2024/12/16(月) - 08:51
3連覇への期待が大きなプレッシャーとなってのしかかるなか、U23からの特例出場の副島達海、地元宇都宮の熱い声援を受ける沢田時らを退けて11ヶ月をおいて再び同じ場所で勝利した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)。決め手となったのはシケインでのアタックとパワーを活かした逃げの脚だった。
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昨年より多い68人の選手がスタートグリッドに並ぶ photo:Makoto AYANO
11ヶ月をおいて再び宇都宮市で開催された第29回シクロクロス全日本選手権。エリート男子のスタートは14時半と昨年と変わらずスタートを迎えた。スタートグリッドのフロントローにはU23の選手でありながらエリートでの出走が認められた副島達海(大阪産業大学)が並ぶ。
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今の3強、織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)、沢田時(宇都宮ブリッツェン)、副島達海(大阪産業大学)が並ぶ photo:Makoto AYANO
この日の午前の予想気温は氷点下に冷え込む予報だったが、結局は2日連続の好天に恵まれた。気温は上がり、午前中は硬く凍てついていた日陰のキャンバー路面も昼をすぎる頃には緩みはじめていた。
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斜陽のなか14時30分にスタート。ホールショットは副島達海(大阪産業大学) photo:Makoto AYANO
昨年よりも18人多い68人の選手により14時30分にスタートが切られた。ホールショットは副島達海(大阪産業大学)がものにするが、ホームストレートを越えて砂場セクションを抜けたときには沢田時 (宇都宮ブリッツェン) がリードを奪った。副島、横山航太(ペダル)、竹之内悠(/slash Cinelli-Vision)が続き3段坂を駆け上がる。
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沢田時(宇都宮ブリッツェン)を先頭に三段坂を登るエリート男子 photo:Makoto AYANO
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「マウンテン」エリア斜面の登り返しは狭く難セクションだ photo:Makoto AYANO
抜きどころの少ない林間のシングルトラックから登り返しの「マウンテン」、そしてラインが2つある階段セクションを越えて長く伸びる集団。副島、織田、そして横山が抜け出る。
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副島達海(大阪産業大学)がバニーホップでシケインをクリア photo:Makoto AYANO
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予想通りの副島達海、沢田時、織田聖の先頭パックが形成された photo:Makoto AYANO
スタートで出遅れていた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は2周目にようやく先頭に追いつくが、横山が離れ、沢田、副島、織田の3人パックが形成される。
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序盤のキャンバーはまだ固く、滑りやすかった。徐々に路面は変化していく photo:Makoto AYANO
先頭に追いつくのに力を使ったか、織田はパック内でしばらく静観している様子だったがレースに動きが出たのは3周目だった。2連シケイン手前の区間で織田がペースアップして後続を離して侵入、得意とするバニーホップで差をつけるとそのままグラベル区間へ単独で進んでいった。
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バニーホップと前後のテクニックで差をつけた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
織田はこのアタックをレース後にこう振り返った。「今日は思ったよりも身体が動かなくてキツイ展開だなぁと思っていたけど、前へ出て踏んだときに後ろが離れたのでココで行くしかないと感じてアタック。登り返しの芝のキャンバーで少し差が開いて、シケインを超えた後の向かい風区間で踏むしか無いと思って」。
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平坦路でペダルを強く踏み逃げる織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
その後の周回でも織田の力強さは際立ち、追走する沢田と副島だが、織田との差は5周目で15秒、6周目で23秒にまで広がった。
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沢田時を引き離す副島達海(大阪産業大学) photo:Makoto AYANO
沢田と副島の2位争いは、副島が沢田を引き離そうと試みる。しかし沢田にチェーン落ちのトラブルが2度あり、副島とは30秒の差が開いた。
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鈴木来人(OnebyESU-ICV)と竹之内悠(/slash Cinelli-Vision)の5位争い photo:Makoto AYANO
3人に遅れてからは単独で淡々と走る横山。その後方では鈴木来人(OnebyESU-ICV)と竹之内悠が5位を争った。
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観客の応援を受けて独走する織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
安定したラップタイムを刻み続けて独走を維持した織田は、副島に26秒、沢田に57秒の大差をつけ、指3本で三連覇を示しながらフィニッシュした。今季はイタリアでもシクロクロスレースを走り研鑽を積んできたチャンピオンの走りを披露した。
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全日本選手権三連覇を達成した織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO
織田は言う。「目標にしていた三連覇を達成できてホッとしています。先輩方の記録にはまだまだ遠いですが、一歩近づけたかなと思っています」。
全日本選手権三連覇を達成した織田。そして先の女子エリートでは小林あか里が連覇を達成し、弱虫ペダルサイクリングチームは2年連続でペア優勝を達成したことになる。
余裕があるように見えた走りだが、差を開いてからは我慢のレースだったようだ。
「20秒ぐらい差が開いてからタイム差は思ったよりも開かなくて。でも落ち着いて、踏むところを踏んで差を詰められないようにしていました。残り2周では脚が攣り始めていて、どのセクションも丁寧に丁寧に、しかし平坦では踏むように走っていました」。
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織田に26秒遅れてフィニッシュする副島達海(大阪産業大学) photo:Makoto AYANO
このレースの立役者でもある2位の副島は言う。
「レース前には本当に緊張していました。聖さんに何度か勝てたからこそこの舞台に立たせてもらうことができました。今までのレースで勝ったということは、今日も勝てるかもしれないといことなので、すごいプレッシャーがあり、そのなかでもスカしながら僕の力をすべて出そうと思っていました。それ以上に皆さんが楽しんでくれるようなレースをしたかった。
途中で脚も攣ってペースダウンしてしまい、聖さんのアタックにはついていけなかった。自分の力不足と、でももっともっと走れたという気持ちがあります。皆さんにもっと熱いレースを届けられたんじゃないかと思うと悔しいですが、来年も再来年もクロスは続くので、もっと走れるようになってこの場所に戻ってきます」。
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3位の悔しさを噛みしめる沢田時(宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO
地元での勝利にまた届かなかった沢田は言う。「途中2回ほどチェーン落ちがあったが、そればかりが敗因ではない。全日本は優勝を目指す大会。織田選手がアタックを仕掛けたとき、副島選手を引っ張って追い上げる走りができなかったし、それどころか、副島選手の後ろにいるしかできなかった。チェーン落ちのトラブルは実力の無さが引き起こしたことだと思っている。結果的に実力通りの3番だった。
でも、今日の自分のパフォーマンスには満足している。スタートからゴールまですごい声援をいただき、2024年は自分にとっては間違いなくいい年だった。シクロクロスは途中、つらいときがあったが、今日、最後のレースでこんなにたくさんの方に応援してもらって、本当に幸せだった。自分にだけでなく、すべての選手を応援していただけて、ここで走れる選手は本当に幸せです」。
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男子エリート 1位織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)2位副島達海(大阪産業大学)3位沢田時(宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO
表彰式の最後には次回のシクロクロス全日本選手権の開催地が大阪府貝塚市の二色の浜公園に決定したことが発表された。
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関西シクロクロス・オルガナイザーの上田尚徳氏 photo:Makoto AYANO
関西シクロクロス・オルガナイザーの上田尚徳氏が挨拶し、開催地を紹介した。
「関西シクロクロスは1995年に第1回が開催されて来年で30周年を迎えます。同じシーズンに全日本選手権の第1回も開催されていて、来年同じ30周年に開催できることを大変喜ばしく思っています。宇都宮は大変自転車文化の盛んなところで、大勢の観客がお越しになってますが、大阪関西も自転車文化が大変盛んなところ。来シーズンの二色の浜もぜひ大勢の方にお越しいただければと思います」。
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11ヶ月をおいて再び宇都宮市で開催された第29回シクロクロス全日本選手権。エリート男子のスタートは14時半と昨年と変わらずスタートを迎えた。スタートグリッドのフロントローにはU23の選手でありながらエリートでの出走が認められた副島達海(大阪産業大学)が並ぶ。
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この日の午前の予想気温は氷点下に冷え込む予報だったが、結局は2日連続の好天に恵まれた。気温は上がり、午前中は硬く凍てついていた日陰のキャンバー路面も昼をすぎる頃には緩みはじめていた。
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昨年よりも18人多い68人の選手により14時30分にスタートが切られた。ホールショットは副島達海(大阪産業大学)がものにするが、ホームストレートを越えて砂場セクションを抜けたときには沢田時 (宇都宮ブリッツェン) がリードを奪った。副島、横山航太(ペダル)、竹之内悠(/slash Cinelli-Vision)が続き3段坂を駆け上がる。
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抜きどころの少ない林間のシングルトラックから登り返しの「マウンテン」、そしてラインが2つある階段セクションを越えて長く伸びる集団。副島、織田、そして横山が抜け出る。
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スタートで出遅れていた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)は2周目にようやく先頭に追いつくが、横山が離れ、沢田、副島、織田の3人パックが形成される。
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先頭に追いつくのに力を使ったか、織田はパック内でしばらく静観している様子だったがレースに動きが出たのは3周目だった。2連シケイン手前の区間で織田がペースアップして後続を離して侵入、得意とするバニーホップで差をつけるとそのままグラベル区間へ単独で進んでいった。
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織田はこのアタックをレース後にこう振り返った。「今日は思ったよりも身体が動かなくてキツイ展開だなぁと思っていたけど、前へ出て踏んだときに後ろが離れたのでココで行くしかないと感じてアタック。登り返しの芝のキャンバーで少し差が開いて、シケインを超えた後の向かい風区間で踏むしか無いと思って」。
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その後の周回でも織田の力強さは際立ち、追走する沢田と副島だが、織田との差は5周目で15秒、6周目で23秒にまで広がった。
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沢田と副島の2位争いは、副島が沢田を引き離そうと試みる。しかし沢田にチェーン落ちのトラブルが2度あり、副島とは30秒の差が開いた。
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3人に遅れてからは単独で淡々と走る横山。その後方では鈴木来人(OnebyESU-ICV)と竹之内悠が5位を争った。
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安定したラップタイムを刻み続けて独走を維持した織田は、副島に26秒、沢田に57秒の大差をつけ、指3本で三連覇を示しながらフィニッシュした。今季はイタリアでもシクロクロスレースを走り研鑽を積んできたチャンピオンの走りを披露した。
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織田は言う。「目標にしていた三連覇を達成できてホッとしています。先輩方の記録にはまだまだ遠いですが、一歩近づけたかなと思っています」。
全日本選手権三連覇を達成した織田。そして先の女子エリートでは小林あか里が連覇を達成し、弱虫ペダルサイクリングチームは2年連続でペア優勝を達成したことになる。
余裕があるように見えた走りだが、差を開いてからは我慢のレースだったようだ。
「20秒ぐらい差が開いてからタイム差は思ったよりも開かなくて。でも落ち着いて、踏むところを踏んで差を詰められないようにしていました。残り2周では脚が攣り始めていて、どのセクションも丁寧に丁寧に、しかし平坦では踏むように走っていました」。
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このレースの立役者でもある2位の副島は言う。
「レース前には本当に緊張していました。聖さんに何度か勝てたからこそこの舞台に立たせてもらうことができました。今までのレースで勝ったということは、今日も勝てるかもしれないといことなので、すごいプレッシャーがあり、そのなかでもスカしながら僕の力をすべて出そうと思っていました。それ以上に皆さんが楽しんでくれるようなレースをしたかった。
途中で脚も攣ってペースダウンしてしまい、聖さんのアタックにはついていけなかった。自分の力不足と、でももっともっと走れたという気持ちがあります。皆さんにもっと熱いレースを届けられたんじゃないかと思うと悔しいですが、来年も再来年もクロスは続くので、もっと走れるようになってこの場所に戻ってきます」。
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地元での勝利にまた届かなかった沢田は言う。「途中2回ほどチェーン落ちがあったが、そればかりが敗因ではない。全日本は優勝を目指す大会。織田選手がアタックを仕掛けたとき、副島選手を引っ張って追い上げる走りができなかったし、それどころか、副島選手の後ろにいるしかできなかった。チェーン落ちのトラブルは実力の無さが引き起こしたことだと思っている。結果的に実力通りの3番だった。
でも、今日の自分のパフォーマンスには満足している。スタートからゴールまですごい声援をいただき、2024年は自分にとっては間違いなくいい年だった。シクロクロスは途中、つらいときがあったが、今日、最後のレースでこんなにたくさんの方に応援してもらって、本当に幸せだった。自分にだけでなく、すべての選手を応援していただけて、ここで走れる選手は本当に幸せです」。
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表彰式の最後には次回のシクロクロス全日本選手権の開催地が大阪府貝塚市の二色の浜公園に決定したことが発表された。
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関西シクロクロス・オルガナイザーの上田尚徳氏が挨拶し、開催地を紹介した。
「関西シクロクロスは1995年に第1回が開催されて来年で30周年を迎えます。同じシーズンに全日本選手権の第1回も開催されていて、来年同じ30周年に開催できることを大変喜ばしく思っています。宇都宮は大変自転車文化の盛んなところで、大勢の観客がお越しになってますが、大阪関西も自転車文化が大変盛んなところ。来シーズンの二色の浜もぜひ大勢の方にお越しいただければと思います」。
男子エリート リザルト
1位 | 織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム) | 57:12.700 |
2位 | 副島達海(大阪産業大学) | +26s |
3位 | 沢田時(宇都宮ブリッツェン) | +57s |
4位 | 横山航太(ペダル) | +1m50s |
5位 | 竹之内悠(/slash Cinelli-Vision) | +2m15s |
6位 | 鈴木来人(OnebyESU-ICV) | +2m23s |
7位 | 松本一成(W.V.OTA) | +3m49s |
8位 | 宇賀隆貴(SHIDO-WORKS) | +3m57s |
9位 | 加藤健悟(臼杵レーシング) | +4m15s |
10位 | 小坂光(Utsunomiya Lux) | +5m05s |
text&photo:Makoto AYANO
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