2024/09/15(日) - 23:06
ツール・ド・ふくしま第2ステージは160kmのレースが行われ、終盤に高岡亮寛(Roppongi Express)と小林亮(soleil de lest)が抜け出し、高岡が小林を振り切って優勝。ツール・ド・ふくしま初代王者となった。女子は木下友梨菜(Bellmare Racing Team)が第2ステージもトップでフィニッシュし、総合優勝を決めた。ツール・ド・ふくしま大会事務局の橋本謙司さんへのインタビューとあわせてレポート。
福島県の浜通りを舞台に開催された「ツール・ド・ふくしま」第2ステージは、前日のフィニッシュ地点新地町から阿武隈高地を経て楢葉町のJヴィレッジにフィニッシュする160km。距離が第1ステージの倍となるだけでなく、阿武隈高地を抜けるハードな山岳コースとなる。
25km過ぎから始まる登り区間はいくつものつづら折れが続き、9%の勾配標識が次々と現れる。56km地点に設定された山岳賞ポイント(長泥KOM)まで登りが続き、その後もアップダウンが繰り返される。終盤には約20kmに及ぶ長い下り区間があり、登った分を一気に降りるとフィニッシュは目の前。あまりのハードさに、日本サイクルスポーツセンターで行われた今年の全日本選手権以上のサバイバルレースを予想する声もあった。
朝6時、曇り空の第1ステージから一転して青空が広がり、登り始めた太陽を背にスタートしたレースは、スプリント賞ジャージを着た高山恭彰(MAX SPEED 97)の飛び出しで始まる。高山が吸収され、登り区間に差し掛かると数名の飛び出しと吸収が繰り返されていく。
40kmを経過した頃、先行した鳴海颯(Vini Monzon Savini Due OMZ)に森本誠(GOKISO)と岡泰誠(イナーメ信濃山形)が合流して3名の先頭集団が形成される。後続のメイン集団との差は30秒から40秒で推移しながら進行。飯館村に設定された山岳賞ポイントに向かう登りで、後方から石井雄悟(MASxSAURUS)が単独で追いつく。そして鳴海とハンドルの投げ合いとなる僅差の争いを制して山岳賞を獲得する。
その後石井は集団に戻り、鳴海、森本、岡の3名は逃げ続けるものの集団との差は縮小。コース半ばの80kmを前に集団が吸収する。
82km過ぎ、川俣町に設定されたスプリントポイント(津島SPRINT)は小林亮(soleil de lest)が先頭通過。この動きをきっかけに金田遼祐(筑波大トライアスロン部)が単独先行する。金田の先行はおよそ20kmに及び、残り50kmを前に吸収される。ここまでに残ったのは、リーダージャージの市村をはじめ、山岳賞を獲った石井、スプリント賞を獲った小林、さらにグランフォンド世界選手権のチャンピオンジャージを着る高岡亮寛(Roppongi Express)ら12名。後続とは2分以上の差がつき、集団と呼べるまとまりは無くなった。
残り40km付近、岩間来空(Team Aniki)の飛び出しをきっかけに12名から8名に絞られる。そして残り30km付近、短い登りで高岡がアタック。「試走した時からここでアタックしようと決めていた」と言う高岡の狙い通り、追従できた小林以外を一度で振り切った。
残り10km、向かい風の海岸沿い道路を高岡と小林の2人が先頭交代しながら進む。「ひとつ前の登りをこなして勝機が見えたので、最後の登りは高岡さんに仕掛けられてもいいように備えていた」という小林。「小林さんとマッチスプリントになったら厳しいと思っていた。でも小林さんはキツそうだったので、どこでアタックしようと考えていた」という高岡。しかし2人の勝負は、残り3km付近で小林が脚をつらせてしまったことで決着。高岡は単独でホームストレートに姿を現し、主催者の許可を得て着用したと言うグランフォンド世界選手権のチャンピオンジャージを指差しながらフィニッシュラインを越えた。
この結果、高岡は2日間の総合優勝も決め、最も優れたパフォーマンスを示した選手に贈られる「経済産業大臣賞」も獲得した。
高岡亮寛「グランフォンド世界選後、節制と練習して臨んだ大会」
「予想していたとおりキツかったですね。集団の人数がどんどん少なくなっていき、キツイのに結構な人数が残っているなぁ、と思いながら走っていました。ただ、一気に人数が脱落するポイントは所々あって、後半になって人数が一気に減っていった。自分は序盤イマイチで後半になってエンジンが掛かってくるタイプなので、今日も後半から調子が上がってきました。
狙ったところでアタックが決まって、でも1人になったらキツかったと思うけれど、小林さんと2人になれたのがよかったです。ローテを回していけば何とかなると思っていたけれど、自分もキレのいいアタックをできるほど脚は残っていなかったので、小林さんが遅れくれたのはラッキーでした。
試走してみて厳しいコースだと分かったので、グランフォンド世界選手権から2週間、暴飲暴食せず節制と練習して臨みました。そのおかげで記念すべき第1回大会に名前が残せて良かったです。
公道でこれだけ素晴らしく厳しいルートを、周回ではなくワンウェイでとれるレースはそうそうないです。ツール・ド・おきなわ、ニセコクラシックだけじゃなく、ふくしまも皆が目指すレースになってくれればいいと思いますので、来年以降も盛り上がるよう願っています。おきなわまで2ヶ月弱・8週間ほど。1、2周間ほどいったん落としてから仕上げていこうかと思っています」
総合2位 小林亮「世界チャンピオンと逃げる機会なんてめったに無いから楽しかった」
「下り始めたらいきなり攣ってしまい、脚が回せなくなってしまいました。普段攣ったことがないので自分でも衝撃的でした。ツール・ド・おきなわで攣ったことはあるんですが、他のレースではそんなこと無いんです。過酷でした。
高岡さんと逃げたのは楽しかったですね。世界チャンピオンと逃げる機会なんてめったに無いから。向かい風がキツくて苦しかったです。
おきなわやニセコに比べれば選手層が少し薄かったことで、僕にとっては勝手に集団の人数が減っていく、サバイバルで走りやすいレースでしたね。
今年は最大の目標がツール・ド・おきなわの市民200km優勝なので、それに向けて良い調整もできました。まだまだ絞りきっていないんです。あと2ヶ月、うまく仕上げてみせます」
ふくしま240 女子総合優勝は木下友梨菜
女子は木下友梨菜(Bellmare Racing Team)が唯一の完走者となった。登り区間で遅れてしまったものの、耐えてフィニッシュに辿り着いた。
「40km地点で先頭集団から脱落してからは地獄でしたね。登りで死んで、北野普識さん(イナーメ信濃山形)が一緒に走ってくれたからフィニッシュできました。これからは「アニキ」と呼ばせていただきます。
コースがヤバくてほんとに厳しかった。とんだ地獄に来てしまった。しかし福島はめちゃくちゃ走りやすかったです。一部テクニカルな箇所はあるけど基本的には見通しもいいし、急カーブも無いし、走りやすさに驚きました。今後もますます人気大会になると思います。皆さんぜひ来年は一緒に走りましょう!」
福島県の浜通りを舞台に開催された「ツール・ド・ふくしま」第2ステージは、前日のフィニッシュ地点新地町から阿武隈高地を経て楢葉町のJヴィレッジにフィニッシュする160km。距離が第1ステージの倍となるだけでなく、阿武隈高地を抜けるハードな山岳コースとなる。
25km過ぎから始まる登り区間はいくつものつづら折れが続き、9%の勾配標識が次々と現れる。56km地点に設定された山岳賞ポイント(長泥KOM)まで登りが続き、その後もアップダウンが繰り返される。終盤には約20kmに及ぶ長い下り区間があり、登った分を一気に降りるとフィニッシュは目の前。あまりのハードさに、日本サイクルスポーツセンターで行われた今年の全日本選手権以上のサバイバルレースを予想する声もあった。
朝6時、曇り空の第1ステージから一転して青空が広がり、登り始めた太陽を背にスタートしたレースは、スプリント賞ジャージを着た高山恭彰(MAX SPEED 97)の飛び出しで始まる。高山が吸収され、登り区間に差し掛かると数名の飛び出しと吸収が繰り返されていく。
40kmを経過した頃、先行した鳴海颯(Vini Monzon Savini Due OMZ)に森本誠(GOKISO)と岡泰誠(イナーメ信濃山形)が合流して3名の先頭集団が形成される。後続のメイン集団との差は30秒から40秒で推移しながら進行。飯館村に設定された山岳賞ポイントに向かう登りで、後方から石井雄悟(MASxSAURUS)が単独で追いつく。そして鳴海とハンドルの投げ合いとなる僅差の争いを制して山岳賞を獲得する。
その後石井は集団に戻り、鳴海、森本、岡の3名は逃げ続けるものの集団との差は縮小。コース半ばの80kmを前に集団が吸収する。
82km過ぎ、川俣町に設定されたスプリントポイント(津島SPRINT)は小林亮(soleil de lest)が先頭通過。この動きをきっかけに金田遼祐(筑波大トライアスロン部)が単独先行する。金田の先行はおよそ20kmに及び、残り50kmを前に吸収される。ここまでに残ったのは、リーダージャージの市村をはじめ、山岳賞を獲った石井、スプリント賞を獲った小林、さらにグランフォンド世界選手権のチャンピオンジャージを着る高岡亮寛(Roppongi Express)ら12名。後続とは2分以上の差がつき、集団と呼べるまとまりは無くなった。
残り40km付近、岩間来空(Team Aniki)の飛び出しをきっかけに12名から8名に絞られる。そして残り30km付近、短い登りで高岡がアタック。「試走した時からここでアタックしようと決めていた」と言う高岡の狙い通り、追従できた小林以外を一度で振り切った。
残り10km、向かい風の海岸沿い道路を高岡と小林の2人が先頭交代しながら進む。「ひとつ前の登りをこなして勝機が見えたので、最後の登りは高岡さんに仕掛けられてもいいように備えていた」という小林。「小林さんとマッチスプリントになったら厳しいと思っていた。でも小林さんはキツそうだったので、どこでアタックしようと考えていた」という高岡。しかし2人の勝負は、残り3km付近で小林が脚をつらせてしまったことで決着。高岡は単独でホームストレートに姿を現し、主催者の許可を得て着用したと言うグランフォンド世界選手権のチャンピオンジャージを指差しながらフィニッシュラインを越えた。
この結果、高岡は2日間の総合優勝も決め、最も優れたパフォーマンスを示した選手に贈られる「経済産業大臣賞」も獲得した。
高岡亮寛「グランフォンド世界選後、節制と練習して臨んだ大会」
「予想していたとおりキツかったですね。集団の人数がどんどん少なくなっていき、キツイのに結構な人数が残っているなぁ、と思いながら走っていました。ただ、一気に人数が脱落するポイントは所々あって、後半になって人数が一気に減っていった。自分は序盤イマイチで後半になってエンジンが掛かってくるタイプなので、今日も後半から調子が上がってきました。
狙ったところでアタックが決まって、でも1人になったらキツかったと思うけれど、小林さんと2人になれたのがよかったです。ローテを回していけば何とかなると思っていたけれど、自分もキレのいいアタックをできるほど脚は残っていなかったので、小林さんが遅れくれたのはラッキーでした。
試走してみて厳しいコースだと分かったので、グランフォンド世界選手権から2週間、暴飲暴食せず節制と練習して臨みました。そのおかげで記念すべき第1回大会に名前が残せて良かったです。
公道でこれだけ素晴らしく厳しいルートを、周回ではなくワンウェイでとれるレースはそうそうないです。ツール・ド・おきなわ、ニセコクラシックだけじゃなく、ふくしまも皆が目指すレースになってくれればいいと思いますので、来年以降も盛り上がるよう願っています。おきなわまで2ヶ月弱・8週間ほど。1、2周間ほどいったん落としてから仕上げていこうかと思っています」
総合2位 小林亮「世界チャンピオンと逃げる機会なんてめったに無いから楽しかった」
「下り始めたらいきなり攣ってしまい、脚が回せなくなってしまいました。普段攣ったことがないので自分でも衝撃的でした。ツール・ド・おきなわで攣ったことはあるんですが、他のレースではそんなこと無いんです。過酷でした。
高岡さんと逃げたのは楽しかったですね。世界チャンピオンと逃げる機会なんてめったに無いから。向かい風がキツくて苦しかったです。
おきなわやニセコに比べれば選手層が少し薄かったことで、僕にとっては勝手に集団の人数が減っていく、サバイバルで走りやすいレースでしたね。
今年は最大の目標がツール・ド・おきなわの市民200km優勝なので、それに向けて良い調整もできました。まだまだ絞りきっていないんです。あと2ヶ月、うまく仕上げてみせます」
ふくしま240 女子総合優勝は木下友梨菜
女子は木下友梨菜(Bellmare Racing Team)が唯一の完走者となった。登り区間で遅れてしまったものの、耐えてフィニッシュに辿り着いた。
「40km地点で先頭集団から脱落してからは地獄でしたね。登りで死んで、北野普識さん(イナーメ信濃山形)が一緒に走ってくれたからフィニッシュできました。これからは「アニキ」と呼ばせていただきます。
コースがヤバくてほんとに厳しかった。とんだ地獄に来てしまった。しかし福島はめちゃくちゃ走りやすかったです。一部テクニカルな箇所はあるけど基本的には見通しもいいし、急カーブも無いし、走りやすさに驚きました。今後もますます人気大会になると思います。皆さんぜひ来年は一緒に走りましょう!」
ツール・ド・ふくしま2024 DAY2結果
ふくしま240 第2ステージ | ||
1位 | 高岡亮寛(Roppongi Express) | 4時間16分36秒 |
2位 | 小林 亮(soleil de lest) | +29秒 |
3位 | 金田遼祐(筑波大トライアスロン部) | +53秒 |
4位 | 田村和音(CornoGrande/AbutokuCC) | +1分4秒 |
5位 | 石井雄悟(MASxSAURUS) | +2分3秒 |
6位 | 岩間来空(Team Aniki) | +2分17秒 |
7位 | 市村直生(湾岸サイクリング・ユナイテッド) | +2分52秒 |
8位 | 池谷隆太(PARK) | +3分48秒 |
9位 | 南 広樹(TeamZenko) | +8分53秒 |
10位 | 森本誠(GOKISO) | +10分53秒 |
山岳賞 石井雄悟(MASxSAURUS) | ||
スプリント賞 小林 亮(soleil de lest) | ||
ふくしま240女子 第2ステージ | ||
1位 | 木下友梨菜(Bellmare Racing Team) | 4時間41分12秒 |
駅伝240 2-3区 | ||
1位 | イナーメ信濃山形 | 4時間38分39 |
2位 | チーム タキオン | +33分02 |
OPEN | 弘前大学医学部自転車競技部 | +35分39 |
3位 | BICI CERCATORE | +45分11 |
ふくしま160 | ||
1位 | 小宮貴裕(セマスR新松戸) | 4時間51分58秒 |
2位 | 井上修平(Team AlterLock) | +8分21秒 |
3位 | 加藤智信(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ) | +9分42秒 |
ふくしま20 | ||
1位 | 小林柊友(岐阜第一) | 37分15秒 |
2位 | 吉川 敦 | +1秒 |
3位 | 宮崎直樹(チームWADA) | +1秒 |
大会事務局 橋本謙司さん
「復興の地を自転車で元気づけ、おきなわやニセコに並ぶ市民レーサーの大舞台を目指す」
事務方として大会の運営に携わったのが自転車ジャーナリストの「ハシケン」さんこと橋本謙司さんだ。自身サイクリストの目線で、大会事務局と地元の人々の橋渡し役になった。ツール・ド・ふくしまに込めた想いを代表して語ってもらった。
橋本:震災復興の地でやるレースというのがツール・ド・ふくしまの大きな特徴だと思います。普通は市町村が2つにまたがるだけで開催が難しくなるのに、15市町村を一筆書きで回るということができるのは、震災後という背景があることに加えて地元の方々の協力抜きには無しえません。関わる方々の熱意があるからこそできる大会です。
私はサイクリストとして大会運営をバックアップする立場ですが、いち市民レーサーとして、ツール・ド・おきなわやニセコクラシックといった公道を走れる魅力的なレースがあるなかで、福島で、この大規模のレースを成功させたいという想いで大会に携わってきました。今回はその第一歩を踏み出せたと思います。荒天で直前に中止になった去年から、2年ごしの想いで今日を迎えました。評価するのは走った選手ですが、おおむね好意的な声を聞くと、来年に向けて大きくジャンプアップできるのかなと思っています。
コースや地形的なポテンシャルを含めると、来年もっと参加者が増えて、時間は掛かるでしょうが、おきなわやニセコに並ぶ市民レースの祭典に近い将来なればいいなと思います。JCF公認レースになったことでライセンスコントロールやスタートサインが必要になったりと、ホビー層のハードルを上げてしまった面はあると思っています。しかしこの規模感で開催するにあたっては安全第一が求められるし、そのぶん運営にはジャパンカップなど大きな大会に携わってきたプロのチームの協力をあおぎ、大きな糧を得ることができました。来年に向けて改善点を探って良くしていきたいと思います。
公道での2日間のレースという、他にない魅力がある大会です。地震被災地、原発事故の地でやるレースとして、現況を世界に向かって発信しながら大会規模も参加者数も大きくしていければと思っていますが、来年も同じコースでやるとは限らないです。今回ミドル(中級者)層が参加しやすいレースや種目がなかったので、来年はそのあたりも充実させることでより市民レーサーが参加しやすい大会になっていければ良いと思っています。
text&photo:Satoru Kato, Makoto AYANO
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