急勾配の1級山岳にフィニッシュするブエルタ・ア・エスパーニャ第13ステージで、マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)が逃げ切り勝利。ログリッチは総合首位オコーナーとのタイム差を1分21秒まで縮めている。



8月30日(金) 第13ステージ
ルーゴ〜プエルト・デ・アンカレス 176km(山岳/山頂フィニッシュ)


ルーゴを出発した151名の選手たち photo:CorVos

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第13ステージ コースプロフィール image:A.S.O.

第79回ブエルタ・ア・エスパーニャの13日目は、コースプロフィールから見て分かる鋭角な”壁”にフィニッシュする山岳ステージ。コース前半にまず3級&2級山岳を越え、しばし平坦路を進む。その後カテゴリーなき丘と2級山岳ルメラス(距離6.6km/平均6%)をクリアし、大会初登場のコースを通る1級山岳プエルト・デ・アンカレス(距離7.5km/平均9.3%)に臨む。

登り口から2kmは緩斜面で、平均7.9%の1kmを進みそこから二桁の勾配がフィニッシュ地点まで続いていく。最大勾配15%は残り約3kmから4箇所登場し、逃げ切り勝利と総合順位のシャッフルが予想された。

ここまで大きな動きのなかったマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)も狙い目であるこの日は、アクチュアルスタートの直後からアタック合戦が始まる。序盤の3級山岳では18名が飛び出し、遅れて追走集団が合流。その結果UAEチームエミレーツが3名(ブランドン・マクナルティ、マルク・ソレル、ジェイ・ヴァイン)を入れる、23名の逃げグループが形成された。

激しいアタック合戦の末、23名の逃げ集団が形成された photo:CorVos

プロトンの先導はリーダーチームであるデカトロンAG2Rラモンディアルが担当した photo:CorVos

逃げの中にはマイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)も入り、最初の3級山岳をトップ通過。ここまで区間3勝を挙げるオールラウンダーがマイヨモンターニャ(山岳賞)も積極的に狙いに行く姿勢を見せる。逃げで最も総合タイムの良いホセ・パッラ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ)でも30分24秒遅れだったため、デカトロンAG2Rラモンディアルが先導するプロトンは逃げに10分以上のリードを与えた。

残り100.4kmにある2級山岳では、ヴァインとソレルの2名と共に飛び出したファンアールトがここも先頭通過。そのためファンアールトはアダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ)を抜いて山岳賞でも首位に立ち、そのまま3名は後続集団に戻っていく。レース距離が50kmを切る頃に逃げとプロトンとの差は15分まで拡大した。

逃げ集団からは残り48km地点でヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ロット・デスティニー)の加速し、ファンアールトが付き合う。そこに前日4位のマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)とシモン・グリエルミ(フランス、アルケアB&Bホテルズ)も追従して4名がレース先頭に立つ。中間スプリント手前のカテゴリーのつかない丘でグリエルミが遅れ、後続からUAEの3名とマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)などが追いついた。

2級山岳で飛び出したファンアールトら3名が先頭に立った photo:CorVos

カテゴリー山岳を連続でトップ通過していくワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

中間スプリントを前にファンアールトは共に逃げに入ったマイヨプントス(ポイント賞)のライバル、カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)を振り切ることに成功する。カンペナールツが遅れ、9名となった先頭集団はファンアールトが狙い通り中間スプリント(28.6km地点)を先頭で通過。一方、17分後方のメイン集団ではモビスターがデカトロンに代わり牽引を始めた。

2級山岳ルメラス(距離6.6km/平均6%)に突入すると数的優位なUAEからソレルがアタックする。しかしリードを拡げることはできず、この日絶好調のファンアールトがソレルをキャッチ。ファンアールトは山頂をトップ通過して、ここでも山岳ポイントを加算した。

その下りコーナーではヴァインとマクナルティが落車する。ヴァインがすぐに走り出した一方で、ガードレールの下をくぐるように崖に落ちたマクナルティだったが、最終的には大きな怪我もなくトップから8分17秒遅れで無事フィニッシュにたどり着いている。

2級山岳でアタックしたマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

下りで先頭集団はファンアールトとウッズ、シュミット、ソレル、サム・オーメン(オランダ、リドル・トレック)の5名に絞られる。1級山岳プエルト・デ・アンカレス(距離7.5km/平均9.3%)に入りスイス王者であるシュミットの加速に、ファンアールトとソレル、オーメンが脱落。残り4.7kmでウッズはシュミットを引き離し、ダンシングを織り交ぜながら得意とする急勾配を進んでいった。

何度も後ろを振り向きながら、淡々と残り距離をこなしていくウッズは残り2km地点を通過する。単独2位のシュミットとの差を35秒まで拡げ、白地にカナダ王者を表す赤いメイプルリーフをアピールしたウッズがフィニッシュ地点に到着。2018、20年に続く、自身3度目のステージ優勝を手に入れた。

最終1級山岳の残り4.7kmでアタックしたマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos

カナダ王者であるジャージをアピールし、フィニッシュしたマイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos

今年出場したジロ・デ・イタリアでは第5ステージで落車し、棄権したウッズ。「天にも昇る心地がするよ。僕の大きな目標はこの国内王者ジャージで勝つこと。今シーズンは体調不良もあり、また決定的な場面でメカトラや落車に見舞われるなど不運なレースが続いた。カタルシスを感じる瞬間であり、肩の荷が下りた気持ちだよ」と遅咲きの37歳は喜んだ。

16分遅れで1級山岳に入ったプロトンでは引き続きナイロ・キンタナ(コロンビア)などがペースを作り、その後レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが先頭交代して速度を上げる。ダニエル・マルティネス(コロンビア)の強烈なペースメイクが人数を減らし、マイヨロホのベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)も脱落。その後プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が自ら集団先頭で踏み続け、セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)も遅れていった。

ログリッチの登坂にはエンリク・マス(スペイン、モビスター)やミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ)もついていけず、ログリッチがトップから10分54秒遅れでフィニッシュ。オコーナーはそこから1分55秒遅れでレースを終えたため、両者の差は3分16秒から1分21秒まで縮まった。

オコーナーらライバルを引き離し、16位でフィニッシュしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

3度目となるブエルタ勝利を喜ぶマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) photo:Unipublic

マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)も手に入れたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:Unipublic

ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第13ステージ
1位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) 4:19:51
2位 マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) +0:45
3位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) +1:11
4位 サム・オーメン(オランダ、リドル・トレック) +1:25
5位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +2:56
6位 ハイス・レイムライゼ(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +3:33
7位 ホセ・パッラ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) +5:19
8位 ミケル・ビスカラ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) +5:38
9位 ルーカ・ヴェルガリート(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク) +5:59
10位 マティス・ルベール(フランス、アルケアB&Bホテルズ) +6:15
16位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +10:54
33位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +12:49
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) 52:10:15
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:21
3位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +3:01
4位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +3:13
5位 ミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ) +3:20
6位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +4:12
7位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:29
8位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +4:42
9位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) +4:44
10位 アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) +5:17
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 274pts
2位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 162pts
3位 パヴェル・ビットネル(チェコ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) 81pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 36pts
2位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) 23pts
3位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) 23pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) 52:14:27
2位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:17
3位 マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) +1:12
チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ 156:09:13
2位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +38:29
3位 デカトロンAG2Rラモンディアル +48:39
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos