「説明のつかない身体の異常」によってドーピングを結論付けられ、過去4年間の出場停止や罰金処分が言い渡されたロバート・スタナード(オーストラリア)をバーレーン・ヴィクトリアスが獲得。加入時のチーム声明にUCIを牽制する内容を掲載し、さらにUCI側がそれに対して指摘するなど波紋が広がっている。



ロバート・スタナード(オーストラリア、昨年までアルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

ことの発端となったのは、2024年8月20日にバーレーン・ヴィクトリアスがロバート・スタナード(オーストラリア)の即時加入を発表したこと。スタナードはミッチェルトン・スコット在籍中の2018年と2019年、バイオロジカル・パスポートに異常値が見つかり、禁止物質または禁止方法の使用というアンチ・ドーピング規則違反(ADRV)が発覚。UCIは「説明のつかない身体の異常」によって、禁止物質と禁止方法が明らかにならないという不可解な状態のまま2023年8月から暫定出場停止処分を課していた。

2024年6月3日付けでスタナードに言い渡されたのは、最初の異常値が見つかった2018年8月17日から2022年8月17日までの4年間の出場停止処分と、期間中のレース成績剥奪と平均年間賞金の70%に相当する罰金支払い義務。スタナードは故意のドーピングを否定していたが、UCI側はスタナードの血中データはEPOなどの使用や輸血を示しているとし、最終的にドーピングによるものだと結論付けていた。

出場停止期間が過去に遡るものであったため、レース出場が可能な状態となったスタナードを獲得したのはバーレーン・ヴィクトリアスだった。チームは8月20日の加入発表と同時に、「禁止物質と禁止方法のどちらで訴えられたのか明らかではない」、「医療チームがいかなる不正行為も結論づけることができなかった」と、UCI側の対応を牽制するコメントを掲載。この記載に対して8月23日、今度はUCIがプレスリリースで反論した。

UCIはバーレーン側の言い分が「明らかに間違いであり誤解を招く」表現だと厳しく批判し「UCIワールドチームの発言を訂正しなければならない状況にUCIが置かれていることは残念」ともコメント。バーレーン側は移籍ニュースの声明を大幅に削除し、現在は簡潔に加入を伝える内容だけとなっている。この応酬はひとまず現状で落ち着くと思われる。

1998年生まれ、現在25歳のスタナードはジュニア時代に頭角を表し、登坂力を武器に2022年のブエルタ・ア・エスパーニャでは山岳賞ランキング2位に入った経験を持つクライマー。2018年のジャパンカップではロブ・パワー(オーストラリア)の優勝をアシストしつつ、8位に食い込みU23最優秀賞を獲得した経験も持っている。

スタナードは(削除された)チームリリースの中で、「また競技に戻ってキャリアを続けられることは素晴らしいこと。裁定を受け入れて大好きなスポーツを再開するか、それとも汚名を晴らすために戦うか難しい選択を迫られていたが、結果的に最も賢明な選択ができたと思う。長い目で見れば、どちらもできるようになりたいと思っているけれど、今は再びレースをする機会を掴み取ったところ。チームと一緒に目標に向かって働けることを本当に嬉しく思っている」と話している。契約は2025年末までの1年半弱だ。

text:So Isobe

最新ニュース(全ジャンル)