超級山岳ラルプデュエズを駆け上がるツール・ド・フランス・ファム最終ステージで、デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)がステージ優勝。1分1秒遅れでフィニッシュしたニエウィアドマは、4秒差で自身初となる総合優勝に輝いている。



8月18日(日)第8ステージ
グラン・ボルナン〜ラルプデュエズ 150km(山岳/山頂フィニッシュ)


マイヨジョーヌを着て大会最終日に臨んだカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第8ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
オランダで開幕し、ベルギー、フランスと巡ったツール・ド・フランス・ファム・アヴェク・ズイフト(UCIワールドツアー)は最終日を迎えた。その舞台となったのはグラン・ボルナンから山間部を通り、2つの超級山岳を越える山頂フィニッシュ。コース後半に待ち受ける超級山岳グランドン峠(距離19.7km/平均7.2%)をクリアし、長い下りを経てから超級山岳ラルプデュエズ(距離13.8km/平均8.1%)を駆け上がる。

第7ステージが終了した時点でマイヨジョーヌを着るカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)と、総合8位デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)との差は1分15秒。第5ステージの終盤に落車し、マイヨジョーヌを失ったフォレリングは前日まで腰の怪我の影響を感じさせない走りを披露した。

スタート直後から逃げを目指したアタックが繰り返され、23名という大所帯の逃げ集団が形成される。その中にフォレリング擁するSDワークスはロレーナ・ウィーベス(オランダ)ら4名を送り、マイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着る前日勝者のジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル)も入る。小粒の雨が降り始めるなかヘキエーレは最初の2級山岳を先頭通過してマイヨアポワをほぼ確定させ、中間スプリントはウィーベスが獲ってマイヨヴェール(ポイント賞)ラインキングで2位に上がった。

23名の逃げ集団に入ったジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) photo:CorVos

プロトンは登りの度に人数が絞られていった photo:CorVos

メイン集団ではモビスターやフェニックス・ドゥクーニンク、キャニオン・スラムなどが先導し、残り71.1kmから始まる超級山岳グランドン峠(距離19.7km/平均7.2%)に1分半の差で突入する。マビ・ガルシア(スペイン、リブ・アルウラー・ジェイコ)が持ち味の積極的なアタックが不発に終わるなか、その後飛び出したヴァレンティーナ・カヴァラール(オーストリア、アルケアB&Bホテルズ)は逃げ集団に追いついた。

急勾配が続くグランドン峠では、プロトンの人数をニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス・プロタイム)が高速牽引で絞っていく。そして逃げを20秒差まで追い詰めたメイン集団から、グランドン峠の頂上手前2.6kmでフォレリングが仕掛けた。

超級山岳グランドン峠でプロトンを飛び出したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

ステージ優勝とマイヨジョーヌ奪還を目指すフォレリングは、シッティングのままハイケイデンスを回すいつものスタイルで加速する。逃げを捉えながら猛スピードで駆け上がるフォレリングにニエウィアドマはついていけず、唯一パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)が食らいついた。

霧の深いグランドン峠をフォレリングが通過する頃に、ニエウィアドマとの差は55秒まで拡がる。長い下りを終え、平坦区間に入った地点(残り25km)でフォレリングとローイヤッカースはグループ・マイヨジョーヌに1分13秒を得た。

超級山岳ラルプデュエズに突入したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム)とパウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) photo:CorVos

フォレリングを追うカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

ニエウィアドマは6日目勝者のセドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング)と下りで先頭集団から遅れたカヴァラールと共に追走する。平坦路ではガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック)など4名がニエウィアドマに追いつき、7名となった追走集団は先頭との差を一時37秒まで縮小。そしてフォレリングとローイヤッカースは、44秒差で超級山岳ラルプデュエズ(距離13.8km/平均8.1%)に足を踏み入れた。

フォレリングが先頭固定のまま2名は一定のペースで踏み続け、後続はニエウィアドマとレアリーニ、エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ)の3名に絞られる。その差は50秒〜1分10秒の間で推移し、フォレリングとローイヤッカースはフラムルージュ(残り1km)を通過。先頭で最終コーナーを抜けたフォレリングはダンシングで踏み続け、ローイヤッカースを引き離してステージ優勝を手に入れた。

ローイヤッカースを引き離し、大会最終日を制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

4秒差でマイヨジョーヌを守ったカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

レアリーニが遅れ、ムジックと2名になったニエウィアドマは総合優勝を信じてもがく。フィニッシュ手前でムジックに抜かれ区間3位に与えられるボーナスタイム(-4秒)を逃したものの、1分1秒遅れでフィニッシュしたニエウィアドマが、わずか4秒差でマイヨジョーヌを死守した。

フィニッシュ後に倒れ込んだフォレリング。「勝利したものの、4秒差でマイヨジョーヌを得られなかったことを悔しく思う。本当に馬鹿らしい落車で総合優勝を失ってしまった。今日も腰が痛んだが、ここラルプデュエズで最後まで諦めずに踏み続けた」と、涙と共に悔しさを語った。

圧巻の登坂スピードでステージ優勝を飾ったデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:CorVos

自らのバイクを掲げ、総合優勝を喜ぶカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:A.S.O.

一方、フィニッシュ後に笑顔でバイクを掲げたニエウィアドマは「本当にクレイジーな結果。まるでジェットコースターのようなステージで、グランドン峠では最悪の瞬間を迎えた。しかし下りで立て直し、共に追走してくれたトレックに感謝したい。ラルプデュエズを登りながら、無線の向こうから叫び声が聞こえていた。チームメイトやスタッフ、夫に感謝したい」とコメント。2022年、23年と総合3位に入ったニエウィアドマが、表彰台で念願の総合優勝を喜んだ。

マイヨヴェール(ポイント賞)はマリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)、マイヨアポワ(山岳賞)にはヘキエーレが輝き、マイヨブラン(ヤングライダー賞)はプック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク)が手に入れている。

ツール・ド・フランス・ファム2024総合表彰台:2位フォレリング、1位ニエウィアドマ、3位ローイヤッカース photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024の4賞ジャージを獲得したニエウィアドマたち photo:CorVos

ツール・ド・フランス・ファム2024第8ステージ結果
1位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) 4:34:14
2位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:04
3位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ) +1:01
4位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
5位 ガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック) +1:31
6位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング) +3:15
7位 ヴァレンティーナ・カヴァラール(オーストリア、アルケアB&Bホテルズ) +3:34
8位 サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) +5:10
9位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス・プロタイム) +5:14
10位 ルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック) +7:06
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) 24:36:07
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) +0:04
3位 パウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) +0:10
4位 エヴィータ・ムジック(フランス、FDJスエズ) +1:21
5位 ガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック) +2:19
6位 セドリーヌ・ケルバオル(フランス、セラティツィット・WNTプロサイクリング) +2:51
7位 サラ・ジガンテ(オーストラリア、AGインシュランス・スーダル) +7:09
8位 ルシンダ・ブラント(オランダ、リドル・トレック) +8:06
9位 ジュリエット・ラブース(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +8:07
10位 タリタ・デヨンフ(オランダ、ロット・デスティニー) +8:12
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) 170pts
2位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス・プロタイム) 110pts
3位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) 99pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ジュスティネ・ヘキエーレ(ベルギー、AGインシュランス・スーダル) 46pts
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) 34pts
3位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 25pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 プック・ピーテルセ(オランダ、フェニックス・ドゥクーニンク) 24:44:35
2位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、リドル・トレック) +1:07
3位 マリオン・ビュネル(フランス、サンミッシェル・マヴィック・オーベル93) +4:12
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 74:07:21
2位 FDJスエズ +11:52
3位 モビスター +35:09
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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