2024/07/21(日) - 08:56
アルプスを舞台に最終山岳決戦が行われたツール・ド・フランス第20ステージ。ヴィンゲゴーのカウンターアタックに追従したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が区間5勝目を挙げ、自身3度目の総合優勝に王手をかけた。
7月20日(土)第20ステージ
ニース〜コル・ド・ラ・クイヨール 132.8km(山岳/山頂フィニッシュ)
第111回ツール・ド・フランスも残すところあと2日。フィレンツェでの開幕から3週間が経過し、アルプスの最終山岳決戦にたどり着いた。その舞台は132.8kmの短距離コースに、獲得標高差4,600mに達する4つのカテゴリー山岳が詰め込まれた何とも過酷なレイアウトだ。
大会の終着地点であるニースをスタート後、まずは2級山岳ブロス(距離10km/平均6.6%)と1級山岳テュリニ(距離20.7km/平均5.7%)の登坂。中間スプリントを経てパリ〜ニースにも登場する1級山岳コルミアーヌ(距離7.5km/平均7.1%)を越え、フィニッシュラインの引かれた最終1級山岳クイヨール(距離15.7km/平均7.1%)を駆け上がる。
前日の山岳ステージを最後尾でフィニッシュしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)を含む141名の選手たちが、今大会最後のロードレースをスタートする。直後に逃げから今大会を盛り上げたウノエックス・モビリティやトタルエネルジーがアタック。逃げに乗りたい選手たちがそれに続き、一つ目の2級山岳ブロスに入りニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がレース先頭でリチャル・カラパス(エクアドル)を牽引した。
EFが狙うのはカラパスの着るマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を確定させること。逃げを狙う14名が先行したものの、そこに総合首位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)たちが追いつく。それを嫌ったエンリク・マス(スペイン、モビスター)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)、ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)の3名が集団を飛び出した。
メイン集団はUAEチームエミレーツがコントロールし、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)はもちろん総合9位マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)の動きに目を光らせる。2級の頂上はマスが先頭通過し、ポイント加算を逃したカラパスがその下りでクレモン・シャンプッサン(フランス、アルケアB&Bホテルズ)やロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)らと共にアタック。登坂距離が20.7kmと長い1級山岳テュリニに入り、マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)を含むカラパス・グループが先頭集団に合流した。
8名となった先頭には遅れてトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)ら3名がジョインする。しかし逃げ集団からニース出身のシャンプッサンが前輪のパンクで脱落して10名に。それを4分40秒差で追いかけるプロトンは、牽引がUAEからスーダル・クイックステップに移行した。
下ってから平坦路を経ず、選手たちは1級山岳コルミアーヌ(距離7.5km/平均7.1%)に続く登り区間に入る。途中の中間スプリント(残り45km)では重量級クラシックレーサーのヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)が先頭通過。1級山岳でヤン・トラトニク(スロベニア、ヴィスマ・リースアバイク)やソレルがアタックする場面もありながら、カラパスが先頭で頂上を越え最終的なマイヨアポワ獲得を確定させた。
この時点で逃げ集団とスーダルがペースメイクするプロトンとの差は4分14秒。そこからダウンヒルと僅かな平坦路を経て、最終1級山岳クイヨール(距離15.7km/平均7.1%)に入る頃に逃げのリードは3分を切った。
逃げ集団に唯一2名を乗せたヴィスマは、ケルデルマンのためにトラトニクが麓から先頭で踏み込む。そのハイペースによって人数は絞られ、モビスターのエースナンバーをつけるマスが残り11.5km地点でアタック。軽快な加速はカラパス以外を振り落とし、大会初日を制したバルデも遅れていった。
メイン集団はミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)の高速牽引によって集団の人数を減らす。そして残り7km地点を通過した先頭と1分20秒差まで縮めた集団から、マイヨブランを着るレムコ・エヴェネプール(ベルギー)がアタック。しかしヴィンゲゴーやポガチャルを引き離すことができず、その後総合4位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が牽引を始めた。
カラパスとマスによるアタックの応酬は決め手を欠き、相対的にペースは落ちていく。後方ではエヴェネプールが2度目のアタックを仕掛け、追従したヴィンゲゴーがカウンターで飛び出す。エヴェネプールが遅れる一方で、ポガチャルはしっかりとヴィンゲゴーの後ろについた。
翌日の大会最終日がエヴェネプールの得意な個人タイムトライアルのため、山岳ステージでタイムを稼いでおきたいヴィンゲゴー。前日から力を戻したヴィンゲゴーは静観するポガチャルを背後につけ、先頭のカラパスとマスに追いつく。すると先にマスが脱落し、ヴィンゲゴーが維持するハイペースにフィニッシュ手前800mでカラパスが遅れた。
そのため勝負は第11ステージ以来となるヴィンゲゴーとポガチャルのスプリントに持ち込まれる。先頭に出たポガチャルは何度もヴィンゲゴーの様子を伺い、残り150mから腰を上げてライバルを悠々と突き放す。そして両手をいっぱいに拡げたマイヨジョーヌが、今大会5勝目を手に入れた。
「本当に楽しいレースだった。スーダル・クイックステップがヨナス(ヴィンゲゴー)からタイム差を奪い、ステージ優勝を狙いに行くのは予想外だった。そんな中でも勝つことができ、これ以上嬉しいことはない」と笑顔で語ったポガチャル。「この結果を開幕前に伝えられても信じなかっただろう。この世の出来事とは思えないほど素晴らしい結果。1勝でも満足なのに(区間5勝は)十分過ぎる数だよ。だってマイヨジョーヌだけでも満足なのに」。
ヴィンゲゴーに7秒差をつけ、ボーナスタイム10秒を獲得したポガチャルは総合リードを5分14秒に拡大。またエヴェネプールは53秒遅れ(区間4位)でフィニッシュしたため、総合2位ヴィンゲゴーはエヴェネプールとの差を1分58秒から2分50秒まで拡げている。
7月20日(土)第20ステージ
ニース〜コル・ド・ラ・クイヨール 132.8km(山岳/山頂フィニッシュ)
第111回ツール・ド・フランスも残すところあと2日。フィレンツェでの開幕から3週間が経過し、アルプスの最終山岳決戦にたどり着いた。その舞台は132.8kmの短距離コースに、獲得標高差4,600mに達する4つのカテゴリー山岳が詰め込まれた何とも過酷なレイアウトだ。
大会の終着地点であるニースをスタート後、まずは2級山岳ブロス(距離10km/平均6.6%)と1級山岳テュリニ(距離20.7km/平均5.7%)の登坂。中間スプリントを経てパリ〜ニースにも登場する1級山岳コルミアーヌ(距離7.5km/平均7.1%)を越え、フィニッシュラインの引かれた最終1級山岳クイヨール(距離15.7km/平均7.1%)を駆け上がる。
前日の山岳ステージを最後尾でフィニッシュしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)を含む141名の選手たちが、今大会最後のロードレースをスタートする。直後に逃げから今大会を盛り上げたウノエックス・モビリティやトタルエネルジーがアタック。逃げに乗りたい選手たちがそれに続き、一つ目の2級山岳ブロスに入りニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)がレース先頭でリチャル・カラパス(エクアドル)を牽引した。
EFが狙うのはカラパスの着るマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を確定させること。逃げを狙う14名が先行したものの、そこに総合首位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)たちが追いつく。それを嫌ったエンリク・マス(スペイン、モビスター)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)、ブリュノ・アルミライユ(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)の3名が集団を飛び出した。
メイン集団はUAEチームエミレーツがコントロールし、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)はもちろん総合9位マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ)の動きに目を光らせる。2級の頂上はマスが先頭通過し、ポイント加算を逃したカラパスがその下りでクレモン・シャンプッサン(フランス、アルケアB&Bホテルズ)やロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)らと共にアタック。登坂距離が20.7kmと長い1級山岳テュリニに入り、マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)を含むカラパス・グループが先頭集団に合流した。
8名となった先頭には遅れてトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)ら3名がジョインする。しかし逃げ集団からニース出身のシャンプッサンが前輪のパンクで脱落して10名に。それを4分40秒差で追いかけるプロトンは、牽引がUAEからスーダル・クイックステップに移行した。
下ってから平坦路を経ず、選手たちは1級山岳コルミアーヌ(距離7.5km/平均7.1%)に続く登り区間に入る。途中の中間スプリント(残り45km)では重量級クラシックレーサーのヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、リドル・トレック)が先頭通過。1級山岳でヤン・トラトニク(スロベニア、ヴィスマ・リースアバイク)やソレルがアタックする場面もありながら、カラパスが先頭で頂上を越え最終的なマイヨアポワ獲得を確定させた。
この時点で逃げ集団とスーダルがペースメイクするプロトンとの差は4分14秒。そこからダウンヒルと僅かな平坦路を経て、最終1級山岳クイヨール(距離15.7km/平均7.1%)に入る頃に逃げのリードは3分を切った。
逃げ集団に唯一2名を乗せたヴィスマは、ケルデルマンのためにトラトニクが麓から先頭で踏み込む。そのハイペースによって人数は絞られ、モビスターのエースナンバーをつけるマスが残り11.5km地点でアタック。軽快な加速はカラパス以外を振り落とし、大会初日を制したバルデも遅れていった。
メイン集団はミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ)の高速牽引によって集団の人数を減らす。そして残り7km地点を通過した先頭と1分20秒差まで縮めた集団から、マイヨブランを着るレムコ・エヴェネプール(ベルギー)がアタック。しかしヴィンゲゴーやポガチャルを引き離すことができず、その後総合4位のジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が牽引を始めた。
カラパスとマスによるアタックの応酬は決め手を欠き、相対的にペースは落ちていく。後方ではエヴェネプールが2度目のアタックを仕掛け、追従したヴィンゲゴーがカウンターで飛び出す。エヴェネプールが遅れる一方で、ポガチャルはしっかりとヴィンゲゴーの後ろについた。
翌日の大会最終日がエヴェネプールの得意な個人タイムトライアルのため、山岳ステージでタイムを稼いでおきたいヴィンゲゴー。前日から力を戻したヴィンゲゴーは静観するポガチャルを背後につけ、先頭のカラパスとマスに追いつく。すると先にマスが脱落し、ヴィンゲゴーが維持するハイペースにフィニッシュ手前800mでカラパスが遅れた。
そのため勝負は第11ステージ以来となるヴィンゲゴーとポガチャルのスプリントに持ち込まれる。先頭に出たポガチャルは何度もヴィンゲゴーの様子を伺い、残り150mから腰を上げてライバルを悠々と突き放す。そして両手をいっぱいに拡げたマイヨジョーヌが、今大会5勝目を手に入れた。
「本当に楽しいレースだった。スーダル・クイックステップがヨナス(ヴィンゲゴー)からタイム差を奪い、ステージ優勝を狙いに行くのは予想外だった。そんな中でも勝つことができ、これ以上嬉しいことはない」と笑顔で語ったポガチャル。「この結果を開幕前に伝えられても信じなかっただろう。この世の出来事とは思えないほど素晴らしい結果。1勝でも満足なのに(区間5勝は)十分過ぎる数だよ。だってマイヨジョーヌだけでも満足なのに」。
ヴィンゲゴーに7秒差をつけ、ボーナスタイム10秒を獲得したポガチャルは総合リードを5分14秒に拡大。またエヴェネプールは53秒遅れ(区間4位)でフィニッシュしたため、総合2位ヴィンゲゴーはエヴェネプールとの差を1分58秒から2分50秒まで拡げている。
ツール・ド・フランス2024第20ステージ
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 4:04:22 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +0:07 |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +0:23 |
4位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:53 |
5位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +1:07 |
6位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +1:28 |
7位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:33 |
8位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +1:41 |
9位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +1:43 |
10位 | ロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | +1:52 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 82:53:32 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +5:14 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +8:04 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +16:45 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +17:25 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +21:11 |
7位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +21:12 |
8位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +24:26 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +24:50 |
10位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +25:48 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 387pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 354pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 208pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | 127pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 97pts |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 67pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 83:01:36 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +13:08 |
3位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +16:22 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 249:15:17 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +29:47 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +1:25:17 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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