2024/07/17(水) - 08:30
ギルマイが終盤に落車したツール・ド・フランス第16ステージは集団スプリントで決着。ファンデルプールの盤石なリードアウトを受けたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が今大会3勝目をマークした。
7月16日(火)第16ステージ
グリュイッサン〜ニーム 188.6km(平坦)
総合系選手たちでさえ「タフだった」と語る2週目をグルペットで乗り越え、最後の休息日で英気を養ったスプリンターたちに最後かもしれないチャンスが回ってきた。最終週の幕開けを告げるツール・ド・フランス第16ステージは、地中海に面したグリュイッサンからアルプスの方角(北東)のニームに至る188.6km。中間スプリント(残り92.5km)の手前から小高い丘を越え、4級山岳をクリアしてからもフラットがフィニッシュまで続いていく。
大会3週目をスタートさせたのは150名の選手たち。新型コロナウイルス感染で不出走となったクリス・ハーパー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)とマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)を除くプロトンが、気温30度を越える暑さのなか午後1時30分にスタート。直後にシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)がアタックし、サンディ・デュジャルダン(フランス、トタルエネルジー)が追従した。
しかしキュングはすぐに踏むのを止め、デュジャルダンもプロトンに戻る。そのためひと塊の集団は休息日ライドの延長のようなスローペースで進んでいった。
マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や今大会最後の平坦ステージで勝利を狙うマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)がリラックスした表情を見せるなか、集団は最初の2時間を時速41.5kmで走行。2021年大会ではスタート時刻が遅れるほど強かった風は、この日は終始吹くことなく、選手たちは残り92.5km地点の中間スプリントに向けようやくスピードを上げた。
コース右側でアンテルマルシェ・ワンティがビニヤム・ギルマイ(エリトリア)のためにトレインを組む。しかしマイヨヴェールは集団の中に埋もれ(4位通過)、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)もマチュー・ファンデルプール(オランダ)の姿を見失う。フィリプセンが自ら番手を上げるなか(2位通過)、その前方でブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が先頭通過した。
レース中盤の勝負所を通過して落ち着きを取り戻す集団の隙をつき、トマ・ガシニャール(フランス、トタルエネルジー)が飛び出す。「素晴らしい動きだ」とチームカーから称賛を受けるガシニャールに対し、プロトンはスプリントに持ち込みたいアルペシン・ドゥクーニンクやジェイコ・アルウラーが先導した。
多くのトップ選手を輩出するフランス西部ニオール出身のガシニャールは23歳。グランツールデビューで見せ場を作ったネオプロ(プロ1年目)は踏み続け、最大2分半のリードを得る。レース中盤に入っても風が強まる気配はなく、逃げとのタイム差をプロトンが完璧にコントロールする典型的なスプリントステージの様相を呈した。
途中の4級山岳にはアルプス山脈の最終山岳のごとく多くのファンが詰めかけ、大声援を受けながらガシニャールは4級山岳をトップ通過。その後はメイン集団が徐々にタイム差を縮めていき、今大会で最も身長の高い195cmのソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がパンクするシーンもありながら(集団に復帰)、残り25km地点でガシニャールを捉えた。
その後集団のペースは緩み、残り12kmから一気にスピードが上る。コース左側ではアンテルマルシェがトレインを組み、総合エースを擁するヴィスマ・リースアバイクやイネオス・グレナディアーズも先頭に選手を固める。残り2kmからはウノエックス・モビリティとロット・デスティニーが車列を並べ、狭くテクニカルなコーナーを越えていく。
残り1.5km地点のラウンドアバウトに差し掛かり、集団中ほどに位置していたギルマイが落車する。そのためアンテルマルシェの去ったプロトンは引き続きウノエックスが先頭のままフラムルージュ(残り1km)を通過。ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)の力強い牽引はロベ・ヘイス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)に引き継がれ、緩い右コーナーの手前からアルカンシエルのファンデルプールが先頭に立った。
残り100mからフィリプセンがスプリントを始め、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)やフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が背後から迫る。しかし横に並ぶことすら許さなかったフィリプセンが、ライバルたちを振り切り勝利した。
盤石なリードアウトから驚異的なトップスピードを発揮し、ギルマイと並ぶハットトリック(区間3勝目)を達成したフィリプセン。「これはチームで掴んだ勝利。休息日もありツール期間中に調子が徐々に良くなっていった。この高いレベルで勝つのは難しいので3勝は嬉しいし、チームとしても誇りに思える結果だよ」とフィリプセンは喜んだ。
落車したマイヨヴェールのギルマイがフィニッシュでポイントを加算できなかったため、フィリプセンは71から32ポイントに差を縮める。「ギルマイは登りが得意なので逆転は難しいと思う。それよりも彼に怪我がないことを祈っている。こんな形でマイヨヴェールを失ってほしくないからね」とライバルに対し言葉を残した。
レース後、アンテルマルシェはギルマイの怪我について「右肩と肘、膝にアザができ、右肘を2針縫ったただけで骨折はない。翌日にスタートする準備はできている」と伝えている。
7月16日(火)第16ステージ
グリュイッサン〜ニーム 188.6km(平坦)
総合系選手たちでさえ「タフだった」と語る2週目をグルペットで乗り越え、最後の休息日で英気を養ったスプリンターたちに最後かもしれないチャンスが回ってきた。最終週の幕開けを告げるツール・ド・フランス第16ステージは、地中海に面したグリュイッサンからアルプスの方角(北東)のニームに至る188.6km。中間スプリント(残り92.5km)の手前から小高い丘を越え、4級山岳をクリアしてからもフラットがフィニッシュまで続いていく。
大会3週目をスタートさせたのは150名の選手たち。新型コロナウイルス感染で不出走となったクリス・ハーパー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)とマキシム・ファンヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー)を除くプロトンが、気温30度を越える暑さのなか午後1時30分にスタート。直後にシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)がアタックし、サンディ・デュジャルダン(フランス、トタルエネルジー)が追従した。
しかしキュングはすぐに踏むのを止め、デュジャルダンもプロトンに戻る。そのためひと塊の集団は休息日ライドの延長のようなスローペースで進んでいった。
マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)や今大会最後の平坦ステージで勝利を狙うマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン)がリラックスした表情を見せるなか、集団は最初の2時間を時速41.5kmで走行。2021年大会ではスタート時刻が遅れるほど強かった風は、この日は終始吹くことなく、選手たちは残り92.5km地点の中間スプリントに向けようやくスピードを上げた。
コース右側でアンテルマルシェ・ワンティがビニヤム・ギルマイ(エリトリア)のためにトレインを組む。しかしマイヨヴェールは集団の中に埋もれ(4位通過)、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)もマチュー・ファンデルプール(オランダ)の姿を見失う。フィリプセンが自ら番手を上げるなか(2位通過)、その前方でブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が先頭通過した。
レース中盤の勝負所を通過して落ち着きを取り戻す集団の隙をつき、トマ・ガシニャール(フランス、トタルエネルジー)が飛び出す。「素晴らしい動きだ」とチームカーから称賛を受けるガシニャールに対し、プロトンはスプリントに持ち込みたいアルペシン・ドゥクーニンクやジェイコ・アルウラーが先導した。
多くのトップ選手を輩出するフランス西部ニオール出身のガシニャールは23歳。グランツールデビューで見せ場を作ったネオプロ(プロ1年目)は踏み続け、最大2分半のリードを得る。レース中盤に入っても風が強まる気配はなく、逃げとのタイム差をプロトンが完璧にコントロールする典型的なスプリントステージの様相を呈した。
途中の4級山岳にはアルプス山脈の最終山岳のごとく多くのファンが詰めかけ、大声援を受けながらガシニャールは4級山岳をトップ通過。その後はメイン集団が徐々にタイム差を縮めていき、今大会で最も身長の高い195cmのソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)がパンクするシーンもありながら(集団に復帰)、残り25km地点でガシニャールを捉えた。
その後集団のペースは緩み、残り12kmから一気にスピードが上る。コース左側ではアンテルマルシェがトレインを組み、総合エースを擁するヴィスマ・リースアバイクやイネオス・グレナディアーズも先頭に選手を固める。残り2kmからはウノエックス・モビリティとロット・デスティニーが車列を並べ、狭くテクニカルなコーナーを越えていく。
残り1.5km地点のラウンドアバウトに差し掛かり、集団中ほどに位置していたギルマイが落車する。そのためアンテルマルシェの去ったプロトンは引き続きウノエックスが先頭のままフラムルージュ(残り1km)を通過。ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)の力強い牽引はロベ・ヘイス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)に引き継がれ、緩い右コーナーの手前からアルカンシエルのファンデルプールが先頭に立った。
残り100mからフィリプセンがスプリントを始め、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)やフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が背後から迫る。しかし横に並ぶことすら許さなかったフィリプセンが、ライバルたちを振り切り勝利した。
盤石なリードアウトから驚異的なトップスピードを発揮し、ギルマイと並ぶハットトリック(区間3勝目)を達成したフィリプセン。「これはチームで掴んだ勝利。休息日もありツール期間中に調子が徐々に良くなっていった。この高いレベルで勝つのは難しいので3勝は嬉しいし、チームとしても誇りに思える結果だよ」とフィリプセンは喜んだ。
落車したマイヨヴェールのギルマイがフィニッシュでポイントを加算できなかったため、フィリプセンは71から32ポイントに差を縮める。「ギルマイは登りが得意なので逆転は難しいと思う。それよりも彼に怪我がないことを祈っている。こんな形でマイヨヴェールを失ってほしくないからね」とライバルに対し言葉を残した。
レース後、アンテルマルシェはギルマイの怪我について「右肩と肘、膝にアザができ、右肘を2針縫ったただけで骨折はない。翌日にスタートする準備はできている」と伝えている。
ツール・ド・フランス2024第16ステージ
1位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 4:11:27 |
2位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
3位 | アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
4位 | サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル) | |
5位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | |
6位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック) | |
7位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | |
8位 | ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | |
9位 | ライアン・ギボンズ(南アフリカ、リドル・トレック) | |
10位 | ダニー・ファンポッペル(オランダ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 66:07:51 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +3:09 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +5:19 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +10:54 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +11:21 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +11:27 |
7位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +13:38 |
8位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +15:48 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +16:12 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +16:32 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 376pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 344pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 179pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 77pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 58pts |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 42pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 66:13:10 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:08 |
3位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +11:13 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 198:46:21 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +55:03 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +58:59 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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