10日振りの集団スプリントで決着したブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージ。1級山岳を耐えたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)がファンアールトを僅差で下し、今大会2勝目を手に入れた。



8月31日(土) 第14ステージ
ビジャフランカ・デル・ビエルソ〜ビジャブリノ 200.5km(山岳)


前日勝者マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)と4賞ジャージが集団先頭に並ぶ photo:CorVos

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第14ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
前日に大会随一の壁を登った選手たちが臨んだのは、今大会最長距離である200.5kmの山岳ステージ。ブエルタ・ア・エスパーニャ14日目の舞台はビジャフランカ・デル・ビエルソから平坦路を進み、コース中央の3級山岳をクリア。その後48kmの長いコブつきの下りから1級山岳を登る。

1級山岳レイタリエゴスは登坂距離22.8km/平均勾配は4.5%の長丁場。最大勾配も7%とアタック合戦が繰り広げられるほどの難易度ではないため、逃げ切りはもちろん集団スプリントも予想された。

新型コロナウイルスの感染が発覚したルーベン・フェルナンデス(スペイン、コフィディス)がレースを去り、大会初日の176名から149名まで人数の減った選手たちは午後12時37分にスタート。逃げ切りを目指す選手たちはこの日も序盤から積極的に仕掛け、最初の1時間の平均速度が50km/hに達する。そして約50km進んだ地点で、ようやくヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)を含む6名の逃げ集団が形成された。

序盤から積極的に仕掛け、逃げに乗ったヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー) photo:CorVos

ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)やアロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン)など今大会の逃げではお馴染みのメンバーが入る。またジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が棄権したため、出場選手の中で最年少となった20歳のイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)の姿も。逃げ切りも十分考えられる強力な選手が揃ったが、ヴィスマ・リースアバイクが先導するプロトンから2分半以上のリードを得ることはできなかった。

ブエルタ第14ステージで逃げた6名
イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)
ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)
クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
マルコ・フリーゴ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)
ヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)
アロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン)

残り97.9km地点の3級山岳頂上は直前でムーリッセが飛び出し先頭通過する。1分42秒後方のプロトンは引き続きヴィスマがコントロール。その後の長い下りでも逃げグループはリード拡大はできなかったため、逃げ切りの可能性が残り距離と比例して低くなっていった。

プロトンはファンアールトを擁するヴィスマ・リースアバイクがコントロールした photo:CorVos

1級山岳で最後まで一人粘ったジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

下り切った先にある残り49.9km地点の中間スプリントもムーリッセがトップを獲る。そして登坂距離22.8km(平均勾配4.5%)と長い1級山岳レイタリエゴスに入り、先頭がナルバエスとフリーゴ、テハダの3名に絞られる。一方、レース前に「僕にとって最後の登りは厳しすぎる」と語っていたカンペナールツは遅れ、キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)の牽引するプロトンに吸収された。

頂上まで10kmを切った頃に先頭3名とプロトンの差は30秒を切り、まずテハダが脱落する。タイム差を40秒まで戻したナルバエスはフリーゴを降り落としながら頂上を目指したものの、頂上手前3km地点で飲み込まれ、雲の中を進むメイン集団をテイオ・ゲイガンハート(イギリス、リドル・トレック)が先導した。

スプリンターを振り落としたいTレックス・クイックステップやジェイコ・アルウラーが集団のペースを上げ、しかし成功せず1級山岳の頂上をワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)がトップ通過。マイヨプントス(ポイント賞)に加え、マイヨモンターニャ(山岳賞)のリードも拡げ、カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)やコービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)などが残った集団はフィニッシュまで続く下り&平坦区間に入った。

フィニッシュ地点であるビジャブリノを目指し、進むプロトン photo:CorVos

残り14km地点では総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がメカトラに見舞われるシーンも。しかし素早くチームメイトであるダニエル・マルティネス(コロンビア)のバイクを借り、問題なく集団復帰を果たした。

ビジャブリノの市街地にやってきた集団は残り5kmからアルペシン・ドゥクーニンクが先導する。一時DSMフィルメニッヒ・ポストNLのペースメイクを挟み、再びアルペシンが先頭で最終ストレートに突入。エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)の後ろにグローブス、そしてファンアールトがつくなか集団スプリントが幕開けた。

緩斜面を進むプランカールトから残り125mでグローブスが先んじて踏み込む。ほぼ同時にファンアールトもスプリントを開始し、両者横並びのまま進んでいく。そして両者がハンドルを投げ、勝利を確信したグローブスが頭を抱えながら勝利を喜んだ。

ほぼ同時にスプリントを開始したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)とカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

同時にハンドルを投げるファンアールトとグローブス photo:CorVos

スプリントを制し、頭を抱えたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

「最高の気分だよ。今日集団スプリントになるとは思わなかったが、ユンボが終始コントロールした。ワウト(ファンアールト)を一騎打ちで下す最高の戦いだった。登りではアタックが起きれば厳しいと思っていたが、ユンボによるハイペースの牽引がそれを防いでくれた。チームは素晴らしい走りを見せてくれ、僕も良いスプリントができたよ」と、今大会区間2勝目を飾ったグローブスは喜んだ。

一方、チーム一丸となり集団スプリントに持ち込みながらも敗れたファンアールトは「カーデンの方が強かっただけで、僕は何のミスも犯していない。スプリントのタイミングも適切だった、ラスト数mで脚が攣ってしまったんだ」と敗者の弁。しかし最終的なマイヨプントス獲得に向け、区間2位でスプリントポイントを着実に加算している。

ブエルタ通算6勝目を手に入れたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 4 photo:Unipublic

敗れながらもマイヨプントスを守ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:Unipublic

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第14ステージ
1位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 4:21:34
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
3位 コービン・ストロング(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック)
4位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック)
5位 パウ・ミケル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)
6位 フィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
7位 シモン・グリエルミ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)
8位 アリエン・リヴィンズ(ベルギー、ロット・デスティニー)
9位 シャビエル・ベラサテギ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)
10位 カルロス・カナル(スペイン、モビスター)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) 56:31:49
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:21
3位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +3:01
4位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +3:13
5位 ミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ) +3:20
6位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +4:12
7位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:29
8位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +4:42
9位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) +4:44
10位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) +5:17
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 291pts
2位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 182pts
3位 アロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン) 95pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 46pts
2位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) 23pts
3位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) 23pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) 56:36:01
2位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:17
3位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +1:12
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 169:13:55
2位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +38:29
3位 デカトロンAG2Rラモンディアル +48:39
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos

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