2010/07/25(日) - 13:57
ツール2010を決定づける第19ステージ個人タイムトライアルは、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が区間勝利を挙げ、総合争いではアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)が苦しみつつもマイヨジョーヌを守り切った。
マイヨジョーヌのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)と2位につけるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がわずか8秒という僅差のままもつれこんだ個人タイムトライアル。翌日は祝祭の最終パリ・シャンゼリゼということもあり、実質上総合優勝争いの最後のステージとなる。
アンディはルクセンブルクのTTナショナルチャンピオン。しかしコンタドールはしばしばスペシャリストをも凌駕するタイムトライアルの強さを見せる生粋のステージレーサー。ツール初制覇を目指すアンディに、コンタドールは最後の最後まで大きな壁として立ちはだかった。
そして表彰台争いも拮抗。この日までに総合4位につけるデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)と総合3位のサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)とのタイム差はわすかに21秒。パリでの栄誉ある表彰台を巡って、こちらも熱戦が予想された。
総合順位下位からスタートする個人タイムトライアルの習わしに従って、この日早くにスタートを切ったのは第1ステージのTTで2位に入ったトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア)。
このツールでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)のアシストとしても目覚ましい活躍を見せたマルティンがこれまでのタイムを大きく更新する1時間1分13秒で暫定トップに立つ。
マルティンにとって、実質上の敵は第1ステージで最後に逆転を喫したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)だった。やはり総合順位で下位のカンチェラーラはマルティンからおよそ10分後、ゴールラインに飛び込んできた。
その様はまるで第1ステージのデジャブ。圧倒的な力で後半にペースを挙げたこの世界チャンピオンは、マルティンを17秒上回る圧巻の走り暫定トップの座を奪い取った。マルティンにとっては2度に渡って苦杯を味わされる結果となったが、この後2人に拮抗するタイムが出なかったことを考えると、充分に強かったと言えるだろう。
59番手スタートの新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は、9分7秒遅れの126位で最後のTTを走り切った。2度目の完走は目前、そして最後に見せ場を作るチャンスが最終シャンゼリゼにはある。
カンチェラーラを打倒できるスペシャリストとして、イギリスナショナルチャンピオンのブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)にも注目が集まったが、序盤からペースがつかめず、3分33秒遅れの9位に終わった。
ツール・ド・フランス最後のタイムトライアルを走ったのはランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)。かつては多くのライバルを粉砕しステージ優勝を量産した彼のTTも、この日はステージ優勝に絡むことはなく、7分5秒遅れでゴール。しかし沿道からは時代をつくった偉大なチャンピオンに熱い声援が飛んだ。
総合上位陣でタイムを失ったのは総合7位につけていたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。生粋のクライマーである彼はタイムを伸ばせず、総合8位のライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)に逆転を許す結果に。
そして表彰台を懸けた争いにも動きが生じた。09ジロ・デ・イタリア覇者のメンショフが安定したタイムで走る一方で総合3位のサンチェスが伸びない。レース序盤のヴァーチャルタイムで逆転したメンショフはそのままタイムを保ってゴール。サンチェスは最後の最後で総合4位に陥落した。
そしてマイヨジョーヌ争いは激戦の様相を呈した。不利がささやかれていたアンディが好走を見せる。18km地点の第1中間計測ポイントではアンディがコンタドールを6秒上回るタイムで通過。レース前にあった差は8秒なので、この時点でヴァーチャルでアンディが2秒差までコンタドールに迫った。
コンタドールは立ち上がりから表情に険しさが覗くが、そこは全てのグランツールを制した経験が生きる。後半にかけて立て直し、逆にペースが落ちてきたアンディとの差をじわりじわりと開いていく。
しかしアンディも粘り強い走りを見せる。36.5kmの第2中間計測ポイントでアンディはコンタドールに6秒遅れ。マイヨジョーヌまでは14秒のビハインド。最後の最後まで望みをつなぐ。
残り10kmを切った苦しい局面でコンタドールが王者の意地を見せた。一気にヴァーチャルのタイム差を26秒まで引き離すと、そこからアンディの巻き返しはもう起こらなかった。全力で挑んだアンディは1時間7分10秒でゴール。
コンタドールは最後スプリントでゴールラインを切る執念を見せ、1時間6分39秒でゴール。最後は31秒差をアンディに対して稼ぐ強さを見せつけた。しかしこれまでの実績を見ればアンディは大健闘の走り。コンタドールを最後の最後まで追いつめるその走りは、今後ツール・ド・フランスの主役が誰になるかを世界に知らしめるに充分なものだった。
ゴール後、ガッツポーズと雄叫びを上げたコンタドールは、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)の祝福を受けた後、自身の手の中で泣き崩れた。どれだけのプレッシャーの中で戦っていたか、そしてどれだけアンディの存在が脅威であったかをまざまざと感じさせる涙だった。
大勢が決したツール・ド・フランス2010。残すはマイヨヴェール争いのみ。例年同様、最終日までもつれこんだスプリンター賞ジャージをめぐる争いは、祝祭の雰囲気をレースへスイッチするスパイスとなるだろう。いよいよツール・ド・フランスは花の都で大団円を迎える。
ツール・ド・フランス2010第18ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) 1h00'56"
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア) +17"
3位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームHTCコロンビア) +1'17"
4位 イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、サーヴェロ・テストチーム) +2'34"
5位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) +3'00"
6位 コース・ムーレンハウト(オランダ、ラボバンク) +3'03"
7位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケスデパーニュ) +3'10"
8位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク) +3'21"
9位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +3'33"
10位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +3'38"
126位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +9'07"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) 89h16'27"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) +39"
3位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'01"
4位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +3'40"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+6'54"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +9'31"
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) +10'15"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +11'37"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス・ドイモ) +11'54"
10位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +12'02"
112位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +3h13'20"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 213pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム) 203pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)197pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 143pts
2位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 128pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 116pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 89h17'06"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +8'52"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +11'15"
チーム総合成績
1位 レディオシャック 264h36'07"
2位 ケースデパーニュ +9'15"
3位 ラボバンク +27'49"
text:Yufta Omata
photo:Makoto Ayano
マイヨジョーヌのアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)と2位につけるアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がわずか8秒という僅差のままもつれこんだ個人タイムトライアル。翌日は祝祭の最終パリ・シャンゼリゼということもあり、実質上総合優勝争いの最後のステージとなる。
アンディはルクセンブルクのTTナショナルチャンピオン。しかしコンタドールはしばしばスペシャリストをも凌駕するタイムトライアルの強さを見せる生粋のステージレーサー。ツール初制覇を目指すアンディに、コンタドールは最後の最後まで大きな壁として立ちはだかった。
そして表彰台争いも拮抗。この日までに総合4位につけるデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)と総合3位のサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)とのタイム差はわすかに21秒。パリでの栄誉ある表彰台を巡って、こちらも熱戦が予想された。
総合順位下位からスタートする個人タイムトライアルの習わしに従って、この日早くにスタートを切ったのは第1ステージのTTで2位に入ったトニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア)。
このツールでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)のアシストとしても目覚ましい活躍を見せたマルティンがこれまでのタイムを大きく更新する1時間1分13秒で暫定トップに立つ。
マルティンにとって、実質上の敵は第1ステージで最後に逆転を喫したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)だった。やはり総合順位で下位のカンチェラーラはマルティンからおよそ10分後、ゴールラインに飛び込んできた。
その様はまるで第1ステージのデジャブ。圧倒的な力で後半にペースを挙げたこの世界チャンピオンは、マルティンを17秒上回る圧巻の走り暫定トップの座を奪い取った。マルティンにとっては2度に渡って苦杯を味わされる結果となったが、この後2人に拮抗するタイムが出なかったことを考えると、充分に強かったと言えるだろう。
59番手スタートの新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は、9分7秒遅れの126位で最後のTTを走り切った。2度目の完走は目前、そして最後に見せ場を作るチャンスが最終シャンゼリゼにはある。
カンチェラーラを打倒できるスペシャリストとして、イギリスナショナルチャンピオンのブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)にも注目が集まったが、序盤からペースがつかめず、3分33秒遅れの9位に終わった。
ツール・ド・フランス最後のタイムトライアルを走ったのはランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)。かつては多くのライバルを粉砕しステージ優勝を量産した彼のTTも、この日はステージ優勝に絡むことはなく、7分5秒遅れでゴール。しかし沿道からは時代をつくった偉大なチャンピオンに熱い声援が飛んだ。
総合上位陣でタイムを失ったのは総合7位につけていたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。生粋のクライマーである彼はタイムを伸ばせず、総合8位のライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)に逆転を許す結果に。
そして表彰台を懸けた争いにも動きが生じた。09ジロ・デ・イタリア覇者のメンショフが安定したタイムで走る一方で総合3位のサンチェスが伸びない。レース序盤のヴァーチャルタイムで逆転したメンショフはそのままタイムを保ってゴール。サンチェスは最後の最後で総合4位に陥落した。
そしてマイヨジョーヌ争いは激戦の様相を呈した。不利がささやかれていたアンディが好走を見せる。18km地点の第1中間計測ポイントではアンディがコンタドールを6秒上回るタイムで通過。レース前にあった差は8秒なので、この時点でヴァーチャルでアンディが2秒差までコンタドールに迫った。
コンタドールは立ち上がりから表情に険しさが覗くが、そこは全てのグランツールを制した経験が生きる。後半にかけて立て直し、逆にペースが落ちてきたアンディとの差をじわりじわりと開いていく。
しかしアンディも粘り強い走りを見せる。36.5kmの第2中間計測ポイントでアンディはコンタドールに6秒遅れ。マイヨジョーヌまでは14秒のビハインド。最後の最後まで望みをつなぐ。
残り10kmを切った苦しい局面でコンタドールが王者の意地を見せた。一気にヴァーチャルのタイム差を26秒まで引き離すと、そこからアンディの巻き返しはもう起こらなかった。全力で挑んだアンディは1時間7分10秒でゴール。
コンタドールは最後スプリントでゴールラインを切る執念を見せ、1時間6分39秒でゴール。最後は31秒差をアンディに対して稼ぐ強さを見せつけた。しかしこれまでの実績を見ればアンディは大健闘の走り。コンタドールを最後の最後まで追いつめるその走りは、今後ツール・ド・フランスの主役が誰になるかを世界に知らしめるに充分なものだった。
ゴール後、ガッツポーズと雄叫びを上げたコンタドールは、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)の祝福を受けた後、自身の手の中で泣き崩れた。どれだけのプレッシャーの中で戦っていたか、そしてどれだけアンディの存在が脅威であったかをまざまざと感じさせる涙だった。
大勢が決したツール・ド・フランス2010。残すはマイヨヴェール争いのみ。例年同様、最終日までもつれこんだスプリンター賞ジャージをめぐる争いは、祝祭の雰囲気をレースへスイッチするスパイスとなるだろう。いよいよツール・ド・フランスは花の都で大団円を迎える。
ツール・ド・フランス2010第18ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) 1h00'56"
2位 トニ・マルティン(ドイツ、チームHTCコロンビア) +17"
3位 ベアト・グラブシュ(ドイツ、チームHTCコロンビア) +1'17"
4位 イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、サーヴェロ・テストチーム) +2'34"
5位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) +3'00"
6位 コース・ムーレンハウト(オランダ、ラボバンク) +3'03"
7位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケスデパーニュ) +3'10"
8位 マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク) +3'21"
9位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +3'33"
10位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +3'38"
126位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +9'07"
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) 89h16'27"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) +39"
3位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +2'01"
4位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +3'40"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+6'54"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +9'31"
7位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ) +10'15"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +11'37"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス・ドイモ) +11'54"
10位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック) +12'02"
112位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) +3h13'20"
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) 213pts
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム) 203pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)197pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム) 143pts
2位 クリストフ・モロー(フランス、ケースデパーニュ) 128pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 116pts
マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) 89h17'06"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +8'52"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス) +11'15"
チーム総合成績
1位 レディオシャック 264h36'07"
2位 ケースデパーニュ +9'15"
3位 ラボバンク +27'49"
text:Yufta Omata
photo:Makoto Ayano
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