、支援者にも目前の成果ばかりを追うのでなく、数年、あるいは10年先を見据える胆力が必要となる。そのような下支えを厭わないスポンサーや支援者の輪が、今後も広がることに期待したい。

エキップアサダ卒業生も引き合いに出して笑いを誘う田之頭後援会長 photo: Yuichiro Hosoda
真剣な眼差しで来季を見据える浅田顕氏 photo: Yuichiro Hosoda


パーティーに参加したエキップアサダの卒業生と現役選手が肩を組む photo: Yuichiro Hosoda

参加者、スタッフが1つに集い、記念撮影 photo: Yuichiro Hosoda

「行動を伴わない夢は妄想である」 photo: Yuichiro Hosoda

text&photo: Yuichiro Hosoda