EFエデュケーション・イージーポストがツール・ド・フランスにて着用したPOCの新型ヘルメットが正式にデビュー。モデル名はCytal Carbon(サイタル・カーボン)。大胆な通気口の設計とカーボンウィングによって快適性とエアロを両立させた新モデルだ。



POC Cytal Carbon

春のクラシックシーズンにタイムトライアル系ヘルメットのロードレースバージョン”Procen Air”を発表したPOCが、ツール・ド・フランスにて次なる新作を投入した。EFエデュケーション・イージーポストの選手たちはVentral LiteとProcen Airとこの新型を使い分け、過酷な3週間を戦い抜いた。

ツール・ド・フランスでベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)がCytal Carbonを着用した photo:CorVos

新モデルの名前はCytal Carbon(サイタル・カーボン)。今作では通気性と頭部のクーリング性能を従来モデルよりも向上させて、ライダーのパフォーマンスに貢献することを目標に開発が行われた。そこで導き出された答えの一つが、カーボン製のシェルをインサートすること。

非常に大きな開口部が備えられている

ヘルメットの前方は直線的なデザインが採用されている

このカーボンシェルは単なるプレートではなく、部分ごとに厚みが変化しているウィングとして設計された。シェルの溝と直接接続される排気ポートによって風の通り抜けを確保するだけではなく、ウィングによるベンチュリ効果を利用しヘルメットに入り込んだ風の流速を向上することで冷却性能を高めている。

またカーボンウィングを採用したことでヘルメット強度を確保できるため、これまでとは異なる開発アプローチが可能となり、非常に大きな前面開口部を実現。開口部に風を導くシェル形状も相まって大量の風をヘルメット内部に送り込むことができ、冷却性能向上をサポートしている。同時に、最も圧力がかかる部分の面積を小さくすることによる空気抵抗の低減も叶えた。

風を開口部に導くシェル形状が採用されている
側頭部の開口部も後方へと貫通しており、熱がこもりにくくなっている


カーボンウィングとシェルの曲率が異なり、開口部に風を誘導する
後頭部の排気ポートは前方からの風が通り抜けやすく設計されている



イタリアで製造されるカーボンウィングにはKoridionと呼ばれるコアがインサートされている。このコアが持つ粘弾性の特性によってウィング自体の構造的な安定性を確保し、クラッシュした際の衝撃を分散させる性能も獲得している。カーボンウィングはエアロ、通気性、安全性全ての向上に寄与しているCytal carbonの最大の特徴だ。

Cytal CarbonはCFD(数値流体力学)でエアロ・通気性を確認し、FEM(有限要素法)によって安全性をチェックしながら、ヘルメットの構造を設計。エアロ・通気性の面ではヘルメットシェルの外周を流れる風が乱流にならないような形状を導き出しつつ、額部分や側頭部の通気口デザイン、カーボンウィングの後端から頭頂部の開口部に風を流すような設計を採用した。もちろんコンピューター計算だけではなく風洞実験とEFの選手たちによるライドによって性能が鍛えあげられている。

額部分も風が通り抜けやすい形状が採用されている。最もシェルが厚い部分で3cmオーバー
シェル内側のチャネルの深さは最大2.5cm


額に密着するパッドが付属する
アジャスターはスナップボタン式ではなく、90度回転させて挿入する設計されている



FEMはPOCの専門家による社内独自のプロセスを採用しており、非常に多くの安全に関する変数から形状、素材を導き出しており、自社研究機関をもつPOCの厳しい社内要件を満たすプロテクション性能を実現。もちろんCEなどの規格をクリア、各社のヘルメットを検証しているバージニア工科大学の評価では星5を獲得している。

インナーパッドは基本的にはシェルの形状に合わせたデザインだが、額部分に密着する交換パッドが付属している。これが額の水分を吸収する事で汗や雨水が目尻に流れるのを防ぐことが可能。またアイウェア・ガレージや快適なフィット感を実現するアジャスターが備えられているため、使い勝手も良好。

ヘルメットの形状は楕円形のグローバルフィット。サイズはS(50-56cm)、M(54-59cm)、L(56-61cm)の3種類。重量は250g(サイズM)。価格は57,200円(税込)。



POC Cytal Carbon
サイズ:S(50-56cm)、M(54-59cm)、L(56-61cm)
重量:250g CE(Mサイズ)
価格:57,200円(税込)