目まぐるしく動いたレースはニールソン・パウレスによるロングスプリントで決着。優勝者はもちろん敗れたファンウィルデルやモホリッチ、「レースの進化が証明された」と語ったウッズなど、選手たちのコメントでレースを振り返ります。



優勝 ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)

ジャパンカップ2勝目を挙げたニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:Makoto AYANO

序盤から戦術的かつ難しい展開となった。また大人数の集団が形成され、レース中何度も「もう終わったかもしれない」と思った。だけど集団はひと塊に戻り、登りで強い選手だけが残る絞り込みが行われた。そして最終的に5名となった。

残り4周から良い協力関係を築くことができ、ローテーションも綺麗に回ることができた。ラストラップでは駆け引きが行われ、スーダル・クイックステップから強い2人が入る難しい状況だった。それにモホリッチは5mでさえ引き離されてはいけない選手。だから彼の背後にピッタリとつく必要があった。

最後はスプリントに持ち込まれる理想的な展開で、ラスト1kmまで脚を溜めることに専念した。それが結果的に上手くいったんだ。

ゴール後、喜びの表情を見せるニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo: Yuichiro Hosoda

―最終周回にファンウィルデルが遅れた時、モホリッチとどんな会話があったのか?

ファンセヴェナントがフリーライド(先頭交代をする必要のない状況)となり、マテイ(モホリッチ)から「ファンウィルデルを待つのはどうか?」という提案があった。

―ファンウィルデルを待つべきだと思ったか?それとも無視してそのままローテーションを回したかったか?

僕自身としてはそのまま行きたかったが、マテイの提案があったので従ったまでだ。結果的にその選択は正しかったと思う。その瞬間のことを言えば、彼の方が正確に状況を判断できていたのだろう。

その後ファンウィルデルが追いつき、そのまま力強いアタックを見せた。反応したが強烈過ぎて「踏みすぎて限界に達してしまった」と後悔した。だが幸運にも追従でき、そこから更に駆け引きが繰り広げられた。

記者会見に出席したニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) photo: Kei Tsuji

昨年は娘が生まれたばかりだったので、ここに来ることができなかった。だが今年はレースを心から楽しむことができたよ。そしてまたここへ戻って来ることができればと思っている。

2位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

最終周回の登りで遅れながらも、2位に入ったイラン・ファン・ウィルデル(スーダル・クイックステップ) photo:Satoru Kato

雨の中だった昨年と比べ、晴天の中行われた今日のレースは全くの別物だった。どこのチームもコントロールしない、終始オープンなレース。そういった展開は好きで、結果的に5名の中に僕ら2名が残った。ベストを尽くしたが、最も強い選手が勝った。だから彼(パウレス)を祝福したい。

ここでまたレースができて嬉しかったし、また戻ってきたいよ。

3位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)

表彰台に上がったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo: Yuichiro Hosoda

スタートからクレイジーと思えるほど高強度なレースとなった。徐々に集団の人数が減っていき、20〜30名程度となったタイミングでマイケル・ウッズがアタックしたんだ。それにより5名に絞れられ、最後のスプリントでは一番強かったニールソン(パウレス)にこそ今日の勝利はふさわしい。

―ファンウィルデルが遅れたタイミングで、パウレスたちにどんな言葉をかけたのか?

マウリ(ファンセヴェナント)が協力してくれないのは明らかだったので、脚を溜めさせてはスプリントで勝てないと思った。だから待とうと2人(ウッズとパウレス)に提案したんだ。

4位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)

5名による集団形成のきっかけを作ったマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) photo:Satoru Kato

ラストラップは可能な限りアグレッシブに走ろうと思った。なぜならスプリントでは勝てないので、その前にリードを稼ぐ必要があったからね。上手くいかなかったが、レースには概ね満足しているよ。

いまはレースのレベルが高いので、登りで相手を引き離すことができない。そのため登り後から5km以内に、狡猾な動きで仕掛けなければならなかった。だがそれを可能にする頭が僕にはなかった。脚はあったのにスマートな走りができなかった。

数字(出力値)から見ても、スタートからフィニッシュまでとても厳しいレースだった。でも同時にとても楽しいレースだったし、それはきっと観ている側にとっても同じだろう。

勝者を称えるマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) photo:Kei Tsuji

―2位に入った2019年大会よりも厳しかったか?

比べ物にならないほどね。あの時は伝統的なヨーロッパのレーススタイルで、今回は最初から全員が全力という全く新しいレーススタイルだった。展開が落ち着いたのなんて残り60km辺りの一回しかなかったんじゃないかな。

―シーズンで最も厳しいレースだったか?

いや、厳しさではイル・ロンバルディアが上回る。でも4時間に満たない短いレースで言えば、これ以上厳しいレースは思い当たらないかな。

12位 ヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック)

終盤積極的な走りが光ったものの、メカトラに見舞われたヤコブ・フルサン(デンマーク、イスラエル・プレミアテック) photo:Kei tsuji

キツかった。本当にキツかった。キツすぎだよ。今日の調子は悪くなく、少し力が足りなかった。5名逃げができた時、登りの途中にチェーンが外れてしまったんだ。そのため(先頭でも追走でもない)宙ぶらりんの状態に陥ってしまった。

日本人最高位(14位)岡本隼 (愛三工業レーシングチーム)

2年連続で日本人最高位に入った岡本隼(愛三工業レーシングチーム) photo:Satoru Kato

2周目、3周目からペースが速くて、それは予想出来ていたけれど対応しきれなかったというのが正直な感想です。ラップが10周切っていないところで不本意に集団の後ろに下がってしまい、(先頭集団から)遅れてしまった時は前が見えていたので追うつもりでしたが、ワールドツアーの選手が乗った集団だったので追いきれませんでした。

昨年に続いてのアジア最優秀選手賞で、順位は昨年よりもひとつ上げることが出来たけれど、そこを目指しているワケではなく、昨年の方がトップ争いを長く見られていたので残念な気持ちです。最後はUCIポイントがつくこともあって集団の中で順位争いする雰囲気になり、そこでしっかりスプリンターとして力を発揮することは出来たので、その点は良かったと思います。


text:Sotaro.Arakawa, Satoru Kato

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