レースを通して雨が選手と路面を濡らしたブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージ。プロトン先頭で展開を掌握したアルペシン・ドゥクーニンクが、マイヨプントス(ポイント賞)トップのカーデン・グローブス(オーストラリア)を今大会3勝目へと導いた。



9月4日(水) 第17ステージ
モヌメント・フアン・デル・カスティーリョ(アルヌエロ)〜サンタンデール 141.5km(丘陵)


ライバルだったファンアールト無きスプリントステージに臨むカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

アルベルト・コンタドールの訪問を受けるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第17ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

コースのカテゴリーは丘陵だが、ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージはスプリンターにとって最後のチャンスになるかもしれない。16世紀に活躍した画家フアン・デル・カスティーリョの記念碑の前をスタートするこの日は、内陸の山岳地帯を経由。2つの2級山岳を越えた後、71.1kmの下り&平坦路がフィニッシュまで続いていく。

前日に落車し、レースを棄権したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)についてチームは「膝に深い裂傷を負ったものの骨折はなかった」と報告。しかし集中的な治療が必要のためファンアールトは母国ベルギーに帰国。区間3勝と共に一時はマイヨロホを着用し、マイヨプントス(ポイント賞)とマイヨモンターニャ(山岳賞)のランキングで首位のままレースを去る、悔しいブエルタデビューとなった。

ヨナス・グレゴー(デンマーク、ロット・デスティニー)ら4名の逃げ集団 photo:CorVos

アルペシン・ドゥクーニンクを中心にペースを作るプロトン photo:CorVos

逃げとスプリンターチームの駆け引きが見所となったこの日の天候は雨。気温も20度を下回るなか、第13ステージの勝者であるマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)は「極度の疲労」を理由に未出走を選ぶ。逃げを目指したレース序盤の動きをアルペシン・ドゥクーニンクが大集団の逃げを阻止するようにコントロールし、今大会何度も逃げに乗っているシャビエル・イササ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)ら4名がエスケープした。

第17ステージで逃げた4名
ヨナス・グレゴー(デンマーク、ロット・デスティニー)
ティボー・ゲルナレック(フランス、アルケアB&Bホテルズ)
トマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)
シャビエル・イササ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)

4名全員がプロ初勝利を目指す先頭には、38歳のアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)ら4名が追走をかける。しかしアルペシンはこの動きを引き戻し、逃げ集団の拡大を防ぐと共に逃げ切り勝利の芽を摘む。逃げグループは一つ目の2級山岳(距離5.5km/平均8.7%)に3分34秒差で突入した。

アルペシンの集団牽引はエキポ・ケルンファルマやDSMフィルメニッヒ・ポストNLも力を貸した photo:CorVos

雨の中順調に距離を消化していく逃げグループ photo:Unipublic

距離は短くも平均勾配8.7%の難関山岳でイササが遅れ、これがブエルタデビューであるグレゴーが先頭で頂上を通過。登りで軽快なリズムを刻んでいたシャンピオンは下りでメカトラに見舞われたものの、2人共下りで先頭に追いつき、4名は続く2級山岳アルト・デル・カラコール(距離7.2km/平均6.2%)に入った。

比較的勾配の緩いこの山岳で先頭集団から遅れる選手はなく、ここもグレゴーがトップで頂上通過を果たす。この時点で4分39秒のリードを許したプロトンでは、共にスプリンターを擁するDSMフィルメニッヒ・ポストNLとエキポ・ケルンファルマがペースコントロールに加わる。その影響からか、集団からは先日キナンレーシングチームへの電撃移籍が発表されたレイン・タラマエ(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ)が遅れていった。

約30kmに及ぶコブ(丘)つきの長い下りを経て、逃げグループはラスト40kmの平坦路に入る。残り距離と共にリードも減っていくなか、残り23.8km地点に設定された中間スプリントはシャンピオンが先頭通過。雨が降っては止むを繰り返し、残り20km過ぎから大粒の雨が選手たちを襲った。

プロトンの中でチームメイトに守られながら走るプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

徐々にプロトンとのタイム差が縮まっていく逃げ集団 photo:Unipublic

タイム差が1分を下回り、集団スプリントが濃厚となってきた残り16km地点でヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)が飛び出す。先頭のグレゴーとの合流を目指した動きはアルペシンが引き戻し、高速で進む逃げからシャンピオンが脱落。残り10kmで34秒あった差は、残り5km地点で10秒を下回った。

逃げを視界に捉えたプロトンからは、短い登り区間の残り3kmでマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)とマックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)がアタック。逃げを追い抜き先頭に立った2名にカンペナールツもジョインし、3名で残り1km地点を通過した。

しかしエキポとアルペシンが先頭に人数を固めた集団は、最終ストレートの入口で3名をキャッチ。アルペシンの勝ちパターンであるエドワルト・プランカールト(ベルギー)の最終リードアウトからカーデン・グローブス(オーストラリア)がスプリントを開始。トップスピードに乗るグローブスはパヴェル・ビットネル(チェコ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)に並ばせることすら許さず、今大会3勝目を手に入れた。

先頭でフィニッシュに飛び込むカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:Unipublic

「雨の中で行われたとてもタフなレースだったよ。だがチームは強く、DSMとケルンファルマもコントロールを手伝ってくれた。チームの高い士気が終始アタッカーを封じ込め、3勝目で彼らの走りに報いることができた。だから特別な気持ちがするよ」と、2年連続となるマイヨプントス獲得を大きく引き寄せたグローブスは喜んだ。

マイヨロホを着るベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)ら総合上位勢はトラブルなくトップと同タイムでフィニッシュ。またオコーナーは前日の第16ステージ後の表彰式に遅刻したとして、1000スイスフランの罰金とUCIポイント20点が剥奪されている。

マイヨプントス(ポイント賞)と区間3勝目を喜ぶカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:Unipublic

この日もマイヨロホを守ったベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) photo:Unipublic

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第17ステージ
1位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 3:32:14
2位 パヴェル・ビットネル(チェコ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
3位 フィト・ブラーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
4位 パウ・ミケル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
5位 コービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)
6位 ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)
7位 エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
8位 マティス・ルベール(フランス、アルケアB&Bホテルズ)
9位 アリエン・リヴィンズ(ベルギー、ロット・デスティニー)
10位 シャビエル・ベラサテギ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) 68:41:14
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:05
3位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +1:25
4位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:46
5位 ミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ) +2:18
6位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) +3:48
7位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +3:53
8位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +4:00
9位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:27
10位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ) +5:19
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 222pts
2位 パヴェル・ビットネル(チェコ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) 106pts
3位 アロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン) 95pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) 56pts
2位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) 42pts
3位 パブロ・カストリーリョ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) 37pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) 68:45:07
2位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +0:07
3位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:34
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 205:35:17
2位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +43:00
3位 デカトロンAG2Rラモンディアル +1:20:18
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos

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