2024/08/24(土) - 08:30
終盤の2級山岳で人数が絞られたブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージ。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が集団スプリントで今大会2勝目を掴み、セップ・クスの好アシストを結果に繋げた。
8月23日(金) 第7ステージ
アルチドナ〜コルドバ 180.5km(丘陵)
アンダルシアの荒野を駆けるブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージは、終盤に2級山岳が1つだけ設定された丘陵ステージ。アルチドナを出発して140kmまでは平坦路を進み、最大勾配16%と厳しい2級山岳アルト・デル・14%(距離7.4km/平均5.6%)を登坂。その後細かいアップダウンを経て、急勾配の下りと約12kmの平坦路の先にあるフィニッシュ地点を目指す。
スプリンターは2級山岳で脱落すると予想され、パンチャーを含む集団スプリントが大方の予想。また逃げ切りや独走などあらゆる可能性を残したステージは、この日も選手たちが何度も水や氷で身体を冷やす厳しい暑さの中行われた。
逃げ切りが決まった前日から一転、静かな立ち上がりとなったレースはシャビエル・イササ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が単独逃げを打つ。第3ステージでも逃げた22歳のイササはリードを最大9分まで拡げ、それを追うメイン集団ではリーダーチームであるデカトロンAG2Rラモンディアルを中心に牽引し、ヴィスマ・リースアバイクやアルペシン・ドゥクーニンクも力を貸した。
フレームの前面やペダル、ホイールのロゴを赤く染めたバイクに乗るのは、前日勝者でマイヨロホを着るベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)。自身初となるグランツールのリーダージャージに加え、1992年創設という自転車界では長い歴史を誇るデカトロンにとって初のマイヨロホ着用者となった。そんなデカトロンにとってメモリアルなレースは、スプリント決着だった第5ステージよりも速い平均速度で進み、残り50km地点を過ぎた頃に逃げとの差は3分まで縮まった。
プロ3年目にして掴んだグランツールの舞台で、絶好のアピールタイムを楽しむイササは残り39.2km地点に設定された中間スプリントを通過する。わずか30秒後方のプロトンではカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が、マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)を退け2位通過。グローブスはファンアールトとの差を2ポイント縮め、直後に集団はイササを飲み込んだ。
前日に逃げから区間6位に入ったハイス・レイムライゼ(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)がメカトラで遅れるなか、最大-6秒のボーナスタイムが与えられる2級山岳アルト・デル・14%(距離7.4km/平均5.6%)に向けてレッドブル・ボーラ・ハンスグローエがペースを上げる。2級山岳に入りヴィスマはエドアルド・アッフィニ(イタリア)を送ってライバルのスプリンターたちをふるい落としていく。アッフィニから再びレッドブルに先頭が代わる頃にはスプリンターはもちろん、ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)など登りが得意な選手たちも遅れていった。
頂上まで残り1.5km、フィニッシュまで27km地点でアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が仕事を終えるとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が加速する。そのペースにはリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)やセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)、オコーナーが追従する後方で、ファンアールトは集団後方で懸命に踏み込む。そして一度勾配が緩やかになり、集団のペースが落ちた隙をついてレナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー)が仕掛けた。
しかしこれは決め手に欠き、ログリッチが一拍置いて2度目のアタック。マイヨロホのオコーナーが遅れるなか、ログリッチが先頭通過してボーナスタイム(-6秒)を獲得。2位通過はクス(-4秒)、カラパス(-2秒)は3位通過してオコーナーから取り戻した。
登りで遅れた追走集団では、後ろを振り向いたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が前方を走る選手の後輪に接触して落車。最大のライバルが脱落したファンアールトは細かなアップダウンが続く区間で先頭集団に追いつき、前年の総合優勝者であるクスが牽引をスタート。残り21kmからマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が飛び出し、単独先頭に立った。
レースは先頭のソレルを20名程度の追走集団が追いかける展開。クスはデカトロンと共に牽引を続け、下りを終え平坦区間に入った残り11km地点でファンアールトが飛び出す。しかしファンアールトは踏むのを止めて集団に戻り、再びクスが高速牽引を見せてソレルを残り3.5kmで捕まえた。
クスが役割を終え、脚を緩めると集団のペースは一気に落ちる。そのためダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)やファンイートヴェルト、パヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ)などが続けてアタックを繰り返す。そして集団牽引に戻ったウラソフが残り500mでシヴァコフの姿を捉え、勝負は集団スプリントに持ち込まれた。
ファンアールトが先に得意のロングスプリントを開始し、スプリンターではない他の選手たちは並ぶことすらできない。そのためマイヨプントスを着るファンアールトは悠々とフィニッシュラインを通過し、今大会2勝目を手に入れた。
2級山岳のハイペースに耐え、クスの好アシストをスプリント勝利に繋げたファンアールト。「もっと大人数での集団スプリントを予想していた。最終山岳が厳しいことは知っていたが、まさかこんな激しい展開になるとは思っていなかった。頂上で集団に入ったのが僕とセップ(クス)だけだったので、立ち回ることが難しかった。セップは本当に素晴らしい走りを見せてくれ、背後についた僕は鳥肌が立っていたよ。そのため是が非でも勝ちたかった」と、ファンアールトはレースを振り返った。
区間2位には初日の個人TTで2位だったマティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック)が入り、3位は地元スペイン出身のパウ・ミケル(エキポ・ケルンファルマ)がランクイン。持ち前のスピードを活かせず、12位だったアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)はマイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)を取り戻している。
8月23日(金) 第7ステージ
アルチドナ〜コルドバ 180.5km(丘陵)
アンダルシアの荒野を駆けるブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージは、終盤に2級山岳が1つだけ設定された丘陵ステージ。アルチドナを出発して140kmまでは平坦路を進み、最大勾配16%と厳しい2級山岳アルト・デル・14%(距離7.4km/平均5.6%)を登坂。その後細かいアップダウンを経て、急勾配の下りと約12kmの平坦路の先にあるフィニッシュ地点を目指す。
スプリンターは2級山岳で脱落すると予想され、パンチャーを含む集団スプリントが大方の予想。また逃げ切りや独走などあらゆる可能性を残したステージは、この日も選手たちが何度も水や氷で身体を冷やす厳しい暑さの中行われた。
逃げ切りが決まった前日から一転、静かな立ち上がりとなったレースはシャビエル・イササ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)が単独逃げを打つ。第3ステージでも逃げた22歳のイササはリードを最大9分まで拡げ、それを追うメイン集団ではリーダーチームであるデカトロンAG2Rラモンディアルを中心に牽引し、ヴィスマ・リースアバイクやアルペシン・ドゥクーニンクも力を貸した。
フレームの前面やペダル、ホイールのロゴを赤く染めたバイクに乗るのは、前日勝者でマイヨロホを着るベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)。自身初となるグランツールのリーダージャージに加え、1992年創設という自転車界では長い歴史を誇るデカトロンにとって初のマイヨロホ着用者となった。そんなデカトロンにとってメモリアルなレースは、スプリント決着だった第5ステージよりも速い平均速度で進み、残り50km地点を過ぎた頃に逃げとの差は3分まで縮まった。
プロ3年目にして掴んだグランツールの舞台で、絶好のアピールタイムを楽しむイササは残り39.2km地点に設定された中間スプリントを通過する。わずか30秒後方のプロトンではカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が、マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を着るワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)を退け2位通過。グローブスはファンアールトとの差を2ポイント縮め、直後に集団はイササを飲み込んだ。
前日に逃げから区間6位に入ったハイス・レイムライゼ(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)がメカトラで遅れるなか、最大-6秒のボーナスタイムが与えられる2級山岳アルト・デル・14%(距離7.4km/平均5.6%)に向けてレッドブル・ボーラ・ハンスグローエがペースを上げる。2級山岳に入りヴィスマはエドアルド・アッフィニ(イタリア)を送ってライバルのスプリンターたちをふるい落としていく。アッフィニから再びレッドブルに先頭が代わる頃にはスプリンターはもちろん、ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)など登りが得意な選手たちも遅れていった。
頂上まで残り1.5km、フィニッシュまで27km地点でアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が仕事を終えるとプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)が加速する。そのペースにはリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)やセップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)、オコーナーが追従する後方で、ファンアールトは集団後方で懸命に踏み込む。そして一度勾配が緩やかになり、集団のペースが落ちた隙をついてレナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー)が仕掛けた。
しかしこれは決め手に欠き、ログリッチが一拍置いて2度目のアタック。マイヨロホのオコーナーが遅れるなか、ログリッチが先頭通過してボーナスタイム(-6秒)を獲得。2位通過はクス(-4秒)、カラパス(-2秒)は3位通過してオコーナーから取り戻した。
登りで遅れた追走集団では、後ろを振り向いたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が前方を走る選手の後輪に接触して落車。最大のライバルが脱落したファンアールトは細かなアップダウンが続く区間で先頭集団に追いつき、前年の総合優勝者であるクスが牽引をスタート。残り21kmからマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)が飛び出し、単独先頭に立った。
レースは先頭のソレルを20名程度の追走集団が追いかける展開。クスはデカトロンと共に牽引を続け、下りを終え平坦区間に入った残り11km地点でファンアールトが飛び出す。しかしファンアールトは踏むのを止めて集団に戻り、再びクスが高速牽引を見せてソレルを残り3.5kmで捕まえた。
クスが役割を終え、脚を緩めると集団のペースは一気に落ちる。そのためダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)やファンイートヴェルト、パヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ)などが続けてアタックを繰り返す。そして集団牽引に戻ったウラソフが残り500mでシヴァコフの姿を捉え、勝負は集団スプリントに持ち込まれた。
ファンアールトが先に得意のロングスプリントを開始し、スプリンターではない他の選手たちは並ぶことすらできない。そのためマイヨプントスを着るファンアールトは悠々とフィニッシュラインを通過し、今大会2勝目を手に入れた。
2級山岳のハイペースに耐え、クスの好アシストをスプリント勝利に繋げたファンアールト。「もっと大人数での集団スプリントを予想していた。最終山岳が厳しいことは知っていたが、まさかこんな激しい展開になるとは思っていなかった。頂上で集団に入ったのが僕とセップ(クス)だけだったので、立ち回ることが難しかった。セップは本当に素晴らしい走りを見せてくれ、背後についた僕は鳥肌が立っていたよ。そのため是が非でも勝ちたかった」と、ファンアールトはレースを振り返った。
区間2位には初日の個人TTで2位だったマティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック)が入り、3位は地元スペイン出身のパウ・ミケル(エキポ・ケルンファルマ)がランクイン。持ち前のスピードを活かせず、12位だったアントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)はマイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)を取り戻している。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第7ステージ
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 4:15:39 |
2位 | マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) | |
3位 | パウ・ミケル(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | |
4位 | シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) | |
5位 | クインテン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
6位 | カンタン・パシェ(フランス、グルパマFDJ) | |
7位 | ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
8位 | アロルド・テハダ(コロンビア、アスタナ・カザクスタン) | |
9位 | マックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
10位 | ジョージ・ベネット(ニュージーランド、イスラエル・プレミアテック) |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | 27:44:07 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +4:45 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +4:59 |
4位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +5:23 |
5位 | クリスティアン・ロドリゲス(スペイン、アルケアB&Bホテルズ) | +5:26 |
6位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +5:29 |
7位 | レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー) | +5:32 |
8位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +5:35 |
9位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +5:38 |
10位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +5:49 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 203pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 162pts |
3位 | パヴェル・ビットネル(チェコ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | 81pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | シルヴァン・モニケ(ベルギー、ロット・デスティニー) | 16pts |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 15pts |
3位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | 11pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 27:49:36 |
2位 | レナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー、ロット・デスティニー) | +0:03 |
3位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +0:06 |
チーム総合成績
1位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | 83:23:27 |
2位 | UAEチームエミレーツ | +5:08 |
3位 | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +5:25 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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